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15話

 ストック切れちゃった…継ぎ足すのでしばしお待ち下さい!

「総員伏せろっ! 防御態勢を取れ! 」


 緊迫した声を飛ばしたのは1号、普段ほぼ声を荒らげる事をしない彼が叫ぶ程に状況は切羽詰まっていた。

 ただならぬ様子に困惑しつつ、それでも隊員達が身を低くした瞬間、アーゼムの開いた背から先程まで彼らを襲い続けていた金の糸が大量に溢れ出す。

 その量の凄まじさたるや、糸を出しているアーゼムの姿が見えなくなる程だった。


「おいおい、まさか俺達も巻き添え食うんじゃ無いだろうなぁ…! 」


 次の瞬間、その場に居る者の視界が金色で埋め尽くされた。

 アーゼムが背から出ている糸を無造作に振り回し、全方位に向かって攻撃を仕掛けたのだ。

 防御態勢を取らなかった者、そして伏せなかった者。

 敵を甘く見たのか反応が間に合わなかったのか、ともかく防御を怠った彼らは漏れなく金色の旋風に削り取られ、見るも無惨な姿に変わっていた。


「これは…凄まじいですねぇ、結局私が復活させるので無駄ですがぁ」


 当然のように生き延びていたミアが苦笑いしながら呟き、先程の攻撃で壊された分の核を作って投げる。


(と、言ったものの正直もうマズイですねぇ…攻撃の威力が高すぎて攻撃を受けた範囲の細胞魔道具がすべて壊れる以上、復活にも限度がある。

 それなのに簡単に壊されてしまう物だから魔道具の総量がどんどん目減りしてもう戦闘能力を維持したままでの復活は正直もう3人程度しか在庫が無い…)


 思案しつつ、攻撃というより情報収集の為の射撃を仕掛け、当然のように弾かれる。


(んー、増えたからと言って強度が落ちる訳でなし…いや、寧ろ本来の量がこれだった、と考えるべきでしょうか。

 今までは小さな穴から出していたから出力が絞られていた…とか)


 そうこうしている内にアーゼムは次の行動に出た。

 糸を束ねて巨大な何本かのロープへと変え、鞭のように振るって床の生存者達を叩き潰し始めたのだ。

 無論彼らとて兵士、予備動作が大きい攻撃故に実際トドメを刺された者こそ居ないが、何しろ見かけが恐ろしい。

 それに加えて今までこちらに散々恐怖と損害を与えてきた相手からの攻撃なのだ、その言わば”圧”とでも言うべき物にやられる者も出かねない。


『12号』


「了解! 」


 呼びかけを受けた12号とロープが交錯し、ロープがバラバラの細かな糸になって空に散らばる。

 如何に丈夫な糸と言えど、アーゼムの装甲を泥のように切り裂く”万物破断”相手では流石に分が悪かった。

 12号はそのままロープの群れの中心、繭のようになっている部分に肉薄して一気に突き刺した。


「切った…のか? 」


 12号が当惑し、首を捻る。

 ”万物破断”はあらゆる物体を問答無用で断ち切る剣、どんな物を切ろうが手応えは無い。

 切った感覚が無い、というのは熟練の兵士である12号にとってはあまりに奇怪な物だったのだ。

 当惑しつつも手応えで確認できないのなら、と言わんばかりに12号は突き刺した剣を振るった。

 切り払われた繭が金色の糸となって舞う。


「…っ! ? 」


 次に起こった事象への驚愕の声は、しかしマトモな音にはならなかった。

 他ならぬ12号が切った糸に紛れて近づいていたアーゼムに手刀を叩き込まれ、本人も気づかぬうちに12号は頭から股まで両断されていたからだ。

 まだ機能の生きている目が、何故、と言うようにアーゼムを見据える。

 彼はこう考えていたのだ。

 糸はアーゼムの背から出た物、アーゼムが動くならば糸にもまた動きがある筈だ、と。

 しかし事実、糸にはそのような動きは一切見られなかった、だからこそ彼もまた本体からの攻撃には無警戒だった。

 にも関わらずアーゼムは動いていた、では何故か。

 アーゼムが自身の動きに合わせて糸を動かし、誤魔化していたのか?

 12号が単に糸の動きを掴み損ねたのか?

 どちらも違う、そもそもアーゼムはそんな事にまで気は配っていなかった。

 単に彼は()()()()()()()()()()()()()だけ、それがそういった副次効果を偶然もたらしたのだ。

 この問いの答えは繭の中にこそあった。

 そしてその答えが舞っていた糸の落下と共にその場に居たあらゆる人間に開示される。


「おいおいおい、ありゃ一体なんだよオヤジ! ? 」


「あの野郎、まーだあんなもん隠してたやがったか」


「この姿…王女殿下ですか! 」


 その中にあった物─或いは人と言うべきか─それは金の髪に白い肌、そして夜空の星を思わせる緻密な紋様が入った濃紺の瞳を持った見るからに高貴そうな雰囲気を持った女性だった。

 ソレはどこからどう見ても本物の人間にしか見えなかったが、髪が異様な程に伸びて金の糸に繋がっている─と言うよりかは今まで糸だと思っていた存在が髪だったのだろう─事のみが辛うじて彼女もまた魔道兵である、という事を示している。

 しかしながら肩にある先程の付けられたのであろう切り傷からはどう見ても血液にしか見えない液体が流れ出ており、その様子は正に生物その物である。


「作戦司令、アレは一体…! 」


「類を見ない程…というか世界中の技師の中で最上位の者ですら再現できるかどうかわからない囮用魔道兵(ダミー)…ってとこでしょうねぇ。

 たった今確認しましたが、体構造や鼓動はおろか呼吸まで忠実に人間を模倣しているようでぇす、アレを作る為に一体どれだけの陣を刻めば良いのか見当もつきませんよ。

 それにあの姿! 成人した姿になっているのでわかりにくいですが、王家にのみ受け継がれる瞳の陣…”光輝の天眼”は間違えようが有りません! あれこそ死んだ王女殿下のあったかも知れない未来のお姿でしょう!

 つまりその姿を持った囮用魔道兵を格納しているアレは王女殿下の護衛を任される筈だった運命亡くし確定ですねぇ、楽しくなってきましたよぉ! 」


 襲い来る髪を必死で切り払ってミアを守りながら6号が叫ぶ。


「楽しくなってる場合じゃなくないですか! ? ていうかサラッと王家の秘術が流出したの明らかになってますけど良いんですか! ? 」


「ええまぁ、あの眼は表面に出てる部分よりも眼球内部の未知の部分の方が大事なので厳密には流出したとは言えませんし、大体効果で言えばナナシ氏が独自に編み出した陣の方がよっぽどとんでもない物がありますからね、特に問題ないでしょう」


「現状には問題ありますけどねぇ! どうしますかこれ…というより撤退命令出して下さいよ! 」


「どうするかって…」


 全身を髪で作られた槍に貫かれながら己を守る献身的な部下を眺めながらミアは笑った。


外側(ガワ)でも内側()でも良いんで腕の1本でもちぎって持って帰るに決まってるでしょう? 」

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