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1-4話

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 それでは事件に至った真相を時系列に沿って再現します。


 1日目。アヤミたちはタロウの親族が所有する別荘に来た。予定では、夕方に到着して一泊、翌日に観光をして、再び別荘で一泊、その次の昼前に別荘を出て家に帰る。

 1日目夜。ゲーム中にカエデとサクラが良い雰囲気になる。アヤミは気に入らない様子。

 夜明が近づいたころ、そろそろ寝ようと動きがあった。しかし、異なる動きをする者もあった。

ジロウ「ちょっとついて来てくれないか?話があるんだ」

サクラ「今から?ふわ…明日じゃ駄目?」

ジロウ「そんなに待てない」

サクラ「眠いから早くしてね…」

ジロウ「努力しよう」

 サクラはジロウについて行き、リビングを出た。

セイジ「告白すんじゃね?どうするよ?」

カエデ「どうもしない。覗きに行く気か?」

セイジ「面白そうだろ?」

カエデ「俺はもう寝る」

 セイジは煽るも乗らないカエデに構うのをやめ、廊下に出た。ジローたちの既に姿が見えなくなっていたため、廊下を奥に進み、明かりのついている部屋に入った。うるさいボイラーの音に包まれた中、セイジは奥の部屋の扉を開いた。

セイジ「お前…何を…」

 そこにはジローと、目に涙を浮かべ、怯え切ってなされるがままのサクラがいた。

ジロー「見られたか。仕方ない、どうだお前も?」

セイジ「どうだって…こんな…」

ジロー「なあに、この程度挨拶みたいなもんだ」

 ジローは立ち尽くしているセイジの手を取り、サクラの肌や髪に触れさせた。

ジロー「難しく考えるなよ、案外簡単なことなんだぜ」

セイジ「……」

 その後、用が済んだジローは先に出ていった。

セイジ「…分かっていると思うけど、このことを誰かに言ったら、皆の関係が壊れて迷惑をかけてしまう。秘密にしよう」

サクラ「……」

 サクラは無言で頷いた。

 セイジはサクラを連れて廊下に出た。廊下は静まり帰り、無言の重たい空気が流れた。洗面台に寄った後、セイジはサクラを女性陣の部屋まで送り、自分は男性陣の部屋に戻った。見送りといいつつ、裏切らないか監視の意味合いが強い。


 アヤミは中々寝付けず、浅い眠りで横になっていたが、すすり泣きを聞き、目が覚めた。部屋の隅でサクラが泣いていた。腕には強く掴まれた跡が残っていた。

アヤミ「どうしたの?」

サクラ「アヤミ…」

 サクラは上手く言葉が出ず、たどたどしく話をした。そして、聞いていたアヤミは思った。

アヤミ「(あれ…?自殺に見せかければ排除できるのでは?)」


アヤミ「うんうん、大変だったね。とにかく寝よ。休まないともっと悪くなるよ」

サクラ「目を閉じると怖くなって…。手を握っててくれる?」

アヤミ「それくらい喜んでするよ。そうだ、睡眠薬あげる。時々眠れないから念のために持って来たんだ」

サクラ「ありがとう…」

 サクラは睡眠薬を飲み、アヤミに手を握られながら眠りに就いた。


 アヤミはサクラの頬が眠りに就いたことを確認すると、ロープで輪を作り、サクラの首にかけ、反対側を柱に通し、引っ張って吊り上げた。

 そしてその後、ロープをタンスの取っ手に結び付け、もう一本のロープを柱に括りつけ、サクラの首にかけた。タンスの取っ手からロープを取り外し、自重で下がったサクラはもう一本のロープに吊られる形となった。これにより、自殺に見えるようになった。

