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朝、目を覚ますと目の前に男の胸があった。
抱き締められて動けないので上を見るとリュウの顔があった。
顔が近い!
…でも、こんな無防備な顔を見るのは初めてだな。
「ん、アオイ、起きたか?」
ヤバい寝起きの色気と言う感じのものがあった。
「リュウ!離せ!」
「えぇ~、アオイからこの布団に入ってきたのに?」
「なっ!まじで…?」
「まじ。」
「…取り敢えず、俺を離せ!」
「しょうがない。ほい。」
近くにあったリュウの温もりが消えていくのは少し寂しく思ったが、リュウが近くにいなくなって安心した。
…心臓に悪い。
モソモソと布団から起き上がる。
「なっ!ちょっ!バカ!」
リュウが焦ったように叫ぶ。それも、顔を背けて。
「何なんだ?リュウ。」
「…自分の格好を見てみろ。」
目線を下に落とすと……………………、
片方の肩から浴衣がずり落ちあわれもない格好をしていた。
「うわっ!」
急いで襟をしめる。
「…アオイ、取り敢えず風呂場で着替えてこい。」
「…分かった。」
急いで風呂場にはいる。
ちゃんと着替えも《時の間》のなかに入っていた。
「これは、どう着替えるべきなのか。」
出してみると、帯やら着るのが大変そうな服の数々だった。
「…そういえば、もらった知識には魔法が作れるってあったな。
やってみるか。」
えーと、想像して想像して。
こんな感じか?
『我に 服を纏わせよ《着衣》』
……出来たけど…ダサっ!
まぁ、いいや。
リュウのもとに戻ると既に着替え終わっていた。
「相変わらずの袴だな。」
「少しデザインが違うぞ。
それに、アオイもだろう。」
「確かにな。」
軽口を言い合いながら、宿のご飯を食べに行く。
「意外に旨いな。」
「それな。」
味は日本と変わらなかったが、米がなかった。
…米が食べたい!
食べ終わると、ギルドに向かう。
「じゃあな。終わりはいつ頃だ?」
「大体、7時くらいかな?」
「分かった、迎えに行くから待ってろよ。」
「迎えなんて要らねぇよ。」
そう言うと、リュウは、はぁとため息をつく。
「自覚なしか…。」
「自覚?何をだ?」
「分かった、自覚してないな。
俺が迎えに行く。だから、待ってろ。」
何か納得行かないが、しょうがない。
こんな真剣な目をするリュウは頑固だからな。
「分かった、待ってる。」
俺がそう言うと笑みを浮かべた。
何が嬉しいんだか?
「それでいい。
じゃあ、頑張れよ!」
「おう!リュウもがんばれ!」
周りからの目が生暖かい気もするが、気のせいだ。………………気のせいのはずだ!