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双天の悪魔   作者: Rukuran
2/12

学園編 Ⅰ

今日から俺達の先生生活が始まる。



パーム姉さんに連れられて転移魔法をくぐる。



ワクワクとドキドキが止まらない。

「さぁ、ここが今日からあなた達が生活していく場所。王立魔法学園、トラタニスよ。」


着いた先は校長室內。



パームは満面の笑みで俺達を迎え入れる。



校長室內は物が少なくデスクやソファーなど前世で見た校長室とさほど違う点は見受けられなかった。



「えっと。いきなり校長室って流石に少し緊張するな。」


「そぉ?私の学園内での個室って感じだからそんなに気にしなくて良いわよ?」


「そぉかな?」


「えぇ。とりあえず座って!」


俺とライルは促されたままソファーに座る。



対面にパーム姉さんが座ると、そうだ!と言って誰かを呼ぶ。



「シリア!シリアー!」


「はい!」


扉の向こうから女性の声が聞こえる。



ノックの後に扉が開く。



「お呼びですか?」


「うんうん!呼んだー。」


俺達に会釈と言うか少し頭を下げてパーム姉さんと話す。



シリアと呼ばれた女性はエルフ。

耳が尖っていてゆるふわウェーブの青い髪、青い瞳。



想像通りエルフはかなりの美形だった。



「お帰りになられたのですね。」


「たった今ね。それで、とりあえずあなたのことを紹介しておこうと思ってね。」


「ど、どぉも。」


「この子はシリア。シリア-スカール。

私の秘書をしてもらってる子よ。」


「シリア-スカールと申します。よろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」


「基本的には事務仕事をお願いしてるけど、たまに研究の手伝いもしてもらってるわ。」


「たまに?このところ毎日でしたよね?」


「うっ。ま、まぁ魔法陣学の設立に向けて沢山手伝ってもらったわ。」


「姉さん…」


「ま、まぁそんな事は良いのよ!

それよりもシリア、この学園の事を大まかに説明してあげて。」


「分かりました。

この学園は魔法科、剣術科で構成された学園で、小等部、中等部、高等部で編成されております。

魔法科は総勢2000人。剣術科は1000人です。

魔法科は各学年5組、剣術科は3組。

寮に住む学生も多く、非常に活気に溢れた学園となっております。」


「なかなか多いね?」


「これでも少ないわよ。あなた達は街、と言うかこの世界を見てないから分からないかもしれないけど学園に入るにはお金が必要で、そのお金を払える人達ってかなり限られるのよ。」


「んー、てことは上流階級の人達が主に通ってるってイメージ?」


「そぉね。

王族から始まって貴族階級の人達が大半ね。」


どぉやら貴族の制度があるらしい。



となると文明は進んでいなくて中世ヨーロッパ辺りか。



化学の世界にいた俺達には少し馴染みにくい文明かもしれない。



恐らく貴族の制度があるなら奴隷の制度もあると考えられる。



「分かりました。

で、僕達が受け持つのは高等部って話でしたが…」


「校長?!」


「え?」


「あ、あー…いっけね!シリアに話すの忘れてた!」


「「………えぇーーー?!」」


「えっと。今日から()()として配属されるキースとライルよ。」


「は?!教師?!学生じゃなくて?!」


「えぇ。この2人なかなか凄いんだから!」


「ちょ、ちょっと待ってください!

そんな簡単に…」


「住むところも教師の許可もぜーんぶ取ってあるわよ?」


「…………はぁ…」


「ごめーん!説明忘れてたのー。」


「忘れてたのー。じゃないですよ!そんな大事なこと!」


「う。」


「それに、この2人いくつですか?見たところまだまだ若いですよね?」


「キースが12、ライルは10歳よ。」


「はぁ?!まだ中等部の学生と同じ年齢じゃない!

パームーー?!」


「うーー。ごめんてーー。」


「………はぁ…

まぁ許可とって段取りしちゃったならやるしかないですね。

でも、私は認めてませんから。

2人はまだ学生として受け入れるべき歳なんですよ?授業って言っても何か出来ると思いませんが?」


「そこは大丈夫よ!なんせ私の魔法陣学はキースから教わったものだし!」


「…はあ?!ちょっと…いきなり爆弾発言?!」


「あ、僕がまとめるの難しいって言ったからパーム姉さんがまとめたんですよ。

それに研究自体はパーム姉さんがやってましたし僕はその理論があってるか確認したくらいですよ?」


「な、なんか色々目眩するけど…とにかく!2人には教師としてやってもらいます。けど、1度授業に出させて貰います!

そこでダメだと判断したら校長がなんと言おうと教師から降りてもらいます!分かりました?!」


「は、はい。」


「姉さん…外ばっか固めて中に説明無しなんて僕でも怒るよ。反省しなさい。」


「うー!ライルが起こったー!」


「……はぁ。泣きついても今回ばかりは俺もカバー出来ないよ。姉さん。」


「皆敵?!分かったわよー。反省するから許してー!」


「まったく。私はこれで失礼します!」


シリアは部屋を出ていった。



「ま、まぁその、一波乱あったけど結果オーライ!」


「じゃないよ?」


「う。」


「まぁ今更だしこれくらいにしとこうよ兄さん。」


「ライルが言うならもぉ言わないけど。

で?住む場所とかは?」


「この学園には教師に寝泊まりできる場所も用意してるけど、あなた達は私の弟みたいなものだからね。

一軒家建てました!」


「えー…胸張ってるけど凄いぶっ飛んだことしてるよね。」


「え?!喜んでくれないの?!」


「いや、嬉しいけど特定の教師に肩入れするとまずいんじゃないの?」


「そこは大丈夫!これは姉としてのプレゼントだから!」


「だ、大丈夫なのか?」


「うん!それに授業とか教師としての活動に対する評価は平等にするし、そこは二人共覚悟してもらうわ!」


「そっちの方がありがたいよ。」


「それで、授業なんだけど。

キースとライル2人で授業してもらおうかと思ってるわ。」


「2人で?」


「えぇ。この学園にはそれぞれ魔法科と剣術科別々での授業があるんだけど、週に2回合同授業を設けてるのよ。」


「へぇ。垣根を作らないように工夫って感じ?」


「えぇ。どぉしても2つの科には壁が出来やすくてね。

なんとかしたいから。」


「って事は今でも壁が?」


「えぇ。やっぱりどぉしても垣根があるのよ。」


「なるほど。」


「それに、階級での垣根もね。」


「貴族が威張るって感じ?」


「そぉね。普通に平民の出の子達も少なからずいるけど、どぉしてもね。直接的な嫌がらせとかは無いみたいだけど見えない所で差別みたいな事もあるみたい。」


「んー。」


「まぁその辺りは私の仕事だから2人はあまり気にしないで。ただあなた達が差別的に扱う事は控えて欲しいわ。」


「それは大丈夫だと思うよ?特に兄さんはね。」


「え?俺か?!」


「うん。兄さん王族って聞いてどぉ思う?」


「へぇ。王様っているんだなー。って。

でもその息子とか娘だろ?偉いのは父であって平民とさほど変わらないだろ?」


「やっぱり。僕達がいた世界には貴族とか無かったから。どぉしても皆平等に扱っちゃうと思うし。その辺りは平気だと思うよ。」


「なるほど。それなら心配要らないわね!

授業の内容は2人に任せるけど、時間は二コマ分あるわ。場所は大講堂。一応必修じゃないから最初は少ないかも。

魔法と剣術を別々に教えても問題ないわ。互いの事を知るための合同授業だから。」


「必修じゃないんだろ?大講堂?そんな広いところでやって人集まるのか?」


「多分数回授業したら…って思ってるわ。」


「んー。そぉなのか。よくわからん。」


「まぁやってみるしかないわ。もし分からない事があったらいつでも聞いて!

それと授業が無い時は街に出るだろうしいくらかお金も置いといたわ。」


「え?!そんな!悪いよ!」


「大丈夫。ちゃーんと給料から差し引くから。」


「しっかりしてますな。」


「そこは校長なので!」


「っと。そぉ言えば一応1回聞いた事あるけど、この世界の通貨について聞きたいんだけど。」


「そぉね。通貨は1つしか無いわ。世界通貨。

銅貨。これが最小通貨。100枚で大銅貨1枚。大銅貨1枚あれば安い宿なら2、3泊は出来るわ。

大銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨1枚あれば良い宿屋に2、3泊出来るわね。

銀貨100枚で大銀貨1枚。大銀貨1枚あれば殆どのものは難なく買えるわ。

大銀貨100枚で金貨1枚。これは平民にはなかなか扱えない通貨になってくるわ。同じように100枚で大金貨、白金貨となるわ。白金貨は特別な手法と魔法で作られてる通貨で平民には無縁の通貨よ。」


「なるほど。了解。」


「僕達の給料はどれくらいなの?」


「二コマで一律銀貨1枚。つまり一コマだと大銅貨50枚ね。」


「高過ぎないか?」


「教師は皆同じよ。

それに教師って少ないのよ。これくらい出さないとやってくれないの。」


「そぉなの?」


「えぇ。自分の能力を人に教える立場だからね。それなら冒険者やってる方がって考える人が多いから。」


「なるほど…」


「その辺は世界観が違うから追追考えるしかないかな。」


「そぉなると僕達の給料は1週間で銀貨2枚だね?」


「そぉよ。

ただ、この学園では生徒達がこの授業もっと受けたい!って思ったらコマ数を増やすための申請が出来るシステムになってるわ。

申請数が一定以上になるとコマ数が増える仕組みになってるの。」


「へぇ。なかなか厳しい世界だな。」


「教師にも努力を怠らないようにさせるためよ。」


「詰まらなきゃコマ数が減って自動的に給料が減るわけか。」


「えぇ。上限は決まってるけどコマ数を増やす事が教師にとっての目標ね。」


「コマ数が増えたり減ったりはどぉやって確認するんだ?」


「そぉだったわね。2人にはこれを渡しておくわ。」


「えーっと。カード?」


「それはあなた達の身分証よ。」


「ん?ただの銀のプレートって感じだが?」


「少しだけ魔力を流してみて。」


「おぉ!」


「そこにあなた達の魔力が登録されたわ。これであなた達専用の身分証になったわ。

そのプレートには学園から情報を送るから週終わりに1週間の授業を確認して。」


「すごいな!魔法!」


「後は、この国について少しだけ触れるわね。

この国はトラタニス王国。

トラタニス王が頂点に立つ王国で、規模はこの辺りじゃ最大。

世界には色々な王国があるけど全部で6つ。

このトラタニス。

東にあるエルフの王国フィンターナ。

西には獣人の王国タランタ。

フィンターナの北にはドワーフの王国ジュリバン

ずっと北にある多種族国ブリニンテ

南には広大な森が広がっていてそのさらに南にはシャントリムって国があるわ。この南に広がる森があなた達のいた森ね。この森のせいでシャントリムとの交流はほぼ無くてどんな国かは分かっていないわ。」