 アヤミは最初に使ったロープを巻いて片付け、布団に入って眠りに就いた。


 翌朝、アヤミが目を覚ますと、レイカはまだ寝ていた。

 アヤミはレイカを起こした。

アヤミ「レイカ、落ち着いて聞いて。びっくりして大きな声を出さないようにね」

レイカ「?」

 レイカは言われるがまま、アヤミの真似をして手を口元に置いた。

 そして首吊り死体を目の当たりにして凍り付いた。

レイカ「え…、ドッキリでしょ?ねえ?まさか急にこんなこと…」

 レイカはサクラに近づき、腕に触れると、冷たくなり、力なく垂れた腕だと分かり、状況を理解した。

レイカ「ひ…」

アヤミ「静かに…。騒ぎになったらダメ」

レイカ「どうして?すぐに通報を…」

アヤミ「犯人を炙り出すため。追い詰めた誰かがいる…、そいつに復讐を…」

レイカ「それは警察に任せ…」

アヤミ「それじゃ、苦しみを味わわせられないじゃない。安全な牢の中でぬくぬくと暮らさせやしない」

 レイカはアヤミに気圧されて座り込んだ。死体が視界に入るのも憚られ、壁に目を向けた。

レイカ「アヤミ、馬鹿なことはしないでね」

アヤミ「……。邪魔はしないでね」


 その後、男性陣もサクラの死体を見ることとなった。その様子をアヤミは見て、サクラを泣かせた犯人への目星をつけた。

 緊張状態からまともな判断ができない彼らは、通報より先にとにかくここから出ることに注力した。彼らは片付けて出ることにした。


 アヤミはボイラー室に行くと部屋の前で考え事をしているジローを見つけた。

アヤミ「ジロー、こんなところに来てどうしたの?」

ジロー「ああ、いや、なんでもない。タロウに言って電源落としてもらわないとな」

アヤミ「ふーん、それよりちょっといいかな?この奥で」

ジロー「何だ?後じゃだめか?」

アヤミ「いいからいいから、聞きたいことがあってさ。サクラのことで」

 ジローは眉を顰め、アヤミは我関せず扉を開けて部屋に入っていった。ジローは少し悩んだ後、部屋に入った。

アヤミ「サクラに乱暴したでしょ?」

ジロー「どうしてそう思う?」

アヤミ「聞いたから」

ジロー「黙っていてもらおうか。じゃなきゃ酷い目に逢うことになる。たとえ引っ越そうが見つけ出してやる」

アヤミ「そういう人だったかあ…」

ジロー「悪いな。誤解させて」

 ジローはアヤミの肩を掴んだ。アヤミは腕を離させようと体を揺すったり手でのけようとするが、その筋力差ではびくともしない。アヤミは徐々に体の内側から恐怖と焦りが噴き出してきた。

アヤミ「離せっ、この…」

ジロー「約束したら離してやる。誰にも言わないとな」

アヤミ「……」

 アヤミは目線をジローの後ろに向け、ジローが振り向いた一瞬の隙をついて、ポケットから催涙スプレーを取り出し、ジローに吹きかけた。

ジロー「ぐわあっ」

 ジローは目を閉じて手を離し、膝をついて地面に転がって悶えた。アヤミは近くの鉄パイプを手に取り、ジローの後頭部めがけて叩きつけた。何度も叩くと、血が垂れだし、ジローはピクピクとして動かなくなった。

 アヤミはしゃがんでジローの服の裾を掴み、パイプの指紋をぬぐい取って、血の海に投げ捨てた。

 そして部屋を出て、手の震えを抑えながら女性陣の部屋に戻り、使用済みの催涙スプレーを袋に入れ、新品を取り出してポシェットに入れた。


 その後、タロウたちは戻ってこないジローを探すこととなった。

 その際にアヤミはセイジとタロウが建物の外で言い争いをしていたのを目撃した。先に殴りかかったのはタロウだった。セイジは一発殴られ、二撃目を食らう前に手で攻撃を止めた。悪いことをしたと認めてはいるが、今は争っている場合じゃないとタロウに伝えていた。しかし、加害者のため説得力は無く、タロウもまた冷静ではなかったため、止まらなかった。

 タロウが再び殴りかかると、セイジはタロウの腕の掴んで捻りつつ、肩で背中を押さえつけた。

タロウ「つっ…」

 タロウは腕を抜こうと前にしゃがみながら進み、セイジはさらに下に向けて体を押し、タロウはついに膝をついて片手で地面を叩いた。

セイジ「よせ、昔からお前と喧嘩して俺が負けたことはない」

タロウ「……」

 タロウは力を抜き、セイジはそれを肌で感じ取って手を離した。タロウは扉を開けて建物の中へと入っていった。

 セイジは溜息をついて空を見上げていると、扉が開く音を聞き、振り返った。そこにはアヤミがいた。

セイジ「アヤミか…」

アヤミ「その頬どうしたの?」

 もちろん知っている。

セイジ「ん?ああ、ちょっとあってな。はあ…」

アヤミ「ちょっと気になることがあって」

セイジ「どうした?」

アヤミ「窓から外を見たら人影が向こうに行くのが見えたんだよね。もしかしたらジローかも」

セイジ「何?本当か?」

 セイジは靴紐を締め直し始めた。

アヤミ「車出すから、それで行こう」

 アヤミは車のキーを見せ、開錠した。車のランプが光り、それを知らせた。

セイジ「分かった。運転頼んでいいか?」

アヤミ「もちろん。周りをよく探してね」

 2人は車に乗り、車道へと出た。

 アヤミは崖の前で車を止めた。

セイジ「どうした?」

アヤミ「もしかしたらここから…」

セイジ「馬鹿なこと言うな!」

アヤミ「じゃあ確かめてよ」

 セイジはイラつきながらも車を降り、ガードレールを超えて、崖に近づいた。アヤミは電源コードを車に巻きつけ、それを掴みながら崖に向かった。

 セイジが膝をついて崖の下を見るも、そこには何の変哲もなかった。

セイジ「ほらみろ、何もない。誰もいないぞ」

アヤミ「なんだ、良かった」

 アヤミはセイジの足を蹴り、反射的に前に動いたセイジはそのまま下へと落下していった。アヤミは崖に近づいて下を見ると、セイジが地面に打ち付けられて絶命したのを確認し、車に戻って電源コードをしまい、運転して屋敷へと戻った。

