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双天の悪魔   作者: Rukuran
8/12

冒険者編 <タランタ> Ⅰ

ブルーダンジョンに挑む事となり、双天の誓いはダンジョンへと潜り始めた。



さらに地下深くではBランク冒険者集団が更なる強さを求めてモンスターに挑んでいた。

「はぁ…はぁ…」


「走れ!止まるな!」


「クソっ!なんでこんなことに!?」


「中に入れ!」


「はぁ…はぁ…」


「な、何とかなったか?」


「分からん。追いつかれるかもしれんからさっさと上に戻ろう。」


グルルルルル


「?!」


ヒタ…ヒタ…


「おい…嘘だろ…?」


「さっき倒したはずじゃ…」


「クソっ!早く逃げるぞ!階段まで走れー!」


「ぎゃぁああああ!」


「クソっ!俺が足止めする!2人とも逃げろ!」


「いや、いやー!」


「はぁ…はぁ…」


「行けー!」


「早く!」


「置いていけないよ!」


「誰か…誰か助けを呼ばなきゃ私達じゃ勝てない!」


「そんなの!」


「早く!他のやつが来ちゃう!」


「無理ー!」


「タランタに妹がいるんでしょ!?生きなきゃだめ!」


「うっ…」


「早く!」


「ごめんなさい…ごめんなさい……」


「はぁ…はぁ…見えた!階段だよ!」


ザシュッ


「え?」


「あ………が………」


「う……そ……」


「に…げ………」


ブシュ


「…………」


グルルルルル


ヒタ…



「………あぁ…私もここまでか…ごめんね…お母さん…お父さん……」


グガァァァアアア






2時間前…



地下三階



「そぉですねー…左!」


俺達は3階層目の分かれ道をどちらに進むか選んでいた。



シリアのチョイスで左に進む。



「お、いきなり扉か。どぉする?」


「行きましょう!」


「よし!」


ガチャ



「あれは…ゴブリン…か?」


見た限りでは見た目はゴブリン。



しかし普通のゴブリンと違い真っ赤な肌と眼をしておりレベルも95。



普通のゴブリンの倍近いレベルを持っている。



「ダンジョンゴブリンだね。普通のゴブリンよりかなり手強いから気をつけてね。」


「初めて見ますね。分かりました。」


「行きましょう!」


部屋に入ると奥からゾロゾロと現れ、全部で20匹程のダンジョンゴブリンが現れる。



「青い床に目が慣れてるから異様に赤く見えるな。」


「目に悪い感じの色彩だね。」


そんな話をしていると戦闘が始まる。



普通のゴブリンよりも素早く力強い。



手に持つのは棍棒やショートソードなど普通のゴブリンと変わらない。



とはいえこのレベル帯ならダジの盾を貫く事は出来ないだろう。



少しずつダンジョンゴブリンの数が減っていく。



残り10体となった所で()()()()()一体がライルに向かって天井から攻撃を仕掛ける。



もちろんライルは気づいているが避けようとはしない。



即座にカヤリスが反応して空中で眉間に小刀を根元まで差し込む。



「き…き…貴様らーーーー!!!!」


「あろう事か我らが主を攻撃しようとするとは…」


「ただの死で終わると思うなよ…」


やべぇ。マジやべぇ…



この人達超こえぇ。



だってモンスターのゴブリンさんビビって後ずさってるんだよ?正面から見たらきっと鬼の形相よ、あれ。



俺怖すぎて見れない。



だって、上空のゴブリン片したカヤリスの笑顔がめっちゃ怖いんだもん。



そこからは地獄絵図。



今までのクリーンな戦いはどこへ行ってしまったのか…



結局血みどろになるまで怒りが収まらなかったよ。



この辺りのドロップアイテムはあまり珍しい物も手に入らない。



スッキリした顔のこの人たちの血を魔法で払ってやって先に進む。



分かれ道がいくつかあったけどそれから階段までの間は何も出てこなかった。



きっと出てこれなかったんだと思う。



俺なら出ないもん。



第4階層



「んー。ではこっちに行きましょう!」


順番に行き先を決める事がいつの間にかルールになっていた。



「扉ですね。」


「入ってみよー。」


ガチャ



中に入ると生臭い臭いがする。



魚のような臭いが部屋に充満している。



そして目に入ったのは二足歩行、人と同じサイズのトカゲ。



リザードマン。



緑色の体を持ち、目は青色。



Dランクのモンスターで水辺に生息し群れを作るモンスター。



手や足には水かきがあり水辺での戦闘ではその強さを発揮する。



レベルは100。



知能は高くないため武器を使ってくる事は無い。



手足の鋭い爪と牙が武器だ。



水もないダンジョン内では本領を発揮出来ない気がするが何故こんな所にリザードマンがいるのだろう。



ここもモンスターハウスでは無かったようで計10体のリザードマンが現れる。



「リザードマンの弱点は火魔法よ!」


「分かってるわ!」


シリアやサーシャの得意とする水系統の魔法はリザードマンには効果が薄い。



元々エラ呼吸出来る生態で、寒さに強い。



凍らされても死ぬことは無い。



物理的なダメージ、つまり氷刃等は効くがそれよりも火魔法を使った方が効果がある。



いつも通りダジが盾でリザードマンを牽制してアデルカとマーズが攻撃する。



「サーシャ!合わせて!」


「はい!」


シリアとサーシャが同時に魔法を放つ。



ファイヤウェーブ。



第四位火魔法で炎の帯を扇状に飛ばす魔法だ。



2人で合わせて放った事でほぼ全てのリザードマンに火が飛んでいく。



グキャーーーー!!!!



火に巻かれたリザードマンがのたうち回る。



数匹は飛んで避けようと身構える。



「シャドウバインド。」


カヤリスの闇魔法がそれを許さない。



影が足に絡みつき飛ぶに飛べなくなったリザードマンは全て火に巻かれる。



「やっぱりカヤリスがいると断然楽に戦えるわ!」


「ありがとうございます!」


「こっちがありがとうよ!いつもなら避けられてもう少し戦闘が続いてたわ。」


「そうですね。盾に対して居られると良くない位置のモンスターを排除して貰えるので立ち回りやすいです!」


「うんうん!こらからもよろしくね!」


「はい!」


カヤリスもどぉ動けば1番良いのか分かっているようだ。



扉を開いた先に更にリザードマンがいる。



3匹程度では足止めにもならない。



順調にモンスターを駆逐して歩を進める。



それから2つほどリザードマンのいる部屋をクリアして階段に辿り着く。



第5階層



「確か5階層毎に安全地帯があるって話だったか?」


「はい。安全地帯にはモンスターは入れなくなっていて微量ながら回復の効果があるらしいですよ。」


「へぇ。じゃあ覚えておいて損は無さそうだな。」


「はい。門兵の方が言っていたように上手く使って攻略したいですね。」


「安全地帯ってこれの事かな?」


通路の先に扉が二つあり、片方を開けると部屋の床に魔法陣が描かれていた。



「みたいだな。確かに魔法陣は微小な回復効果を生むものみたいだ。」


「本当にこの部屋にはモンスターが入ってこないんですかね?」


「どぉかな。絶対とは言いきれないし警戒はしておくべきかな。」


「はい。休める時に休んでおきたいので少し休憩していっても構いませんか?」


「僕達は構わないよ。むしろ全員がなるべくベストな体調を維持できるように休んでくれると嬉しいかな。」


「はい!」


部屋に入ると魔法陣が光り快復の効果が適用される。



魔力快復の効果もあるらしく魔道士としても休んでおきたい場面だろう。



中に入って座ると少しずつ体力が戻っていく感覚が全身を包む。



と言っても俺やライルはほとんど何もしていないから回復も何も無いが。



10分程の休憩で俺達は部屋を出た。



直ぐにもう1つの扉を開ける。



そこには白くて丸い何かがいた。



少し動いている。



真ん中にいるそれにダジが盾を構えて近づいていく。



白い何かはクルリとこちらを向く。



兎だった。



間の森で見た兎と殆ど同じだったが角が1本ではなく2本。



二角兎。



レベルは105。



一角兎を見たことのある人ならば油断してしまうだろう。



一角兎は弱く食用とされるくらい弱いモンスターだ。



しかし一角兎の上位互換である二角兎はそぉはいかない。



角が1本増えただけで素早さが異常に上昇する。



元々硬い角を持っているため素早い動きと角攻撃で相手を翻弄する。



「こ、これは…」


「モンスターハウス…」


この他に道が無いのにここはモンスターハウスだったらしい。



ランダムなのかは分からない。



逆に安全地帯が目の前という事を考えるとラッキーだったのかもしれない。



最悪交代で休みに行ってもいいし全滅させた後もう一度この部屋に来てみるのも良い。



だがそんな心配は無用だった様だ。



確かに二角兎は素早い。



だがそれはBランク冒険者にとって速いかと聞かれるとそんな事は無い。



もっと素早いモンスターとの戦闘も経験しているし平気そうだ。



次から次へと壁や天井から出現する兎は全部で100匹くらいはいるだろうか。



兎は壁や天井を蹴って文字通り部屋中を跳ねながら突進してくる。



がそのほとんどを受けているがマーズ、アデルカ、カヤリスは的確に跳ねる兎を切り落としていく。



完全に見えている。



次々に白い玉が床に落ちて魔素となり霧散していく。



この二角兎は防御力があまり高くない為シリアとサーシャは魔力消費を抑えるように第三位魔法、氷球弾と水球弾で確実に仕留めている。



ダジよりも後ろに入り込む兎は1匹もおらず全てが撃ち落とされる。



程なくして兎は完全に姿を消し、床には肉と角、魔石が散乱している。



面倒臭い為魔法で一気に集めてアイテムボックスにぶち込む。



この階層には部屋があまりなく通路が多い構造らしく、狭い通路に兎が5匹ずつぐらいで固まって行動していた。



広い部屋での戦闘ならまだしも狭い通路での戦闘は兎にとって不利である。



何故こんな不利な所にいるのかは分からない。



考えても答えが出る事では無いため疑問を頭の片隅に追いやって先に進む。



第六階層。



ここに降りてきて確信したが第五階層から通路の幅が若干広がり、扉のある部屋も大きくなっている。



下に行くほど広がるのだろうか。



まだまだ6人は余裕がある様だ。



通路に分岐が多くなりどんどんと迷路の様な形に変わってきた。



ちなみにここまでの道程は全てカヤリスが書き記している。



うちのメイドさんはマップも作れちゃうのさ!



軟禁生活の際に本を読んで覚えたらしいがこれが結構しっかりしている。



この階層は通路にモンスターはおらずすいすいと進めている。



単純に選んだ道に扉が無かっただけだが。



初めて扉に行き当たり、ダジが先頭で中に入る。



「あれはダンジョンゴブリンですか?」


部屋の奥に10体の赤いゴブリンがいる。



しかしダンジョンゴブリンよりも2回りほど大きい。



手足は細いがボテっと出た腹が気持ち悪い。



「グキャッ」


先頭にいたゴブリンが突然火球をとばしてくる。



「シャーマンか?!」


ダジが盾で火球を打ち消す。



ダンジョンゴブリンシャーマン。レベルは110。



「グギャギャギャ!」


10体のゴブリンが火球、水球、雷撃、石礫を飛ばしてくる。



「シリア!火のやつは頼むわよ!」


「任せて!」


「アデルカ!」


「えぇ!」


アデルカとマースが前に出る。



魔法のこうげきは怖いが遠距離では一方的に撃たれてしまう。



ダジが攻撃を受けている隙に左右から走って近づくつもりの様だ。



ダジヨリモ前に出るとヘイトは2人に向く。



スキル威圧でもそれは防げない。



「はぁ!」


シリアの飛ばした氷刃は火属性魔法を使っている三体に的確に命中しついでに雷属性のゴブリンシャーマンを一体撃破する。



残ったゴブリンシャーマンはアデルカとマーズに攻撃を仕掛ける。



水球がマーズに飛んでいく。



マーズは土魔法で作った石を刀に纏わせる。



飛んできた水球を切り、続けて飛んできた雷撃をも切る。



基本的に普通の武器で魔法を切る事は出来ない。



そのため武器や防具には必ず付与魔法が掛けてありその付与魔法のおかげで攻撃魔法をある程度軽減させる事が可能になる。



あくまでも軽減であり今回の様に切ることは出来ない。



そのため前衛職は魔法を避ける事が必須になる。



魔法を切り捨てたいのであれば少なくとも魔法剣が必要。



魔法剣は魔法を伝達する事ができる仕組みになっており今回のマーズの様に魔法を纏わせることで切る事が可能になる。



魔法を纏わせた場合は魔法を刀の形をした魔法で切る事になるため切れるのだ。



装備が整わない場合は魔法士に頼んで一時的に武器に魔法を纏わせる事でも同じ事が出来る。



魔法武器は高価である為ランクが低く報酬の少ないパーティ等は基本的にこっちを使っている。



ライルの持つ黒龍刀は一切魔法を付与しないナチュラルな状態で魔法を切り、しかも消滅させることが出来るため規格外となっている。



魔法は基本的には連射出来ない。



1度発動した魔法は与えられた皇帝を終えると消滅し再度初めから組み直さなければならないからだ。



俺達が連射出来るのは複数の魔法を時間差で組んでいたり連射の工程を組み込んでいるからだ。



そんな事までは出来ないゴブリンシャーマンはつぎの魔法を構築する前にマーズに切り殺される。



反対側を走っているアデルカにも魔法が飛来する。



「甘いわね!」


アデルカは地面を蹴ると壁に足をつけて走り出す。



ほとんど水平に体が倒れている。



「おー。壁走りだ。」


俺が感嘆の声を上げると同時にアデルカはゴブリンシャーマンの元へ飛び刀を振る。



綺麗に喉を切られて構築していた魔法が霧散しゴブリン自身も地面に倒れる。


「うぉぉおおおお!」


攻撃の止んだ隙に走り出していたダジが盾を振り上げて残りの2体を空中に打ち上げる。



一体は頂上付近でカヤリスのクナイの餌食にり、もう一体は地面に着地する前にダジの盾に胴を真っ二つにされる。



「盾の魔法も良い感じだな。」


「思ってたより威力も高そうだね。」


「あぁ。ありゃなかなか使えそうだ。」


「よおぉぉし!」


「魔法の使い方が甘いですね。所詮はゴブリンですか。」


「アデルカ壁走ってたね?!」


「俊敏が上がってから出来るようになったのよ!」


「って事はカヤリスも出来るの?」


「割と使ってますよ?」


「知らなかった…」


「おーい。ドロップアイテム拾っていくぞー。」


「あ、はーい!」


「ここまで来てどぉだ?」


「そぉですね。まだ余裕はありますけど気は抜けませんね。」


「どこにでも出現出来る環境となるとやっぱり緊張します。」


「その代わりでしょうか、少し経験値が多く貰えるように思います。」


「そぉなのか?」


「はい。既にいくつかレベルも上がりました。」


「それは早いな。」


経験値は自分よりも大きくレベルの低い相手を倒した際はほとんど貰えない。



例えば今の俺とライルが地上のゴブリンシャーマンを倒し続けても一年後に1つ上がるかどうかだろう。



それがダンジョンのモンスターを倒すと半年後くらいに上がる程度には貰える経験値が増えるといった感じらしい。



本来ほとんど貰えないはずの相手からそれなりに経験値が入るのであればレベルアップには持ってこいの場所だ。



その代わり通常の戦闘と違ってモンスターに対する作戦を立てたり出来ない。



どこにいるかもランダムだしいつ出てくるかも分からない相手に作戦も何も無い。



危険度で言えば妥当なのかもしれないが死ぬ可能性が大きなこの場所でレベルアップしたい奴は確かに多くは無いかもしれない。



「んー。そっか。そんなら皆レベル300くらいまで頑張るか。」


「300ですか?!」


「400が良かったか?」


「400となるとSランク冒険者レベルですが…」


「なんだ?俺達に仕える奴らがその程度で満足するつもりだったのか?見込み違いだったか?」


「やってやります!必ず今回の探索でレベル400行ってみせませしょう!」


「やるわよーー!」


「うぉぉおおおお!」


「うんうん。良かった良かった。」


「兄さん…

皆無茶はしないようにね?」


「はい!ありがとうございます!」


全員が目に火を宿してダンジョン探索する様になった。



この辺りの階層では敵のレベルが低いためもっと下に降りて効率よくレベルアップしたいらしい6人は出てくるモンスターを有無を言わさずフルボッコにして即座に下に向かって動き出す。



ずんずん降りていき第十階層に辿り着いた時は潜り始めて1時間も経っていなかった。



第十階層に降りてすぐ安全地帯を発見して中で休憩する。



ある程度回復すると直ぐに部屋を出て歩き始める。



「第十階層まで来ましたね!」


「あぁ。構造は変わらないがまた広くなった様だな。」


「そうですね。どこまで下があるのでしょうか?」


「どぉかな。まずゴールがあるのかな?」


「ゴール自体が無いかもしれないと言うことですか?」


「可能性として無くは無いでしょ?」


「言われてみれば…確認できた人がいないのですしその可能性も有り得ますね。」


「最悪僕と兄さんで走って下まで行ってみるけど出来れば皆で行きたいからね。」


「はい!頑張ります!」


ガチャ



最初の扉を開く。



「グリビル2体!」


だ時の声が聞こえてくる。



クマ方モンスター、グリビル。



レベル150。



「レベル150のグリビルだよ!気を抜かないで!」


「はい!」


大男のダジよりも2倍はデカい体躯を持つグリビル2体がこちらを向く。



「ダジ!2体いける?!」


「一気に2体は厳しいかもしれん!」


「カヤリス!足止め出来る?!」


「長くは持ちません!

