TS転移しまして吸血鬼
帰り道、俺は幼なじみの西園寺 琉斗歩いている。
まぁ、いつものことだから代わり映えしない。
「葵、いつものゲームセンターでいいか?」
「うん、でも、何するんだ?」
俺の名前は立花 葵。
女っぽいが男だ。
しかも、何の因果か知らないが、容姿も女の子っぽい、中性的な感じだ。
「格闘ゲームだろ。」
「琉斗が勝って終わるだろ。」
「そうか?」
「そうなんだよ!今までもそうだろ。」
交差点で止まりながら、いつも通り駄弁る。
そんな日常がいつも続いていくものだと俺は思っていた。
キィィィィッ!
そんな音を立てながら俺たちに向かってくる物体があった。
気づいたときには既に時遅し。
ドンッ!
と、俺たちは車に引き飛ばされた。
…熱い熱い熱い!!
…あれ?寒くなってきた。あぁ…、これは死んだか?
はっ!
目を開けると真っ白だった。
「何処だし、ここ。」
「それな。本当何処だよって感じだよな。」
周りを見回しても、ただ真っ白な空間が広がっているだけだった。
…ん?
「琉斗!生きてたのか!?」
「さぁ?でも、あの場で生き残れたら奇跡だよな。」
なんて、のんびりな声に少し涙が出る。
声の聞こえる方向を見てみると琉斗がいた。
…何か違和感が…。…あ!
「でかくなってるのか?」
「いや、俺は変わってないぞ。
変わったのは葵だろ。」
「は?」
「小さくなった上に女の子になってる。」
「え?」
目を下に向けると胸が出てて、手は柔らかそうで、髪が腰くらいまで長かった。
「…はぁ~!」
落ち着きを少し取り戻し、改めて琉斗を見る。
「…頭に角が生えてるな。」
「誰の?」
「琉斗の。それも、二本。」
琉斗は手を頭に持っていき自分の角を触っている。
「ほんとだな。」
「似合ってるぞ。」
実際に、純日本人の顔をしていてイケメンの琉斗にはとてもよくにあっていた。
「色はなんだ?」
「黒だ。」
「黒か。黒って強そうな色だよな。」
「確かに、そういえば、俺はどっか色は変わってるのか?」
「目が赤くなってるぞ」
…は?
「吸血鬼みたいだな。」
本当にな。
シャラン…
唐突にそんなの鈴の鳴る音がした。
女神と呼びたくなるような存在感のある美人がいた。
「初めまして。
私はあなた方がいた世界とは、別の世界を管理する者です。管理者と呼んでください。」
「女神じゃないのか?」
「ええ、地に住むものからは女神と呼ばれていますが、私は世界の意によって生まれただけの存在ですので、管理者といった方が良いでしょう。」
納得できるような出来ないような…。
まぁ、いっか。
「質問いいか?」
「ええ、どうぞ。」
「何で、俺たちはここにいるんだ?」
「それは…、世界と世界を隔てる壁に穴が空いたのでしょう。
ここに来る前に大きな衝撃はありましたか?」
「ああ、あった。」
とてつもなく盛大な、な。
「では、それが原因でたまたま空いた穴に落ちたのでしょう。」
「俺たちはこれからどうすれば良いんだ?」
「お好きなように。
異世界の人々が与える世界への影響は良いものが大半ですし、私は世界の意思で貴方達が私の管理する世界で生きられるように知識を与えに来ただけですから。
既に世界によって体は私の管理する世界に適した体になっています。」
「だったら何で俺は性別が変わったんだ?」
「それについては分かりません。世界の意思、としか言えません。」
「そうか…。」
少し落ち込む。
「大丈夫だろ。可愛いし。」
「そうか?…って、褒められても嬉しくないし!」
「そろそろ、良いですか?」
管理者は微笑ましそうな顔をしてこちらを見てくる。
…恥ずかしい…!
「どうするの?」
「私が貴方たちの額に手を当てるだけです。
全ての基本的な知識を与えることができます。」
「なら、早くやってくれ。」
そう言うと、管理者は俺たちの額に手を当てた。
知識が一気に流れ込んできて頭が狂いそうだ。
「…俺は吸血姫か。琉斗は?」
「俺は…鬼だな。」
TS転移したら吸血姫になりました。
…姫ってなんだよ!