「森を迂回出来ないのか?」


「森を抜けることは論外。迂回も険しすぎる山が連なって人の侵入を拒んでいるから無理ね。」


「転移魔法で行けば?」


「キースも使えるから分かると思うけど転移先の情報が無くて転移すると酷いことになるわ。

いきなり高い所から落ちたり、何かの中に埋まったり。

つまり1度行ってマーキングしないと転移魔法は使えない。行ったことのない私では転移魔法が使えないのよ。」


「森を抜けたら?」


「無理無理!あんな森抜けられる人間なんてまずいないわよ!」


「え?そぉなの?」


「あなた達が走破して食事の為に内層のモンスター狩ってたって聞いた時倒れそうになったんだから!」


「え?」


「あなた達今どれくらいレベルあるの?」


「俺は746。」


「僕が740。」


「はぁ………あのね?私のレベルは485。

このレベルだと、この国でトップレベルよ。」


「え?!」


「つまりあなた達は規格外なのよ。」


「し、知らなかった。」


「そんなレベルじゃ森は抜けられないし、普通は死にたくないから寄りもしないわよ。」


「そ、そぉだったのか。

母さん達に稽古付けてもらってたからこれくらい普通なのかと思ってた。」


「あの2人は最強なのよ?その2人に稽古付けてもらってる時点で異常なの!」


「お、おぉ。」


「まったく。少しは理解出来たみたいね。

そぉ言うことだからステータスは基本見せないように。あとあの二人の息子って事も隠しなさい。」


「あー…そりゃ隣に最強のドラゴンの息子がいたら発狂しちゃうよね。」


「そぉゆうこと。分かったなら良いわ。

さて、話はこの辺にして案内するわ。」


「僕達の家?」


「えぇ。学内を見る意味でも歩いていくわよ。」


「はーい!」


俺達は校長室を出る。



シリアに睨まれたが苦笑いを返しておいた。



校長室を出ると計3000人を収容する学園の全貌が見える。



バカでかい校舎。真ん中に大きな広場。そこには噴水と花壇。



全てを塀で囲まれており、建屋は街から少しだけ高い所に作られており、街を一望できる。



夜の街には明かりが灯っていて実に綺麗だ。



廊下を歩いていても時間的に誰とも会わないが活気のある学園だと言うことはよく分かった。



校門に向かって歩く。



学園周辺には建物が無く、少し歩くと街の中に入れる形になっていた。



門を出てしばらく歩き、街に入ると目的地はすぐだった。



「ここよ!」


「近っ!学園近っ!」


「これで寝坊しないでしょ?」


「いや、まぁ良いんだけどさ。」


「さ、入った入った!」


促されるまま中に入る。



一軒家と言っても大きくはない。



2人で過ごす分には十分だが広すぎて困るということは無い。



リビング、キッチン、客間、俺とライルの個室、トイレ。



風呂という概念が無くて残念だが、庭に井戸があった。



「どぉかしら?」


「どぉって…これいくらしたんだ…?」


家だけでも高いはずなのに家具やらなんやら必要なものは全て揃っていた。



「そんな事は気にしないの!私の弟達の門出よ?祝いのプレゼントなんだから!気に入った?」


「もちろん!ありがとう!姉さん!」

「ありがとう!」


「良かったわ!

最後にもう1つプレゼント!」


「これ以上は本当に悪いよ。」


「私の気持ちなんだから受け取って!」


「分かったよ。」


「じゃじゃーん!2人の先生服ー!」


「学校に着ていく服?」


「そっ!決まりは無いんだけどやっぱり先生なんだしビシッと決めなきゃと思って用意したのよ。

同じ服を5着!」


「なかなか質が良さそうだけど?」


「そんな事は良いから!どぉ?嬉しい?」


「あぁ。ありがとう。嬉しいよ!」


「ありがとう!嬉しい!」


「んー!素直でいい子達ね!さ、いつでもキスの準備は出来てるわ!」


「いや、しないから。」


「え?!なんで?!」


「そんな絶望の表情されてもしないって。」


「そ、そんな…完璧な計画が…なぜ…」


「ありがとう。感謝するけど明日から授業なんだしそろそろ寝るから。」


「あ、そぉゆうことねー!なんだー、ビックリしたー!」


「一緒には寝ないよ?」


「…………なんでよー!完璧な計画だったのにー!私の何がいけなかったのよー!」


「ほら帰った帰った!」


「くそー!ちくしょー!」


俺とライルは苦笑いしながらパーム姉さんを追い出す。



とぼとぼ帰っていく背中を見送ってから夕食を取り、床に就く。



明日から学園の始まりだ。



ワクワクとドキドキを胸に眠りに落ちる。







「おはよー。」


「あ、おはよう兄さん。授業は今日と明後日だよ。」


「あぁ。昨日見た。

水浴びてくるわー。」


「帰ってきたらご飯出来てると思うから食べてねー。」


「サンキュー。」


水浴びを済ませて昨日貰った服を着る。



真っ白なジャケットと真っ白なシャツ。真っ白なズボンだ。



それに母さんから貰ったローブを羽織る。



朝食を取って杖を腰に下げる。



「行くか?」


「うん。」


ライルは全身真っ黒。左腰に黒の刀。右腰に白の刀を下げている。



準備が整った所で学園に向かう。



少し早いが初日だしゆっくり向かう事にした。



道中。と言うか目と鼻の先だが、学園に向かう生徒達が見える。



剣を腰に下げていたりローブを着ていたり見ただけでどちらの科に所属しているか分かる。



なんともファンタジーな世界にワクワクが止まらない。



門をくぐって大講堂に向かう。



デカい扉を開く。



ガチャ…



中は予想以上に広く、恐らく数百人は収容できる。



「でかー。」


あまりの大きさに上を向いたりキョロキョロしていると最前列に座っていた女の子2人が寄ってくる。



1人は真っ赤な瞳、真っ赤な髪を肩まで伸ばしていて、細身の剣を腰に下げている。



可愛いと言うより美しいタイプ。



もう1人はその子に隠れている。



青い髪が腰まで伸びて青い瞳どちらかと言えば地味なタイプのローブを羽織っている。



背も小さくて可愛らしいタイプだ。



「あなた達。」


「ん?」


「見ない顔ね?転入生かしら?

扉の前でキョロキョロしてたら皆の邪魔よ?こっちにいらしたら?」


「あ、あぁ。そぉだな。悪い。」


「いえ。これも生徒会長の務めだもの。」


「ね、ねぇさん…」


「そぉね。まず自己紹介しますわ。私はアデルカ。

アデルカ-トラタニス。

そしてこの後ろに隠れてるのが!」


「わっわっ!

え、えっと…サーシャ。サーシャ-トラタニス…です。」


「トラタニス?