シャドウバインド!」


「シリア!」


「分かってるわ!」


カヤリスが足止めしたグリビルに上から更にシリアが足止めの魔法を使う。



第四位氷魔法 アイスバインド。



小範囲の足下を凍らせて足止めする魔法だ。



アイスフィールドとちがって範囲が小さい分強度が高く抜け出すのが難しい。



4本の足を凍らされたグリビルはその場で足止めを食っている。



もう一体はダジの元に走り腕を振り上げていた。



ガギィィン


グリビルの爪が盾に当たる。



ズッ


ダジの体が僅かに後ろに押された。



しかしダジにはダメージが入っていない。



「おらぁぁぁあ!」


ダジのシールドバッシュにより逆にグリビルが後ろへ数メートル吹き飛ぶ。



「はぁぁ!」


アデルカが炎を纏わせた刀で横っ腹を切りつける。



「グオオオオ!!」


炎が燃え移ったグリビルはのたうち回り火を消そうとする。



だがそんな事はさせないとマーズもアデルカも切り付ける。



最後にマーズの刀がグリビルの喉元に刺さりドサリと倒れ、火が全身に回っていく。



「足止め解けます!」


バキッ



足を止めていた氷を破壊してグリビルが動き出す。



アデルカとマーズは後ろに取り残されている。



「はぁ!」


十分な時間があった。



シリアの魔法は既に完成している。



アイスメイデン。



シリアが考えた第五位氷攻撃魔法。



グリビルの周囲に発生した氷の棘が一斉に襲い掛かる。



「グガァァアアア……」


逃げる術は無く全身を貫かれて盛大な断末魔を上げる。



これを予期していたのか取り残されていたマーズとアデルカには焦りの色は一切見えていなかった。



「手強いモンスターが出てき始めましたね。」


「ここからはサーシャの回復魔法に頼る事が増えるけどよろしくね?」


「もちろんですよ!」


「よーし!次行こ!次!」


役割分担、出来ること出来ないことを把握するのは自分の事でもなかなか難しい。



それをこなしているとなると既に上級冒険者の仲間入りと言っても良いだろう。



グリビルは体が大きく通路に出てくる事は無い。と言うより出来ないのだろう。



しかし見つけた扉をバシバシ開けてはグリビルをシバいていく。



レベルが近づいていることもあってなるべく倒しておきたいのだろう。



俺としては上質な皮が手に入るので文句は無い。



結局20体ほど撃破してから下の階に降りた。



第十一階層。



「ん?ちょっと皆ストップ。」


「どぉされました?」


「んー。多分これトラップ仕掛けてあるね。」


「トラップですか?」


「ダンジョンと言えばって感じだけどやっぱりあったね。」


「カヤリスは分かるか?」


「えっと…そぉですね…少し嫌な感じがする程度ですね…」


「トラップの発見と解除はカヤリスの仕事だからライルに着いてコツなんか教えて貰って習得するんだ。」


「はっ!」


「えっと…トラップとしては簡単な物だから解除は難しく無いよ。」


「どのようなトラップなんですか?」


「床にある特定の石を踏むと発動するタイプだね。

多分壁から槍か弓が飛んでくる感じかな。」


「言われてみますと壁に小さな穴が空いてますね。」


「ずっとトラップは無かったし壁も真っ青で分かりにくいけどね。」


「どの石がスイッチになっているか分かるんでしょうか?」


「うん。えっと…」


ライルのトラップ発見&解除講座をカヤリスを中心に皆真剣に聞いている。



カヤリスの仕事だとしても皆で注意できるならそっちの方が良い。



トラップが登場するとなるとここから先はここまでより少し時間が掛かる。



トラップを無事解除出来たところで歩みを進める。



トラップ自体はさほど多くは無いらしく扉に当たるまでその一つだけだった。



ギィー…


「あれは…?」


部屋の真ん中に何かが陣取っている。



一見しただけでもデカい。



シュルル…



空気が抜けるような音が聞こえる。



「ブルースネークだ!」


ダジが叫ぶ。



ブルースネーク。Cランクモンスターで巨大な青いヘビだ。



背景色と重なって非常に見にくい。



黒い目をこちらに向けて口から二股に別れた舌を出し入れしている。



とぐろを巻いて頭をもたげている。



その高さは天井に届く程で全長は10メートルはありそうだ。



体表はテラテラとしており模様は無い。



猛毒を持つ事で有名なモンスターであり、牙で噛まれるとかなりヤバい。



そのくせ俊敏で力もそこそこ強い。



厄介なのは毒もだがその体表組織だ。



魔法が効きにくい組織で覆われており直接魔法を撃ち込んでもあまり効果が期待出来ない。



レベルは156。



地上にもいるモンスターだが戦闘力の低い村ならば1匹で壊滅させる程のモンスターだ。



「こいつ魔法効きにくいから嫌いなのよね…」


「皆さんにアンチポイズンを掛けますが絶対に毒を貰わないで下さいね!」


「分かってるわ!」


「まだ死にたく無いからね!」


「シリアは足止め中心にお願い!」


「分かったわ!」


「マーズさん!アデルカさん!合わせて下さい!」


「「分かったわ!」」


ダジの後ろにまわりダジの前身に着いていく。



「うぉぉおおおお!」


ガーン


ダジの突進を尻尾で抑え込む。



シャーーー!!


威嚇するように鳴いたブルースネークはそのままダジに向かって大きな口を開き襲い掛かる。



「「はぁー!」」


マーズとアデルカはダジの後ろから左右に飛び出して襲い掛かろうとしているブルースネークの目を刀で突き刺す。



ジャルルル!!


痛みに悶え体をくねらせるブルースネーク。



マーズとアデルカが離れもう一度ダジの後ろまで下がる。



シャーーー!!シャーーー!!



目が見えなくても元々舌で熱を感知して獲物を獲るヘビには居場所はバレバレだ。



顔を横にして大きく口を開き再度ダジに向かって来る。



ダジの盾でもあのサイズの口はデカすぎて丸呑みされる。



「はぁ!」


ダジの目の前に突然現れた氷柱。



アイスピラーをシリアが発動させたのだ。



ブルースネークの噛みつきはダジに届くことなく氷の柱に阻まれる。



食いついた際に氷柱は砕かれバラバラと床に落ちる。



シャーーー!!



