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1-3話

「なるほど。分かったぞ」

『それじゃあ説明をお願いするわ』

『まず何から?犯人、犯行方法、犯行動機?』

「犯行方法から行こう」

『犯行方法ね。それで、誰の殺害から?』

「サクラから」

『サクラ…と、ではどうぞ』

「首吊りによる絞殺死。犯人が寝ているサクラを吊り上げて殺害」

『死亡時刻は?』

「厳密には分からないが深夜だ。2日目の午前中に彼女は場を長時間離れていない」

『それなら同室のアヤミやレイカは気づいていたはずだけど?』

「気づいていた。黙っておくようにすればいい。怪しまれるから黙っていようとか、自殺に追い込んだ犯人を炙り出すまで黙っていようとか。そしてレイカは物語終了時に生存していない。女部屋についての証言はアヤミだけになる。尤も、嘘をつくなら生存者であるタロウやカエデに話したことや、メッセージアプリの履歴などは残るため、矛盾はしないように最低限の嘘とするが」

『証拠は?』

「柱にあった凹みがもう1本の縄の存在を示している。そして、タンスの取っ手の曲がりは、荷下ろしロープのフックをかけ、引っ張られたことによるものだ。取ってが曲がったのも、負荷がかかり形が変形したためだ」

『問題は、柱の跡がいつできたものかと、タンスの変形がいつできたものか』

『できたのが今回とは限らないということだよ。もしそうなら証拠にならない』

「順に行こう。柱については、今回できたものだ。埃の中に跡が出来ている。タンスの方は、初日の夜の彼女たちの写真の中に、変形していないタンスが映っている。つまり、これよりも後に変形したことになる」

『そうだね。はっきりしている』

『ふむふむ。これで説明がつくね』

『それじゃあ、次いきましょうか。次は誰?』

「ジロー」

『了解、それじゃあどうぞ』

「犯人により撲殺され、失血死。場所はボイラー室奥で、凶器は現場にあった鉄棒。時刻は2日目、13時から14時の間」

『ジローは頭部が潰れていた。ジローは高身長で他の誰かが届くかな』

『それに他の人はジローの筋力に敵わない。すぐに取り押さえられるよ』

「催涙スプレーを使用し、地面でうずくまっているところを撲殺した」

『凶器については見ての通りとして、催涙スプレーの証拠は?』

「空になれば、使われたことを証明される」

『スプレー缶は物語に出てきていないよ』

「それと分かるデザインではないのだろう。外見は口紅とか除菌スプレーとか」

『それならありうるわね。しかし、本物とも限られれる』

「犯人は新品と使い終わったものを区別するだろう。いや、仮に使い終わってなくとも、不十分でいざというときに使えないもののよりも新品を携帯するかもしれない。いずれにせよ、同じ形のものを複数持っているのなら、区別するために別の袋に入れるし、使った際に外側に中身が付着したかもしれないので、袋を分けて入れる」

『瞼の裏に唐辛子が付いたりでもすれば大変だものね』

『想像したくないわ』

「だから犯人は使い終わった催涙スプレーをビニール袋に入れていた。その袋はタロウもカエデも目撃している。使用された痕跡だ」

『空のスプレーが最初からあった可能性もあるよ』

「不自然だが、可能性は0ではないか…」

『出発前から空のスプレーを持っていたというわけではなくとも、そういう袋に分けて入れていた可能性がある。ズボラで片付けずに入れっぱなし。つまり、使用の有無に関係なくなる』

「では、その袋が1日目には無かったことを証明する。それにより、最初から持っていた可能性は消える」

『ではその証明とは?』

「使われた袋は朝食用の紙皿が入っていた袋だ」

『その根拠は?同型のものはありふれているけど?』

「紙皿を入れた袋には皿と書かれていた。この場に無い青いペンで書かれていたため、偽装は不可能だ。同一のものと証明できる」

『なるほどね』

『終盤にその袋の持ち主もいたわね』

「これでジローについての説明は十分か?」

『そうね。次に行きましょう』

「セイジ。話は単純だ」

『ではどうぞ』

「タロウとセイジが喧嘩をし、セイジが外に出ていたままだった。犯人がセイジを騙して崖に連れていき、そこから落とした」

『一人で落ちたのではなく、突き落とされたという証拠は?』

『それに、崖まで建物から離れているよ。どうやってそこまで?』

「まずはそこにどうやって行ったかから。車で連れて行った」

『車が無くなり、2人が消えて、1人が戻ってきたら疑われるでしょう?そんなことする?』

「前提が間違っている。2人いなくても気づかれず、1人戻ってきても気づかれない状況だ。全員散り散りでジローを探していたのだから。そして屋敷内のジロー探しに意識が向いているため、外にある車の有無は記憶に残らない」

『ありえなくはないけどね』

『記憶というのは曖昧なものよ』

「手順としてはこうだ。犯人がセイジを呼んで車に乗せ、崖の前で降ろす。そして下を探してる間に突き落とす。この際、犯人は落ちないように車に結んだ電線を使っている。電線に付着した排ガスの汚れが車に結ばれた証拠だ」