って事は王女か!」


「えぇ。私は第4王女。サーシャは第5王女よ。」


「へぇ。まさか最初に会うのが王女とは思わなかったな。」


「兄さん。こっちも自己紹介。

すいませんね。兄はあまり気の利くタイプではなくて。

兄はキース。キース-フラクネル。

僕はライル-フラクネルと申します。」


「気が利かなくて悪かったな。

よろしくな!」


「ふふふ。」


「どぉした?」


「いえ。私達を王族と知って態度が変わらない人って初めてだから。」


「ん?そぉなのか?なんかした方が良かったか?」


「いえ。嬉しかっただけですわ。

それに王族って言っても第4王女よ。ほとんど世継ぎとかには関わらないしあまり関係無いわ。

それにしてもフラクネルって聞かない名前ね?」


「ん?あー…ちょっと離れた所から来たんでね。珍しいかもな。」


「そぉなのね。これからよろしくお願いしますわ。」


「こちらこそ。」


「立ち話もこれくらいにしてそろそろ席に着きましょ。

人も…あまり増えてないけど。

新しい先生が来て下さるそうなので皆さんあまり寄りたがらないのかしら?若い先生って聞いてたから…そのせいかしら?」


ボーン…ボーン


「時間ね。ほら席に座って?」


「あっ、いや。」


「はーい!みなさーん!席に着いてくださーい!」


「え?校長先生?」


「おっ。来てるね。さ、二人ともこっちに来て。」


「なんかごめんな?」

「ごめんなさい!」


「え?え?」


「みなさーん!今日からこの合同授業の担当になったキース先生とライル先生よー!」


「えーー?!」


「あら?アデルカさん?」


「し、失礼しました!」


「ふふふ。若くて驚くかもしれませんが実力は確かなのでよーく話を聞くように!」


と言っても生徒は10人くらいのものだが。



多分真面目な生徒の数名が来たんだろうな。



「えーっと。今日からこの合同授業を担当する事になったキース-フラクネルだ。よろしく。」


「僕はライル-フラクネル。兄には魔法。僕が剣術を教えていくことになります。」


「はーい!拍手ー!」


皆ポカーンとしてまばらな拍手だった。



「じゃあ後は2人に任せるわ!」


スタスタスタスタ


ストン


「パーム姉さん?」


「ん?なに?」


「なぜ最前列に座るんだい?」


「なぜっておかしな事を聞くわね。授業を受けるためよ?」


「なぜ?」


「キースの授業よ?なぜ受けないって選択肢が出てくるのか逆に疑問だわ?ね、シリア。」


「私は見定めるために来てます。」


「はぁ。まぁいいや。

それじゃあ始めようと思うが…とりあえず人数少ないしどんな感じの実力か見てから授業内容決める事にする。」


「なっ?!いきなり無礼とは思わないのかしら?!」


「無礼?なぜ?」


「あなたが見定めるのでなくて生徒達が見定めるのよ?!」


「んー。と言っても受ける人の実力が分からなければ教える事も分からないだろ?」


「あはは!あなたも受けなさい!実力テスト!」


「こ、校長!?」


「あの二人の実力を知るいい機会になるわ。ほらほら行った行った!」


「何故かシリアも受けることになったが、1人ずつ見ていくぞー。」


授業にはパーム姉さんとシリア合わせて11人。



見た目で魔法科5人。剣術科4人と分かる。



「前に来て適当に攻撃してくれ。あ、名前も名乗ってねー。」


「それじゃ誰も来ないよ。兄さんが指名したら?」


「え?そぉなの?んー。じゃあアデルカ!」


「……」


「おーい。アデルカー?アデルカさーん?」


「はっ?!はい!」


「実力見るからこっちゃおいで。」


「はい!」


「馬鹿な奴等。アデルカ様は剣術科のナンバーワンよ。序列1位相手にあんな態度。死ぬわよ?」


「さぁ。それはどーかしら?」


「ポケーっとしてたが大丈夫か?」


「び、ビックリしただけよ。

大丈夫。と言うか大丈夫?私はこれでも剣術科の序列1位よ。

あなた達に私の実力を測るだけの技量があるとは思えないけど。」


「ん?大丈夫じゃないか?

っても剣術科の生徒はライルが見るけど。」


「大口叩いて人任せ?底が痴れるわね。」


「むむ。言うなー。じゃあとりあえず俺とやるか?負けたら大人しくライルに相手してもらえよ?」


「良いわよ。()()()()ね。」


「よーし。じゃあ好きなように打ち込んでこーい。」


「は?木剣は?」


「いらんいらん。真剣で良い。」


「……知らないわよ?」


「良いから来なさい。」


「はぁー!!!」


細い剣を振り回してるだけあってスピード型。



直線的にトップスピードで突っ込んでくる。



「はーい。終わりー。」


アデルカが剣を抜くが次の瞬間手に剣は無く、俺が持っていた。



魔法は使っていない。



「え?!あれ?!」


「俺の勝ち。」


「な、え?!何が起きたの?!」


「さぁ?」


「あの男…今何したの…?」


「シリアにも見えなかったの?」


「え、えぇ。」


「やっぱりキースは強いなー。」


「ほれほれ。アデルカ。次はライルだ。」


「ま、負けたの?」


「剣を奪われてまだやる気か?」


「い、いえ…私の負けです。」


「よろしい。」


「兄さん。やりすぎ。」


「え?そぉか?怪我もさせてないし完璧だろ?」


「はぁ…剣術では剣を取られることは命を取られることと同じ。そんな剣を簡単にとっちゃダメ。」


「お、おぉ。悪かった。」


「ん。

じゃあアデルカさん。僕に好きなように打ち込んで。」


「はい!お願いします。」


「ライル…先生は剣を使わないんですか?」


「僕の剣は特別性でね。あまり抜きたくないんだ。」


「分かりました。

行きます!」


アデルカが今度こそと鋭い斬撃を繰り返す。



それをライルが素手で受け流す。ちなみに1歩も動いていない。



これはこれで酷いと思うけどなー。



斬撃を受け流しながらライルが喋り出す。



「うん。鋭い斬撃だね。

的確に急所を狙ってくるのも素晴らしい。

でも駆け引きが足りないね。

あと握りも少し甘い。それだと…」


ライルが握り手を軽く触ると。



カラン。


「こぉやって剣を落としてしまう。」


「……はぁ…はぁ。」


「でも総合的には素晴らしいと思うよ。」


「あ、ありがとうございました!」


「うん。礼儀もバッチリだね。」


「じゃあ、次はサーシャ。」


「は、はい!」


「そんなに緊張しなくて大丈夫。」


「は、はいー!」


「サーシャは魔法科だね?」


「はい!」


「じゃあ俺が相手するから好きに打ってごらん。」


「わ、わわ分かりました!

