1話:どうやら聖剣を使わないのは勇者ではないらしい
人類は魔王の軍勢に攻められ窮地に陥っていた。
そんな中、人類から一人の勇者が選定され瞬く間に魔王軍を殲滅していった。
だが、救世主で英雄である勇者は聖剣を抜くことは無かった。
何故か?
それは――聖剣よりも体術、巨大な剣などの方が遥かに強かったからである。
――そして現在。
国王の命令で地下牢の一室に両手を繋がれた黒髪黒目の青年――勇者がいた。
その目の前には複数の人。
「勇者レイド――いや、元勇者と言った方がいいか。貴様は何故、一度抜いた聖剣エヴァンスを再び抜かない?」
血だらけの勇者――レイド・エーアストは答えた。
「そんな物に頼らなくても俺は強い。それはこの戦況で証明されているはずだ。それに勇者に俺を選んだのはお前等だろう? 誰も聖剣を抜かないから俺が抜いた。それだけだ」
「ふんっ、減らず口を。聖剣でなくては魔王を滅ぼすことは出来ない。貴様、知らないのか?」
「知っているさ。それでも俺は聖剣を抜かない」
「……やれ」
一人の大柄な男が長くしなやかなソレ――ムチをレイドへと振るった。
ビュンッという風を切る音がしレイドへと何回も振るわれ皮膚が赤く腫れあがり、次第に血が滲み出て来る。
……
…………
………………
――振るわれること数分。
先程質問してきた男性、ハーゼン王国の大臣が再度問いかけた。
「そこまでされても聖剣を使わないのか? 貴様の仲間も聖剣を抜くことを望んでいるぞ? 抜いたならまた一緒に戦ってやるとも言っていた」
レイドは共に戦った仲間に、友に、国に裏切られたのだ。
その憎悪は誰も計り知れない。
レイドは俯かせていた顔を、大臣を睨みつけるように見上げた。
「何度も言わせるな。俺は聖剣などに興味はないし今後一切使うことは無い。それにこの程度の傷、俺にはダメージがないのも同然だ」
「そうか、やれ。私達はもう行く。しばらく痛めつけてやれ」
「はっ」
そうしてレイドは再び大臣が来るまで拷問を受け続けた。
「どうだ? 少しは己の愚かさを知ったか?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる」
「「レイド貴様っ!!」」
「よせ」
レイドの言葉に激高する付き人だったが大臣はそれを手で制した。
「それをこちらに寄こせ」
拷問をしていた人はギザギザした棍棒のようなモノを大臣へと手渡す。
それを受け取った大臣は口元に笑みが浮かぶが、レイドはふっと嘲笑った。
「……何が可笑しい?」
「さあな。自分で考えてみればいいさ。それで大臣様がそんな物騒な物を持って何をするつもりだ? まあ予想は出来るがな」
「そうか」
大臣は思いっきりレイドへと振るったのだが……
「――ぐぁっ……おいおい、もっと力を込めろよ? そんなじゃ痛くもないぞ?」
「減らず口をっ!」
棍棒はレイドの頭部へと当たり、ガッと鈍い音が鳴り響く。少ししてレイドの頭部から血が流れ落ちた。
血を流したレイドを見て大臣達は笑みを浮かべた。
「まだ温いな」
「――ッ!? お、おい貴様! レイドの爪を一枚一枚剥がしてやれ!」
「はっ。分かりました!」
それから一ヶ月間、レイドへの拷問が続けられた。
レイドは体力的に厳しくなってきていた。食べ物も三日に一度で一週間も何も食べないこともあった。
だが意識はしっかりと保っていた。
そこに大臣が笑みを浮かべながら現れた。
ゆっくりと顔を上げたレイドはそんな大臣へと問いかけた。
「何、か、いいことが、あった、のか……?」
「ふん。貴様の役目はもう終わりだ」
「……そう、か。俺の代わりとなる、勇者が、見つかった、か……」
「察しがいいな。そうだ。聖剣を引き抜いた真の勇者が現れたからな。レイド、貴様はもう解放してやる。剣を使わないのは勇者ではないからな。殺さないだけ感謝してほしいものだ。そこのお前、こいつを追放しろ!」
「はっ! 直ちに!」
レイドは鎖を外され拘束されるように両腕を挟まれ地下牢から連れ出されたのだが、去り際に大臣へと言い放つ。
「後で覚えておけよ。貴様も、この国も、俺の仲間だった者達もだ。絶対に殺してやる」
「ふんっ、貴様に何が出来る。レイド貴様、追放だけで済むとは思わないことだな」
そうしてレイドは追放されるのだった。
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