『ただし、その時に付着したとは限らないわ。以前からあった可能性もある』

「可能性は低いな。アヤミが新しくできたのだと驚いている。もう一つある。電源コードの巻き方だ。事件後のはよじれていた。電源コードは形状が残りやすく、巻き方が最初と違ったため起きた」

『では最初はどんな巻き方だった?』

「それは分からない。しかし、確実なことがある。巻き方が変わったということだ。元の巻き方ができなかったとも言える。普通の巻き方…Aと8の字巻き…Bと2種類で考えた場合、前後での組み方はAA、BB、AB、BAの4通り。このうち、同じ巻き方はしていないため、残るのはABとBA。普通の巻き方ができる人がわざわざ別の巻き方をして、疑われるようなことはしない。よって、BA…すなわち、最初は8の字巻き、次に通常の巻き方だ」

『できないのは誰?』

「ゲームのコントローラーでみんなやっている。知らない可能性があるのはアヤミ、ジロー、セイジの3人だ」

『確かにそうね』

「それともう1つ。車が温まっていた描写がある。タロウとセイジが空中戦をしていたのは証言による嘘描写で、車が温まったのは証拠による真実の描写」

『そうね。地面の解けた霜などから温められていたのは捜査で分かった事実よ。温められた時期が分からないから、証言と合わせて再現するとああなったわ』

『じゃ、最後は』

「レイカ」

『どうぞ』

「犯人に刺殺され死亡。凶器は包丁」

『自殺ではなく他殺?』

「そうだ」

『ではその証拠は?』

「壁には血があまり飛散していない部分があった。遮られたのだ、背後に立つ人によって」

『では返り血を浴びた人がいると?その血はどうしたの?』

「ほぼそのままだ。第一発見者を装い、血まみれでもおかしくないようにした」

『証拠は?』

「顔への血の付き方に違いがある。発見者であれば血だまりから跳ねた血や、血の付いた手で顔に触れたことで血がつくことがある。しかし、殺人者であれば噴き出した血が顔や髪に大量につく。カエデとの血の付き方は前者であり、逆に言えば、後者の血の付き方をしているのが犯人だ」

『なるほど。説明可能ね』

『手順はどのように?』

「声が出せないようにして首を切った。背後から片手で口を覆い、もう片方の手で首を切った。声が出せなくなるまで抑えている必要がある。首の左が切られたということは、背後にいる人は左肩に多くの血がかかっているということ」

『なるほどね』

『方法は分かったわ。では次は?』

「犯人。もう半分言っているようなものだが」

『それではどうぞ』r

「犯人はアヤミ。4人とも殺害している」

『他の人にはできないと?』

「まずサクラについてだが、女性陣の部屋で起きた事件で、しかもレイカに口止めしている。部屋の外部の人ではありえない」

『どちらか片方だけならともかく、両方揃うならそうね』

「次にジローだが、あの場面なら全員がバラバラで行動しているので誰にでも殺せる可能性がある。しかし、ジローを殺すには催涙スプレーやスタンガンのような弱体化させる必要がある。その形跡があるのはアヤミだけだ」

『まあ、正面からでは無理でしょうね』

「次にセイジ。アヤミの車を出せる人物に限られる。使用されたのはそれだから。すなわち鍵を持っているアヤミだ」

『鍵を借りた様子もないしね』

「最後にレイカ。先述の通りだ。アヤミの体への返り血の付き方が全て」

『分かったわ。それじゃ最後に動機を』

『確たる証拠は要らないよ。それを伺わせる根拠があればね』

「サクラとレイカ、ジロー、セイジの3組でそれぞれ動機が異なる。ジローは計画実行には危険だったから、早めに排除した。セイジは生かしておくとジローを早く発見しかねないため、始末した。サクラとレイカに関しては、狙っていた男を取られそうに思ったのだ」

『ふむ、確かにそうね』

『それでは最後。アヤミを犯人とする場合、彼女の証言の嘘は犯行の隠蔽として説明できる。では、タロウとカエデの証言に嘘は無かったのか』

『例えば、タロウとレイジの戦いは、基本ルールから逸脱しているよ』

「彼が嘘をついた理由は、激しい喧嘩であったことを伝えるあまり、描写が過剰になったと説明できる。結果的に嘘になったのだ」

『他に嘘は?』

「無いか、あっても事件の本筋には影響しない」

『ではカエデの方は?彼は魔女を見ている』

「木を隠すのなら森の中ということだ」

『説明が足りないわ』

「彼女は魔女を見ていない。あれは人間だ。魔法らしきものは何も使っていない。人間が魔女の恰好をして歩いただけのことだ」

『なるほどね』

『その人間の正体は?』

「消去法でアヤミしかいない。証拠品の服や仮面はこの物語の描写からは見つけられない」

『消去法ねえ…まあいいけど』

『でも説明はできてるね』

「他の嘘は見つけられない。あったとしても、タロウ同様に本筋に影響はない」

『これで聞くべきことは全て聞いたわ』

『他に言っておくことはある?』

「必要なことは言った」

『答えをアンロックしたわ。再生を始めたければクリックして』

『ではどうぞ』

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