いいいきます!」


「へぇ。しっかりとした構成の魔法陣だ。」


魔法が発動する前に現れる魔法陣を見て話しかける。



「え?!」


「うんうん。情報量も多いし。素晴らしい。

さ、その水球弾を放って!」


魔法が発動する前に使われる魔法を言い当てられてあたふたしている。



「大丈夫。しっかりイメージを保ったまま。」


「行きます!」


放たれた水球弾は俺に届く前に蒸発して消える。



「え?!」


「うん。素晴らしいね。

ただもう少し情報量を増やすのと変換効率を上げられるともっといいかな。」


「あ、ありがとうございました!」


「サーシャ様は魔法科3位よ?!それをあんなに容易く?!しかも魔法発動の瞬間が分からなかった…」


「キースは魔法を完璧に組み上げるのよ。あんな綺麗な魔法あの子にしか使えないわ。」


「よーし。どんどんいくぞー。前から順番にこっちゃこーい。」


2人を軽くあしらったおかげか他の生徒も目の色を変えた。



「はい!魔法科序列25位!バンズ-カードルです!お願いします!」


黄色髪の活発な男って感じの風貌。イケメンだ。



「よーし。こーい!」


「はーーー!おりゃーー!」


バチッ


雷魔法の雷撃。



雷を飛ばす魔法だ。



俺も同時にまったく同じ出力の雷撃を放つ。



「威力はあるな。でも構成が少し雑だな。」


「ありがとうございました!」


「よし。次ー。」


「はい!剣術科30位!バンドール-ヒープです!お願いします!」


「よろしくね。君は大剣使いだね?」


「はい!」


「よし。どぉぞ。」


「はーーー!」


「うん。打ち込みの力強さはいいね。

ただ角度や狙いが荒いかな。」


「なんの!」


「チャンスでも無いのに大振りは危険だよ。」


ライルが一瞬で間合いを詰めて持ち上げた大剣の持ち手を叩く。



大剣がスポーンと抜けて俺のところに飛んでくる。



俺がナイスキャッチ。



「く。ありがとうございました!」


「うん。素晴らしい打ち込みだったよ。」


「よーし。つぎー。」


「はい!魔法科序列235位!プリネーラ-ワルド!お願いします!」


金髪ショート。ハキハキした女の子と言ったイメージ。



「よーし。さ、どぉぞ。」


「たーー!」


「んー。少し変換が遅いね。イメージは悪くないけど足りない感じかな?」


自分の拳に雷を纏わせて雷の弾を撃ち出す技、雷球弾。



バリッ


「威力も少し少ないかな。」


俺は手に雷を纏わせて雷球弾を吸収する。



「うっそ?!吸収された?!」


「ま、悪くは無いかな。」


「あ、ありがとうございました!」


「はい。じゃあ次。」


「お願いします!魔法科序列1350位!ナルフ-カヌレ!」


茶髪坊主の漢って感じだ。



「よしこい!」


「おらー!!」


「んー。力強さが勝りすぎて細かいところが良くないな。」


「ぬおー!」


「変換効率も良くない。力任せって感じか。」


「おらー!」


作り出された岩の玉を放ってくる。



岩襲弾。



俺は飛ばして来た岩の玉を水の弾で受け止める。



すっぽり水の中に収まった岩の玉は勢いを失ってしまう。



「まだまだだね。」


「精進します!ありがとうございました!」


「うん。素直で良いね。

じゃあつぎー。」


「はい!ジジ-ハルシウス!剣術科序列352位!よろしくお願いします!」


青髪ロングのポニーテール。真面目そうな女の子。



ショートソードの使い手。


「好きにどぉぞ。」


「はー!やー!」


「そぉだね。踏み込みが甘い。だから踏ん張りが効かなくて結果攻撃全体の重さが足りないかな。

踏み込みが甘いと踏ん張りも効かないから…」


またしても瞬間で間合いを詰めると振りかぶっっていたジジのおでこを指で軽く押す。



「わわわわ!」


そのまま後ろに倒れそうな所をライルが腕を掴んで支えてあげる。



「こうなるね。」


「あ、ありがとうございました!」


顔が赤いのは気の所為ではなさそうだ。



「つぎー。」


「はい!カーディ-ノルマ!魔法科序列1500位!よろしくお願いします!」


赤髪ロング、前髪を上げて止めている。



熱血感漂う女の子。



「うりゃーー!」


小火球。



小さな火の玉を複数個作り出して放つ技。



「魔法の構築を急ぎすぎ。おかげで構成がバラバラ。

そんなんだと…」


俺は更に小さな小火球を作り先に放つ。



カーディの作った火球が見事に全て撃ち落とされる。



「えーーー?!」


「あっという間に破壊されちゃうよ。」


「むー…ありがとうございました!負けました!」


「よろしい。最後は…」


「ラカス-ホイルデン。剣術科。序列856位。」


黒髪短髪。



クールなイメージの男。



「ナイフだね。どぉぞ。」


「……」


何も言わず瞬間的に間合いを詰めに来る。



ライルはそれよりも早くラカスの後ろに回り込む。



「なっ?!」


ライルを見失ったラカスは後ろに回り込まれたことに気付いてそのまま負けを認めた。



「スピードは悪くない。けど直線的に動いてはスピードが勿体ないかな。」


「ありがとうございました。」


「うん。」


「よーし。これで全員…」

「キースー!これこれ。」


パーム姉さんがシリアを指して満面の笑み。



「あ。シリアさんもどぉぞ?」


「なっ?!ちょっと強いからって馬鹿にして!目にもの見せてくれるわ!」


パーム姉さんから聞いた話ではシリアはエルフだけあって魔力が強く、センスもあるらしい。



先生としては活動していないが実力はかなりのものらしい。



「シリアさんは魔法?剣術?」


「魔法よ。」


「じゃ、俺が担当で。良いですよ。」


「行くわよ!」


氷の刃を複数個作る。



水魔法の派生魔法。



氷魔法だ。



氷刃撃


シンプルに見えるが攻撃力が高い。



変換効率も良いしイメージ力も十分。



「はぁ!」


「ざーんねん。」


「なっ?!」


発射される前に火で全て蒸発させる。



「ど、どぉやって?!」


「火で炙ったんだよ。」


「そんな!魔法なんて使ったように見えなかったわ!」


「まぁ練習したからね。」


「……参りました。」


「ん。さて。これで全員終わったな。

じゃあ今のを見て授業内容も決まったから早速授業始めるぞー。」


気付けば全員最前列でしっかり着席していた。



パーム姉さんはご満悦の様だ。



シリアさんはなんか現実を受け止めきれないと言った様子。



「まず、最初に言っておく。

今からする講義は灯火の講義だ。

この講義を受けたくないのであれば直ぐに出てってもらって構わない。」


灯火とは小等部の1番初めに習う魔法らしい。



つまりガキでもできるってやつだ。



これが嫌ならば伸びるものも伸びなくなる。



「……」


誰一人立つものはいなかった。



「それじゃあ始める。適宜ライルと交代して話を進めるからどっちの科の生徒もしっかり聞くように。」


「はーい!」


パーム姉さんが1番ノリノリだな。



「俺は魔法学校に通った事無いから失礼とか普通とは違うところが多々あると思うが疑問に思ったらすぐ聞いてくれ。

あと、授業は基本的に俺から質問したり前に出てきてもらったりもする。」


「キース先生!」


「はい。プリネーラ。」


「もぉ名前覚えたんですか?!すごっ。

えっと、他の先生の授業だと、質問は最後に、先生から問題提起とか前に出たりとかした事ありません!

私達で大丈夫でしょうか?」


「大丈夫だ。

大丈夫じゃなくてもそれを大丈夫にする為にここに居るんだろ?」


「はい!」


「よし。

じゃあ始めるぞー。

そぉだな。早速だが、プリネーラとジジ。前に。」


「いきなりですか?!」


「わ、私も?!」


「もちろんだ。剣術科と言えど魔法は使えるだろ?剣術科の生徒にもガンガン振ってくからな。」


「う、うー。大丈夫かなー。」


「よーし。じゃあとりあえず二人とも灯火を使ってみてくれ。」


「はい!」

「はい!」


2人の指先からライターの火くらいの炎が上がる。



この灯火。使用する魔素量も少なく、魔法陣も簡単な為誰でも使える火魔法。



またの名を生活魔法として知られている。



生活魔法は属性の相性無しにだれでも使える。



生活魔法は火、水、土にのみあり、それぞれ灯火、水流、土塊の3つだけだ。



「いいな。

じゃあ早速全員に質問だ。この炎、どぉ言う過程でついてるとおもう?」


「はい!」


「パーム姉さんは静かに。」


「ちぇー。いいとこ見せようと思ったのにー。」


「は、はい!」


「はい。サーシャ。」


「魔素を媒体にして、魔法陣によって火に変換しています。」


「そぉだな。ではここで1つ実験をしてみよう。

2人の指先から出てる火に向かって同じ出力の風を送る。

どぉなると思う?」


「は、はい!」


「はい。ジジ。」


「私の火が先に消えます!」


「なぜ?」


「え?えーっと。私の方が魔力が弱いので。」


「つまり魔素の使用量が少ないからジジの方が先に消えると言うことか?」


「はい。」


「なるほど。じゃあやってみよう。」


風魔法で同時に風を当てる。



火が揺らめき、ジジの火だけが消える。



「正解だったな。」


「…」


「それじゃあ次はこの魔法。ジジだけ別のイメージで発動させてみよう。」


俺はジジに耳打ちで説明する。


「わ、分かりました。やってみます。」


「じゃあもう一度。」


2人の指先から火が出現する。



そして同様に風を起こす。



先程より強めの風だ。



今度はプリネーラの火が消える。



「え?!」


ジジの火は灯ったまま。



「なんで?!」


ジジ本人も驚いている。



「二人ともありがとう。

じゃあもう一度全員に質問するぞ。なぜ結果が変わったと思う?」


「え?!えー…」


「ジジには大ヒントあげたんだぞ?」


「えぇー!私?!」


「2回目はどぉやったか皆に説明して。」


「え、えっと。魔素量を変えずに、イメージを変えたわ。

今までは火が指先から出てるイメージをしてたけど、魔素が魔法陣を余すとこなく通っていくイメージをしたの。」


「それだけ?!」


「え、えぇ。」


「ほらー。皆同じ条件だぞー。」


全員頭を傾げて考えている。



「ほらほら。早くしないと時間だけ過ぎてくぞー。

誰か答えろー。」


「ま、待ってくださいね!こんな風に質問されて考えさせられるなんて!」


「あ、頭こんなに使うなんて…」


「はーい。終了!」


「悔しー!あのしてやったり顔が悔しー!」


「ま、お遊びはこの辺にしとくか。

じゃ説明するぞー。」


俺は黒板に向かってチョークを動かす。



手ではなく魔法で。



全員驚いていたがそんなに難しい魔法では無いはずなんだが。



「いいか。お前達の魔法を見て1番に思った事は魔法の変換効率。これが著しく低い。」


「ガーン…」


「落ち込む前に考えろ。

なぜか。答えはイメージの仕方だ。」


「はい!」


「はい。バンドール。」


「俺達は魔法使ってないけど。」


「何言ってんだ。ちゃんと身体強化魔法使ってたろ。」


「えっ?!」


「気付いて無いとでも思ったのか?」


「は、はい。正直。

俺達剣術科はほとんど常時身体強化魔法を掛ける癖がついてるので、魔法陣とか見てないと普通気づかないです。」


「まぁ皆僅かに掛けてる程度だからな。」


「まさか気付いてたなんて…」


「でだ。イメージ力ってのは魔法にとって重要な事は皆分かってるな?」


「はい。……あっ!」


「お。サーシャ。何かわかったか。」


「は、はい。私達のイメージは魔法を使った結果をイメージしてました。だけどその過程、つまり魔素と魔法陣の流れをイメージする事でより効率が良くなって、結果としてジジさんの魔法の方が出力が上がったんですね?!」