威嚇をつづけるブルースネーク。



何度も尻尾を振り、ダジが受け止める。



マーズもアデルカも切りつけるが何せデカすぎる。



決定打としては不足気味だ。



「アデルカ!一気に決めるわ!少しの間1人で何とか出来る?!」


「任せて!」


マーズが一歩下がって刀の刃を後ろに向けて腰あたりに構える。



ダジとアデルカの2人で何とか前線をキープしている。



シリアとサーシャも援護するが魔法は効きにくい。



あくまでも援護に留まる。



ピキピキ


マーズの刀から音が聞こえる。



表面に纏わせた石が更に大きく太くなる。



最早刀でなく斬馬刀と呼ばれるサイズだ。



某ゲームのクラ〇ドが持っている大剣を2倍にしたようなサイズだ。



「行くわ!」


マースが走り出した俊寛ダジとアデルカが後に跳ぶ。



「はぁぁぁあ!」


全力で振り下ろした斬馬刀は蛇の頭に直撃し胴を真っ二つにする。



地面を抉り止まった斬馬刀は刀を残して魔素になり霧散する。



「よし!カヤリス!ありがとね!」


「いえいえ。」


カヤリスのブルースネークのアタマに直撃したのはカヤリスがシャドウバインドを一瞬前に使って僅かに動きを止めたからだった。



「少し苦戦してくるようになったか?」


「そぉですね。今回は魔法が効きにくい相手だったので余計にですかね…」


「魔法が効きにくいから魔法を使わないってのは間違いだな。」


「え?」


「最後の一撃だってつまりは魔法だろ?」


「あ、そぉですね。ですがどちらかと言うと物理攻撃に近い気がしますが…」


「そこが重要なんだ。

例えばシリアが使ったアイスピラーもブルースネークの顔を天井と挟めば物理攻撃扱いになって少なくともある程度のダメージは与えられただろ?」


「あ…そぉですね!」


「相手の体表は確かに効きにくいがマーズとアデルカの刀が刺さった時に魔法を使えば魔法が効く内部から焼くことも出来たぞ?」


「た、たしかに…」


「もっと考えて攻撃すればもっと楽に倒せる相手なはずだぞ。レベルはお前達の方が上だろ?」


「はい…」


「考えで負ければこれだけレベルに差のあるモンスターに苦戦する事がよく分かっただろ?」


「はい…」


「何度も思い知らされた事をまたここでもしでかしてしまいました…」


「反省も大事だが今は次はどぉするのか、どぉしたら上手く戦えるのかを考えろよ?」


「はい!」


俺の助言を聞いた6人は次のブルースネークを難なく倒すことに成功する。



自分達で考えより効率的な攻撃方法を考えた結果だ。



何匹か撃破して進んでいると正面から人が歩いてくる。



「お?珍しく新しい面子がアタックしてるのか?」


先頭のリーダーらしき男が俺達を見て喋り出した。



男3女2の人種パーティの様だ。



「どぉもー!」


「皆さんはよくここに?」


「そぉだな。これで10回目だったかな。」


「ベテランさんですね?」


「まぁな!ダンジョンに新顔が来るなんて珍しいしなんか知りたきゃ教えてやるぞ?」


「良いんですか?!ありがとうございますー!」


「お、おぅ!任せろぃ!」


シリア…強かだな。



キラキラさせた目で相手を見てるよ。



「ダンジョンの構造はいつも一緒なんですか?」


「そぉだな。構造は変わらないが、モンスターの出現位置やモンスターハウスの場所はランダムになってる様だ。」


「つまりどこでモンスターハウスのトラップがあるか分からないんですね?」


「あぁ。だから単体では良いけど複数に囲まれるとヤバそうな相手がいた時は素直に引き返す方が良いぞ。」


「なるほど…モンスターは階層毎に1種だけなんですか?」


「みたいだけど俺達は最高で第十四階層までしか行ったことないからそこまではって感じだな。」


「その先には行かないんですか?」


「1度第十五階層を見た事があるがホワイトファングがいたんでやめといたんだ。」


「ホワイトファングですか?」


「ワイバーンとホワイトファングはCランクモンスターでの2強と言われる程のモンスターでな。

ホワイトファングは頭が良い。単体でももちろん強いがヤバいのは集団で行動するんだ。」


「集団で行動するモンスターは他にもいますよ?」


「ホワイトファングは別さ。単体でも驚異となるモンスターが統率の取れた動きをしてくるんだ。つまり命令系統が存在するんだよ。」


「それは…厄介ですね。」


「あぁ。一匹二匹ならなんとかなるが囲まれたりすればさすがに勝てないからな。もっとレベル上げてから行くつもりだ。」


「そぉですか…ありがとうございました!」


「いえいえ。それより出てきたら一緒に…」

「いえ。結構です。」


「あはは!ほらほら行くよ!振られるのなんて慣れてるでしょ?!」


「うるせぇやい!」


「じゃあ頑張ってね!」


「ありがとうございました!」


肩を落としているリーダーを戦闘に後ろに消えていった。



「なかなか面白い情報が聞けたな。」


「ホワイトファングですか…」


俺の腕を食ったブラックファングの最下位種だ。



でかさも素早さもレベルも比べられない程に弱いがそれでもCランクがつく程度には強い。



「まぁとりあえず行ってみなきゃ分からないし先に進もうか。」


「そうですね。」


俺達はさっきの冒険者が来た方向へ進む。



いくつかトラップを発見したが既に解除されていた。



ベテランさんが解除してくれていたらしい。



いくつか部屋を通過するがブルースネークがいない部屋もあった。



恐らくさっきの冒険者が倒したのだろう。



コツを掴んだのかブルースネークの撃破にはあまり時間が掛からなくなった。



全部で五体のブルースネークを撃破して階段を降りる。



第十二階層



「トラップや部屋のモンスターはどのくらいで復活するんだろうな?」


「どぉでしょうか…さっきの階層で最後の方はモンスターがどの部屋にも居ましたし復活していたとすればそれ程時間は掛からないのではないでしょうか?」


「5分から10分程度か。」


「となるとこの階層のモンスターやトラップは復活してるのかな?」


「そぉ思って進んだ方が良さそうだな。」


事実少し進むとトラップがあった。



トラップ毎にカヤリスは着実に学んでいっているようだ。



既に似たようなトラップは何度か解除出来ている。



通路を進み、3つある扉のうち1つを開く。




中には一目で何か分かるモンスターがいた。



大男のダジを3倍したような体躯を持った人型モンスター。



オーガ。



ゴブリンの上位種で緑色の体を持ち、腕や足は人の胴を軽く超える程太い。



下顎の糸切り歯が以上に長くくちから飛び出している。



頭には2本の角が生えている。



レベルは160




「オーガ!」


ダジが叫ぶとマーズとアデルカは今までとは違いダジと大きく距離を取る。



オーガは素早さがあまり無い分、力と体力が高い。



固まっていては一撃で3人が倒れる可能性があるため距離を取っているのだ。



「グォォォオオオ!!」


「来るぞ!」


部屋中に響くオーガの叫び声。



足を踏み出す度に地面が揺れる。



ブンッ



丸太のような腕を振り上げる。



ガンッ



ダジがそれを盾で受け止める。



「ぐおぉ!」


想像以上の圧力に流石のダジも声を上げる。



オーガのサイドからアデルカとマーズが攻撃する。



しかし表面が硬いのかそれ程大きな傷を付けることが出来ない。



嫌そうにオーガが手を振るが速さのない攻撃は当たらない。



魔法も同じ様にあまり大きなダメージは出ていない。



出力を上げて攻撃すれば何とかなるかもしれないが今はまだ魔力を温存しておきたい様だ。



「私が行くわ!」


アデルカが1度離れて刀に炎を纏わせる。



しかしそれだけではあまり威力を期待出来ない。



アデルカはそのまま更に集中力を高める。



纏っていた炎が更に勢いを増す。



勢いを増した炎が発散せずに刀の周りを循環し始める。



熱が逃げれず温度が上昇しそこに酸素が送り込まれ真っ赤なほのうから真っ青な炎へと変わる。



授業でやった事を自分の魔法刀に応用したわけだ。



マーズが重い一撃ならアデルカは鋭い一撃を手に入れたわけだ。



アデルカが刀を構えてオーガに向かって走る。



危険だと思ったのかオーガがアデルカに向き直る。



そして右腕を横に大きく振る。



「させるかよ!」


ガンッ



それを飛び出したダジが受け止める。



ズザザッ


体が動いたものの重い一撃をしっかりと止めて見せる。



「はぁぁ!」


アデルカの青い刀がオーガの顔面よ横一文字に切る。



ズルリと鼻から上がズレてドチャリと中身を振り撒きながら床に落ちる。



「ふぅ…」


「マーズもアデルカもなかなか良い感じだな。なんて技なんだ?」


「私は大岩刀(たいがんとう)と呼んでおります。」


「私は青炎刀(せいえんとう)と。安直な名前ですが…」


「良いんじゃないかな。分かりやすいよ。」


「アデルカのは授業でやった事の応用だよな。」


「はい!空気を送り込んで青い炎になると音頭が高くなると聞いたので…」


「覚えてくれてて嬉しいよ。」


「全て記憶してますよ!当たり前じゃないですか!」


「あ、ありがと。」


「いえ!青炎刀で切れる相手ならそれ程驚異では無いですね。」


「それ程魔力消費が無い技だしね。」


「私の大岩刀じゃ断ち切るのは難しいかなぁ。」


「切ると言うより押しつぶす感じになりそうですね。」


「なんか色々出てきそうで嫌ね。」


そんな話をしながら部屋を出る。



オーガと何度か戦うが危ない場面も無かった。



第十三階層。



階段を降りた瞬間にライルが刀を抜きダジの目の前を切りつける。



キョトンとした6人は何が起きたのか分かっていない。



ドサッ



ライルが刀を納刀すると同時に正面から人ほどの大きさのいわゆるカメレオンが出現する。



胴を真っ二つにされている。



クルカリス。



非常に姑息な戦い方をするモンスターで、自身をミラージュにより透明化し、非常に素早い舌を使った攻撃を得意とする。



唾液には強い痺れ毒が含まれており攻撃されると全身が痺れて動けなくなる。



レベルは165。



「僕が出ないと気づけないのかな?」


「も、申し訳ございません!」


「これは少し鍛え方が甘かったかな?」


「ひぃーー!」


「次は無いよ?」


「はい!!」


ライルの笑顔が怖すぎる。



6人はクルカリスなんて目じゃない恐怖を味わっただろう。



「カヤリス。」


「は、はい…」


「お前の目は節穴だったか?」


「申し訳ございません…」


「5人はお前の目と鼻を信じて前に出るんだ。二度と先手を打たれる事は許さんぞ。」


「はい!肝に銘じておきます。」


カヤリスは不甲斐なさでか、俺への畏怖でか分からないが肩を震わせている。



策的はカヤリスの分野だ。



ライルのした行動を本来はカヤリスがしなければならない。



気が抜けていたでは話にならない。



全員に緊張感が戻ってくる。



「シャドウサーチ!」


第二位闇魔法、シャドウサーチ。



影を周囲に這わせて探査する魔法で自身を起点に展開する索敵魔法だ。



常時展開が可能で魔力消費は気にならない程度。



本来ダンジョンに入るなら最初から使っておくべき魔法だ。



目に見えない敵でも索敵範囲内ならば発見が可能。



「よし。行くぞ!」


ダジが盾を構えて歩き出す。



ここまで扉の外にいるモンスターが少なくなってきていた為気が抜けていた所もあるはずだ。



死亡率が高いのも頷ける。



「右!」


カヤリスがクナイを投げると透明なクルカリスに当たりる。



クナイが刺さることで魔法が解けて姿を現す。



クルカリス自体の攻撃力や防御力は同レベル帯のモンスターよりも低く姿を確認出来ればさほど倒すのは難しくない相手だ。



それは部屋に入っても同じ事で部屋の中を探査してカヤリスがクルカリスをあぶりだし、叩く。



簡単な作業だ。



ここまで来て全員のレベルもかなり上がった様だ。



「白主様。」


「どぉした?マーズ。」


「前々から思っていたのですが、やはりレベルが上がりやす過ぎます。」


「ん?どぉ言うことだ?」


「確かにダンジョン内ではレベルが通常より上がりやすいのかもしれませんが、地上でのレベル上げの時も上がりやすくなっていると感じました。」


「以前冒険者をやっていた時よりもって事か?」


「はい。」


「……となると俺達に何かあるのか?」


「分かりませんが…眷属という称号に何かある様な気がします。」


「…そぉか。どれくらい違うんだ?」


「比較出来ないのでハッキリとは言えませんが通常時は1.5倍。ダンジョン内では2倍近くレベルアップが早いと思います。」


「そりゃなかなか凄いな。」


つまりダンジョン内では1匹のモンスターを倒すと二匹倒した事と同じになるという事だ。



調べてみる必要があるが得をしているので今は考えなくても問題は無さそうだが。



「そぉか。少し調べてみる。ありがとな。」


「いえ。」


経験値とは倒した相手から出た魔素が自身に吸収される事で起きる強化現象の様な物だ。



一定以上の魔素が取り込まれるとレベルアップという形で現れる。



つまり倒した敵の魔素を追えば何か分かるかもしれない。



その階層でクルカリスを倒した際にスキルの一つ、魔素感知を使ってみる。



普段も魔素の動きは感知できるがより詳しく魔素の動きを見たい時はこのスキルを使う。



「そぉ言うことか。」


「何か分かったのですか?」


「あぁ。今倒したモンスターの魔素を感知してたんだが、本来倒したモンスターの魔素は全て取り込まれる訳ではなくその殆どが空気中に霧散しているんだ。」


「はい。一部が自身に流れ込んでくると言うお話は以前お聞きしました。

実際倒したモンスターは魔素になって霧散していますね。」


「その霧散してる魔素が一部ピアスに吸い込まれてる。」


「え?ピアスにですか?」


「あぁ。多分ピアスが吸い込んだ魔素を吸収して経験値として得ているんだと思うぞ。」


「そんな効果が?」


「いや、俺が作った時にそんな効果を付与した覚えはない。というかそんな事が出来るのかと驚いているくらいだ。」


「何故この様な事が…?」


「わからん。鱗自体にはそんな効果は無かったはずなんだが…まぁ現状困っているわけじゃ無いし今度調べてみる。今はダンジョンに集中しよう。」


「はい!」


余分な事を考えていて命を落としてはたまったもんじゃない。



第十四階層。



「サーチに敵の反応はありませんね。」


「よし。」


「扉は2つ。どっちに行く?」


「右…かしらね。」


「よし。」


ギィー…


「何もいませんね。」


「………そこっ!」


カヤリスがクナイを投げる。



ギンッ


クナイが弾かれて床を転がる。



ダンジョンの床にあった影から黒い人影が出てくる。



シャドウランナー。



見た目は黒い人間。



背を丸めた様な出で立ちだが手の先にまるで指の様に5本の細長い刃物が光る。



影に潜り込み移動して攻撃するモンスター。



パワーは無いがスピードが高いモンスターだ。



レベルは170。



「私が引っ張り出します!」


「頼んだわ!カヤリス!」


「ライト!」


光が周りを照らし出す。



シャドウランナーのいる影が浮かび上がる。



全部で5つ。



「シャドウスネーク!」


第四位闇魔法シャドウスネーク。



自身の影から蛇の形をした影が伸び、影に潜むものに噛みつき引っ張り出す魔法だ。



モンスターにも使うが隠密を行う闇魔法の使い手を暴き出す時にも使われる。



「グギッ!」


引っ張りだされたシャドウランナーを他の5人が一体ずつ攻撃する。



防御力は低めなため容易に消し去る。



「よし!やったわね!カヤリス!」


「はい!ありがとうございます!」


「これならこの階層は大丈夫そぉね!」


「はい!行きましょう!」


子速な戦い方をするモンスターは対処の仕方が分かると脅威度がぐんと下がる。



シャドウランナーを計20体近く倒した所で下へ続く階段を見つけた。



「次は第十五階層ですね。」


「ホワイトファングのいる階層だったわね。」


「降りてすぐやられないように気を引き締めて行きましょう!」


ダジが盾を構えて階段を降りていく。



降り切った所で目にしたのは真っ白な体毛のオオカミ。ホワイトファング。



そしてその向こうに座り込んだ人影。



距離にして5メートル。



ホワイトファングの口が大きく開かれている。



思わず防御魔法をその人影に使う。



ガギッ


「……え?」


来ると思っていた激痛が来ない事に疑問を思ったのか人影から声がする。



「ダジ!」


「おぅ!」


「カヤリス!足止めお願い!」


「はい!シャドウバインド!」


「今の避ける?!速いわ!」


シャドウバインドを避けたホワイトファングはこちらを向く。



グルルルルル



唸り声を上げてこちらを威嚇する。



ヒタ…ヒタ…



人影の奥から3匹のホワイトファングが増員された。



道幅が更に広くなっているためホワイトファングの動きは制限されない。



人影の奥に見えるもう1つの人影は既に息をしていない様だ。



死体はダンジョンに吸収されるように床に半分埋まっている。



「4匹…」


「いえ。まだ来るわ。」


更に奥から3匹のホワイトファングが増員。



計7匹が現れる。



最後に入ってきたやつがリーダーの様だ。



オオカミと違ってリーダーを潰したから動きが鈍るなんてことは無い。



リーダーを潰した瞬間違う個体がリーダーとして動くだけだ。



つまり切り抜ける為には全てのホワイトファングを潰す以外に無い。



今までのモンスターとは違い簡単には飛びかかっては来ない。



ジリジリと相手の動きを見ながら距離を詰めてくる。



「アデルカ!身体強化MAXで行くわよ!」


「分かったわ!」


「カヤリスはダジの背中を守って!」


「はい!」


「シリアとサーシャは足止めを狙って!当たらなくてもいいから牽制して!」


「分かったわ!」


「行くわよ!」


マーズとアデルカが出る。



身体強化魔法をMAXにしているため今までの動きより1.5倍は速い。



ライルと手合わせした際に出したスピードだ。



ホワイトファングは三体ずつでまとまって動き常にマーズとアデルカを三角形になる様に囲んでいる。



スピードとしてはマーズとアデルカの方が速いが死角に入ったホワイトファングが攻撃を繰り出し他の二匹が隙を狙っている。



「うぉおおおおお!」


ダジの威圧が発動する。



僅かに体を硬直させたホワイトファング。



「「はぁ!」」


シリアとサーシャがその隙を見逃すはずがない。



同時にアイスバインドとウォーターバインドを発動させる。



アイスバインドで2体、ウォーターバインドで1体の動きを止められた。



「「「はぁぁ!」」」


マーズとアデルカがバインドを受けた一体ずつ、



もう一体をダジが片付ける。



残った一体がダジの背後に回り込む。



ギャイン


待ってましたと言わんばかりにダジの影に潜んでいたカヤリスが短刀をホワイトファングの胸に突き刺す。



闇魔法シャドウハイド。



先程のシャドウランナーが使っていた闇魔法だ。



「今よ!」


1対1ではスピードの勝るマーズがとアデルカの敵ではない。



逃げようとした2体を難なく捉えて葬り去る。



リーダーであったホワイトファングは逃げようと出てきた扉を振り向くが遅かった。



シリアの魔法で扉は凍りつき既に塞がれている。



ギャイン……


逃げ場の無くなったホワイトファングは切って捨てられた。



やっと安全が確保された所で防御魔法を解く。



「あ…え…?」


未だに何が起きたのか分かっていない様な顔だ。



近づかなくても分かったがどぉやら人種では無いらしい。



肩まで伸ばした真っ白な髪は切り揃えられており、ツリ目、青い瞳。



耳と尻尾を見て分かるが猫人種だ。



腰にはほとんど装飾の無いショートソードを下げている。



スピード重視の軽装備だ。



既にダンジョンの床に飲みこまれたもう1人も人種ではなく獣人だった。



「大丈夫ですか?」


「あ…はい…」


「他の方は?」


「その…その部屋に…」


指を指した先は先程ホワイトファングが出てきた部屋だ。



欠課は分かっていたがマーズが確認してこちらを向くと首を振る。



「うぅ……皆……」


大粒の涙を隠すこと無く流す。



「ここはまだ危険ですしとりあえず安全地帯まで行きましょう。」


足元のふらつく猫人種の女性をマーズとアデルカが立たせて先に進む。



ホワイトファングの出てきた部屋に続く扉は左手、右手には通路が続いている。



仲間の死んだところを通るのは気が引けたので右手に進む。



少し歩くと扉が2つ見える。



ダジが右手の扉を開くとこちらを向き首を縦に振る。



どぉやら安全地帯の様だ。



中に入ると猫人種の女性を座らせる。



「あ…ありがとうございます…」


少し落ち着いたのか頭を下げてお礼を言われる。



「気にしないでください。」


「ありがとうございます……」


もう一度頭を下げた後ポツポツと喋り出してくれた。



「私の名前はイリヌイと申します…Bランクパーティ、獣爪(じゅうそう)の一員です。」


「Bランク…」


「はい…全員で5人のパーティでした…

今日は皆魔力を節約してここまで来られたので初めて向かう第十五階層に行ってみようと言う話になりました…」


「……」


「下に降りてきて初めの部屋はなんとかクリアしました。そして扉を開けて先に進むと1匹のホワイトファングが通路にいました。

1匹だったので大丈夫だと前衛の3人が逃げるホワイトファングを追ってしまいました…

私ともう1人もあとを追いかけて部屋に入ったらそこには全部で7体のホワイトファングが待ち構えていました…」


「さっき排除した7匹か…」


「はい…誘われたんです…部屋は前よりも広くなっているのでその動きに翻弄されて前衛の1人がやられてしまいました…」


「……」


「直ぐに逃げたのですが…戻った先にまたホワイトファングがいたんです…戦闘の最中に数匹後ろに回り込んだんですね…

そこで残った前衛の1人がやられました…もう1人が足止めするからと私達後衛の2人を逃がそうと…」


「残ったのか…」


「は…い……そして置いていけないと嫌がるもう1人を連れて廊下に出たんです…そこでもう一匹待ち構えていました…」


「挟み撃ちにされてもう1人も…」


「はい………助け…られませんでした…」


「そぉか…」


「うぅ………」


涙を止めることは出来ない。



命を預け合って信頼していた仲間が一瞬で自分を残して死んだのだ。



これからもこの人の人生に大きく食い込むトラウマを残しただろう。



しばらく押し殺す様な声で泣き続けた。



「本当に…ありがとうございます…」


「あぁ。それよりここからどぉするつもりなんだ?」


「……」


「1人で上まで戻るのは難しいだろ?」


「……はい……」


「となると上に戻してあげるしか無いか。」


「……」


「どぉしますか?1度全員で戻りますか?」


「そぉだな。さすがにこのままというわけにもいかんだろ。」


「分かりました。皆も良いわよね?」


「もちろん。」


「ありがとうございます…ありがとうございます…」


「大丈夫。気にしないで。今は自分の事を考えて。」


「じゃあ帰るか。」


俺はフージカを発動する。



「…え?」


転移魔法を見るのは初めてらしい。



「こいつは転移魔法でな。行ったところには繋げられるんだ。」


「す、凄いですね…」


この魔法があれば仲間を…と思っているかもしれないが、たらればの話は意味が無い。



俺達は1度ニーナの元に帰る。



いきなり商人達のいる場所に出ては面倒臭い事になるので入口のある小屋の中に出る。



「なんだ?早かったな。

………そぉか。ありがとな。」


門兵はイリヌイの顔を見ると悟ったのかそれ以上喋る事をやめた。



「お帰りなさいませ。」


ニーナが深くお辞儀をして俺達を出迎える。



「そちらの方は?」


「イリヌイっていうらしい。

中で仲間を失った。」


聞かれないようにニーナに耳打ちする。



「……分かりました。」


「とらあえず外には出られたけどイリヌイはここからどぉする?」


「………」


「白主様…差し出がましい事を申し上げる様ですが…ここは私に一任して頂けませんでしょうか?」


「ん…そぉだな、俺よりニーナの方が適任かもな。頼んだ。」


「はい。」


ニーナがイリヌイの肩を抱くように支えて馬車の中に連れていく。



「兄さんは相変わらず人付き合い苦手だね。」


「分かってるんだけどな…」


「さて、イリヌイさんの先が決まるまで少し休もうか。」


「はい!」


馬車の傍で火を起こして紅茶を飲みながら座って待つ。



シリアが紅茶を二人分馬車に持っていった。



こぉいう時は女性がいると頼りになるな。



日が傾き始めた頃、イリヌイとニーナが馬車から出てくる。



「白主様。」


「…」


ニーナの近くに寄る。



イリヌイはマーズ達に支えられて火の傍に座っている。



「イリヌイさんなんですが、タランタから来ているみたいでして、最終的には帰るそうですが、今はまだ戻りたくないそうです。」


「遺族に話すにはまだ辛いってことか?」


「はい。そこで皆様がダンジョンに潜っている間は私が一緒にいますので、ダンジョン攻略に行ってください。」


「大丈夫か?」


「はい。タイミングが合えば私達がタランタに行く際に共に行く事を許して頂けませんでしょうか?」


「それは構わないぞ。というか元々そのつもりだったからな。」


「ありがとうございます。」


「じゃあイリヌイの事は頼んだぞ?」


「はい。」


「イリヌイにはニーナから伝えてくれないか?

俺はどぉも気が利かんからな。」


「そんな事は…」


「自分でも分かってるから、よろしく頼むよ。」


「承りました。」


ニーナはお辞儀した後イリヌイの横に座りこの後のことを伝えてくれた。



「その…ご迷惑をお掛けしますが…よろしくお願いします…」


「気にするな。」


「そぉよ。気にしないで。ゆっくりいきましょ?」


「ありがとうございます…」


今日の攻略は止めにして明日の朝から再度向かう事にした。



日が暮れた頃途中ですれ違ったパーティが出てきたが俺達の顔を見て驚いていたが追い越されてしまったと勝手に納得してくれた。



ダンジョン内にはSランクのパーティとAランクのパーティがまだ潜っているらしいが1度潜ると長くて2週間は潜っているらしい。



1度くらい見てみたいので中で会える事に期待しよう。



夕飯を皆で囲んで食べる。



イリヌイは暗い顔をしているがニーナがなんとかしてくれるだろう。



今夜も交代で見張りをする。



イリヌイも見張りに加わると言い出したがそんな事よりよく寝てよく食べて欲しいとお願いしておいた。



今日は俺とサーシャが見張り役2番手。



先に見張りをしていたダジとアデルカと交代して2人で火を囲む。



ダンジョン入口からは少し離れた位置にいるが同じ様に見張りをして交代で眠る商人達の集まりがいくつかあった。



明日も出店を構える予定らしい。



「あのー…白主様?」


「ん?どぉした?」


「1つお聞きしたい事があるのですが…」


「なんだ?」


「稚拙な質問かもしれないんですが…魔力ってどぉいったものなんですか?」


「魔力?」


「はい。私は魔法を使うためのエネルギーの様なイメージなんですけど、何か違う様な気がして最近考えてるのですが…」


「んー、間違ってはいないだろうけど…俺の考えでは魔素を扱う力の事だな。」


「魔素を扱う力…ですか?」


「あぁ。魔法を使うためのエネルギーはあくまでも魔素だ。

魔素が魔法陣を通る事で魔法となる。」


「はい。」


「この時に魔素を魔法陣に通すために魔素を操作するだろ?」


「それが魔力ですか?」


「あぁ。つまり魔力というのは魔素をどれくらいの量操作出来るかを示す値と考えてる。」


「魔力が高いとより多くの魔素を操作出来るので、より多くの魔素が必要な魔法を使える…という事ですね?」


「そぉだ。魔素を魔力によって操作して魔法陣を通して魔法が発動すると言ったイメージだな。

魔力は自身の中にある物だから使えば使うほど消費されて無くなっていくわけだ。

魔法を失敗した時も魔力は消費される。これがある意味証拠かな。

魔法のエネルギーなら失敗した場合は使用されてないから減らないだろ?でも減る。」


「そっか…あくまでも魔素の操作…失敗したとしても魔素を操作してるから操作した分の魔力が減るんですね?!」


「俺の考え方だけどな。」


「いえ!納得しました!」


「ん?…………いや、それは違うか……」


「どぉされました?」


「うーん。なんか掴めそうで掴めないなぁ。ピアスが魔素を吸収するって事が何か気になるんだよな…」


「??」


「魔素を吸収するってだけなら常時空気中の魔素を吸収してなきゃおかしいだろ?」


「あ、そぉですね。」


「それなのにモンスターを倒した時だけ吸収する。何故だ…?」


「ピアスが状況を判断してるということですか?」


「いや、それは無いと思うぞ。多分魔素に違いがあるんだと思うんだが…少し調べてみるしかないか…」


「魔石…ですか?」


「あぁ。小さいやつだがこいつを割って吸収してみてくれないか?」


「はい!」


パキン


「……やっぱりか。」


「どぉでしたか?」


「ピアスも取り込んだな。

つまり空気中の魔素と魔石、モンスターから出てくる魔素は何かが違うんだな。」


「何か…ですか?」


「あぁ。何が違うかまではまだ分からんがな。

多分調べてもわからんだろうな。」


「何故ですか?」


「そこに違いがあると感じた事が無いからだ。もし少しでも違いが有れば気付いていると思う。」


「……もっと感度の良い魔素感知が必要…とかですかね?」


「あぁ。俺もそぉ思ってる。つまり俺達の今の実力じゃ分からんって事だな。」


「白主様の実力で分からないなんて…」


「あはは!」


「??」


「最高だと思わないか?」


「最高…ですか?」


「まだまだこの世の中には俺の知らない事が山ほどある!今の実力じゃ足りない、見えない世界があるんだぞ?!ワクワクするだろ?!」


「……ふふふ。はい!ワクワクします!」


まだまだ足りない。



いつか必ず…



俺は決意を新たにして明日に備えた。






次の日、イリヌイはまだ暗い顔をしているが、俺達はダンジョンに戻る事にした。



門兵にまた行くのか?!と驚かれたが苦笑いしておいた。



小屋に入るとフージカを発動させて第十五階層の安全部屋に戻る。



「よし。ここからはどんどんレベル上げていけよ!」


「はい!」


6人は真剣な顔で返事をして外に出る。



昨日確認したところ6人は既に300レベル付近まで来ていた。



このまま進めば出てくるモンスターよりもレベルが高い状態を保って進めそうだ。



なるべく多くの部屋を調べて多くの魔素敵を倒すようにして先に進んだ。



ダンジョンとは言えゲームの様に宝箱が!財宝が!なんてことは無かった。



その代わりダンジョン内で出てくる敵を倒すと珍しい素材が手に入ったり、敵が装備する武器や防具が手に入る事がある。



もちろん下に行くほど質が良くなる。



未だにミスリル装備は見ていないが二十階層辺りからは魔法武器等の武器が手に入る事もあった。




第二十一階層。




「ダジ!行ったわよ!」


「おぅ!!」



現在戦っているモンスターはアブレシア。



前世で言うラフレシアを巨大化させた様な出で立ちでそこから太いツタが生えていてツタを巧みに使って移動する。



花の部分だけで5メートルはくだらないサイズ。



常に幻覚作用のある気体の毒を放出しており、ツタを巧みに使って攻撃、捕獲してくる。



ツタは太く、蛇型モンスターのクルカリス程の太さがある。



雑食で魔物さえ食うらしい。



何より厄介なのが再生能力。



ツタを切っても直ぐに次が生えてくる。



レベルは300。



第十五階層から出現するモンスターのレベルが大きく上がる様になっていた。



モンスターより高いレベルを保てるかと思っていたが間違いだった様だ。



レベリングを挟みながら下を目指さなければならないらしい。



「こいつうねうねと面倒臭いわねー!」


「再生能力が高いですね…一気に潰すしかないです!」


「って言ってもどぉすれば良いのよ?!」


「私が行きます!少し時間を下さい!」


「頼んだわよサーシャ!」


サーシャは杖を前に突き出して目を閉じイメージしている。



サーシャの目の前に大きな水の刃が精製される。



第五位魔法、水刃波。



作られた水の刃は5メートルを超える。



アブレシアを真っ二つに出来るサイズだ。



「準備出来ました!行きます!」


サーシャが魔法を放つ。



レベルも上がり魔法を飛ばすスピードも上がったらしい。



かなりの速度で飛び出した水刃をアブレシアは避けることが出来ずに真っ二つになる。



本体は再生能力が無いのか少ないのか、再生せずに魔素へと霧散していく。



「なかなか厄介な相手ね。ツタの動きが意外と早いわ。」


「ツタの動きをどぉ止めるかね。本体の防御力はそれほど無いみたいだし…」


6人はそれぞれの思った対策を口にして吟味している。



それから数度の討伐でコツを掴んだのか簡単に倒せる様になっていた。



「ふぅ。これで6体目ね。」


「ヒュー!やるー!」


扉の先から現れたのは冒険者のパーティだった。



「あなた方は?」


「俺達はAランクパーティの銀の翼だ。」


人種のみのパーティらしく4人が部屋に入ってくる。


男3人、女1人だ。



「女の子が多いパーティなのによくやるなー!それにしても後ろの2人は何もしてなかったみたいだけど?」


「女の子に戦わせるなんて男としてどぉなのかな?」


「口を慎め。」


「え?」


シリア激怒。



あ、シリアだけじゃないみたい。



「こちらのお二人は私達の主です。それ以上は侮辱と取って攻撃に移りますよ。」


「ちょちょちょ!待った待った!悪かったよ!謝るから!」


「ならば良いのです。」


「こ、こえーなー。まぁ事情も知らずに決め付けたのは俺達のミスだしな。」


「すいませんね。こっちのバカ3人はいつもこぉなんで許して下さいね?」


「バカは酷くないか?!」


「なによ?真実でしょ?」


「断じて違う!」


「それより銀の翼の方々は帰りですか?」


「あぁ。次の階層に行こうかと思ったんだが物資が尽きちまってな。今回は帰るつもりだ。」


「そぉなんですか。お気をつけてお帰りくださいね?」


「おぉ!そっちも気をつけろよ!」


なかなか気持ちの良い人達だった。



にしても災難だったな。銀の翼。



また会う機会があったら1杯くらい奢ってやらないとな。



銀の翼と別れて下に向かう。



Aランクでここまで来れるならばSランクのパーティはもっと下まで行けてても良いはずなんだが…



何か理由があるのか?



