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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第1章 一誠&ノーデ
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第5話 目覚め

ここまで読んでくださりありがとうございます。

前回の一誠の宣言した数は何だったか,思いだしてから読んでみてください。

はじめ,ん?ってなった方に

Rは右手,Lは左手

●は指の下げてる箇所,○は指の上げてる箇所です。



Turn 11

Issei 【〝7〟】   Kanade kari

R●●()()()          

             L●○○○○ 


 信じられなかった。

「勝った、のか。」

『当てられましたからね。』

「わざと、7になるように上げたとかはないよな。」

『わざと、というより一誠が一度宣言した数は、二度は言わないだろうと思って上げました。当てさせるつもりはありませんでしたよ。』

「そうか。」

『いやでも、次のターン、当てられる自信あったんですが。やっぱりさっきのターン当てにいけばよかったでしょうか。』

 カナデ(仮)は相当、悔しがっていた。俺はその様子をみて、唯一覚えてる俺の勝ちを思い出した。


 俺がルールを覚えたての頃は技とかよく分からなくて、逆に数当てしかしなかった。そのほとんどは外れたけど、本当にまれに勝ったことがあった。その時、カナデが挙げた数字が7だった。それはラッキーな数字だからっていう意味もあったけど「カナデのナは(なな)のナなんだよ。」とか、あいつなりのこだわりがあったからだが。

 まあ、俺が勝って以降、7になるように上げなくなったけど、カナデ(仮)は本物のカナデと思考も少し似ているのかな。

 とにかく、俺は勝てたんだ。その喜びをじわじわ実感してる。

 不思議だな。一時は〝イセノ〟のやる気をなくしていたのに、うんざりしていたのに。いざやってみると、面白くって。

「ありがとう、カナデ(仮)。久しぶりに、楽しかった。」

 と、暗闇が支配していた空間に光が差し込んでくる。

「えっ、なんか明るくなって。」

『晴れてきましたね。どうやら、目覚めの時間が近いようです。この勝負で勝ったことがもう一度生きるためのプラスの刺激になったのでしょう。』

 でも俺はまだ……。

「まだ〝あの技〟を使えてない。現実でも勝てるかどうか……。」

『大丈夫です。生き返ってからも私がいます。』

 ……そうなのか。

『まずやり残したことをやる。そして、その先の目標を見つけていく。一誠のカウンセリングも私の役目の一つですし。最新式の人工知能カナデ(仮)にどーんとお任せください。』

 胸を張って笑顔でカナデ(仮)は言った。まあ、こいつは五歳の体だから、張る胸は小さいので頼りないのだけれど。

「その言い草だとお前って、これからも俺の頭の中に居続けるってことだよな。」

『そうですね、しばらくは。』

「なら名前、ちゃんとした奴つけた方がいいよな。今の仮付けとかじゃなくってさ。」

『私は今のカナデ(仮)でもいいですが、一誠がそういうなら。何かいい名前でも思いついたのですか?』

「いや、思いついたわけじゃ……。」

『では、できるだけ大人びた、いい名前でお願いしますよ。こう見えて、私、設定上は永遠の二十歳ですからね。』

 いや、その設定初めて知ったんだけど。人工知能に性別なんてあるのかな。見た目は幼女、頭脳はおば、いやおねーさん……? それに見合った名前。

「いい名前ね……。うーん。」

 姿は五年前のカナデその人だしなあ。

 カナデと名前、そして〝イセノ〟。

「あの時のカナデとのやり取りを思い出すなあ。」



「一誠と私の名前のカナデっていうのを続けていってみると、いっせいかなで、いっせいなで……〝いっせいので〟ってならない?」

「このゲームの掛け声の? ちょっと強引すぎない?」

「いいの、このゲーム二人でやるんだし。お互い半分こだよ。」



 いや、あの時何言ってるかよくわからなかったけど。ニュアンスは伝わってくるんだけど。二人で一つ的な……。

 そうだ!

「お前の名前はノーデだ。」

『それは一誠の名前のいっせいとノーデを組み合わせると、あのゲームで毎ターン発する掛け声になるからですか?』

「そ、そうだよ。ネーミングセンスない、とか言うなよ。」

 まさか、言い出した早々にどうやって付けたのか見破られるとは。つい、俺はムキになっていた。

『いや、いい名前ですよ。二人で一つみたいな感じがして。』

カナデ(仮)改めノーデは笑顔で笑っている。

「ノーデ、俺、勝てるかな?」


ノーデは断言した。

『一誠は勝てます。私となら……絶対に。』





「光……。ノーデ?」

 俺の、起きた時の第一声はそれだった。

 白い光を放つ蛍光灯。チクタク進む、時計の針。窓の景色はちらっと分厚い雲に覆われた曇り空。

 ノーデがいた、俺の脳内空間じゃない。

 俺の体はベッドの上。左目、左手、左足に分厚い包帯が巻かれている感触がある。口が動かせるのと首が少しひねれるくらいで、他は自由が利かない。

 と、何かが落ちる音がした。俺は辛うじて動く首をその方向に向けた。赤い物体が床の下に転がっていて、そのわきで涙を浮かべている人がいる。

「一誠……。」

 ピンクのエプロン姿で、包丁を持っていて、脇の机の網かごに赤いリンゴが一つ。地面には皮むきを始めたばかりのものがもう一つ。

「かあ、さん……。」

 俺の言葉を聞いた母さんは、すぐに俺に抱き着いてきた。

「心配したのよ、もう帰ってこないんじゃないかって……。」

「ごめんなさい。俺、……。」

 何から言えばいいんだろう。そんな俺の迷いもお見通しだったのか、母さんは首を横に振る。

「無理に話さなくてもいいの。まだ意識が回復したばかりでいろいろ混乱してるでしょ。ただ、帰ってきたら、一言いうことがあるでしょ。」

 そうだね。

 俺はたった四文字の言葉にすべてを込めた。


「ただいま。」




やっと一区切り,だけどこれだけかけてメインの登場人物はいまだ2人。

次回は3/4です。

今後もよろしくお願いします。

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