 停車後、車の熱気で地面が温められ、一部が溶けていた。

 アヤミは建物の外を探しているフリをして屋内に戻ってきた。


 そして、新たな殺意も生まれた。アヤミはレイカがカエデの胸の中に飛び込む様子を見たのだ。

アヤミ「(レイカもか…、残念…)」

 アヤミは着替えて顔を隠し、廊下にクリップを撒き、通りかかるカエデを待った。

カエデ「誰だお前は?」

アヤミ「(何だ、分からないの?サクラやレイカなら分かったのかな?でもそれならそれで予定通り。後の捜査を惑わせるための証言として…)」

 アヤミは声色を変え、トーンを落として低く響く声を出し始めた。

アヤミ「私は虐殺の魔女…」

 喋っているうちに恥ずかしくなったが、それ以上喋る余裕は無くなった。カエデが向かってきたためだ。カエデがクリップを踏んで足を止め、下を向いた隙にアヤミは逃げて女性陣の部屋に入り、着替え始めた。

 カエデが廊下を走り、玄関で周囲を見渡し、扉を開けて外を探し始めた。

 その頃、アヤミは着替え終わり、レイカを探してリビングに入り、早速1人でいるところを見つけた。


レイカ「!なんだ、アヤミか…」

アヤミ「そんなにビクビクしてたら疲れちゃうよ。大事な時に疲れて動けなくなっちゃう」

レイカ「そうね、ちょっと落ち着かないと…」

 レイカは息を大きく吐き、大きく吸い、ソファに腰掛けた。

 アヤミは流し台に行き、蛇口を捻った。音を聞いて振り向いたレイカはアヤミがコップに水を注ぎ、飲む様子を見て納得し、前を向き直した。

 アヤミは包丁を流し台の下から取り出し、背中側のベルトに刺してレイカに近づいていった。

アヤミ「レイカ…、ちょっと耳貸して」

 アヤミはレイカに手を差し出し、レイカの手を引いて立ち上がらせたあと、後ろに回り、耳元で囁いた。

アヤミ「サクラを追い込んだ犯人だけど…」

レイカ「……」

 レイカは黙って待っていたが、アヤミは黙ってしまい、レイカは肩の力を抜いて振り返ろうとした。

レイカ「どうし…」

 その瞬間、アヤミは包丁でレイカの首を裂いた。レイカは首から血を噴き出し、ふらふらと力が抜けながら地面に倒れた。アヤミは袖で顔にかかった血をぬぐった後、包丁を血だまりの上に置いた。前髪の髪先から血が滴り落ち、血だまりに波紋を作った。

アヤミ「(こうもあっさりと…簡単なことだったんだね…)」


 その後、アヤミは第一発見者を装い、タロウとカエデと合流し、シャワーで血を落とし、着替えて荷物をまとめ、2人と共に建物を出た。アヤミは自分の車に乗り、2人の車の後ろについて町へと降りて来た。

 その途中で、使用済みの催涙スプレーと袋を、町に着いた時に寄った駅のごみ箱に捨てた。


 そして警察署で証言を終え、幕は閉じる。


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『おめでとう!推理は正解!』

『おめでとう。最後の犯行は露骨すぎたかしら?まあ、それも物語の華よ』

「あの戦いの描写…、車を動かして温まったのは、エネルギー弾の衝突として、転落死していたのは、空中戦からの落下として表したのか…。そもそも戦いにすらなってなかったのに…」

『証言と証拠から再現した物語という形を取っているからできるわ。その証言に反論できる目撃者は、証言時に生きていないのだから』

「ちなみに証拠と矛盾する証言があったらどうなるんだ?」

『証拠が優先され、証言は嘘をついているか、勘違いしているかのように描写されるわ』

「では証言と証言が矛盾したら?」

『例えばどんなのー?』

「例えば、同じ物を見てある人は赤色と言って、もう一人は青色と言ったら?」

『色々なパターンの描写があるよ。時間で色が移り変わったり、その人にはそう見えていたり、矛盾が生じないように整合されて描写されるんだよ』

『その矛盾を無くすために魔法の力なんてのもあるわね。フフ…』

「なるほど…」

 そういう風にできるのか。なんでもあり…いや証拠と矛盾しない範囲だから限られるのか?

「楽しめたよ。また今度」

『またの来訪を待っているわ』

『また来てね』


 サイトを出て電源を切り、ベッドに横になった。

 次はどの物語に取り組むとしようか。

色々あってだいぶ間が空いてしまいましたが、とりあえずこれで一区切りです。

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