俺達は更に下を目指した。



第二十五階層。




「はぁ!」


「スルベト様凄いです!」


「きゃー!すごーい!」


「ふっ…サイクロプス程度僕の魔槍の前では敵ではないよ。」


「さすがです!」


グガーーー!



ドサッ


「ん?」


「あれはどこのパーティだい?」


「……見たことありませんね…」


「かわい子ちゃん達が沢山いるではないか!」


「スルベト様?!私達がいるのにー!」


「僕は独り占め出来るような存在では無いのだよ…」


「な、なんか凄い強烈な人がいますね…」


サーシャが引き気味で見るのは長めの白髪で切れ長の目、イケメンと言えば確かにそんな感じだ。



全身をミスリルの鎧で固めてギラギラしてる。



そして魔槍を手に持っている。



魔法の槍。



恐らく物としてはかなり良いものだ。



強度や魔力伝達率も悪くない。



恐らくマーズ達に持たせた刀と同等レベル。



見なくても分かるがこいつがSランク冒険者のスルベト-アリケン。



確か、黄金の風とかいうパーティ名だったはず。



周りに3人の女性が立っていてどの人も魔法士だ。



赤、青、黄の神で似たような顔つき。



美人形だ。



それにしてもさっきの話しは一体なんだったのだろう。



そりゃSランクの冒険者ならサイクロプスくらいわけないとは思うが。




サイクロプスとはこの階層にいるモンスターでレベル350。



1つ目、一角の鬼で、体格はオーガと同等。



しかし力、素早さ共にオーガの比ではない。



その上魔法耐性もそこそこ高い。



「かわい子ちゃん達。どこのパーティだい?」


「双天の誓いと言うパーティです。」


「そぉかそぉか。それは良いんだ。それよりもこれから僕と一緒に行かないかい?」


女性陣は完全に目が点になっていた。



「分かるよ…僕に見とれてしまうのは…でも何か言ってくれないと…ね?」


初対面の女性に全力ウインクとか実際にする奴いるんだな。



女性陣の顔が素晴らしく冷たい真顔になっている。



俺たちの見た事の無い顔ってあったんだな。



無感情とはこの顔の事だろう。



ダジ。興味無いからって盾を磨くな。少しは聞いてやれ。



「さぁ。僕と行こう!」


「あ、ごめんなさい。無理。」


「……え?

いや、僕としたことが聞き間違えてしまったかな?」


「無理です。」

「嫌です。」

「拒否します。」

「受け付けないです。」

「生理的に。」


女性が本気で嫌な時ってあんな顔をするんだな。



まるで汚物を見るような目だ。



「恥ずかしがらなくて大丈夫だよ?ほら。」


あいつのメンタルどぉなってんだ?錬金術で造られたのか?



「あ、無理です。触らないで下さい。気持ち悪いので。」


「き…」


「あんた達ねぇ!」


「良いんだよ。皆。この子達はまだ分かっていないだけさ。許してやってくれ。」


「スルベト様…」


「なんとお優しい…」


「あんた達感謝しなさいよ!」


「どっちでもいいのでとにかく近寄らないでください。割と本気で。」


うちの子達容赦無さすぎ。



ドゴーン…



いきなり響いた轟音にその場の全員が弟の方を向く。



サイクロプスが三体続けて部屋に入ってくる。



「三体?!」


「スルベト様!ここは1度下がりましょう!」


「そぉだね。君達も早く!」


「白主様。少し派手になってもよろしいでしょうか?何故かイライラしてしまって…」


「お、おぉ…お手柔らかにな。」


俺の言葉を聞いてか聞かずか、女性陣が大暴れ。



サイクロプスが可哀想に思えるほどのオーバーキル。



女性って怒らせると本当に…怖いよね。



「なんかスッキリしちゃいました!」


キラキラした笑顔でこちらに向かってくる女性陣をなんて言って迎えれば良いのか俺のには分からない。



ライルも苦笑い。



「き、君達…強いんだね…」


「強い…?」


「何を言ってるんですか?」


「いや、だってサイクロプスを三体瞬殺してたじゃないか…」


「え?あれですか?」


「時間が掛かりすぎで怒られるかと思ったくらいですよ?」


「え?」


「白主様か黒主様なら呼吸すらさせずに消え去ってますし。」


「私達なんてまだまだよね…」


「精進しなきゃね!」


「そ、そぉなのかい…?」


「俺に振るな。」


「僕に振られても困るよ。」


「お二人共本当に謙虚なんですから。」


「それより先を急ぎましょ!」


ポカーンとしている黄金の風の皆さんを横目に先に進む。



「ま、待ってくれ!」


「まだ何か?」


「いや、その先は行かない方が良い!」


「何故ですか?」


「僕達がこのダンジョンに来てここまでしか来られなかったのには理由があるんだ。

その先にはボスがいる。」


「ボス?」


「このダンジョンのヌシとも言えるモンスターさ。」


「見たんですか?」


「あぁ。キマイラだ。」


「キマイラ…?」


「行けば分かるよ。ただ僕が見た限りレベル550はくだらないと思う。」


「レベルが550?!」


「あぁ。見ただけだから確かなことは言えないけどはっきり言って別格だよ。」


「それでここに留まっているわけですか?」


「あぁ。」


「……分かった。ありがとな。」


「行くのかい?!」


「まぁなんとかなるんじゃないか?」


「そんな軽く…?!」


「ヤバそうなら逃げるよ。」


「あ、あぁ…」


俺たちはそのまま先に向かう。



扉の向こうには今までで1番大きな階段があった。



下まで降りると他とは違い大きな通路が真っ直ぐ続き大きな扉が見える。



高さ5メートルはある両開きの扉だ。



「本当にキマイラがいるのでしょうか?」


「嘘には聞こえなかったからいると思うぞ。」


「となると私達では…」


「まぁ全員レベル400越えたくらいだもんな。」


「相手を見てからだけど本当に550以上のレベルで相手が難しそうなら僕達が相手するよ。」


「分かりました…」


「とりあえず行ってみよう。」


俺とライルを先頭に大きな扉を開く。



少し重たいが見た目よりずっと軽く開いた。



中は直径50メートルはある円形のドーム型。



そのど真ん中に見えるのは確かにキマイラ。



上半身はライオンの様な生物で下半身は熊の様な生物だ。



違うのはサイズ。



通常のライオンや熊の3倍はある。



レベルは567。



見ただけで分かった。



まだ6人には荷が重い。



俺は即座に6人に防御魔法を掛ける。



ダンジョン内では常に2段階の結界を解いてある。



ギィィィン



6人を狙ったキマイラのキバと爪が防御魔法に阻まれて音を出す。



金属で出来ているかの様な音だ。



6人は反応すら出来ていなかった。



それだけ速いという事だ。



自分達が気づかぬうちに守られた事に悔しがっている顔が見える。



「兄さん。僕がやる。あの爪や牙は刀だ。」


「へいへい。分かったよ。」


俺も戦いたかったのに。



俺も6人の近くに言って防御魔法の中に入る。



「あ、あの…お一人で大丈夫でしょうか…?」


「あの程度の相手なら問題ないだろ。」


ライルが刀を抜き刀を寝かせて構える。



キマイラも相手の強さが分かるのか簡単に攻撃してこようとはしない。



ライルの周りをグルグルと回りながら威嚇している。



対するライルは一切動かず静止している。



動かないライルに業を煮やしたのかキマイラが爆発的な速度でライルに襲い掛かる。



それでもライルは動かずキマイラが遂にライルと交差する。



「黒主様!」


マーズとアデルカが心配そうにライルを呼ぶ。



しかしライルはキマイラに背を向けて納刀する。



「え?」


「本気を出すには足りない相手だったか?」


「んー。やっぱりブラックファングに比べるとね。」


「あれ?あの…キマイラは?」


「あ、そっか。もぉ死んでるよ。」


「え?!」


「そっか。お前達は見るのは初めてか。

ありゃライルの剣技で…」


乱桜(みだれざくら)ってわざだね。技と言っても10連撃ってだけだけど。」


「え?!今切ったのですか?!」


「まだ見えなかったか。」


「ま、まったく見えませんでした…」


「少しいつもより速かったからね。」


「??

それなのに何故キマイラは切られていないのです?」


「鋭すぎる斬撃で切れた後の組織がくっつこうとしてるんだ。でも切れてるから実際にくっつくことは無いし死んでるぞ。」


「………」


マーズがおそるおそる近づいて刀の鞘でキマイラを突く。



ドチャドチャ



生々しい音ともに綺麗に分割されたキマイラが崩れ落ち霧散していく。



「す、凄すぎますよ…」


「魔石か?」


「ですね。ひとの頭くらいありますかね?」


「黄色い魔石か。何かに使えるかもな。」


「ここまで大きい魔石は初めてみますね…」


「売ったら良い金になるかもな。」


「その前に色々疑われますし色んな所から目を付けられますよ…」


「それは…」


「まぁそれは保留だね。」


「それにしてもここでダンジョンは終わりか?」


「みたいですね…他にトビラは見当たらないですし…」


「ボスってんだから何かほうび的な物があると思ってたのに残念過ぎるな。」


「いや、あの魔石で充分凄いと思いますが…」


「あのサイズの魔石なんざアイテムボックスな山ほどあるしな…」


「…改めてお二人の規格外がよく分かります…」


「そぉかな?」


「はい…それより攻略も終わりましたし戻りますが?」


「…………」


「白主様?」


「んー…おかしいなぁ。」


「どぉかされたんですか?」


「ん?いや、俺の予想ではここいらでこのダンジョンの主が出てくるはずだったんだが…」


「??

ダンジョンの主は先程のキマイラでは…?」


「いや、キマイラってのは合成されたモンスターだろ?」


「はい。2体の別種モンスターを組み合わせた……あ。」


「そぉ。つまりモンスターを組み合わせた奴がいるわけだ。オレの予想ではそいつがこのダンジョンを作ったからと思うんだよな。」


「そぉ…ですね。しかしなんの為に?」


「分からんが…推測ではダンジョンを通じて何かを集めてるのかな。」


「何か…ですか?」


「ダンジョンで死んだ冒険者ってのは壁や床に飲み込まれていくだろ?」


「それを誰かが使っていると言うことですか?」


「そのまま使っているのかどぉかは分からんがな。少なくとも何かに使ってはいると思う。

そんでその相手は多分今痴情にいる種族を憎んでるか…少なくとも良くは思ってない連中って所かな。」


「地上の種族ですか?」


「あぁ。いくつか昔話を聞いたことがあってな。

相当昔の話だがこの地上にはもう1つの種族がいたらしい。母さん達に聞いたことがあるからまず間違いない。」


「もしかして…魔族の事ですか?!」


「あぁ。種族間の戦争で数の少なかった魔族は追いやられ絶滅したと聞いている。」


「くくく……ここまでばれてたら出ない訳にはいかないね。」


中央の地面からぬっと現れたのは浅黒い肌、真っ青な短髪の髪を掻き分ける様に耳の上から後頭部まで伸びた2本の角、赤黒い目をした青年だった。



「どぉも。俺がその魔族だ。」


「へぇ。魔族ってそんな感じなのか。」


6人が前に出ようとするのを手で制止して話しをする。



「魔族を観るのは初めてか?」


「あぁ。聞いた話では魔族ってのは魔法について凄く詳しい種族らしいな?」


「そぉだな。このダンジョンもその魔法技術の1つで造られているぞ。」


「そいつは凄い!ぜひ教えてくれないか?!」


「残念だがそれは出来んな。」


「うーむ。そぉか。残念だ。自分で研究するか。」


「変わった人間だな。」


「そぉか?まぁよく言われるが。」


「魔族と聞くと大抵は目の色を変えて殺しに掛かってくるんだがな。」


「まぁ話では魔族の恨みを買って相当痛い目にあったらしいしな。」


「人間が忘れても我ら魔族はあの時の事を覚えているからな。恨みはお互い様だろ。」


「それもその通りだな。戦争なんだからお互い様だろうな。」


「本当に変わった奴だ。だが間族の存在に気付かれた以上はここから出すわけにいかなくなった。」


魔族の青年がてをかざすと扉がダンジョンの壁と同じ石材で覆われる。



「ダンジョンはなんの為の施設なんだ?」


「まぁ死にゆくものの最後の質問だからな。答えてやろう。

我々魔族はモンスターに近い性質を持っていてな。モンスターを殺しても経験値が得られないんだ。代わりにモンスターを生み出すことが出来るのだがな。」


「へぇ。すげぇな。

って言うとここに来る冒険者自体が目的なのか。」


「その通りだ。我々は錬金術も長けているからな。ミスリルの武具はお前達にとっては欲しい物だろ?」


「まぁ大概はな。」


「それを餌に寄ってくる冒険者を確保してその魔石を頂くんだ。」


「………ふむ。なかなか面白い情報だな。」


つまりモンスターの魔石では経験値が入らないのにその他の生物の魔石ならば経験値が入るという事だ。



モンスターの持つ魔石とその他の生物の魔石に違いがあるらしい。



根本的に他種族と相容れない存在なわけだ。



魔族についてもっと知りたいがこいつからこれ以上は聞けそうに無い。



「名前はなんて言うんだ?」


「俺の名か?俺はゾイドと言う。」


「ゾイドか。色々教えてくれてありがとな。その名は覚えておいてやるよ。」


俺はライルを含めて全員がに防御魔法を張る。



今までとは違い3つ結界を解いてある。



ゾイドのレベルは612。



結界を全て解かないとヤバそうだ。



「くはは!勝った気か?!死ぬのは貴様だ!」


ゾイドが手をかざすと俺の周囲に水の槍と氷の刃が複数出現する。



それが一斉に俺の元に襲い掛かる。



それが一瞬にして全て気化する。



「なっ?!」


「おいおい…俺たちはキマイラを倒した冒険者だぞ?この程度の魔法で倒せると思ったのか?せっかく先手を譲ってやったのに。」


「……くはは!

いや、そぉだったな!謝るよ。俺の最大魔法で死んで貰うとしよう。」


「そぉ来なきゃ!」


「余裕そうだが後悔しても遅いぞ。」


「あー。兄さんの悪い癖出てるよ…」


「白主様の悪い癖ですか?」


「相手がどれだけ強くても弱くても関係なしに知らない魔法を見てみたいととにかく相手の魔法を引き出してその目で見ようとするんだよ…」


「魔法でお宅というヤツですか?」


「うん。おかげで何度か死にかけたってのに…」


「大丈夫なんですか?!」


「まぁ今回はたぶん大丈夫だと思うよ。でも後でまた強く言っておかないとね…」


そんな事を言われていることなど知らず俺はゾイドの魔法をワクワクして見ていた。



見たことの無い魔方陣だ!



「死ね!

水氷縛牢(すいひょうばくろう)!」


魔力量的に第九位魔法!



水と氷の粒が超高速で俺の周りを回っている。




そしてそれが超高速のまま俺に向かって飛来する。



まるでガトリングか何かで撃たれている様だ。



これは凄い!



