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おっさんはやはり俺らの前に来た。
「嬢ちゃん、受付嬢やんねぇか?」
「はい?」
「いや、だから、受付嬢やんねぇか?」
「俺、今日この街に来たばかりで市民権すら持ってないんですけど。」
「大丈夫だ!俺が作る!」
「それならいいですよ。」
この話に乗ってしまえば当初の目的にそうからな。
「そうか!なら…」
「ギルドマスター!何やってるんですか!?」
「この嬢ちゃんを受付嬢にしようと思ってなぁ。」
「何を勝手なことを、今やっと冒険者登録が終わったんですよ!」
ワイワイ、ガヤガヤと受付嬢とおっさんが話している。
「リュウ、あれがギルドマスターなのか?」
「定番だろ。」
「えぇ~。」
「まぁ、当初の目的が達成できるからいいだろ。」
「そうだな。」
暫くすると…
「申し訳ございませんでした。」
「すまんかった!」
「ギルドマスター!」
「…誠に申し訳ございませんでした。」
受付嬢がギルドマスターの頭を叩き下げさせている。…シュールだな。
「いえいえ、市民権を作って貰えるし、受付嬢になれるので良いですよ。」
「そう言ってもらえると、ありがたいです。」
「そういえば、そのおっさんはギルドマスターなんだよな?」
「ちょ!リュウ、礼儀!」
「嬢ちゃん、俺は気にしねぇから良いぞ。
で、なんだ?」
「ランクアップ試験を今すぐにしたい。」
「できるが、Cランクまでだぞ?」
「あぁ、それでもだ。」
「そうか、なら訓練所に行くぞ。」
二人はさっさと決めて訓練所に向かっていく。
「はぁ、アオイさん、行きましょうか。」
「そうですね。」
訓練所に着くと二人はすでに向き合っていた。
ギャラリーはそこまでいなかったが、いる人たちは興味津々だった。
「このコインが落ちたら開始な。」
「わかった。」
コインが落ちたとたんリュウは動き始めた。
『付与《風の精霊》』
その言葉と共に一気に加速し、刀を抜き去りギルドマスターの首に刃をかける。
ガギンッ!
しかし、ギルドマスターの剣によって受け止められた。リュウは瞬時に飛び去る。
「やるなぁ。」
「俺の方こそあれを受け止められるとは思わなかった。」
「なら、次は俺から行くぜぇ!」
ギルドマスターは一気に踏み込み大剣を叩き下ろす。
リュウは軽やかに避け、今度こそギルドマスターの首に刃をかけた。
「俺の勝ちだな。」
「参った!」
二人はすぐさま剣を下ろすと、肩をお互いに叩き始める。
「リュウっつったけ?」
「そうだ。」
「リュウ、Cランクじゃなくて、Bランクにしてやる!」
「それは嬉しいな。」
「ちょっと待ってください!ギルドマスター!」
「おおう?」
「Cランクまでの筈ですよ!
Bランクは礼儀ができないと!」
「今、試験をやれば良いじゃねぇか。」
「それはそうですけど。」
「なら、決まりな。ギルドマスター室でやるぞ。」
そう言って、ギルドマスター室に一人で向かってく。
「やったぜ!アオイ、最初からBランクだってよ。」
「俺にはお前らのノリが分からないんだが。」
「えぇ、結構単純だぞ?」
「まぁ、いい。取り敢えず、礼儀試験頑張れ。」
「おう!」