「おぉ。素晴らしいな。

ジジの魔法はムダが多かった。つまり魔法陣を通って使われる魔素が少なくてほとんど漏れ出てたわけだ。」


「お、おぉ…なんか恥ずかしい。」


「恥ずかしい事は無いぞ。大小あるがみーんな漏れ出てたから。」


「う。」


「そこでジジに教えたイメージで漏れを少なくしてやったわけだ。そしたら魔法自体に使われる魔素が増えて結果として出たわけだ。」


「なるほど。」


「このイメージ力。剣術においても物凄く大事な事です。」


「はい!」


「はい。アデルカさん。」


「私達剣術科は身体強化以外の魔法をあまり使いません。それでもやはり必要ですか?ライル先生も先程は使っておられなかった様ですが。」


「確かにさっきは一切魔法は使ってなかったね。

でも僕が言いたいのはあくまでも剣術に対する話です。」


「剣術…ですか?」


「ではアデルカさん。前に。」


「え?!あ、はい!」


ん?なんかアデルカの顔少し赤いような。



ほんとライルはモテるなー。



「では、構えて下さい。」


「はい!」


「先程と同様に切り込んで下さい。一つ一つ分解して考えましょう。」


「分かりました。」


ゆっくりと先程の攻撃をなぞる。



「まずアデルカさんは自身の左下から切り上げる形で攻撃しました。

それを避けるとそのまま切り下ろし。

それをいなされて少し体勢が崩れました。

ここでストップです。」


「はい。」


「アデルカさん。ここで体勢が崩れたのはなぜですか?」


「え?!えっと。私の攻撃がいなされて、その反動を吸収しきれなくて体勢が崩れました。」


「そぉですね。では、なぜ反動を殺せなかったのですか?僕はそれ程強くいなした覚えは無いんですが。」


「はい。私の予期せぬ方向に受け流されたからです。突然の事で反応が遅れました。」


「そぉですね。皆さん何か気づくことはありませんか?」


「そぉか!」


「ジジさん。」


「そこでもしいなされるかもと言うイメージがあったら体勢が崩れるまでの事にならなかったんだ!」


「正解です。つまり、剣術もイメージをより多く持った方が対処が正確で早い。

逆にイメージも無く攻撃すれば致命的な状況に陥るわけです。

アデルカさん。ありがとうございました。」


「い、いえ。」


「これで分かったか?イメージ力と言うのは物凄く大事なわけだ。」


「このイメージが使いこなせる様に今から皆さんで練習しましょう。」


全員が灯火を使う。



パーム姉さんもシリアも混ざってやっている。



「キース先生。」


「ん?どした?サーシャ。」


「あの。私の灯火見てもらっていいですか?」


「いいぞ。」


「いきます!はっ!」


ボッ


「うん。イメージもしっかり出来てるし効率も良いな。ただ、今までのイメージと異なるから少しぎこちないな。後は慣れでスムーズになると思うぞ。」


「あ、ありがとうございます!」


「良かったら他の人達も見てもらえないか?」


「で、でも…私なんかが…」


「そんな事ないぞ。

おーい。サーシャが上手くできない人に教えてくれるって言ってるが教えて欲しい人ー。」


生徒は全員漏れなく手を挙げた。



「序列3位に教えてもらえるなんて嬉しいです!」


「俺も俺も!俺も教えてくれ!」


「ほらな?頼むぞ?」


「は、はい!」


生徒の輪の中に入っていく。



「あ、あの…」


「ん?シリア?どした?」


「わわわわわ私にも教えてください!」


「お、おぉ。いいぞ。」


「やった!」


なぜか態度がガラリと変わったが気にしないことにする。



「えい!」


「やっぱりセンスあるな。

かなり綺麗に変換できてる。」


「ホントですか?!」


「あぁ。上出来!」


「うふふ!やった!」


席に戻って何度も灯火を使っている。



「なぁ。姉さん。シリアどしたの?」


「なんか授業受けて見直したみたいね?」


「にしては態度変わりすぎじゃね?」


「私も驚いてるわ。シリアにあんな可愛い所があったなんて………じゅるり。」


「こらこら。捕まるからその顔やめなさい。」


「お、おっと。

それより、私と話してた魔法の概念の話はしないの?」


「んー。それも考えたんだけどね。それ話しちゃうとほんとに全部1から学び直さなきゃならないでしょ?それに他の先生との話に矛盾点出てくるし。

俺達はずっと居るつもりないしそれを壊してしまうと最悪魔法使えなくなる子とか出てくるかもしれないからさ。他の方法にした。」


「そっか。確かに衝撃が大きすぎるわよね。

色々考えてくれてありがと。」


パーム姉さんのたまに見せるこの優しい笑顔が俺は好きだ。



「よーし。皆どぉだー?」


「な、なんとか!」


「ま、慣れもあるからな。次はライルに教えて貰うぞー。」


「はーい。次は僕の番ですね。

先程僕が剣術においてもイメージが大切だと言いましたが、剣術におけるイメージはそんなに簡単に身につくものではありません。

魔法科の人達に聞きます。それはなぜ。でしょうか?」


「えっと…はい!」


「はい。バンズ君。」


「魔法についての知識が魔法科と比べて少ないからですか?」


「外れです。

魔法科の人達よりも魔法について詳しい剣術科の人もいると思いますよ。」


「う。確かにいるな…」


「別に間違ったから恥ずかしいという事は無いです。

どんどん自分の意見を出してください。」


「はい!」


「カーディさん。」


「えっと…経験が必要だから…ですか?」


「正解です!」


「よし!」


「剣術というのは、毎日の積み重ねと経験値によって鍛え上げていくものです。

自分がどぉ動いたら相手はどぉ動くのか。

自分の技にどこか弱点はないのか。

そぉやって色々とイメージする事で剣術は磨かれていきます。

魔法も同じですが、魔法よりも剣術の方がそれは如実に現れます。」


「ライル先生!」


「はい。アデルカさん。」


「先生はそのイメージや経験で強くなったんですか?!」


「そぉですね。それだけとは言いませんがそれが主な要因ですね。」


「なるほど…」


「それではここから1つ。僕が面白い技を教えたいと思います。」


「ホントですか?!」


「えぇ。そうですね。バンドール君。前に来て貰えますか?」


「はい!」


「では無手で構えて。」


「は、はい!」


「僕が君たちの動きを見て1番に思った事は、自分の身体を上手く扱えていないと思いました。」


「じ、自分の身体を?」


「えぇ。その証拠を見せましょう。

バンドール君。身体強化を最大まで上げてください。

次に僕がこれからゆっくりと君の手を握り、そのまま投げたいと思います。」


「え?はい。」


「君は投げられないように全力で抵抗してください。

ちなみに僕は一切身体強化を使いません。」


「わ、分かりました。」


「行きますよ。」


ライルがゆっくりとバンドールの手を握る。バンドールはその手を振りほどこうと顔を真っ赤にしながら頑張るが、次の瞬間。



バンドールは天井を向いて倒れていた。



もちろんライルの優しい投げで痛みは感じなかった様だが。



「え?あれ?」


「ありがとうございました。」


「え?はい。」


「バンドール君は投げられた方なので何が起こったか分かりにくいので今から説明していきます。

と言っても誰も何が起きたか分かっていないようですが。」


「………」


「君たちの身体の使い方は非常に雑です。

今自分の手や足がどのような位置にあるのかが把握出来ていない。

これは剣士にとって非常に良くない。

ですがそれが分かると、今のように簡単に人を投げ飛ばせるのです。」


「先生!」


「はい。ナルフ君。」


「それは俺達にも必要な技術なのでしょうか?」


「ナルフ君だけでなく魔法科の人達は皆さん同じように思っていますね?

顔を見れば分かります。

では質問しましょう。非常に簡単な話です。

君たちが敵と対面した時、そぉですね。パーティを組んでいたとしましょう。

高火力を放つ魔法士、一撃が非常に強いですね。

そんな相手が近づけば何も出来ない人間だとします。

前衛がいたとして、それを突破出来る実力があった場合、君たちならどぉしますか?」


「う…間違いなく魔法士を狙います。」


「ですね。僕でもそぉします。

事実ゴブリンの中に1匹でもシャーマンがいた場合まずシャーマンを潰す事が鉄則になる程です。」


「確かに…冒険者の人達が同じこと言ってるの聞いた事あるわ。」


「では、近づいた瞬間に投げ飛ばされる様な人間だとしたら?君たちが近づいても投げられる。魔法も向こうが上だとしたら?」


「う…降参するしか無いです。」


「ですね。パーティを組んだ時は役割があって君たちが前に出ることは無いかもしれませんが、それでも1つでも多く技術や知識を身につけることは直接自分の命や仲間の命を守ることに繋がるのです。

