94話:格闘戦が得意
「どうして再生しない!」
切断された腕が再生しないことに驚いた様子を見せるシュトルツ。
「それに何だこの炎は?! 消えないぞ!」
消えない炎を見てそう声を上げるシュトルツ。
それもそうだ。
この炎は、対象を燃やし続ける炎。
燃え続けることから、再生してもすぐに焼かれるのだ。
レイドは焦っている様子のシュトルツへと迫り魔剣を振るおうとした。
その時、シュトルツの口元が笑みで歪んだ。
同時、レイドは咄嗟にその場を飛び退いた。
何故レイドは飛び退いたのか?
「腕が、動いている……?」
そう。切断したはずの邪剣を持つ腕がひとりでに動き出し、レイドを襲ったのだ。
腕がそのままシュトルツの元へと戻りくっついた。
感覚を確かめるようにするシュトルツ。
「どうなっている?」
「気になるか?」
「そりゃあな」
誰だって気になるに決まっていた。
動かないはずの腕が勝手に襲いだし、体の主へと戻ったのだから。
シュトルツは右手に持つ邪剣にて、燃える箇所を斬り落とす。
そして左手が再生した。
「ふむ。これで元通りだ」
嗤うシュトルツ。
レイドはただジッと見ているしかない。
見つめ合う二人は同時に動いた。
激しい剣戟の嵐。
互いに傷つき、シュトルツも斬られた箇所が燃え再生できない。
このまま続ければレイドの勝ちだろう。
だが、そうはいかなかった。
距離を取ったシュトルツが、懐からさらに魔人の血が入った入れ物を取り出した。
「ここまでする気は無かったが、致し方ない」
「……何をする気だ?」
「何って決まっているだろう?」
嗤って自らの首元へと突き刺しその血を全て取り入れた。
ドクンッと大きく脈動する。
そしてすぐに、シュトルツから「ガァァァァァァァッ」という、先ほど以上の悲鳴じみた絶叫が響き渡り、ドス黒い魔力がシュトルツを覆った。
球体となり徐々に肥大していく。
しばらくしてその球体が霧散して消えた。
現れたのは、もはやシュトルツの原型をとどめてはいない、化け物であった。
シュトルツだった者は口を開いた。
「コロ、ス……全テヲ破壊シ、全テヲコロシ尽クス」
言葉も片言。本人であるシュトルツの意識も、魔人に乗っ取られている。
「シュトルツ。お前は人間を辞めたのか……」
ここまで来ると、流石のレイドも復讐する気が失せるというもの。
「全テヲ、滅ボス……!」
地面から棘の様なモノが生え、レイドを突き刺そうと襲って来る。
跳躍し後退しようとすると、今度は胴体から棘の様なモノが伸びて串刺しにしようとする。
それらを切り払い、シュトルツへと迫る。
巨体である為か、背後は簡単に取れた。
そのまま斬り刻もうと魔剣を振るった瞬間――ガンッと硬い何かによって弾かれ、魔剣がレイドの手から離れ、近くの地面へと突き刺さった。
ギロッっとシュトルツの目が背後のレイドへと向けられ――巨腕が体格に似つかわしくない速度にて振るわれ、レイドが吹き飛ばされた。
「ぐぅっ!?」
腕をクロスさせ防ぐもその威力は絶大。
そのまま背後の瓦礫へと叩きつけられた。
「かはっ」
口から出る血を拭い、シュトルツを睨む。
「胴体は硬いのか。それとも魔力で強化されているのか。分からないが、剣がダメならやっぱり――これ、だよな」
そう言ってレイドは拳を握り締め構えた。
そう。レイドは剣を使う戦闘よりも、拳で戦う肉弾戦の方が得意なのだ。
あと3話くらいで決着です。
ちなみに倒した後の展開は考えていない(おい、考えろよ!
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