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狼が鳴くような声が周りから聞こえてきた。
「そういえば、マンモス片付けてなかったな。」
「…忘れてた。葵、今すぐ回収出来るか?」
「今からやるから待って。その間狼?を近づけさせないでね。」
「了解。」
『時空の扉を開く 開いた先は時止めの間 《時の間》』
仕舞うものを指定するとマンモスは消え去った。
「葵、もう近くまで来てるぞ。どうする?」
「ちょうどいいから、血魔法を見せるよ。」
俺はそう言うと、自分の指先を傷つける。
すぐに血が出てくるがそれはすぐに剣になった。
『切り裂け』
その一言で真っ赤な血の剣は見えてきた狼の群れに向かって飛んでいった。
紅い花が咲くように弾け飛ぶ。
狼の血は剣になり、まだいた狼に向かっていく。
また、紅い花が咲く。
「うっわ~。」
隣で琉斗が感心したような、引いたようなそんな感じの声を出している。
「だから嫌だったんだよ。…グロいし。」
「でも凄いな。」
「そうか?でも…血を操るわけだし…。」
「でも、大切なものを守る力になるだろ。」
「そっか。」
俺は琉斗の言葉が嬉しかった。
血を操ることで軽蔑されなくて。
「なぁ~に、不安そうな顔をしてんだ?」
そう言って、琉斗は頭に手をのせてくる。
「別に…。それより、頭に手を乗せるな!」
「お、もとに戻ったな。
さっきの失敗を繰り返さないように、さっさと回収しようぜ。」
そう言ってさっさと歩いていく。
「…ありがと。」
「?何か言ったか?」
「何でも!
そう言えば、さすが、魔法特化型の種族。
一回使った魔法は詠唱無しで使えるっぽいな。」
「何それ!羨ま!」
歩きながら、魔法を使い狼を回収する。
「そろそろ、街へ向かうか。」
「そうだな。
琉斗、俺街にいるときは人間に偽装するから。」
「なんでだ?…あ、そっか狙われるもんな。」
「そうなんだよ。それも、吸血鬼の皇族とわかったらさらに大変なことになる。」
「じゃあ、その間は能力はあんまり使えないんだよな?」
「うん。人間の魔力って吸血姫の百分の一だからなぁ。」
「まじか。」
「まじ。」
「そっか~。どう生活するかな?」
「それな。冒険者になるなら実力を咄嗟に出しちゃいそうだからな。」
「あ!ギルドの受付嬢やれば?」
「外から来てすぐに出来ると思うか?」
「…無理そうだな。」
「だろ?」
「しょうがない、街に入ったら考えるか。」
「現実逃避か。まぁ、それが一番いいな。」
少しの間、黙って歩いていると、唐突に琉斗が顔を向けてきた。
「葵、これから俺のことをリュウって呼んでくれ。」
「なんでだよ!?」
「いや、俺の名前さこの世界だと少しずれてるんだよな。」
「…確かに。
俺は葵をカタカナにすればいいもんな。」
「そうなんだよ、だから、少し直そうと思って。」
「まぁ、わかった。これから、リュウって呼べばいいんだな?」
「おう!
俺もアオイって呼ぶからさ。」
「俺の名前をカタカナにしたってあんま交わんねぇぞ。」
「それでもだよ。雰囲気ってもんがあるだろ。
それに、楽しまなきゃ損だぞ!」
「それもそうだな。」
俺たちはそんな馬鹿話をしながら歩き続ける。
…しかしな、遠い。
管理者、街から一番近いって言ってなかったけ?