それを学んだのなら次は君たちはどぉしますか?」


「俺達にも技術を教えてください!」


「素晴らしいですね。そぉです。まずは色々な事を知り、教えを乞う。それで良いんですよ。ここは学ぶところですから。

それでは話を戻しましょう。

先程僕が投げた時、バンドール君は身体強化をしていました。

普通に考えたら投げ飛ばされるのは僕の方ですよね?なぜバンドール君は投げられたのでしょうか?」


「………」


「誰か意見のある人はいないですか?」


「……はい。」


「はい。ラカス君。」


「相手の力を利用して投げたから力があまりいらなかったんですか?」


「素晴らしいですね。その通りです。

相手が振りほどこうと力をかけた時、その力を上手く利用してあげるんです。抵抗するのでなく力の方向を変えてあげる。

そぉするとさっきの様に簡単に投げ飛ばすことが出来ます。」


「私達にも出来るんですか?」


「やり方さえ分かれば。言うほど簡単ではありませんが。

極論を言えば一歳の子が身体強化した力の強い男の人を投げ飛ばすことが可能という事です。」


「となれば私達の様な女性でも男性を投げ飛ばすことが出来ますね!」


「はい。要は力の使い方、身体の使い方をいかに意識し、自分の管理下に置くか。ですね。

それではここからは少し面白い練習方法を教えますね。

兄さん。」


「なんか久しぶりにやるな。」


「うん。今日は教えるためだし分かりやすくオーバーアクションね。勝敗数は本気じゃないし変更無しで。」


「分かった。パフォーマンスだな。」


「うん。

それでは皆さん少し見ていてください。

利き手を使って相手の手首を掴んでください。相手は利き手で自分の手首を掴んでる状態ですね。

これで向かい合って先程の様に互いに投げ合います。」


俺とライルは互いに向き合って投げ合う。


互いに手は離さない為2人が手を握ったまま空中を回転して飛び回る図が完成する。



傍から見ると実に面白い。というか奇っ怪な状況。



皆空いた口が塞がっていない。



二人とも何度か飛んだ後着地しパフォーマンス終了。



「あはは。皆さんすごい顔になってますよ?」


慌てて皆居直る。



「僕達は互いに投げあう程に練習してますが、皆さんにはまだまだ難しいので、とりあえず相手の体勢を崩すか、手を振りほどいたら勝ちにしましょう。」


「よーし。じゃあ2人1組になれー。

剣術科の連中は身体強化を解けよー。

最初は男女別けれてやれよー。」


「あ、あの…」


「どぉしました?あ、そぉか。1人女性が残ってしまいますね。」


「ライルは見てなきゃならんだろ?俺が…」

「はいはいはいはいはいはい!」


「うぉ?!どしたシリア?!」


「私が相手するのでお二人は見ていてください!」


「お、おぉ…」


「に、兄さん。シリアさんに何かしたの?」


「いや、何もしてないんだが…」


シリアの食い付きが半端なさ過ぎてびっくりしたが、とりあえず全員相手が出来た様だ。



「それじゃあとりあえずやってみようか。始め!」


「おらー!」


「このー!」


各々考えながらも励んでいるようだ。



時間をみるとそろそろ終わりが近づいて来ている。



「ほら、シリア。それじゃあダメだ。プリネーラが振りほどこうとするのに息を合わせてやるんだ。」


「は、はい!キース先生!いえ…キース…さま…」


「ん?なんか言ったか?」


「いえ!」


「プリネーラも上手く息を合わせて相手を崩すイメージを持つんだ。」


「はい!」


「アデルカさん。確かに息を合わせるタイミングは良いですが、そんなに力んではうまくいきませんよ。」


「はい!」


俺とライルは全員の状況を確認する。



身体を使う事に慣れている剣術科の生徒は飲み込みが早くて相手を崩せるようになってきた。



ボーン…ボーン



「はーい。終了。

今日の授業はここまでー。この練習は友達いればできるから休み中とかやってみると上達も早いぞー。」


「はい!」


「じゃあまた次の授業でな!」


「ありがとうございました!」


「いやー、面白かったわー。」


「パーム姉さん。」


「なかなか他には無い授業方針だけどあんなに真剣に授業に取り組む生徒の姿初めて見たわ。」


「そぉなのか?体験型授業と言うか、なるべく身体で覚えて欲しいしな。知識より慣れる方が大事だったりするし。」


「そぉね。」


「そんで次の授業なんだけど少し派手に動きたいんだけど。」


「そぉね…異例だけど闘技場使ってみる?」


「異例なのか?」


「普通座学の授業では使わないわ。」


「ふーん。まぁ良いか。闘技場使うにはどしたらいいの?」


「そぉね…」


「私にお任せ下さい!」


「シリア?」


「はい!私が申請を受けて管理しますので、私に申請書をお持ち下さい!」


「お、おぉ。ありがとう。」


「いえ!それでなんですけど…」


「なんだ?」


「出来ればこれからも授業に参加したいのですが…。」


「それはパーム姉さんとの交渉次第じゃないか?」


「私は構わないわよ?と言うかこれからも私出席するつもりだし。」


「うぇ?!姉さんも?!」


「なに?悪い?」


「あ、いえ。」


「ならばよーし。

私とシリアの名前も名簿に書いちゃおーっと。」


「校長!グッジョブです!」


なにかよく分からない連帯感が生まれている。



女性のこういう時の団結力って怖い。



そっと目を逸らして見なかった事にする。



「キース先生!ライル先生!」


「アデルカとサーシャ。」


「ありがとうございました!」


「いや。なんか騙すみたいな形になってすまなかったな。」


「そんな事ないです!すっごく面白かったです!」


「わ、私もすっごく面白かったです!」


「それは良かった。初めての授業だったから僕達も緊張してたんだよ。」


「え?!そんな風には見えなかったです!」


「ありがと。それにしてもアデルカは剣術科序列1位だったんだね?」


「サーシャも3位とは、なかなか二人とも凄いじゃないか。」


「そそそそんなことないです!」


「私も今まで1位って事に自信持ってたけど完全に打ち砕かれました。

まさに井の中の蛙大海を知らず。ですね。」


「別に自信を喪失させたかったわけじゃないけど、すまなかったな。」


「いえ。未熟な自分が悪いんですよ。先生が謝る事じゃ無いです!」


「そぉ言って貰えると助かるな。」


「ま、気になったらまた次の授業も出てくれな。」


「よろしくね。」


「「はい!もちろんです!」」


二人ともワーキャー言いながら小走りに去っていった。



「じゃあ俺とライルは自由行動で良いか?」


「えぇ。構わないわよ。あ、一つだけ。

ほかの先生の所に授業を見に行く場合は許可が必要になるから勝手に見に行かないように。」


「そぉなのか?!」


「そぉよ。本人の承諾なしでは見に行けません。学生じゃないですから。」


「ちぇー。まぁいっか。んじゃちょっと街でも行ってみるわ。」


俺とライルは街に行くことに決めた。



とりあえず必要なものとして普段着が欲しい。



母さん達に貰った服は野生児生活でボロボロだ。



学校を出て街に入る。



道は舗装と言うか石が敷き詰めて埋められている為歩きにくいという事はない。



日本の街並みからするといつの時代?と思うくらいの建物が立ち並ぶ街並み。



所々に魔法の要素が転がっており、広場の噴水や街頭は恐らく魔道具。



交通手段は馬で馬車が通るのをいくつか見た。



俺とライルはファンタジーな世界観にワクワクが止まらない。



いつもあまりはしゃいだりしないライルが、


「次はあっちに行こ!その次はあっち!」


などと俺を急かして走り回る。



かく言う俺もルンルンだったが。



街並みは綺麗で活気が溢れている。



ただ1本奥に入れば痩せて汚い服を着た子供達が物乞いをしている。



これぐらいの都市になると仕方の無いことなのかもしれないが、それでもやはり前世での自分達を思い出してしまう。



辛いが何か出来る訳でもない。



俺とライルは苦虫を噛み潰したような顔をしながら街並みへ戻る。



街には出店が所狭しと並んでおり、それらの店が扱う商品は多様だ。



この国の特産品はガラス。



学園の校舎にもガラス窓がはめられており不思議に思っていたが、謎が解けた。



ガラスのコップやお皿、ランプにまでガラスが使われている。



色とりどりのガラスが並ぶ様子はとても綺麗で遠目に見るとイルミネーションのようだった。



他にも芋をすり潰して団子にしたものを焼き、串に刺したバンバン焼き。サイコロステーキを串に刺した串肉なんかが置かれている。



街並みを通ると腹が減って仕方がない。



いくつか買って食べ歩いたりしていると出店の中に服屋があった。



どうやらこの辺りはフリーマーケットみたいなものらしい。



色々な店を巡っていたがこの店は品も値段も良さそうだった。



「お姉さん!」


「あら、こんにちは。」


「こんにちは!普段着が欲しいんだけど。」


「んー。そぉね。その格好じゃ出歩くには固すぎるわね。任せなさい!私が選んであげるわ!」


「ほんと?ありがとー!だいたいこれくらいで揃えて欲しいんだけど…」


「まっかせなさい!」


ぼったくられる心配も無さそうだしいい人に当たったと思っていると、ものすごくがらの悪そうな方々が来る。



「おらおら!どいたどいた!」


「ん?」


「お兄さん達はこのお姉さんとお話あるから向こう行こうねー。」


「おら!借りた金早く返せや!」


「す、すいません…もう少しお待ちください。」


「待てねーよー!お前さんガキがいるんだろ?ガキが可愛けりゃ自分の身を削ってでも守りたいとか思わねぇのかよ?あ?!」


「すいません!すいません!必ず返します!」


子供を盾に高利貸しを行っている様だった。



見ていて気分のいいものでは無いがかと言って勝手に手を出すとこのお姉さんがこれから商売する場所が無くなってしまうだろう。



それに子供がどぉなるかわかったものでは無い。



「おらおら!」


ガラの悪い男達5人の行いはエスカレートしていき遂には商品にまで手を出そうとした。



せっかくお姉さんが見繕ってくれていたものだ。



「おい。」


「あ?なんだ?ガキの出番は無いから引っ込んでろや!」


「そいつは俺が買おうとしてた商品だ。下手に扱うな。」


「あぁ?!」


「お姉さん。僕達に助けて欲しい?」


「…え…?」


「助けてもその後なんとか出来るかは分からない。でも助けて欲しいなら今は助けてあげられるよ。」


「助けて…助けて下さい!」


「だってさ。兄さん。」


「よし来た。」


「お前ら大人なめるのも大概にしとけよ!

おい!お前ら!」


「ひっ!」


刃物を見たら普通はお姉さんみたいな反応になるのだろう。



「はぁ…お兄さん達。僕達はあまり殺生はしたくないんだよ。でもそれを出したなら覚悟はいいよね?」


「お姉さん。血みどろになるかもだから見ない方がいいぜ。」


「舐めた真似してくれやがって!あの世で後悔しやがれ!」


男共が刃物を持って突っ込んでくる。



魔法を使うまでもなさそうだ。



俺は1人の男が持つナイフをおもむろに取り上げる。



キョトンとした顔をしているが知らん。



喉を掻き切るとそのまま奥にいる男の眉間にナイフを投げつける。



見事ど真ん中に突き刺さり男は力なく崩れ落ちる。



横を見るとライルが同じように奪ったショートソードで3人目の首をはね飛ばす所だった。



「一丁上がりだな。」


「お姉さん。終わったよ。」


「あ、ありがとうございます!」


「んー。多分僕達は衛兵に連れてかれるから、その前に渡しとくね。

ここに子供を連れて避難しておいて。後で向かうから。」


俺とライルはお姉さんを見送ってその場に待機。



少しすると衛兵がやってくる。



「な、なんだこりゃ!」


「えらいことになってますな?!」


「あー。すいません。やったの僕達です。」


「は?」


「そいつらが店の人に乱暴な事しようとしてたから注意したら刃物出して襲ってきたんで、自衛のために殺しました。」


「……あー。とりあえず同行してくれ。おい!」


兜を被り、髭を生やした渋めのオッサンが指示すると後ろに控えていた2人が俺達の元にくる。



「別に逃げないし同行するから大丈夫だって。」


腕を掴もうとしてきた男達にやんわりと断りを入れて同行する。



連れていかれた先で小さめの部屋に連れていかれる。



もちろん2人別々に。



「さて。どぉしたもんかな。」


兜を取った男は短い金髪。なかなかのワイルドなおじさんだ。


「どぉしたもこぉしたも俺が言った通りだぞ?」


「いや、まぁそれは近くにいた人達の話で分かってるんだけどな。」


「んじゃなんでだ?」


「あいつらこの辺りじゃ有名なゴロツキ集団でな。

バックに着いてる男がそれなりの大物でな。」


「なるほど。やった事は自衛だし罪にはならないけど相手が相手だから素直に帰す訳にもいかないってところか?」


「まぁな。お前の弟にも同じように聞かれて同じように答えたぞ。」


「まぁだろぉな。

それで?どぉするつもりなんだ?」


「お前達の身分証も確かだし、学園側にも確認を取ったからな。教師に下手な事は出来ねぇよ。

つまり俺達はどぉしたらいいかわからんわけだ。」


「なるほど。一つ提案があるんだが。」


「なんだ?」


「俺達を囮に使わないか?」


「?

どぉ言うことだ?」


「俺達は言わばそのバックに着いてる男の顔に泥を塗ったわけだ。

そぉなりゃ落とし前付けてもらわなきゃ顔が立たない。

そぉなれば俺達の所に来るのは明白だろ?」


「まぁな。」


「そこで俺達を囮として泳がせてその男が来たら現行犯で捕まえるんだ。」


「んー。そんなうまい事いくか?」


「そっちから情報は流せないんだろ?」


「そんな事したら上から俺が殺されちまうよ。」


「でもそいつは捕まえたいんだろ?」


「そりゃそれが俺たちの仕事だからな。」


「俺達が探ってもいいけど探るより確実だろ?」


「お前達ほんと肝っ玉座りすぎだろ。」


「そぉか?