俺は新しい魔法に感動しながらもすべての攻撃を気化する。



ここまでの魔法だと単純なほのうではまったく気化出来ない。



俺が使ったのは第九位火魔法 白炎。



炎を超高温で出現させると赤でも青でも無く白い炎となる。



その温度は数千度となり、近づくもの全てを気化させる。



もちろん俺には熱さは感じないが。



「な、なんだと?!」


「いやー。凄い魔法だった。」


「そ、そんな魔法見たことないぞ?!なんだその炎は?!」


「こいつは俺のオリジナルだからな。今度は俺の番だな。

行くぞ。」


「ちょっ…待ってくれ!」


俺は杖を突き出す。



オレの周りで待機していた白い炎がゾイドに向かって飛んでいく。



「や、やめ…」

ジュッ


なんの抵抗もなくゾイドだったものは一瞬で気化した。



ゴト


先程よりもさらに大きな魔石が落ちる。



「しまった。魔族は死んだ後魔素として霧散するか知ろうと思ったのに!!」


頭を抱える俺にシリアとサーシャ、そしてカヤリスが凄い剣幕で近づいてきた。



「「「はーくーしゅーさーまー?!」」」


「え?!なになに?!なんでそんなに起こってる?!」


「なんでも何もありません!あえて相手の攻撃をウケるなんて!」


「え?…あー。あははー…」


「笑い事じゃないですよ?!」


「いやー、その…気になるでしょ?」


「気になってもダメです!もしもの事があったら私達どぉしたら良いんですか?!」


「あー…ごめんなさい…」


「次にやったらご飯抜きですからね!」


「そ、それは酷いぞ?!」


「僕もそれでいいと思うよ。」


「ライルまで!?」


「何回兄さんに言ったと思ってるの?反省しないなら罰はあって然るべきだと思うよ。」


「そんなー!!」


「やらなければいい話ですから。約束!してください。」


「わ、分かったよ…」


あの3人が怒ってタッグを組むと有無を言わさない迫力があるな…



やっぱり女性を怒らせるのはよろしくないな。



俺は落ち込みながらボス部屋を出る。



階段を登ると黄金の風の一同が待っていた。



「お!戻ってきたね。無理に戦わなくて良かったよ。危険だからね。」


「ん?お二人が倒しましたよ?」


「…………え?」


「キマイラもその後に出てきた更に強いボスも1対1で。」


「………あははー。そんな事あるわけないじゃないか!」


「まぁ信じて貰えなくても構いませんが私達は帰りますね。」


「ちょっ!ちょっと待ってくれないか?!その…君達のパーティ名を教えてくれないか?」


「双天の誓いですよ。」


「覚えておこう…」


「では。」


うちの子達あの人の事完全に仕事相手としか思ってないなー…素っ気なさ過ぎる。



どぉやら魔族が死んでもダンジョン自体は無くならない様だ。



モンスターの湧きについては分からないが恐らく関係ないだろう。



キマイラはさすがに二度と出てこないだろうがあのボス部屋は何も無い部屋になるのだろうか…



いくつか疑問派残るが検証する必要性も無いためさっさとフージカを使って外に出る。



Aランクの冒険達はまだ帰ってきていない。



鉢合わせて説明するのも面倒なのでニーナ達を呼んで出発の準備を進め整える。



時間的には3時頃だろうか。時計という概念が無いから分からない。



「ダンジョンの後略は終わったのですか?」


「あぁ。最深部行ってボス倒したら魔族出てきたぞ。」


「魔族?!」


「声大きい。」


「も、申し訳ございません…しかし魔族は滅んだと聞いていたので…」


「上手く逃げてた奴らがいるみたいだな。

恐らく他のダンジョンにも最低1人ずつはいるだろうな。」


「大丈夫なんでしょうか…」


「それを言ったところでどぉにも出来んだろうからな。

魔族はSランクの防御より強いぞ。」


「それ程ですか…」


「そんな奴がいると分かっても倒せないとなるとぎゃくにパニックだ。どちらにしてもモンスターを倒してLv上げは必須だしな。」


「……白主様はすべてのダンジョンを廻るおつもりですよね?」


「あぁ。まだまだ魔族には聞きたいこともあるしな。」


「その…気を付けて下さいね?」


「ありがとな。さ。出発だ。」


準備を終えると俺達の馬車はタランタに向けて進み出した。



イリヌイは相変わらずあまり喋らなかったが少しは気を取り直したのかたまにニーナと何かを話していた。



「タランタまではどれくらい掛かるんだ?」


「ダンジョンまでのペースだと…3日程でしょうか。」


「そぉか。

カヤリス。」


「はい?」


「お前の奴隷紋もそろそろ大詰めだからな。タランタまでに解くつもりだから今までより時間を割いて解除するぞ。」


「ありがとうございます。」


「朝昼夜の3度やる。とりあえず今日は寝る前に1度、明日から3度だ。」


「分かりました。よろしくお願い致します。」


「あ、あの…」


「ん?」


「その…カヤリスさんは奴隷ですよね?」


「あぁ。イリヌイさんから見ると同族が奴隷にされてて気持ちのいいものでは無かったな。」


「あ…いえ…その、高位の奴隷紋とは解除出来るものなのですか?」


「あぁ。時間は掛かるが一応な。」


「そぉなんですか…その…失礼かと思いますが何故ですか?」


「奴隷紋を解除する理由か?」


「はい…」


「簡単な事だ。カヤリスは俺の家族みたいなもんだ。そんな人に奴隷紋はおかしいだろ?だからだよ。」


「そぉなんですか…ごめんなさい。私何か勘違いしてたみたいです…」


「まぁパーティ内に奴隷の10人がいれば勘違いもするわな。」


「イリヌイさん。私が黒い豹人と知ってあなたはどぉ思いましたか?」


「……助けて貰っておきながらこんな事を言うのは間違っていますが…怖かったです…」


「はい。私の知る限り精神が病んでいる人意外で私を恐れなかった人はいませんでした。

祟られる。殺される。そんな話を何度されたことか…」


「………」


「ですが。そんな事は今となっては笑い話です。

ここにおられる、私の主様。白主様は私に関する話を聞いて少しも私を遠ざけませんでした。

それどころか助けて下さると…そして私に家族…いえ。全てを捧げて仕える事を許して下さいました。

今までの事など全て吹き飛びましたよ。こんなにも…こんなにも幸せで良いのかと不安になるほどです。」


「……」


「私は正直奴隷紋を解除して頂かなくても構いませんでした。ある意味これは白主様のものという証明の様な物ですから。散々嫌ってきたこの奴隷紋が愛おしく思える日が来るとは夢にも思いませんでした。

ですがコレを解除して頂けたら…私はもっと多くの場所で白主様のお力になれる事が出来るんです。これに勝る喜びなどありましょうか…」


「本当に…本当に幸せそうですね。」


「もちろんですよ。

イリヌイさん。確かに今あなたは悲しみの中にいます。ですが、それでも生きているんですよ。

あなたも私と同じ様に白主様に助けられた身です。ならば、白主様にも、死んで行った仲間の方達にも、恩を返す責任があります。」


「責任…」


「はい。私は白主様に直接返すことでその責任を果たしたいと思ったので全てを捧げました。

ですがあなたにはあなたのやり方で責任を果たさなければならないと思います。その第一歩が遺族の方々への報告です。」


「………」


「中にはあなたに殴り掛かり子供を返せと怒鳴る人もいるでしょう。

中には泣いて縋る人もいるでしょう。

ですが、それがあなたの責任なんです。仲間が大切であったのなら、しっかりと責任を果たさなければなりません。

きっと白主様もそれを望んでおられます。

ならばそれに答えることこそ恩返しであると、思いませんか?」


「…はい……………はい……」


「イリヌイさん。」


「はい。」


「俺は恩を返して欲しいなんて思ってないよ。

でも、もしそぉ思っているなら残った遺族や、これからそぉなるかもしれない人達の為に全力を尽くしてくれないか?」


「……はい!」


「いい返事だ。」


イリヌイの顔に悲しみは有る。



それでも前を向いてくれた。



これならきっと良い方向に向いていくだろう。



辛い時期は誰にでもある。



でもそれを乗り越える力を、きっとこの人は持っているだろう。



それからはイリヌイさんはよく喋る様になった。



どこか寂し気な空気を纏っているがそれはある意味必要ならものだろう。



見張りもぜひと言われて参加してもらうことにした。



そんな2日目の夜。



イリヌイと見張りをしていた時の事だった。



「キースさん。それ何を読んでるんですか?」


「ん?あぁ。前にトラタニス王国の地下墓所で見つけた日記でな。」


「へぇ…どんな事が書かれてるんです?」


「サシビルって人が著者でな。どぉやら獣人族の人らしい。」


「サシビル…」


「どぉかしたか?」


「どこかで聞いた様な…」


「ほんとか?!」


「はい…誰でしたっけ……確か父と母が話しているのを昔聞いた様な気がします。

もしかしたら父と母なら知っているかもしれません。」


「それはありがたい情報だな!」


「多分ですよ?気の所為で知らないかもしれませんので。」


「いや、それでも嬉しいよ!なんの手掛かりも無くて探し回る覚悟だったからな。」


「帰って落ち着いたら聞いてみますね?」


「ありがとう!」


思わぬ所で情報が入った。



これでやみくもに探さなくても良くなるかもしれない。





翌朝。


「よし。これで終わりだ。」


「ありがとうございます!」


遂にカヤリスの奴隷紋が消えた。



そしてそれと同時に枷も消えた。



「枷が消えて大分スッキリしたな。

枷の着いてた部分は青アザ出来てるな。」


俺はヒールを掛けてやる。



「よし。これで完璧だ。」


「本当にありがとうございます!」


「気にするなって。」


「あ!カヤリス遂に取れたのね?!」


「そっちの方がスッキリしてて良いですよ!」


「なんか恥ずかしいですね…」


カヤリスは照れながらも嬉しそうにしていた。



それとは逆にイリヌイは緊張していた。



もうタランタは目の前だ。



これからやる事を考えれば緊張するのも当然だろう。



着いていこうかと聞いたが自分の仲間の事だから1人で行くとしっかりとした返事を返された。



イリヌイがそぉ言うならば俺達に言う事は無い。



昼前にはタランタの門前に着いた。



しっかりとした石造りの壁に大きな門がみえる。



何人かの商人達が並んでいたがそれ程待たずに俺達の番になった。



他種族の入国は厳しいかもと思っていたが割とすんなり入る事が出来た。



荷物がほとんど無い事もあったとは思うが。



何も無いではさすがに怪しまれるので必需品はなに等を出しておいた。



門から入るとトラタニスとは全く違った街並みだった。



地区の違いもあるとは思うがほとんどの建物は木造でガラスはほとんど無い。



しかしトラタニスとは違った美しさがある街並みだった。



聞いた話ではタランタの特産品は質のいい木材。



タランタ近郊でしか育たないタラントという木があり、その木を使った物が数多くある。



建築材としてもつかわれている。



植林もしているらしい。



「ようこそ!タランタへ!」


「へぇ!こりゃすごいな!」


「美しい街並みでしょ?私達の育った街は!」


「あぁ!」


街を歩くのは獣人族の人ばかり。



犬や猫、イタチやタヌキ。沢山の獣人族が行き交っている。



人種もいるにはいるがかなり少ない。




「この道を真っ直ぐ行くと右手に熊の足跡がモチーフになってる看板があるわ。その熊の手っていう宿屋がおすすめ!料理も良いし大きな部屋もあるし、粗野な人もあまりいないから。少し高いけどね。」


「イリヌイのオススメなら行くしかないな。」


「大抵の事はそこの看板娘のシルビンに聞くと教えてくれるから聞いてみると良いですよ!私の紹介って言えば直ぐに通してくれると思うので。」


「ありがとな!」


「いえ!」


イリヌイが馬車から降りる。



イリヌイの実家の場所を聞くとそんなに離れていない様だ。



「それではありがとうございました!私は…行ってきます!」


「頑張れよ。」


「またねー!」


「はい!」


イリヌイは人混みの中に消えていった。



馬車をゆっくりと走らせるとイリヌイの言っていた看板が見えてきた。



馬車を止めるスペースもあるのでそこに止める。



「あら。いらっしゃい。」


そこには犬人種の女の人が立っていた。



茶色い髪を後でお団子にしていて、細い目、薄い唇で喋り方はおっとりしている。



丸い耳がひょこひょこ動く。



「お客さんよね?」


「はい!」


「馬車はここで良いので中にどうぞ。」


その人に連れられて中に入る。



どぉやら食事も出している様で中は凄い人だった。



「お母さん!こっちこっち!」


奥では熊人種の女の子が手招きしている。



短く切りそろえられた茶色い髪、茶色い瞳。



ぱっちりした目に薄い唇。



連れてきてもらった女の人とどこか似た顔立ちだった。



娘さんという事は多分あの子がシルビンだろう。



「出来たぞ!」


奥から料理の入った皿をカウンターに出したのは大きな熊さんだった。



熊人種、どちらかと言うと獣に近いのか毛深い。つんつんした茶色い髪、モサモサの髭、大きな目。



父親だろう。



「はいはい。あ、シルビン。この方達お客さんみたいだからよろしくね。」


「はいはーい!お兄さん達は宿?食事?」


「宿だ。イリヌイから紹介されてきた。」


「そぉなの?!じゃあ割り引いとかないとね!

宿なら…大部屋もあるけどどぉする?」


「大部屋で大丈夫だ。」


「分かったよ!食事は朝は出すよ!昼は食事、夜はお酒も出すからどんどんお金落としてね!うちはこの辺じゃ最高の料理をだしてるから!」


「ゴービンの旦那の料理は最高だぜ?!」


「だよな!」


「おめぇら嬉しい事言ってくれるじゃねぇか。」


「ここのファンは多いのよ!」


「その様だね。僕達もお金を落とさないとね。」


「まいどー!街の事で知りたい事とかあったら聞いてくれれば教えるよ!ただ今は忙しいから時間が空いた時ね!」


「はいよ。それで?1泊どんくらいだ?」


「安くして1泊1人大銅貨1枚!」


「とりあえず10日で。」


「はーい!一応この代金から食事代も払えるよ?」


「なるほど。じゃあ20日分出しとくよ。」


「まいどー!

荷物は?」


「さっきお前の母さんが運んでたぞ。」


「分かった!部屋は2階の一番奥!荷物は持っていくね!」


「ありがと。部屋に荷物置いたら昼飯食いたいんだが大丈夫そぉか?」


「今日は一杯だから待ってもらっちゃうことになるかなー…あ!それならもう少し前の道を進むと出店が沢山ある通りに出るからそこで食べ歩きしてみたら?他では食べられない物も沢山あって面白いよ!」


「それは面白そうだな。ありがと。」


「いえいえ!」


「シルビンちゃーーん!」


「はいはーい!

