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古過ぎる記録は本物か?

 現在、私は王都の冒険者ギルドにアイヴィーをおぶって向かっている。今日のアイヴィーは歩きたくないらしい。


 冒険者ギルドでアイヴィーは新しい名前であるアイヴィー・ブランバルで登録した。私のギルド登録はロード王国高等学校のダンジョン研修で終わっている。


「アイヴィーって封印される前は冒険者ギルドに登録してたの?」


「一応はしてた。S級だったんだが、俺が戦争を起こしたら討伐対象になってしまってな。今度は上手くやる予定だ」


 S級って!? アイヴィーは伝説のランクだったんだ。改めてアイヴィーの凄さが分かるわ。


「そんな事よりダンジョンに行くぞ。時間がもったいない」


 アイヴィーはそう言って私の背中に乗る。

 時間がもったいないなら自分で歩いて欲しい。


 ロード王国の王都は世界最大のダンジョンを中心にしてできた都市だ。ダンジョンの魔物から取れる魔石が魔道具のエネルギーになる為である。

 またダンジョンは【神の御業(みわざ)】と呼ばれており、不思議な現象が多々見られる。

 例としては、

 【魔物を倒すとエネルギーの魔石に変わる】

 【魔物を倒して行くと身体能力と魔力が上がる】

 【たまに宝箱なんかも出現する】

 【階層ごとにダンジョンの環境が様変わりする】

 などがある。

 ダンジョン学の学者には、ダンジョンは【神の元へ行く道】と言っている者もいる。


 私は3回ほどアイヴィーに血を吸われながら、王都ダンジョンの入り口に着いた。昼の少し前だったため、入り口は混んでいない。


「ねぇ、アイヴィー。あなたが背中にいると私は戦えないのだけど?」


「分かった。そろそろ自分の足で歩くか」


 私の背中から降りたアイヴィーは背負っていた空のリュックを私に渡す。


「それよりエルシーは冒険者ランクと最大階層はいくつだ?」


「それを今聞くの? 最低のGランクよ。最大階層は3階層の入り口ね。学校の実習でしかダンジョンに来たことないもの」


「これが今回の眷属筆頭なのか……。今日からスパルタで行くからな!」


 アイヴィーはそう言ってダンジョンに入って行く。


 王都ダンジョンは現在65階まで攻略がされている。ただしこの記録は相当古い記録だ。本当に65階まで攻略されているのかの真偽は不明だ。現在の冒険者の攻略記録は21階だ。


 ダンジョンの入り口の脇に魔法陣と魔法石がある。魔法石を触り階層を念じると、5階単位で行った事のある階層まで運んでくれる。最初の魔法石があるのは6階層の入り口だ。

 私は3階層までしか行った事がないから使えないけど。


 ダンジョンの一階は洞窟タイプだ。壁が仄かに光っている。

 出てくるモンスターはコボルトが多い。コボルトは犬が進化した魔物だ。身長は1メートルほど、二足歩行である。顔は完全に犬で良く吠える。

 たまに武器を持つ個体もいるが、通常は牙と爪で攻撃してくる。

魔法は全く使えない。ハッキリ言えば雑魚だ。ただし群れになると手こずる場合がある。


 スタスタと歩いていくアイヴィー。まるで自分の庭を歩くようだ。

 前方にコボルトの群れが現れる。6〜7匹はいそうだ。2人で倒すには骨が折れる数だ。私は左脇の剣を抜いて警戒をする。

 構わずコボルトに向かって歩くアイヴィー。


「えっ! ちょっと、待って!」


 アイヴィーは私の声を無視するように右手を前に構える。

 右手にエネルギーが溜まるのが見える。10㎝ほどになったエネルギーの塊が前方のコボルトに真っ直ぐ向かう。


 爆音が響く。

 コボルトのいた場所は土煙が上がっている。土煙が収まった後には魔石が転がっていた。


「エルシー、魔石を拾っておけ。早く行くぞ」


 私はこの光景を見て呆然としてしまった。

 無詠唱の魔法だわ!

 破壊力がもの凄い!

 あれはなんなんだ。


「エルシー! 聞いているのか! 早く行くぞ!」


 再度のアイヴィーの声に我に返る。慌てて魔石を拾って、背中のリュックに入れていく。

 アイヴィーはスタスタとダンジョンを進んでいく。私はアイヴィーに駆け寄り、声をかける。


「そんな無防備にダンジョンを進むなんて無謀じゃないの! それにあなたは地図も持ってないじゃない!」


「王都ダンジョンの一階なんて危険性なんて無いだろ。それに以前と変わってなければ道は覚えている。今日は取り敢えず6階層の入り口まで行って戻ってくるぞ」


 私の言葉を歯牙にもかけず歩いて行くアイヴィー。私は必死にアイヴィーの後を追った。


 ダンジョンは一階層でだいたい2Kmは歩く必要がある。6階層の入り口まで10Kmは歩かないといけない。

 その日は6階層の入り口の魔法石に私の魔力を登録してダンジョン入り口に転移した。魔石はリュックいっぱいになっていた。


「まぁ雑魚相手だと魔力があんまり戻らないな。早くもっと深い階層に行かないとな」


 平気な顔をしているアイヴィー。私は歩き疲れてヘロヘロだ。私は大変な人の眷属になったのかもしれない。


 冒険者ギルドで魔石の納品をする。

 2人共GランクからFランク冒険者にランクがアップする。

 お金は5万バルトになった。1日の稼ぎとしては充分だ。


 帰宅したアイヴィーは無情な通告を私にする。


「明日は11階層まで行くぞ。エルシーの魔力をダンジョンの魔法石に登録しないといけないからな」


 ご主人様、マジですか……。反論する気力がでない。


「そういえばアイヴィーは王都ダンジョンに入った事があるようだけど、どこまで潜っているの?」


「66階層入り口の魔法石までは魔力を登録してある。

攻略は65階層だな」


 目の前に伝説がいた。

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