それに手下を使うなら都度捕まえてしまえば一網打尽だぜ?」


「あー…どぉすっかなー…」


「手下とかその男は殺すとまずいのか?」


「まぁな。極悪人って訳でもないからな。

それに手配書が出てれば生きて捕まえると懸賞金出るしお前達にも金が入る。」


「なるほど。じゃあ生きて捕まえる。それで衛兵に渡して懸賞金は貰う。

これでどぉだ?」


「あー!くそっ!わかった!乗ってやるよ!

その代わり捕まってもこっちの情報は漏らすなよ!」


「分かってるって。

あんたの名前は?」


「俺はジーク。

ジーク-リアンだ。ここの衛兵長をやってる。」


「よろしくな。ジーク。」


「ったく。握らされたのが貧乏くじじゃないのを祈るぜ。」


俺とライルはその後解放されて自宅に戻る。



ガチャ


「ただいまー。」


「キース様!あの女は誰ですか?!」


「シリア?!ってか、様?!」


「そんな事より!あの女はだ・れ・で・す・か!」


「お、おぉ。」


あまりの迫力に気圧されるがとりあえず説明する。



「なるほど…分かりました。

分かりましたが!何してるんですか!」


「あ、いやー…成り行きで。」


「成り行きで。じゃないですよ!何かあったらどぉしてたんですか!!」


「え?あー…ははは。」


「笑い事じゃないです!」


「すいません。」


「ライル様!」


「は、はい!」


「ライル様もです!反省して下さい!」


「す、すいません…」


「はぁ。まぁ終わった事は仕方ないですけど。

それで、これからどぉするおつもりですか?」


「ん。まぁ色々考えてるところだ。」


「あ、あの…」


「あぁ。お姉さん。と、こんにちは。お名前なんて言うんだい?」


お姉さんは赤髪を緩く三つ編みしていてお姉さんとは言えいい歳だ。



子供も赤い髪。短髪に切りそろえていてお母さんに隠れてこちらを伺う男の子。



「ブーム。」


「ブームって言うのか。よろしくな。」


「お兄さん達が助けてくれるの?」


「ん?」


「あいつらいつもお母さんを虐めるんだ!僕じゃ勝てないから母さんを守って!」


「……」


「こらっ!ブーム!

すいません。助けて貰ってここにも匿ってもらったのにそんな図々しいこと頼もうなんて思っていません。

もう少ししたら出ていくので。」


「お姉さん。名前は?」


「え?あ。すいません。私ニーナと申します。

ニーナ-ヒルトです。」


「ニーナさん。不躾な質問ですが。旦那さんは?」


「あの人はどこにいるか分かりません。

いつもいつも酒や賭け事ばかり。暴力もしょっちゅう。だからブームと2人で逃げたんです。

しばらくは2人でなんとか店をやってたんですがアイツらに見つかって…旦那の借金は私の借金だと毎日の様に…

ご、ごめんなさい…私もぉどぉしたらいいのか…」


静かに涙を流して膝を着くニーナさん。



恐らくはずっと前から続いていたのだろう。



旦那が借金をして、稼いで返してもさらに借金。



自分で作った借金なら助ける気は毛ほども起きないが、お門違いの借金取りなら話は別だ。



旦那に返済させるべきだ。



「旦那さんとは離婚したんですか?」


「えぇ。逃げ出す日に。離婚した事で出て行けと言われたので逃げる様に…ごめんね。ブーム。私が不甲斐ない母で…。」


「そんな事はありません!お母さんはしっかりやってるじゃないですか!悪いのはその元旦那です!離婚してるのに借金返済を強制してくる連中です!」


「お、おい。シリア。」


「なんですか?!私の言ってること間違ってますか?!」


「いや、間違っては無いけどさ。」


怒り心頭のシリアをなだめてなんとか座らせる。



「さて。ニーナさん。

僕達は別に聖人でも神でもありません。」


「はい。分かっています。だからここからは出ていくと…」

「ですが。あなた達を放っておけるほど酷い人間にもなりたくない。」


「…え?」


「そこで、あなたには学校付きの服屋さんになってもらえないか聞いてみようと思います。」


「そんな!助けて貰っておいてそんな事!」


「ニーナさん。あなたは相場も分からない僕達に普通よりむしろ安く服を売るつもりでしたよね?何故ですか?」


「そ、それは…私達も苦しいですけど…それを人に押し付けては元旦那や借金取りと変わらないから…」


「だろうと思いました。

僕達は決して聖人や神では無い。

ですが受けた恩は必ず返します。その恩返しだと思ってください。」


「……うぅ……ありがとう…ありがとうございます…」


「さて。話はついたな。シリア。」


「はい!」


「学校付きの服屋はあるのか?」


「いえ。ありません。」


「実は素晴らしい品質、デザイン、しかも安い服屋を1人知ってるんだが雇ってみる気は無いか?」


「本当ですか?!それは有難いですね!ちょうど探してたんですよ!」


「パーム姉さんには俺から話しておくから直ぐに契約の話に移ってもらえないか?」


「よろこんで!」


「ありがとうございます…ありがとうございます…」


泣きながらひたすらお礼を言う母。



俺はそのままパーム姉さんに連絡を取る。



「パーム姉さん。」


「あら?どぉしたの?もしかして姉さんが恋しくて?」


「切ろうか?」


「あーん!ごめんー!」


「まったく。

それより実はかくかくしかじかで…」


「なるほどねー。まぁ良いわよ。シリアともちょうど服屋が欲しいって話してた所だったし。こっちとしても渡りに船よ。」


「ん。じゃあ契約とか細かいことはシリアに任せて大丈夫か?」


「えぇ。大丈夫なんだけど…

じつはシリアが見当たらないのよね。仕事は終わってるから別に良いだけど。」


「いや、今ここに居るぞ。」


「え?!」


「帰ったらここにいた。」


「あの子…ずるいわね。」


「いや、そこか?!怒るところそこなのか?!」


「冗談よ冗談。」


「まぁ別に迷惑って程じゃないから良いけどさ。

じゃあ後はシリアに任せるぞ?」


「えぇ。詳細が決まったら私の所に来るように伝えておいて。」


「はいよー。」


テーブルに紙を広げてシリアとニーナが話し合っている。



「では、月々だいたいこれくらいで…」


「そんなに頂けないですよ!」


「いえ。あなたの状況を考えての額ではありません。

単純に我々の学園に専属でついて頂けるのであればこれくらいが妥当だと判断しての額です。」


「そ、それなら…」


シリアは交渉事も上手くやれる様だ。



ニーナは終始お礼を言っていたが、なんとかまとまりそうだ。



「では、こちらの条件での契約になります。」


「私なんかにそんな…ありがとうございます。」


「ニーナさん。あなたは心優しく誠実な方です。私なんか、と自分を蔑まないで下さい。」


「ありがとう…ありがとうございます…」


「さて、契約完了だな。」


「えぇ。品物も見せてもらったけど素晴らしいわ。

これなら学内でも結構有名になるんじゃないかしら?

材料なんかはこっちが手配して売上の中から差し引いてもかなりの収益になる予想よ。

もし売れ行きが良かったらボーナスも出る契約よ。」


「おぉ。そりゃいいな。ニーナさん。お子さんの為にも頑張らないとな?」


「はい!誠心誠意やらせて頂きます!」


「ブーム。今回は俺とライル、それにシリアと学校がお前の母さんを助けた。

でも次からはそぉはいかんかもしれん。

その時母さんを守るのはお前の役目だ。出来るか?」


「うん!絶対に母さんを守る!」


「よく言った。それでこそ男だ。

そんなブームには良いもんやろう。」


「これは?」


「俺が作ったお守りだ。

母さんを守るって男と男の約束をそいつに誓って肌身離さず身につけておけ。」


「わかった!」


「よし。」


俺はブームにブレスレットを渡す。



「それではニーナさんは学校付きの宿舎で過ごしてもらいますので今から案内致します。」


「頼んだ。」


「この度は本当にありがとうございました!」


「お兄さん達!ありがとう!」


3人は俺たちの家を出てシリアに連れていかれた。



これで安全だろう。



「さてと。」


「僕達も準備しないとね。」


「だな。」


俺達はこれから来るであろう新たな追っ手に対する対抗手段を講じる。



いくつか準備が整い次第寝る事にした。



次の日は1日自宅で過ごしたが、特に何かが起きる事はなかった。



時折監視されていることは分かっていたがそれだけだ。



その次の日は授業があるため早々に家を出る。



「ふー。なかなか慎重な奴らだな?」


「そぉだね。昨日来ると思ってたけど。今日の夜辺りかな?」


「かもな。色々情報集めようにも俺達が来たの最近だし集められなくて手を出して無いだけか?」


「あー。ぽい。それはあるね。」


「ま、来た時考えればいっか。」


俺とライルは学園に着くとそのまま闘技場に向かう。



この学園には2つ闘技場があり、門を抜けて校舎の裏にある。



屋内闘技場と屋外闘技場だ。



闘技場は4つの柱が四方に設置されており、こいつが魔法具になっている。



自己修復機能と回復作用がある。



自己修復機能は例えばその四角い範囲内で地面が抉れたりすると自動的に以前保存された状態にもどるという仕組みだ。



ぱっと戻る訳ではなくじわじわだが。



それでも前世の世界では実に羨ましい1品だ。



回復作用は中で戦う者に対する回復作用だ。



致命傷や即死攻撃に対する回復作用は期待できないため、必ず教師同伴のもと闘技場は使用される。



生徒が勝手に使うと停学、もしくは退学処分となる。



ボーン…ボーン


「さて。始めるとしますか。」


「お願いしまーす!」


「よろしくな。

ん?なんか人増えたか?」


「だね。全部で30人くらいになってる。」


「んー。となると前回の授業内容をやった方が良いのか?」


「先生!」


「アデルカ?どした?」


「前回の授業については先に出ていた私達が教えてあります!」


「へ?そぉなのか?それが普通?」


「あ、いえ。普通は再度授業するのですが、時間がもったいないので私達が個人的に考えて動きました。

先生達の授業では自分達で考えて動く事が重要だと思いましたので…ご迷惑だったでしょうか?」


「そんなことは無いぞ。助かった。ありがとな。」


「はい!一応この授業の募集期間は来週までなので、それが過ぎれば人は増えないです。

ですが多分ですがかなりの人数になると思います。」


「そぉなのか?」


「はい。かなり噂になっておりますので…」


「噂に?」


「はい。」


「どんな?」


「この授業は面白いし素晴らしいと。」


「そぉなのか?」


「はい!と言うかその噂流したの先の9人ですけど。」


「え?そぉなのか?」


「はい!私達は既に先生達のファンなので!」


「ファンて。まぁ良いか。わかった。少し考えて授業進めることにするよ。」


「はい!」


「じゃあ今日の授業始めるぞー。」


「今日は何するんですか?」


「あ、そぉか。座学で闘技場借りること今までは無かったんだっけか。」


「はい!ワクワクします!」


「あはは!ジジは素直で良いな!