じゃあ後で!」


「あぁ。」


俺達は2階の一番奥の部屋に向かう。



大部屋と言うだけあってこれだけの人数が入っても大丈夫な広さだ。



ベッドも人数分プラス1つある。


「着きましたー!」


「そんなに長い旅でも無かったでしょ?」


「私達は度自体初めてだったから。」


「あ、そっか。」


「でも面白かったです!みんなで外で食べるご飯も、その後のおしゃべりも!」


「それは良かったわ。これこそ冒険者の楽しみの1つだからね!」


「とりあえず飯食いにいかないか?」


「そぉですね!どんな物があるのか楽しみです!」


宿屋を出てシルビンに言われた出店通りに近づくにつれていい匂いが漂って来る。



「お腹空くー!」


「早く行きましょう!」


手を引かれて通りに出る。



そこには通りを埋め尽くす程の人と出店がが並んでいた。



立ち上る煙はどれも食欲を唆る。



「うわー!凄いですね!」


「な、なんか圧倒されちゃいますね?!」


「うわ……俺人混みの苦手なんだよなー…」


「僕も得意では無いかな…」


「おふたりは待っててください!私達で確保してきます!」


「え?そんなの悪いよ。」


「いえ!これくらいやらせて頂かないと!」


「お二人は…あそこの木の下にいてください!」


雑踏から少し離れた所に木が立っていてその下には芝生の様な草が生えていた。



公園では無さそうだが人もあまり居ないしちょうど良さそうだ。



人混みが苦手なのもあって素直にそこに場所取りに行くことにする。



ライルと座って眺めているとなかなか面白い光景が見える。



カヤリスは人混みの中隙間を縫うように進んでいるのにぶつからずにスイスイ抜けていく。



ダジは逆にドカドカと入っていく。



マーズやアデルカは声を上げながら隙を見てひょいひょいと前に進む。



シリアは割って入るように体をグイグイねじ込み、サーシャはあたふたしながらもしっかりと列に並ぶ。



性格出てるなー。



ちなみにニーナとブームは共に避難中だ。



獣人族が多いだけあって耳や尻尾が沢山ある。



獣人と言っても人に近くカヤリスの様に耳と尻尾以外は人間の様な人から二足歩行の獣と言われても分からないような人までいる。



「持ってきましたー!」


思ったよりも早く全員が食べ物を持って戻ってきた。



「ありがとね。

座ってたべようか?」


「はい!」


「それにしても活気だけで言えばトラタニスよりあるんじゃないか?」


「タランタでは貴族と平民、所謂階級差別があまり無いんです。」


「あまり無い?」


「少なからずありますし、種族による差別もありますが人種ほどではありませんね。」


「店も高い安いに関係なく色々な階級の人が来るから賑わってるのか。」


「この場所はあそこの貴族の、ここはあそこの貴族…なんて事も無ければ賑わうかと思いますよ。」


「縄張り意識的な事か。」


「はい。」


「それはいい事なんじゃないのか?」


「良い部分もありますが…例えばトラタニスの貴族からすると平民と仲良くする貴族は貴族では無い。なんて事になります。」


「コネクションを失うわけか。」


「タランタのみで言えばそれ程問題では無いでしょうが、国を挟んだ商いなんかでは致命的でしょうね。」


「いい所も悪い所もあるわけか。」


「はい。」


「この国では人種があまりよく思われていないと聞いてたが?」


「この辺りは人種の商人が最も出入りする場所なので偏見も少ないのでしょう。

逆に言えばここ以外の地区ではかなり嫌な顔をされますよ。」


マーズの顔が曇る。



昔の体験談なんだろう。



そうなるとここ以外の地区では大人しくしている方が良さそうだ。



街並みを眺めながら昼食を摂った後、少しのんびりする。



「そぉいや小包渡さないとな。」


「そぉ言えば…そんな依頼受けてましたね。」


「とりあえずギルドに向かうか。」


「はい!」


ギルドはすぐそこだ。



ニーナとブームは宿に戻って貰って俺達だけで行くことにする。



木でできた家々に囲まれるように石造りの大きな冒険者ギルドが立っていた。



冒険者ギルドの様相はトラタニスとほぼ同じ。



大きさも見た目も。



どの街に行っても直ぐに分かるようにとの配慮らしい。



少し先に商業ギルドも見えるがこちらもトラタニスとほとんど変わらない。



ギィ…



扉を開いて中に入るとトラタニスのギルドでも感じた冒険者達独特の空気を感じる。



「こんにちは。」


「どぉもこんにちは。私は受付をさせていただいています、マーギーと申します。今日はどんな御用でしたか?」


マーギーさんはクネクネとウェーブの掛かった長い赤髪。



垂れ耳、タレ目でおっとりした喋り方で癒し系の空気を醸し出している。



「トラタニスからの配達でして…この小包です!」


「えーっと……はい。確かに承りました。これで依頼完了です。報酬をお渡ししますね。」


「ありがとうございます!」


「マーギーさん。」


「はい?」


「トラタニスから来たんだが俺達に良さそうな依頼ってあるかな?」


「えっと…双天の誓い…Bランクパーティの方々ですね。

あれ?ダンジョン攻略に向かったとありますが?」


「あぁ。行ってきたぞ。」


「でしたら素材が余っていませんか?」


「あるにはあるぞ。」


「でしたら譲ってもらえないでしょうか?」


「何が入用なんだ?」


「えーっと…」


「私が説明しよう。」


「ギルドマスター?!」


後ろから声を掛けられて振り向くと底にはギルドマスターと呼ばれる女性がいた。



仕事帰りなのか薄い緑色のアーマーで全身を包み、肩まで伸びた緑色の髪は少しカールしている。



街でもあまり見なかった狐人種。



ピンと立った耳が可愛らしい。



切れ長の目からは強者の空気を感じる。



キリッとしていて整った顔立ちで男よりも女にウケそうだ。


「すまないな。マーギー。」


「い、いえ!」


「君達が噂のパーティだな?」


「いい噂…って感じでは無さそうかな。」


「残念ながらね。」


「はぁ…」


「噂とは少々違うみたいだな?」


「どんな噂が?」


「トラタニスの兵士達を半殺しにして、血を笑いながら浴びる極悪非道の悪魔の様なパーティと聞いたぞ。」


「尾ひれ所か全く違うものになってるな…」


「あはは!まぁ噂なんてそんなものだよ。挨拶が遅れたが、ここのギルドマスターをやっているギギレルだ。」


「どぉも。俺はキース。こっちがライル。」


全員の紹介を終えると立ち話もなんだからと奥に通された。



着替えてくるから少し待ってくれと言われて部屋の中で待つ。



「待たせてしまってすまないな。」


鎧で分からなかったが割と胸………



「白主様。」


いや、見てないぞ。そんなには。



「さて、どこから話したものか…」


「物資が不足しているのか?」


「いや、不足しているわけでは無いが、不足するかもしれないんだ。」


「と言うと?」


「現在西のブルリオ大森林で少々ゴブリンが増えすぎていてな。今もその調査から帰ってきた所だ。」


「ゴブリン?」


「あぁ。」


「ゴブリンくらいならあんたが出張る必要なんて無いだろ?」


「私の強さが分かるのか?」


「大体だがな。」


「まぁ隠すことでもないからな。

私はレベル418。Sクラスの冒険者だ。」


「だろうな。ならなんであんたが出張る?」


「ゴブリンキングが誕生したと思われる。」


「ゴブリンキング…」


「あぁ。レベルで言えば大した事は無いが統率力に優れた個体でな。本来多くても20体程度の群れしか作らないゴブリンが万単位で行動する様になる。」


「それは…確かに1人じゃどぉにもならんな。」


「ゴブリンキングの討伐で群れは散るが常に群れの中央にいて簡単には討伐できん。」


「こっちもそれなりの人数を集めるとなると物資が必要なわけか。」


「あぁ。つまりゴブリンの対策に使えそうな物ならばなんでも欲しい所なんだ。」


「それで集めているってわけですね。」


「あぁ。」


「穏やかな話では無いわけか。」


「あぁ…」


「分かった。また明日にでもまとめて持ってくる。」


「良いのか?!」


「そりゃ良いだろ。」


「す、すまない…正直断られると思っていた…」


「ん?なんでだ?」


「白主様…ここはタランタです。」


「…あぁ。なるほど。人種だからか。」


「僕達のパーティ見れば分かると思いますけど種族にはこだわりませんので。」


「困った時はお互い様…だろ?」


「あはは!本当に噂とはあくまても噂だな!」


「あ、そぉだ。1つお願いがあるんだが。」


「なんだ?」


「素材は売るが出来れば俺達からの資材だと言わないで欲しいんだ。」


「??

それは構わないが良いのか?」


「別に名を売りたいわけでも力を誇示したいわけでもないからな。」


「私達は出来る限り静かに過ごしたいので…」


「あははははは!本当に噂ってものは!

分かった!約束しよう!

明日昼過ぎに来てれ。マーギーには伝えておくよ。」


「あぁ。

ギギレル。」


「なんだ?」


「これは貸しだぞ?」


「あはは!あいわかった!覚えておこう!」


「これからよろしくな。」


「こちらこそよろしく頼む!

それより…お前達強いだろ?」


「唐突だな?」


「気になってしまってな。失礼をしてしまったか?」


「いや、気にするな。

そぉだな…誰にも言わないでくれよ。」


「もちろんだとも!」


「俺達は全員レベル400越えだ。」


「なっ?!そこまでか?!」


「そんなに驚く事かな?」


「レベル400台となれば冒険者ランクはSだぞ?!」


「そぉだったのか。知らなかったな。」


「はい。私達も初めて聞きましたね。」


「レベル400台になったのはダンジョン内での事ですし…なったのも初めてですからね。」


「そぉか………

重ね重ねすまないんだが…」


「ゴブリンキングの討伐隊か?」


「…あぁ。」


「参加か…よし分かった。ギギレル。」


「なんだ?」


「参加してやる。」


「本当か?!」


「ただし。条件がある。」


「な。なんだ…?」


「貸し3つにしろ。」


「………それだけで良いのか?」


「何を言う!ギルドマスターに恩を3つも売れるんだぞ?」


「私個人に対する貸しで済むのなら安すぎるぞ?!」


「良いんだよ。ギギレルのそぉ言うこと言っちゃう素直さが気に入ったんだ。」


「……分かった。ならばもし返す時が来たならば。他の何を置いてもお前達に答えると誓おう。」


「頼もしいな。」


「任せておけ!」


「よし。交渉成立だな。

それで?詳細は?」


「その前に。明日来た時にマーギーにお前達をSランクに上げるように伝えておく。」


「ん?別に今のままで良いが?」


「それは良くない。実力に合ったランクにしなければ他が育たないからな。」


「んー…そぉ言われてしまうとな…」


「それに、Sランクならば人種でもそうそう甘くは見られない。」


「…なるほど。ゴブリンキングとの戦いの際に役立つというわけか。」


「あぁ。それに私より強そうな奴らが私より下のランクなど私のプライドが許さんよ。」


「あはは!分かりました!それでお願いします!」


「よし。

詳細はまだ調査中でな。細かい事が分かったらマーギーに伝えておくよ。」


「分かった。」


「よし!それではまた明日よろしく頼む!」


「あぁ。」


最後に握手して部屋をでる。



「気持ちの良い方でしたね?」


「あぁ。」


「帰ったら大素材分け大会だね。」


「皆でやればすぐですよ!」


「あ、それと全員のレベルをもう一度確認しておきたいから帰ったら見せてもらうが良いか?」


「分かりました。」


「よし。さっさと行くか。」


ギルドを出て真っ直ぐに宿屋に帰った。



「あ!帰ってきた!」


「シルビンちゃんただいまー!」


「うわわわ!いきなり抱きつかないでくださいよー!」


「ごめーん。でも可愛いんだもーん!」


「がははははは!うちの娘は可愛いだろ?!」


「あらあら。お帰りなさい。」


「紹介がまだだったな!俺はここの店主ゴービンだ!よろしくな!」


「私は妻のシルヨフ。お姉さんと呼んでくださいね?」


「あ、あぁ。」


「そんで私がシルビン!2人の娘だよ!」


「よろしくな。」


ここでも全員の紹介をする。



「それにしてもお姉さん達皆綺麗で良いなー。」


「ありがと!でもシルビンちゃんの方が可愛いよー?!」


「わわわわ!くすぐったいよー!」


「こらこら。シリア。ストップ。」


ゴービンとシルヨフおば…お姉さんは仕事に戻った。



「出店はどぉだった?」


「美味いもん沢山食えて満足!」


「へへへ!タランタはなんでも美味しいよ!特にうちの料理は天下一品!夜は絶対食べてね?!」


「あぁ。約束しよう。」


「わーい!」


「じゃあ後でな!」


「はーい!」


シルビンがぴょんぴょん跳ねながら手を振る。



「お帰りなさいませ。」


「おぉ。

ニーナはこれからどぉする?」


「私達も出店として服を売ろうかと思っております。」


「いい場所あったのか?」


「帰りに見て回った所に。」


「そぉか。何かあったらすぐ連絡しろよ。」


「ありがとうございます。」


「さて。とりあえずステータスの確認からいこうか。」


「はい!」


名前=マーズ-シスタニカ

種族=人種

レベル=213→425

称号=黒主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=ゴブリンスレイヤー

=オークスレイヤー

=ブルーダンジョン踏破者☆Νew

=熟練の刀使い→刀マスター☆Νew

スキル=5連突き

=跳躍

=突進

=胴抜き

=闘心

=旋風

=一刀両断☆Νew

職種=ショートソードマスター

=刀熟練→刀<マスター>☆Νew

=魔法刀使い→魔法刀熟練☆Νew

=教師

体力=17万→1800万

筋力=15万→1450万

俊敏=14万→1300万

物防=17万→1700万

物攻=18万→1900万

魔防=13500→870万

魔攻=12000→740万

魔力=15000→960万

土=15000→960万

幸運=1200→1万


名前=シリア-スカール

種族=森人種(エルフ)

レベル=236→447

称号=白主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=森の民(水、土魔法力にプラスの効果、小)

=魔道士→魔導師☆Νew

スキル=人心感知

=鑑定

=苦痛耐性

=氷の盾

=鷹の目

=氷護☆Νew

職種=魔道士→魔導師☆Νew

=熟練交渉人

体力=12500→120万

筋力=11200→105万

俊敏=12200→100万

物防=10500→98万

物攻=12500→100万

魔防=27万→4800万

魔攻=57万→6400万

魔力=52万→6100万

火=10万→1400万

水=27万→2900万

土=10万→1300万

光=5万→500万

幸運=760→7500


名前=アデルカ-トラタニス

種族=人種

レベル=203→410

称号=黒主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=姫を捨てし者

=熟練の刀使い→刀マスター☆Νew

スキル=3連突き→5連突き☆Νew

=苦痛耐性

=恐怖耐性

=カウンター

=疾走切

=切り返し

=四線戟☆Νew

職種=レイピア使い

=刀熟練→刀<マスター>☆Νew

=魔法刀使い→魔法刀熟練☆Νew

体力=16万→1700万

筋力=10万→1000万

俊敏=18万→1900万

物防=11万→1050万

物攻=16万→1600万

魔防=11500→420万

魔攻=10500→380万

魔力=10800→400万

火=10800→400万

幸運=6500→1万


名前=サーシャ-トラタニス

種族=人種

レベル=201→405

称号=白主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=姫を捨てし者

=魔道士→魔導師☆Νew

スキル=苦痛耐性

=恐怖耐性

=水の癒し

=癒しの手(回復量増、小)

=信心

=癒しの泉(範囲内回復持続、中)

職種=魔道士→魔導師☆Νew

体力=11000→110万

筋力=10000→100万

俊敏=10500→100万

物防=10000→95万

物攻=9800→93万

魔防=24万→4000万

魔攻=20万→3600万

魔力=48万→5800万

火=10万→1200万

水=28万→3300万

光=10万→1300万

幸運=6400→1万



名前=ダジ-レリーク

種族=人種

レベル=222→436

称号=黒主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=元衛兵

=守護者→鉄壁者☆Νew

スキル=不屈

=我慢

=不動

=ヘイトアンカー

=咆哮

=シールドバッシュ

=ボーンクラッシュ☆Νew

職種=シールドマスター

体力=30万→3200万

筋力=28万→3000万

俊敏=1万→100万

物防=32万→3500万

物攻=18万→1000万

魔防=27万→2800万

魔攻=1300→65万

魔力=1400→64万

雷=1400→64万

幸運=700→9600


名前=カヤリス

種族=豹人種

レベル=198→404

称号=白主の眷属(全ステータスにプラスの効果、小)

=熟練メイド→メイドマスター

=影を歩む者

スキル=苦痛耐性

=恐怖耐性

=黒霧

=暗殺

=無音移動

=瞬進

=トラップ感知☆New

=トラップ解除☆New

=影縫い☆Νew

職種=熟練短刀使い→短刀<マスター>☆Νew

=熟練暗器使い→暗器<マスター>☆Νew

体力=10万→1000万

筋力=9万→950万

俊敏=25万→2800万

物防=10万→900万

物攻=23万→2500万

魔防=12万→1100万

魔攻=13万→1150万

魔力=14万→1300万

闇=9万→900万

光=5万→400万

幸運=350→600


「全員かなりステータスが上がったね。」


「はい!」


「とはいえレベルが全てじゃないからな?」


「はい!ゴブリン一匹にさえ殺される可能性があると常に思っております。」


「よし。それで良い。」


「さて。じゃあダンジョンでの収集品を選別しようか。」


「ニーナとブームも手伝ってくれるか?」


「もちろんだよ!僕に任せて!」


「頼もしいな。

あまり目立ち過ぎる物は出せないからそこだけ注意して選別しよう。」


「はーい!」


そこから大素材分け大会が開かれた。



武具の素材、魔石、ドロップアイテム、武具そのもの等選別対象は多岐に渡り量もかなりのものだった。



結局終わらず明日の朝にもう一度選別する事になった。



選別の手を止めると下からガヤガヤと人の声が聞こえてくる。



「そぉ言えば夜は飲み屋にもなるんだったな。」


「僕達も行こうか。」


「そぉだな。」


ガチャ


「あっ。」


「シルビン?どぉした?」


扉の前では片手を上げたシルビンが立っていた。



ノックをしようとしていたらしい。



「あんまり来ないから呼びに来たの!」


「あぁ。それはすまんかったな。今から行くよ。」


「もぉ!早く早く!

お母さーん!来たよー!」


「あらあら。女の子は1段飛ばしで階段を降りたらいけません。」


「がははははは!良いじゃねぇかそれくらい!」


「あなた?」


「………いかんぞ!シルビン!」


やはり母は怖……強かった。



「シルビン!適当に見繕ってくれ!酒も頼む!1つはジュースで!」


「はーい!」


「なかなか賑わってますね?」


「見た限り宿泊者だけじゃなさそうだな?」


「商人の人とか冒険者の人とか沢山くるよ!

はい!サール!」


「ありがとー!」


「シリアさんこぼれちゃうって!」


「あ、ごめーん!」


「それにしてもお兄さん達人種なのにあまり変な目で見ないんですね?」


「変な目?」


「なんて言うのかなー…物を見るような目って言うのかな?」


「あー。なるほど。それは無いな。俺達にそぉ言う感情はないし、それにカヤリスがいるからな。」


「そのー…カヤリスさんって…」


「豹人種よ。やっぱり怖い?」


「あ!いえ!そんな事は!」


「良いのよ。皆怖がるものだし。でも大丈夫よ。白主様が呪いを吹き飛ばしてくれたから!」


「え?!そぉなんですか?!」


「えぇ!」


「凄い人なんだ?!キースさん!」


「別に凄くは無いさ。それよりあっちは良いのか?」


「おーい!シルビン!持って行ってくれ!」


「あ、はーい!

後で詳しく教えてよね?!」


言い残して走っていったが、詳しくと言われてもな…



「とりあえず乾杯だ乾杯!」


「確かお二人の故郷の音頭でしたっけ?」


「おぅ!これやらなきゃ盛り上がらねぇ!」


「かんぱーい!」


大袈裟に木のコップをぶつける。



「んぐっんぐっ……ぷはぁ!うめぇー!」


「はいはい!料理持ってきたよー!」


「うわぁ!美味しそー!」


「ここはタランタ!海の幸が豊富な場所!さぁ召しあがれ!」


「いっただっきまーす!」


「ねぇねぇ!さっきのカンパーイ?とそのイッタダッキマースって何?」


「ん?俺とライルの故郷の言葉でな。乾杯はお疲れ様ー!飲もうぜー!ってこと。

いただきますは…」


「今日ある食事に感謝を込めて言う言葉よ。」


「へぇー。聞いたことないや。でも面白い言葉だね!お父さんとお母さんにも教えてこよ!」


「なかなか忙しい奴だな。」


「ちょこちょこ歩き回って可愛いじゃないですか!」


「まぁ否定はしないが。それより食うぞ!」


エビ、イカ、魚、貝。



色々な海の幸が色々な料理で出てくる。



どれも若干知っている物と形が違うが味はほとんど同じ。いや、新鮮な分前世より美味い!



「うまーー!サールに合うわー!」


「ほんと!これ美味しいです!」


「でしょ?!うちの料理は天下一品なんだから!」


「違いない!よーし!どんどん持ってこーい!」


無事に到着出来た祝いとして存分にはしゃいだ。



最後は客全員で騒ぎ倒した。



「久しぶりに飲んだー!」


「料理も美味しかったですね?!」


「あぁ!」


全員ふわふわと部屋に帰る。



「さー寝るかー…」


そのままベッドに倒れ込むようにして眠りに入った。



「………けて………助けて…」






「ん………夢か?」


何かが聞こえたような気がしたが…



「おはようございます。」


「相変わらずカヤリスは早いな。」


「私の仕事の1つですので。」


「ん。」


「お着替えお手伝いしましょうか?」


「良いから!」


たまにカヤリスってさらっとぶっ込んでくるんだよなー。



「朝飯食ったら仕分け、昼飯食ってギルドだな。」


「ニーナ達はどぉするの?」


「私達は昼過ぎに場所の事を相談しに行ってきます。」


「そっか。じゃあとりあえず朝ご飯行こうか。」


ライルの号令で皆部屋をでて降りる。



「おっはよー!」


「シルビンちゃんおはよー!」


「ふっ!甘い!」


「あー!逃げちゃやー!」


「ふふふ。」


「朝から元気だなー。」


「それよりキースさん!」


「ん?なんだ?」


「昨日冒険者のギルドマスターに呼び出されたって本当?!」


「ん?あぁ。今日もその件でちょっと行ってくるよ。」


「だ、大丈夫なの?」


「何が?」


「Sランクの冒険者でしょ?!それに鬼教官としても知られてる怖い人だよ?!

