死刑宣告!?
王都ダンジョンの10階層の一番奥にきた。
王都ダンジョンには10階層ごとに試練の間と呼ばれる部屋が存在する。まるで神の道への試練のようだ。
10階層の試練の間はオークキングが出現するそうだ。
全身甲冑で覆われたオークキングを倒すのには、中堅以上の冒険者がパーティを組む必要がある。
間違ってもF級冒険者の二人で挑む相手ではない。アイヴィーは何の躊躇も無く試練の間の扉を開ける。
30メートル四方くらいの試練の間。中央には全身甲冑のオークキングが仁王立ちしている。
オークキングの身長は2.5mはありそうだ。
奥には階段状の祭壇がある。
オークキングが咆哮をあげる。アイヴィーはその咆哮にも顔色一つ変えない。
右手をオークキングに向ける。青色のエネルギーが溜まっていく。20㎝ほどになったエネルギーの塊をオークキングに向けて放つ。
魔法はオークキングの顔に直撃し爆裂した。
首が無くなったオークキングはゆっくりと後ろに倒れていった。
圧倒的過ぎる。
オークキングがまったく相手になっていない。これで全盛期の力が無いと言うのだから、全盛期ならどうなるのか?
世界征服って言葉も、大言壮語ってわけではなさそうだ。
倒れたオークキングはダンジョンに吸収されていく。大きな魔石だけが残った。
試練の間の奥にあった階段状の祭壇の上に宝箱が出現する。
アイヴィーはまるで興味がない風に宝箱を無造作に開ける。
宝箱には指輪が一つ入っていた。それを指で掴み上げる。
アイヴィーの目が青色から赤色に変わる。魔力を使っているみたいだ。
アイヴィーは指輪を私に投げ渡してきた。
「この指輪は速さを少し上げる効果があるな。エルシー、お前が装着しておけ」
「アイヴィーって鑑定もできるの?」
「魔眼を使えば簡単だな」
そう言ってアイヴィーは11階層への階段を降りていった。
11階層の入り口で魔法石に私の魔力を登録する。
これで私も11階層まで来れるようになった。来てもしょうがないけど……。
アイヴィーが死刑宣告とも言える言葉を発する。
「それじゃ、今日はまだ時間があるからエルシーの特訓だな。6階層に戻ってオークを倒しに行くぞ!」
「オークって無理無理! 私の魔法はショボいし、剣だって大して使えないのよ!」
「何を言ってるんだ。エルシーは俺の筆頭眷属だぞ。オーク如きは瞬殺だ」
「だから無理だって! オークと接近戦なんてできないし、魔法はショボいファイアーボールくらいしか使えないんだから!」
「お前はこの二日間何を見てきたんだ。俺と同じように魔力を直接ぶつけるんだよ。その方が魔法効率が高い。呪文の詠唱は大魔法の時くらいだ。あと、俺の眷属になった時に俺の魔力がエルシーの身体に入っているからな。魔力が格段に上がっているはずだ」
魔力を直接ぶつける?
アイヴィーのように?
魔力が格段に上がっている?
「俺の言う事を信じていないなら、試してみな。右手に魔力を集めるんだ。それを球状になるイメージでな。あとは目標に向けて放つだけだ」
私はアイヴィーに言われた通り右手に魔力を集めてみる。青色の魔力エネルギーが溜まっていく。
「そうだ。それを球状にするイメージだ!」
私の右手の中で5㎝ほどの球が出来上がる。
「それを目標物に放て!」
私は何もない通路に向かって球を放つ。凄い勢いで飛んで行った。
少し経ってから音が聞こえる。ダンジョンの壁に当たった音だろう。
私は自分の手のひらを見つめる。今の魔法は私がやったのか。
「ほら、簡単だろ。それじゃ6階でオーク狩りね」
アイヴィーは私の手を取り、11階の魔法石を触った。