第13話 幹部会議。もしかしたら追い詰められた者たちの悪あがき。
「……現有戦力で、この面子を相手にできるか?」
「難しいわね!」
地下。
いるのは俺、"逆転趣味者"コーネリア、元犯罪組織幹部3人。
ケーティ様ファンクラブの幹部会議だ。
ああ、名前がひでえ。でも元の名前を名乗る気は、もうないらしい。くそっ。
幹部の1人が、報告を上げてくる。その顔は苦渋に満ちている。
「下部構成員の士気は高いです。しかし、練度が追いついておりません。このレベルの冒険者相手では、嫌がらせにすらなりえないでしょう」
「人海戦術は?」
「確かに相手よりは数に勝ります。ですが元々、一派閥に属する程度の人数ですからね。戦争をするには程遠い」
「"逆転趣味者"様の戦力はどうなんだよ」
「ワタシ? ワタシはその場雇用よ! 深くつながると、ワタシの存在が漏れちゃう!」
「居ねえってことな」
「我々の部下たちも、嘆くほどひどいものではないはずなのですが……」
「ラリーたちが強すぎるんだ。しゃーねえよ」
「ケーティ様直々の御慈悲を賜るとは、この身に余る光栄です!」
「それやめてくんねえかなぁ……」
心酔した目を向けてくる幹部たち。こうしたのは"逆転趣味者"のコーネリアの手腕だ。
"扇動屋"とも言われる能力を存分に発揮し、俺の美少女としての外見に心酔させている。
こいつが動き出す前に、ドロシー・オルスフナー元伯爵令嬢を排除できたのは僥倖だったな……。もしかしたら、この街は消えてたかもしれねえ。
「士気が高いってことは、使い捨てにできるってことでもあるわね!」
「犯罪組織の構成員だから、まー使い捨てもいいんだが……演劇の都合上、グロい展開は御免こうむる」
「ケーティ様の御慈悲に、組織を代表して感謝の意を表します!」
「そういうのいいから」
「ワタシも派手でさっぱりした作戦、初めてだから楽しみよ!」
「血なまぐさいのばっかだもんなアンタの偉業」
「逆に言うと、ワタシは経験ないから作戦思いつかないわよ!」
「俺頼みってことか……」
幹部たちも、何より"逆転趣味者"が期待の目を向けている。俺に何を期待してるんだ? ただの冒険者だぞ。
くそ、だが、やらねばならない。絶対になにかあるはずだ。なにか手が……。
襲撃の連続で相手を疲弊させる作戦は、戦力も練度も足りなくて無理。そうすると、撹乱が限度。
こう考えると、付け焼き刃でいいわけだ。簡易的な魔術を込めた物体を用意するのは、まーできんこたーないわけだし……。
待てよ? この考えを基礎にするなら、ぶっちゃけド素人でもいいわけだな。
そして目的は、街を舞台にして派手に劇を演出し、ドロシー・オルスフナー元伯爵令嬢の影響を上書きすること。完全消去できないなら、その矛先をラリーに向けて終えること。
現実を物語で上書きし、再構成する。
つまり、ラリーとガチでやり合う必要はない。
なら、現状の戦力不足は解決可能な問題となり、同時に素晴らしいメリットともなる。
「"逆転趣味者"さんよ」
「ワタシになにか御用かしら!」
「ご用もご用。うちの信者を手っ取り早く増やす方法、ある?」
「んんー、瞬時洗脳は無理だけど、ちょっとしたことを頼む程度なら、3時間で300人ぐらいやれるわね!」
「すっげえ。さすがは"扇動屋"」
「思いついたみたいね! ワタシもワクワクしてきたわ!」
「ああ、作戦を伝える。この街で、派手な祭りをやってやろうじゃねえか」
その時、ちょうど連絡小石が震えた。ティリスだな、これは。ゆっくりしてておぼつかない。
なになに……。
『スミロくんに捕まっちゃった、てへっ』
ティリスお前ェェー!!!!!
感想、ありがたくご拝読させていただいております。
続きが早めに出せるよう努力して参る所存です。