私はちょっと苦手だし…」


「そぉなのか?何かされたとか?」


「いや、あの人私の事見るとサッと寄ってきて頭撫で回すの。速くて逃げられないしちょっと苦手ー。」


「そぉなんか?そんな感じには見えなかったが…人は見かけによらんな。」


「それよりシルビンちゃんはギルドマスターと面識あるの?」


「あ、そっか。知らなかったよね。うちのお母さんとお父さん昔Aランクの冒険者だったの!」


「へぇ!それは知らなかったな!」


「昔は暴激のゴービン、死炎のシルヨフって恐れられてたんだってさ!」


「恥ずかしいからやめなさいな!」


「えー。ホントのことだよー?」


「若気の至りってやつよ。」


「2人パーティだったのか?」


「うん!パーティ名がシルビン!」


「へぇ。そいつはわかり易いな。」


「実はここだけの話、お父さんに惚れたお母さんが猛アタックして落としたんだって!」


「え?!本当に?!」


「うん!ビックリしちゃうでしょ?」


「逆だと思ってたわ…」


「そんな事はもぉいいでしょ?!ほら働いて!」


「なによー。お母さん照れちゃってー。」


「うるさいわよ!ほら働く!」


「はーい。」


「シルヨフさんはゴービンさんのどんな所に?」


「え?まぁ…その……昔危ない所を助けて貰って…」


「えー!素敵ー!」


「助けたのに何も言ってこないのよ。大丈夫か?だけ。女の人に慣れてないとかでほとんど喋らないのよ。」


「うっそー!可愛いー!」


「でしょ?でも何かあると声を掛けてくれて優しくしてくれるのよ。」


「うわー。それは惚れちゃうわー。」


「そこからは毎日通ったわ!」


「シルヨフさん積極的ー!」


「若かったからねー。あらやだ。話し過ぎちゃった。」


「お母さんのお父さん自慢はいつものこと!」


「やーねー。恥ずかしいわー!」


奥で料理してるゴービンがこっちを見ないのは気の所為ではなさそうだ。



それにしてもこの手の話を好むのはどの世界でも女性に共通してるのか。



結局惚気話を聞かされて朝食は終わった。



それから全員で仕分け作業を終わらせてなんとか昼前には準備が整った。



「にしても凄い量ね。」


「結構倒してたんですね?」


「普通はアイテムボックスなんて無いから全部は回収出来ないしこんな量にはならないんだけどね。」


「その点は白主様と黒主様のお力ですね。」


「これは力と言えるのか?」


「僕にもそこは疑問だけど。」


「にしてもこれどぉやって運ぶよ?」


「大きい魔石とミスリルの装備とかはアイテムボックス行きかな。

使えそうな物は除外して後は皆で運ぶ?」


「運ぶのは良いけどこのまま持っていったら何事かと思われるだろ。目立つし。」


「んー。じゃあアイテムボックスだね。

ギギレルさんだし良いんじゃないかな?」


「それもそぉか。下手に言い回る人じゃないだろ。」


「さて、じゃあアイテムボックスに入れて…お昼ご飯はどぉする?」


「せっかくなら外で食べないか?」


「そぉですね。シルビンちゃん…に聞くのはあまり良くないですよね。」


「あ、それなら昨日場所探しの時に聞いた店に行くのはどぉですか?」


「ニーナは場所分かるのか?」


「はい。」


「僕も分かるよ!」


「それは頼もしいな。じゃあ行きますか!」


外に出た後ニーナとブームの案内でその店に行ってみることになった。



大通りから数本奥に入った所にある店でそれほど大きくは無いが落ち着いた店。



料理も美味しくて結構食べてしまった。



やはり魚介類が多いらしい。



「あー、食べすぎた…」


「白主様は魚介類がお好みなんですか?」


「兄さんは昔から魚介類は大好きだよ。と言うより嫌いなものが無い。」


「そぉなんですか?!」


「珍しいですね…」


「そぉか?だってせっかく美味いもんがあるならなんでも好きな方が得じゃないか?」


「得…ですか?」


「だって皆が美味しいって食べてるものを不味いと思って食べるなんて損じゃないか。」


「兄さんいつもそれ言ってるけど好き嫌いはそんな事で決まらないってば。」


「なんでも食べられるってのは良いもんだぞ?」


「そこは同意するけどさ。」


「あ、どうも。」


「これは。双天の近いの皆様。」


「今日はギギレルに用事があってきたんだ。」


「聞いております。その前に…」


「あぁ。忘れてた。はい。」


「お預かりします。Sランクとなるとギルドの方への登録等がございまして少々時間が掛かりますので、帰りにお渡しする形でもよろしいですか?」


「そぉなんですね。分かりました。」


「それでは奥にご案内致します。」


マーギーさんに連れられて奥に通される。



昨日とは違ってギルドマスターの部屋に通された。



「待っていたよ!」


「どぉも。」


「マーギー。茶を頼んで良いかい?」


「はい。」


マーギーさんは1度俺達に頭を下げると部屋を出ていった。



「えっと…物資の話…と思っていたのだが…」


「あぁ。相違ないぞ。」


「物資の方は?」


「俺とライルはアイテムボックス持ちでな。」


「ほぉ!珍しい!」


「言いふらすのはやめてくれよ?」


「そんな事はしないさ!欲しがる奴も多いからな。下手な事件が起きたら可哀想だ。」


「だろ?」


「私が言っているのは相手の事だ。Sランクの冒険者と知らずに手を出せば痛い目をみるくらいでは済まんからな。悪魔と恐れられているわけだしな。」


「勘弁してくれ。」


「あはは!すまんすまん!」


「お茶をお持ちしました。」


マーギーさんがお茶を揃えて出ていこうとする。



「マーギー。君にも同席して欲しい。

私から話すより手っ取り早いからな。それに自分の担当している冒険者の事を知る良い機会だ。

瀋陽は出来る子だ。同席を許して貰えないだろうか?」


「僕達は構いません。これからお世話になりますし。」


「では…失礼します。」


「何してるんだ?」


「え?」


マーギーは隅に立っている。



話を聞くなら座ればいいのに。



俺の素朴な疑問にギギレルもマーギーもキョトンとしている。



「あー、初めに言っておくべきでしたね。

私達が主と仰ぐお二人はその…地位や権力による差別が嫌いなのです。」


「それ故にか控えるとかの行動をあまり理解しておられなくて…」


「マーギーが隅に立ってるのは俺達やギルドマスターに失礼だからか?」


「はい。マーギーさんは受付ですので…」


「そぉなのか。よくわからんな。むしろ俺からすると話を聞くのに遠かったり立ってたりで喋りにくい気がするが…」


「あははははは!」


「ぎ、ギルドマスター?!」


「マーギー!この方々は私らの考えでは推し量れんよ!お前も私の友として参加するんだ!」


「し、しかし…」


「こちらの方々はその方が良いと言っているが?」


「僕達もその方が話しやすいですよ。」


「……分かりました。ですが!ギギレル?あんまりこんな事してるとそのうち下に示しが付かなくなるわよ?!」


「む。それは気をつけねばな。」


「そんなもんか?」


「白主様。我々も命令の方が嬉しい時がありますよ。」


「そんなもんなのか…」


「その辺は黒主様の方がしっかりしていますね。」


「まぁ兄さんはそぉいうの興味無いからね。

昔から兄さんは興味の無いことに無頓着過ぎるんだよ。」


「興味の無いものに頓着してもなぁ…」


「主の威厳というものが……失礼しました。ここでするべき話では無かったですね。」


「くっくっくっ!構わんよ!ここまで砕けた主従関係は見た事が無くて面白いからな!」


「ギギレル!」


「おっと。マーギーに叱られてしまった。あはは!」


「まったく…」


「どっちも似たり寄ったりだな。」


「違いない!」


「さて、このままじゃ話が進まないからそろそろ本題に入ろうか。

マーギーさん。先に言っておくけど僕と兄さんはアイテムボックス持ちなんだ。」


「羨ましいですね?!」


「ありがと。それで、出来れば…」


「その事も含めて皆さんの事については喋りませんよ。あなた方が派手な事が嫌いというのは昨日ギギレルから聞いておりますので。」


「話が早くて助かるよ。じゃあ早速物資についてなんだが、そっちとしてはまず何が欲しい?」


「そぉだな…出来れば武器、防具、回復薬の材料、毒消しの材料が欲しいな。」


「ゴブリンとの戦いでは必需品ですからね。」


「後は魔法に対抗出来る何かが欲しいな。」


「シャーマン対策か。」


「あぁ。他にもあるがとりあえずそれだけは確保しておきたい。」


「じゃあまずは武器と防具だな。どれくらいは最低必要なんだ?」


「全体で言えば武器100、防具50だな。」


「武器はなんでも良いのか?」


「ソード系統が1番必要だな。それ以外もあれば嬉しい。防具は軽装備、重装備問わずだな。全て揃えられるとは思っていない。

それに冒険者ならばそれなりに自分達で揃えているだろうからな。」


「武器は相手の数を考えるとそれくらいは必要か。」


「戦闘は大軍勢だからな。使えなくなれば交換する必要が出てくる。」


「なるほど…はっきり言おう。武器も防具も倍は用意してある。」


「なっ?!倍?!」


「武器は鉄装備だ。防具は鉄を中心に皮もある。」


「そ、そんなにですか?!」


「ダンジョンでは冒険者が落とした武具も数多く残されていたからな。」


「そっか…アイテムボックスがあれば普通は嵩張るから持っていけない武器や防具も全部持って帰れる…」


「俺達の通った所で見かけたものはとりあえず全部回収したからな。」


「状態は?」


「全て修理してある。」


「全て?!」


「俺は鍛冶が出来てな。研ぎやなんかはライル、マーズ、アデルカ、ダジが出来るからな。」


「Sランクの冒険者で鍛冶師…ですか……」


「いよいよ規格外だな。」


「そぉなのか?」


「お二人共自分の能力値の高さに気づいておられないのです。」


「そんな大したことじゃないだろ?」


「い、いや、この際それでも良い。ありがたい話だ。正直この問題が片付くだけでも相当楽になる。」


「鍛冶師はいるんだろ?」


「もちろんいるがそんなポンポン作れる物じゃないからな。」


「へ、へぇ…」


「??」


「それで、用意して下さるのは大変嬉しいのですが…代金は…」


「そぉだな…そっちはいくら出せる?」


「そぉですね…金貨30枚…でしょうか…」


「他の物も用意するとなると節約しなきゃならないんだろ?」


「そぉですが…ここまでして下さってケチるのは…」


「マーギーの言う通りだな。私も同意する。」


「………」


「少なかったか…そぉだな…確かに割に合わないよな…鉄製の武器、防具は最低でも銀貨10枚。

それが300となると最低価格だからな…」


「いや、多分兄さんが考えてるのはお金の事じゃないよ。」


「え?」


「んー…」


「では何を?」


「僕にも分からない。」


「そぉだ!」


「ゴクッ……」


「ギギレル!」


「な、なんだ?」


「俺達にこの街の事を教えて欲しい!」


「………は?」


「それを代金として受け取ろう!」


「いやいや!ちょっと待て!それではあまりにも!」


「ん?嫌なのか?」


「いやいや!逆だ!私達に利がありすぎる!」


「そぉなのか?」


「そぉだろ?!」


「シリアもそぉ思うか?」


「………いえ、妥当かと。」


「は?!いやいや!おかしいだろ!」


「何も善意で言っているわけじゃないぞ。」


「………??」


「俺が知りたいのはギギレルの情報だ。つまり、S()()()()()()()の情報だ。」


「………それはつまり裏の話も…ということだな?」


「あぁ。別に話すとまずい事までは聞かないができる限り教えて欲しい。」


「………分かった。それで手を打とう!」


「よろしいのですか?」


「マーギーから見てこの方々はどぉ映った?」


「そぉですね…噂とは信じられないものだなと…」


「だな。だからもし知ったとしても悪用はされないはずだ。もしされたとしたら私の目が悪かったと諦めるさ。」


「……分かりました。私も腹を括りましょう!」


「決まりだな。」


「それに僕達は悪用はしないよ。」


「単純に何も知らないまま渦中に飛び込むような事は避けたいだけだ。」


「信じよう。それで?何が知りたい?」


「都度聞こうかと思ってるが…とりあえず1つ。魔女について。」


「魔女…か。

私も詳しくは知らないが、この国にいるかもしれないと言う事は聞いたことがあるな。」


「噂ですね。昔酷い事をして何処かに幽閉されている。と言う話が持ち上がった事がありますね。」


「……なるほど。調べてみる価値はあるかもな。」


「魔女を探しているのか?」


「少し興味があるだけだ。これからも色々聞くかもしれないがその時は頼むよ。」


「分かった。約束しよう。」


「よし!じゃあ武器と防具を出したいんだが…」


「ここじゃ手狭だな。隣の部屋は空き部屋になってるからそこに頼めるか?」


「分かった。」


隣の部屋に移動すると本当に何も無い部屋だった。



「じゃあ出していくぞ。」



先程まで整理していた武器や防具を出す。



もちろん種類わけされて綺麗に整頓してある。



「こ、こぉやって実際に見ると圧巻だな…」


「これだけあればとりあえず解決ですね…」


「ありがとう!本当に助かったよ!」


「ん?何言ってんだ?まだ商談は終わってないだろ?」


「へ?」


「へ?じゃないですよ。回復薬と解毒薬、あと魔法の対策の用意でしたよね?」


「これで終わりじゃ無いのか?!」


「もちろん。」


「あ、あの…お二人共口が開きっぱなしですよ?」


「お、おぉ。すまない。少し現実逃避していた。」


「さて。部屋に戻って続きといこうか。」


「は、はい。」




「まずは回復薬だな。

こいつは簡単だ。素材は用意出来なくも無いがそれより回復薬自体を持ってる。」


「作成の手間が省けるわけか。しかしどぉやって?」


「ダンジョン内で敵を倒すとたまに液体をドロップする事があるんだ。」


「あぁ。私もブルーダンジョンに潜った事があるから知っているな。」


「実はあれ回復薬でな。ポーション、ハイポーションと同じものをドロップしてるんだよ。」


「そぉなのか?!」


「あぁ。と言っても直ぐにダンジョンの壁や床に吸収されるからな。魔法で直ぐに確保して瓶に詰めるんだ。」


「瓶…と言ってもそんなに大量には無いだろ?」


「そこは秘密。」


「……聞かない方が良さそうだな。」


「教えても良いけど言っちゃいけないことは聞かない方が楽でしょ?」


「その通りだな。気にしないでおくよ。」


「それで?どれくらい欲しいんだ?」


「そぉだな…やはりそれなりの人数が集まると考えると300は欲しいな。」


「最低ラインで300か?」


「そぉだな。回復薬は金があっても物が無いとなると参加も難しくなるからな。」


「まぁそぉだな。

今すぐ用意出来る回復薬は、ポーション300。ハイポーション200だな。」


「500?!」


「毒消しも400は用意してある。」


「よ……」


「なんか驚き過ぎて疲れてきた…」


「しかし自分達の分も必要だろ?」


「それは別途取り分けてあるよ。」


「それでその数…ですか。」


「買うか?」


「あはははは!よーし!買った!」


「良いねぇ!さてと…何で払ってもらうかな…」


「いや、金は払うぞ?!」


「えー。それじゃ詰まらないしな…」


「白主様……」


「兄さんほんとお金に興味無いよね…」


「まぁそんなに困ってないだろ?」


「まぁ…僕の甘味も売れてるしね…」


「甘味…ですか?」


「今トラタニスで大流行りしてるんですよ。」


「クッキーか?!」


「あれ?知ってるんですか?」


「あれは美味だ!至高だ!」


「分かりますか?!」


「ダジ?!」


「あぁ。あれは神の食べ物だと思ったよ…しかも安い!」


「ドーナツは食べましたか?!」


「む?!なんだそれは?!」


「まだご存知では無いのですか…あの至高の味を…」


「ゴクッ……マーギー。」


「はい。直ぐに取り寄せるように伝えておきます。」


「最優先でだ!」


「もちろんです。」


「と言うより今の話だとライルさんが作った様に聞こえるのだが?」


「はい。僕が作って商業ギルドに売り込みました。」


「なんと…こんな所に神がおられたなんて…」


「あぁ、神よ…」


「やめてくださいよ!恥ずかしいですから!」


「す、すまない。取り乱したな。」


「確かにそれならばお金に困ってはいなさそうですね。」


「となると何が良いのか…我々に出せる物など…

そぉだ!マーギーを買わないか?!」


ドゴッ


「じょ…冗談だ……」


「今のはギギレルが悪いな。」


「うん。僕もそぉ思う。」


「だが本当に渡せるものなどあまりないぞ?」


「そぉだな……ギギレル。」


「なんだ?」


「ギギレルは独り身か?」


「ん?そぉだが……私を買うつもりか?!」


「なぜそぉなる。

独り身ってのはパーティがいないのかって話だ。

昨日も1人で帰ってきてたからな。」


「あぁ。そぉ言うことか。そぉだな。基本はパーティは組まないぞ。」


「そしたら何度か一緒に依頼を受けてくれないか?」


「依頼?」


「あぁ。もちろん今回の件が片付いてからの話だが、俺達はトントン拍子でSランクになったからな。

あまり上級の依頼を受けてないんだよ。」


「なるほど。確かに重役の護衛や危険なモンスターの討伐なんかも多いからな。Sランク冒険者の依頼となると特殊なものも多いし知識不足というわけか。」


「あぁ。だから何度か着いてきて欲しいんだ。もちろんあまり離れる様な依頼はやらないぞ。」


「それくらいなら問題ないぞ。」


「依頼はマーギーさんに見繕って貰おうかな?」


「承りました。」


「よし。じゃあ後であの部屋に出しておくよ。」


「頼む。」


「じゃあ最後に魔法対策だったな。」


「あぁ。大雑把な注文だが…」


「それは良いんだが…魔法の対策って必要なのか?」


「魔法攻撃は脅威だからな。」


「シャーマンをさっさと片付ければ問題ないんじゃ無いのか?」


「それが出来れば1番良いのだが…シャーマンは基本的に奥にいるからな。簡単に突破出来ないんだよ。」


「そぉなのか?」


「前回のゴブリンキング討伐の記録ではその様に記録されていますね。」


「そぉか……でもなんとかなる気もするんだがなー。」


「と言うと?」


「対策って訳じゃないが俺達がシャーマンを先に排除して、そこから全員でぶつかればいいんじゃないか?」


「いや、だから中にはなかなか入れないんだ。」


「逆に白主様が出来ない所を想像出来ませんね。」


「は?」


「私達からするとお二人が戦場に立ったら数分で壊滅させられる絵しか浮かばないです。」


「流石に数分は言い過ぎじゃないか?」


「でも出来そうですよね。」


「いえ。出来ますね。」


「その妙な自信はどこから?」


「もちろん。絶対の忠誠を誓う者だからこそ分かるのです。」


「……いや、何も言うまい。

とは言えそれじゃ心許無い事に変わりはないからな。

広域魔法減衰シールドとか作ってみるか。」


「出来るのですか?」


「魔石も沢山あるし出来ると思うぞ。」


「お、おい!何を言ってるんだ?!」


「え?あぁ。大規模な魔法具的なものを作ったら良いかなと。」


「魔法具を作る?!」


「そぉだが?」


「……規格外にも程があるな…」


「人を異常者みたいに言うなよ。」


「すまないが規格外は確実だ。」


「そぉなのかな?」


「魔法具は作ろうと思って作れる物じゃ無いからな。」


「意外と出来るもんだって。」


「まぁ良い。大規模と言うがどれくらいになるんだ?」


「そぉだな。地面に設置して魔力を流すとその境界線を超えた魔法は減衰させられる様に作るとしたら…ざっと300メートルくらいか?」


「ほとんど戦場の最前線を2分出来る距離だな…」


「それがあればとりあえず魔法を減衰させられるとは思うぞ。」


「どれくらい減衰させられるんだ?」


「作ってみないと正確な所は分からないが一位落とすくらいのイメージかな。」


「そこまでか?!」


「一位だからさほどだろ?」


「いや、同じ様な魔法具はあるが普通は多少威力を落とす程度だ。」


「意味無いな。」


「無くは無いがあまり期待は出来ないな。」


「そいつを作るとなると割と材料が必要になるぞ?魔道液とかも必要になるからな。」


「……となればそれらを用意さえ出来れば可能と言うことか。」


「だな。持ち運べるように出来ると思うしな。」


適当な長さで揃えて先端を鍵状にすれば繋ぎ合わせて使える。



「それは凄いな…」


「ただこいつは戦闘が終わったら俺達が回収する。」


「何故?」


「簡単に言えば行き過ぎた物だからだな。」


「確かに…そもそもそんなシールドを展開できる魔法具は今のところ無いな…」


「そこで提案なんだが、シャーマンの処理を俺達に任せてくれないか?

