表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

前夜祭①

文化祭の準備期間は、あっという間に過ぎ去っていった。

気づけば明日は前夜祭。午前中は出店をする生徒は手順の確認を中心に、演し物を行う生徒は当日の進行に合わせて簡単なリハーサルを行う。


午後からは、模擬店のクラスは実際に営業を行うので、先生達は見回りの練習を、特に予定の生徒は自由に見て回る事となっている。


僕は午前中は特に担当する事もないので、職員室で雑談しながら時間を潰していた。

午前中はつつがなく終わり、益田先生から午後についての簡単な説明があった。


「さて、それでは行きますかね」


僕はそんな掛け声と共に席を立ち、校内の見回りを開始した。


「瓜生先生、見回りが終わったら私のクラスにも遊びに来てくださいね。い〜っぱいサービスしますからね」


時折、受け持ちの生徒からのお誘いを受けるが、曖昧に躱しながら淡々とこなしていく。


「う、瓜生先生!!」


小春ちゃんのクラスの前を通り抜けようとして声をかけられた。もちろん声をかけてきたのは小春ちゃんだ。


「どうしました?名取さ……」


振り返り、僕は固唾を飲んでしまった。そこに居たのはメイドさんの格好をした小春ちゃんだった。


「ど、どうですか!?似合ってますか!?」


「似合ってますよ。名取さんのクラスは執事メイド喫茶でしたね」


「そうです。先生はどうせ来てくれないでしょうけど」


「いや、その……」


「小春ちゃん、瓜生先生に見てもらいたくて廊下をずっとソワソワしながら見てたんですよ」


中山さんが、ニヤニヤしながら教室から出てくる。


「園……それは言わない約束でしょ、もうっ!!」


「別にいいじゃない。せっかく可愛い格好しているのに、見て欲しい人に見てもらえないないなんて寂しいじゃん」


「べ、別に私は瓜生先生に見て欲しいなんて……思って…なぃ……です……」


そういう小春ちゃんの声は勢いを失っていく。


「今の教え子の模擬店には来ないけど、元教え子の方には行く薄情な瓜生先生は……こんな小春ちゃんを見ても心が痛まないのものですかねぇ」


そう言ってニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべる中山さん。僕の負けだな……。

小さな溜息を吐き、彼女達に後で見に来る旨を伝える。

小春ちゃんの表情かおに笑顔が戻ったのを見て僕はその場を後にする。


「小春ちゃん、あれぐらいハッキリ言わないと瓜生先生には伝わらないから。私に感謝してよね!!」


中山さん……まだそんなに離れてないから、しっかり聞こえているよ。

僕はこの借りをどうやって返そうか思考を巡らせる。

そうだ、今度の授業で彼女に問題を解かせる事にしよう。

これぐらいは許されるだろうと納得して見回りを再開した。


約1時間程の見回りを終えて、約束していた鷹野のクラスに向かった。


「あ、瓜生先生。もしかしてウチのクラスの喫茶店に来てくれたんですか?」


「ああ、鷹野にお誘いを受けてね。迷惑じゃなければお邪魔してもいいかな?」


「もちろんですよ、鷹野さん今裏で作業しているので呼んできますね。凄く似合ってるから期待して待ってて下さいね」


中に案内されて席に座る。鷹野のクラスは、和風喫茶と言われるものだった。女子生徒が袴姿で接客をしている。


メニュー表を見ながら時間を潰していると、鷹野がやって来た。


「優先生、来てくれたんですね」


「よぉ、鷹野。約束通り来た……ぞ……」


メニュー表から視線を鷹野の方に移す。袴姿がとても綺麗で思わず口籠もってしまった。

そんな僕の態度にキョトンとした様子で首を傾げる彼女の仕草が面白くて、つい笑みが溢れてしまう。


「私の格好が何かおかしかったでしょうか?」


相変わらず表情を変えず、そんな的外れな質問を投げかけてくる。

いや、違うな。いきなり笑ってしまった僕がいけなかった。


「いや、とても良く似合っているよ。友達からも褒められたんじゃないのか?」


「ええ、まぁ……。クラスメイトからも先生と同じ様に言われました。自分ではよく分かりませんが」


「よく分からないって……鷹野らしいと言えばらしいけど」


「優先生、ご注文はお決まりですか?」


「あぁ、とりあえずコーヒのホットと……何かオススメはあるかい?」


「そうですね……」


メニュー表に視線を落とし、オススメが何かを一生懸命考えている。

そこまで真面目に悩まなくてもいいのだけど、鷹野らしいその仕草に、つい昔を思い出してしまう。


「甘いものは大丈夫ですか?学校の近くの喫茶店から提供していただいたミルクレープがオススメです」


「ならそれを貰おう」


文化祭では生徒の調理が許可されていない。

なので、毎年地域のお店の協力で成り立っている。


「かしこまりました、では少々お待ち下さいませ」


そう言ってバックヤードに向かう彼女の後ろ姿をぼんやりと眺める。

途中クラスメイトから話しかけられ笑みを浮かべる彼女を見て、本当に変わったな……と彼女の変化を嬉しく思うのだった。

久しぶりの投稿となります。かなり長い時間が空いてしまい申し訳ございませんでした。文章の雰囲気が昔と違っていても温かい目で見ていただけると嬉しいです。更新はゆっくりですが、またきちんと続けられる様に頑張りたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] エタったと思ってました。 うれしいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