魔法具は渡しておく。もし俺達に対処出来なければ使ってくれて構わないが、対処出来たら使わないで貰いたいんだ。」


「設置だけさせて魔法具の内容は明かさないということか?」


「あぁ。説明としては俺達にシャーマンの排除ができなかった場合はこの棒切れの内側で戦う様に…とか伝えておけば対処は可能だろ?」


「確かに出来なくは無いな。

だがそんな魔法具があるならそれこそ売り込めば一攫千金だろ?」


「目立ちたくないんだ。」


「気持ちは分かるがそれで生き長らえる人も増えるだろ?」


「ギギレル様。」


「ん?なんだ?シリア殿。」


「白主様の言葉を遮ってしまうようで申し訳ございませんが…はっきり申し上げます。

これは白主様が本来要らないと感じた物を敢えてギギレル様の心情を慮っての妥協点です。」


「……」


「我々は慈善団体では無いんです。」


「……だが…」


「はぁ…ならばはっきり申し上げます。

これを夜に出さなかったがために死んでいく人がいようと関係無いのですよ。」


「な…」


「シリア。」


「申し訳ございません…」


「すまないな。

だがまぁ言いたいことは伝わったかな。

別にどこぞの知らない奴を守りたいとは思ってないからな。

それに、この魔法具は戦争を引き起こしかねない。」


「戦争を?」


「あぁ。戦闘を大きく左右する技術は国が持てば必ず戦争に導入される。」


「力を持ったなら他国を攻めようと考えるのは当たり前の思考だよね?」


「む……否定出来ないな…」


「だから開示は基本的に慎重に行ってるんだ。」


「……」


「別に戦争を引き起こしたいわけじゃないからね。」


「それでも開示しろと言うのであれば俺達はこの件から手を引くよ。」


「それは!」


「約束が違うか?」


「いえ……」


「持っている技術を見て欲するのは人の性かもしれんが欲しすぎたが故に滅ぶ国は多いと思うぞ?」


「……」


「そもそもこの技術を渡す気は無かったし全てを渡す約束はしていなかったはずだが?」


「そぉですね…仰る通りです。」


「さて。どぉする?」


「………すまないが。私と手合わせしてくれないか?」


「ギギレル?!」


「失礼は承知の上だ。

だが…もしそれであなた方にシャーマンを排除する力が有ると分かれば魔法具の話は聞かなかった事にする。」


「なるほど。」


「戦争を引き起こしかねない技術という事は分かったし、理解した。

だがもしその力が無いとなればやはり保険は欲しい。少なくとも今回の戦闘に参加する人達は私が守るべきギルドの一員だからな。」


「そぉだな。それは当たり前だな。」


「すまない。」


「謝る必要は無いよ。僕達でもそぉしてるから。じゃあ回復薬と解毒薬を置いたら外に行こうか。」


「あぁ。」


俺達は手合わせをしても文句の出ない門の外に出ることにした。



もちろんギギレルはヘルムまで付けて完全武装だ。



「じゃあとりあえずライルから行こうか。」


「お願いします。」


「お願いします!」


ギギレルは柄が長くて大きな斧を構える。



両刃になっていて魔法武器。



質はかなり良い。



対するライルは普通に立っている。



「始め!」



ギギレルの性格からしたら即座に切り掛るかと思ったが意外にも身動き1つ取らない。



いや、取れないのか。



「く……なんという殺気……」


「どぉした?ライルは立っているだけだぞ?」


「立っているだけでこれ程隙が無い人間は見た事が無い…」


「来ないのかい?」


「くっ…」


「これじゃあ実力測れないでしょ?」


「どぉした?ギギレル。Sランク冒険者。その程度か?」


「舐めるなー!」


ギギレルがライルに向かって走り出す。



「なっ?!」


突然目の前に移動したライルが刀も抜かず掌底を打ち込む。



ギリギリ反応して斧の柄を間に挟んだギギレルだったが衝撃で体が後方に吹き飛ぶ。



まるで矢が放たれたかのようにギギレルが物凄い勢いで吹き飛び大木に背中を打ち付ける。



「かはっ!」


目を見開いて衝撃を感じた時、ギギレルの目の前には既にライルが立っていた。



今度は右足がギギレルの横腹に向かって放たれる。



「ぐぅっ!」


なんとか再度斧の柄を挟み込んだ。



「ギギレル!」



マーギーさんの焦った声が響く。



体をさらに吹き飛ばされたギギレルを先回りしたライルが優しく受け止める。



「……うっ…」


「サーシャ。」


「はい。スルヒール!」


細かな水色の光がギギレルを包む。



「す、すまない…」


「いえ。」


「手も足も出なかった…」


「分かりますよー。その気持ちよーーーーく分かります。」


「あれで黒主様は遊んでる程度ですからねー…心折れますよね。」


「武器さえ抜いて貰えないとは…」


「気にしたら負けですよ。そぉ言う時は甘いものを思い浮かべて元気出してください!」


「む……」


「さて。次は俺だな!」


「お願いします!」


「さっきは魔法も使えてなかったからな。使ってみてくれ。」


「……風よ!」


ギギレルの持っている斧に風が纏わりつく。



「行きます!風牙!」


斧を降ると風が刃となって俺に向かってくる。



それに続くようにギギレル自身も斧を振りかぶって攻撃を仕掛けてきている。



俺は………



デコピンする。



「うっ!」


風の刃ごとギギレルは後ろに吹き飛ばされる。



デコピンで起こした風を増幅させただけだ。



結界は2つ解いてあるからそれなりの威力だろう。



「なんのこれし…き…」


俺の殺気で声が出ていない。



「ひっ…」


ギギレルの足がカタカタ震えている。



「兄さんの殺気って容赦が無いからねー。」


「あれの前で立っていられるだけですごいですよね。」


「慣れてる私達でも腰を抜かしそうになりますからね。」


「風魔法ってあまり見ないですけどどんな魔法があるんですかね?」


「見てれば分かるわよ。」


「そろそろ行くそ?」


「くっ……」


第八位風魔法、暴風双壁。



2つの風の壁を作り出し敵を挟み込み押しつぶす魔法だ。



もちろんオリジナル。



「ぐぁぁ!」


軽く浮いて身動きが制限されているギギレルに歩いて近づく。



「降参か?」


「まだ…」


「魔法武器だろ?魔法を切ってみろよ。」


「ぐっ…あぁぁ!」


なんとか動こうとしているがピクリとも動けないらしい。



「降参する!」


パチンと指を鳴らすとギギレルが地面に落ちる。



すかさずサーシャがスルヒール。



「くそっ!」


「分かりますよ。よーーーーく分かります。」


「デジャブ?!」


「あの殺気の前で立っていられただけで勲章ものよ。」


「まさかSランクになって殺気で膝が笑うとは思わなかった…」


「仕方ないですよ。白主様ですから。」


「ん?なんか変な代名詞になってる気がする…」


「えぇ。黒主様と白主様ですからね。」


「僕も?!」


「同じです!」


「はっ…自分も強くなったつもりで居たがここまで差を見せられると何も言えないな。」


「少しは信用出来たか?」


「少しなんてとんでもない。私では測ることなど出来ないほどでしたよ。

分かりました。信じます。さっきの話は忘れさせていただきます。」


「それは良かった。」


「報酬はいかがしますか?」


「これに限っては普通に冒険者として参加するのと変わらないからな。ゴブリンキング討伐の依頼を受けた一冒険者として扱ってくれれば文句はないよ。」


「分かりました。」


「なぁ。君達はそんなに強くなって何を望むんだ?」


「え?」


「いや、すまない。少し気になってな。そこまで強いと見合う敵もいないだろ?」


「んー…そんな事も無いけど…助けたい人達がいるから。ですね。」


「……そぉか。」


「何か…あったのか?」


「……いや。」


「そぉか。」


「………」


少し寂しそうな顔を見せたギギレルだったがそれ以上は聞かなかった。



話したくない事は誰にだってあるものだ。



「さて。これで作戦は決まりだな。」


「あのー…」


「マーギーさん?どぉしました?」


「その強さなら一瞬でゴブリンキングを倒せるんじゃないですか?」


「まぁ出来るとは思うが…」


「確かに…盲点だった…ゴブリンキングを倒してしまえば群れは散る。」


「それは分かっていますが散った群れはどぉするんですか?消える訳では無いのでしょう?」


「そぉですけど…」


「下手にゴブリンキングを殺して群れを散らすよりまとまってくれてた方が倒しやすいし良い経験値稼ぎになるんじゃないのか?」


「経験値稼ぎ…ですか。」


「もちろん押されそうならキングを討伐するけどせっかく厄介なゴブリンがひとまとまりになるんだから一掃するチャンスだろ?」


「ゴブリンマーチをそんな風に考える人初めて見ましたよ…」


「まぁ上位種も沢山いるみたいだし乱戦の良い経験になるだろ。」


「あはははは!君達が言うと簡単そうに聞こえてしまうな!分かった!だが何かあれば頼む事になるぞ?私は遠慮はしない!」


「それは構わないさ。僕達もそのつもりだよ。」


「それは良かった!」


結局ギギレルが俺達のことを全面的に信じてくれる形で話は終わった。



物資の確認をしたいからと2人はギルドに帰って行った。



依頼をこなそうかと考えたがマーギーさんに今はSランク冒険者に出す様な依頼は無いと言われてしまった。



1度の報酬は大きいが依頼自体があまりないらしい。



お金に困っていればAランクの依頼を受けることもあるらしいが別に困っていないので今回は見送った。



その足でニーナとブームの様子を見に行く事にする。



「ニーナー!ブームくーん!」


「これは白主様、黒主様。」


「師匠!」


「調子はどぉだ?」


「人種向けの衣類なのであまり…尻尾の穴とかを考えないとダメですね。」


「なるほど。そりゃ確かに。」


「加工しても良いんですけどどうせなら新しく作ろうかと。」


「あ、そぉか。布とか俺が持ったままだったな。すまないな。帰ったら渡すよ。」


「いえ!今日は様子見だけなので。興味を持ってくれる人も多かったのでなんとか上手く行きそうです。」


「それは良かった。今日はいつまでやってるんだ?」


「そろそろ終わりにしようかと片付けていた所ですよ。」


「そぉだったのか。じゃあ片付けて一緒に戻るか。」


「はい!」


ニーナとブームを連れて一緒に宿屋に戻る。



「あ、おかえりなさい!」


「ただいまー!」


「あれ?ニーナさんそんなに服買ったんですか?」


「え?あぁ!違うのよ。私服屋をやってるの。これは売り物。」


「え?!そぉなの?!見せて見せて!!」


「良いけど尻尾の穴とかは無いわよ?」


「うん!良いよ!見てみたい!」


「それなら…」


「わー!かわいいー!お母さん!見てー!」


「あら、ほんとね。私も見ていいかしら?」


「えぇ。どぉぞ。」


「お母さんこれなんかどぉ?!」


「少し若々し過ぎないかしら?」


「フリルがかわいいのに!お母さんならまだまだ似合うって!」


「うーん。そぉかしら?あなたはどぉ思う?」


「俺か?!うーん…シルヨフならかわいいしどんな服でも大概似合うだろ。」


「も、もぉ…あなたったら!」


「ねぇねぇ!ニーナさん!これなんて私にどぉかな?!」


「そぉねぇ、それよりこっちなんかどぉかな?きっと髪色によく合うわよ?」


「んー!こっちもかわいい!」


「欲しかったら尻尾に合わせて加工してあげるわよ?」


「ほんと?!」


「えぇ。それくらいなら直ぐに出来るわ。」


「お母さん!」


「そぉね。最近私服なんて買ってなかったしいくつか買わせてもらおうかしら?」


「それならお世話になってますし特別価格でお売りしますよ。」


「いいんですか?」


「その代わりこれからも買ってくださいね?」


「ふふふ。分かったわ!」


「オーダーメイドも承っていますので申し付けて頂ければ作りますよ?」


「そんな事もして下さるの?!」


「私だけの服ってこと?!」


「えぇ。採寸してデザインも聞いて作るわ。

その代わり少しだけ高いけどね?」


「迷うー!」


結局何着か買って加工してもらってオーダーメイドを1着ずつする様だ。



採寸は直ぐに終わったがデザイン云々では時間が掛かった。



ちなみにうちの子達も混じってきゃっきゃするから俺、ライル、ダジは遠い目で見ていた。



「分かりました。近日中に完成させますので少しだけお待ち下さいね。」


「はーーい!」


「ニーナさん達はどこで服を売ってるのかしら?」


「そこと通りを左に入った所ですよ。」


「今度お邪魔しちゃおうかしら。」


「ぜひ。お友達も連れてきてくださいね?」


「えぇ、もちろん!」


結局ニーナの客が増える結果となった。



物もデザインも良いからまた流行る気がするなー。



部屋に戻って布を渡す。



そぉ言えば実際に作ってるところは見たこと無かったな。



「あ、あの…白主様に見られると少し緊張します…」


「ん?嫌だったか?」


「いえ!そんな事はありません!」


「ニーナが服作るところ見たこと無かったなぁと思ってさ。」


「楽しいものではありませんよ?」


「ニーナの事なら興味もあるし楽しいよ。」


「!!!……白主様…」


「真っ赤だな!?」


「白主様のせいですよ…」


「すまんすまん。気にせず続けてくれ。」


「はい…」


基本的な流れとしては布を切って縫い合わせて行く。



と言っても魔法を使って切ったり縫ったりする為早い。



ニーナの腕が単純に良いのだろうけどそれにしても早いと思う。



ライルも驚いていたから早いんだろう。



プロってやつだ。



「ん?全部は魔法でやらないのか?」


「細かい部分や装飾なんかは手でやる様にしてるんです。作りながら変わっていく事もありますし、手で触らないと分からないこともあるので。」


「なるほどなー 。やっぱプロは違うなー。」


「恥ずかしいですね…」


「恥ずかしがることじゃないよ。手先は器用だけどこんなに綺麗には僕も出来ない。」


「カヤリスさんの衣装は黒主様がお作りになられてませんでした?」


「まぁそぉだけどニーナに頼めばもっと綺麗に出来ただろうね。」


「やっぱり違うもんか?」


「全然違うよ。細かい部分なんて芸術だよ。」


「確かに俺には無理だな。」


「カヤリスさんの服作り直してもらう?」


「黒主様のお作りになられた物はしっかりしてますので細かい部分だけ手を加えれば充分だと思いますよ?」


「そぉなの?」


「えぇ。初めて見る構造のメイド服でしたが理にかなった物ですし。」


「それならお願いしたいです!私の正装がより良くなるんですよね?!あ、違いますよ!今でも充分満足しておりますから!」


「良いって。僕だってプロに勝てるなんて思ってないから。」


「黒主様の腕は既にプロの領域に入ってると思いますが…」


「ありがと。」


「ではカヤリスさん。こちらへ。」


「え?作ってた服は良いのですか?」


「終わりましたよ。完成です。」


「早っ?!」


「そぉなんですか?比べた事無かったので…」


「少なくとも僕には無理だ。」


「俺は凄い人を従えてたらしいな。」


「うん。」


「うーん…そぉですね。だいたい決まりました。

着たままで大丈夫ですのでそのまま立っていてくださいね。」


「あ、はい。」


カヤリスの傍に両膝を着くと針と糸でサラサラと縫っていく。



驚くべき速さだ。



あっという間にカヤリスの周りを一周してしまう。



「後は…ここと……ここと………ここですね。」


「おぉ!」


「凄いな…全然違うよ。」


「デザインは変えて無いですけど…」


「デザインは変わってないけど見た目でしっかりした事が分かるし、尻尾穴なんて可愛くアレンジされてる!」


「ほんとだ!」


「尻尾穴のデザインは変えられる?」


「出来ますよ。フリルのデザインも変えれば選ぶ楽しさも出来るかと思いますよ?」


「カヤリスさん!どぉ?!」


「嬉しいです!ぜひお願いします!」


結局メイド服全部お願いして少しずつ違うデザインのフリルと尻尾穴になった。



ニーナさんマジすげぇっす。



それから夕飯まで、夕飯食べてからもニーナは服を作り続けていた。



結局10着程度売り物が出来たらしく次の日にはそれらと昨日出品した物を持って朝から売り出しに行った。



逞しいと言うのか…体を壊さなければ良いが。



「あれ?ニーナさんは?」


「今日は朝から出店開くってさ。」


「そぉなの?じゃあ後で見に行ってみようかなー。昨日何着か作るって言ってたし。」


「友達も連れて行ってやると喜ぶぞ。」


「うん!お母さん!」


「朝の仕事が終わったら行っておいで。昼前には帰って来なさいよ?」


「はーい!やった!」


「シルビンは昨日買ってただろ?」


「見るだけでも良いものなんだって!」


「そんなもんか?」


「男の人はこれだからダメなんだよ。」


「そぉか…ダメか。」


何故かダメ出しされた。



ニーナの所に友達を連れていくと嬉しそうに走り回っていた。



ゴブリンキングとの戦闘はそれ程先の話ではないはず。



情報が入り次第動けるようにしておかなければ…



それと魔女。



どこかに幽閉されているとの話だったが何かやらかしたのだろうか。



そもそも本当にいるのだろうか。



1度イリヌイに会いに行く必要がありそうだ…



まだ始まったばかりの1日。



今日も忙しくなりそうだ。

冒険者編 Ⅳ 読んで頂いた方ありがとうございました!



ダンジョン攻略に魔族の存在。



タランタでの新しい生活にゴブリンキング!



いやー。ワクワクしますねー!



冒険者編 Ⅴ を楽しみに待っていただけると嬉しいです!



ではまた次話でお会いしましょう!

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