今日は前回に引き続き灯火のお話だ。全員灯火は使えるな?

…よし。

前回最も簡単とされる生活魔法の灯火でさえしっかりマスター出来ていない事がわかったよな?」


「お、お恥ずかしい限りです…」


「そんな事は無いぞ。

間違った事や失敗する事は恥ずかしい事じゃない。

なぜなら知らないのだから。

お前達の学んでいる学園の校長の言葉だ。」


「…」


「エッヘンみたいな事するなよ…。

まぁ話しを戻すぞー。そんな灯火さえマスターしていないなら灯火についてもっと学べば何か出来るのでは無いか。と思わないか?」


「確かに…」


「んじゃせっかくなら色々試してみよう。

まずはこの灯火、炎と言うよりは火が出てるだけだが、出力される際に出口を絞ったらどぉなると思う?」


「はい!」


「はい。カーディ。」


「火が小さくなる!」


「よーし。じゃあ実際にやってみようか。カーディ。前に来て。」


「はい!」


「まずは灯火を付けて。」


ボッ


かなり練習したんだろう。変換効率が上がっている。



生徒は皆高等部1年。つまり俺より1つ上。ライルより3つ上になる。



そんな相手だが前世の記憶があるためどぉしても子供扱いしてしまう。



頑張った結果がみえるカーディの頭に手を置いてなでなで。



「頑張ったな。」


「へ?あわわわわわ!」


「おっと。すまん。つい。」


いくつか殺気の篭った視線をかんじた気がするが…気のせいのようだな。



「さて。もう一度火を安定させて。」


「はいー!」


「ん。じゃあ出口だけ絞ってみようか。」


「はい。えーっと…こうかな?」


今までフワフワと燃えていた火がピンとして揺らめかなくなる。



「え?!」


「正解はこんな風になるわけだ。」


「面白い!」


「よし。全員1回やってみろ。

出来ない人には教えてやれよー。」


それぞれが灯火に細工を始める。



所々から出来た!とか、やった!と聞こえてくる。



「はーい。皆出来たなー。そんじゃ次の質問いくぞー。

この安定した火に空気を送り込むとどぉなる?」


「そ、そんな事出来るんですか?」


「出来るぞー。イメージする時に魔素と空気を送り込む様にイメージするんだ。」


「あ、それなら出来そう。」


「じゃあ空気送り込むとどぉなる?」


「はーい!」


「はい。バンズ。」


「えっと。火が弱くなりますかね?魔素の濃度が薄まるわけだし。」


「流す魔素は同じ量でも空気が混ざる分薄まるから火が弱くなるって事だな?」


「はい。」


「そんじゃバンズ。前に来てやってみてくれ。」


「はい!」


バンズは灯火を付ける。



出口を絞って火を安定させて、そこから空気を同時に送り込む。



「おわわ!」


「正解は火が赤から青に変わる。でしたー。」


「何これ?!青い火?!」


「そぉだ。火や炎ってのは適度に空気と混ぜて燃やすことで青い火となる。これは赤い火よりも高温だ。」


「すごい!こんなの初めて見た!」


「そぉなのか?鍛冶屋やってる家とかだと見た事ある奴いるんじゃないのか?」


「僕の家鍛冶屋やってますけど釜の中の火がそんな感じです!」


「だな。そんじゃやってみろー。」


全員目をキラキラさせて灯火を使っている。



やはり魔法は面白い!

これが魔法の最大の魅力。



「先生!出来ました!見て見て!」


いつもどもっているサーシャが嬉しそうに寄ってくる。



「お?出来たじゃないか!やったな!」


またしても頭をなでなで。



「あわわわわわ!」


「お。すまん。」


「い、いえ。その…ありがとうございます!」


アデルカの元に走って行った。



ありがとうございます?



嫌じゃ無いみたいで良かった。



「全員出来たな。

1回落ち着けー。

よーし。ここまで来て自分達がどれほど魔法について無知なのかわかったな?」


「生活魔法の灯火でこれだけの事が出来るなんて知らなかった…」


「そぉだな。

だが逆に言えば知れば今まで使っていた魔法ももっともっと幅が広がるわけだ。」


「言われてみればそぉかも。」


「どぉだ?魔法って面白いだろ?」


「はい!」


「それが重要だ。

そんじゃ今から闘技場内に散らばって各々灯火に色々な工夫をしてみろ。一応見てるが危ないことしそうなら全員にストップかけるからちゃんと止まれよ?」


「はーい!」


各々が散らばって色々と模索する。



空気をもっと送り込む人、ほかの魔法と組み合わせようとする人。



色々な人がいる。



「おっと!サーシャ!ストップ!」


「え?」


「みんなー。ちゅうもーく。」


「?」


「今からサーシャがやろうとしてることは結構危ないので、俺が代わりにやるぞー。」


「そ、そぉだったんですか?!」


「あぁ。今やろうとしてたことを皆に説明できるか?」


「はい。えっと、空気を先に送り込んで、それに灯火をプラスしようと。」


「だな。全員考えてみろー。どぉなると思う?」


「え?えーっと…」


サーシャも考え込む。



「サーシャはどぉなると思って試したんだ?」


「えっと、後から空気を送り込むと、徐々に青い炎に変わったので、最初から青い炎がボッとでると思いました。」


「なるほど。他には誰かいないか?」


「……」


「よし。じゃあ俺がやってみよう。少し離れて見ててくれ。」


俺がサーシャのやろうとしたことをやる。



ボンッ!



指先から爆発が起きる。



「きゃっ!」


女性陣の中からいくつか声が上がる。



「どぉだ?危ないだろ?」


「は、はい…」


「例えばサーシャが説明してたようになれば良かったが、想像と違って爆発したとする。サーシャの顔がぐしゃぐしゃになってたところだ。」


サーシャはゾッとして身震いする。



「いいか。1つ覚えていて欲しい事として、魔法は確かに面白い。

だが人を殺せるだけの力を持っている。それが例え生活魔法だとしてもだ。

魔法は基本的に自分を傷つけることは無いけど、魔法を使って生じた間接的な物理現象まではその範疇じゃない。

今回の場合炎で焼けはしないが、爆発の勢いは自分を襲う。

適切な使い方、理論で魔法を使うこと。これが何よりも大事だ。だから色々思いついたとしても必ず先生か校長に相談して、監督の元行うこと。」


「は、はい!」


「常に冷静に考えて行うこと。

これが守れないのであれば俺は授業を辞める。

わかったか?」


「はい!」


「よし。それじゃあ次はライルの番だ。」


「はーい。皆さんちょっと怖かったですね!

特にサーシャさんは。でも兄が見ている時ならどんどんアイデアを聞いて形にして下さい。

必ず守ってくれますから。」


「は、はい!」


そんなヒーローを見るような目で見るな…。



「さて。ここからは僕が担当します。

僕が前回教えたゲームは覚えていますか?」


「はい!」


「じゃあ早速2人1組になってやってみましょう。」


闘技場内に広がってゲームスタート。



やはり剣術科の人達は感覚が鋭く相手を崩せる人もチラホラ。



「はーい。終了!

次は今から僕が呼んだ子同士で組んでください!」


ライルがだいたい同じくらいの力量の人同士を組み合わせる。



「じゃあ始め!」


今度は力量が同じ程度なのでそんなに簡単にはいかない。



躍起になって挑んでいる。



しばらくした後、



「はーい。終了!

これは何度もやって感覚を養う物なのでなるべく毎回やります。友達との遊びでやっても構いませんが、相手が倒れそうになった時は必ずフォローを入れるように!」


「はーい!

惜しかったのにー!」


「また次の機会に持ち越しですね。

では今日はこのゲームの発展系。護身術を教えます。」


「護身術…ですか?」


「えぇ。特に女性は力でなかなか男性には勝てません。そこでこの護身術を使うと抵抗できるかもしれません。

あくまでも護身術なので相手に勝つとか言うものでは無いのでそこは気をつけてください。」


「逃げるために使う、とかってことですか?」


「はい。

では、誰か前に…」


「はーい!」


アデルカとシリアが手を挙げる。



「…」


無言の火花。



女性怖い。



「えーっと…ではせっかくなので生徒であるアデルカさんに頼みますね。」


「はーい!」


「では、僕の腕を掴んでください。」


「は、はい。」


「もっとぎゅっと握って。」


「はい!」


「例えば自分が逃げる立場でこの様に掴まれた状況になったとします。

アデルカさんが捕まえようとしている側ですね。」


「はい。」


「では、まず1つ。」


「え?!あれ?!」


「この様にすると簡単に外れます。」


「え?!しっかり掴んでたのに!」


「えぇ。人間は腕を外側に捻ると指先に力が入らない仕組になっています。

ですが、相手は男性や、身体強化を使った人間と仮定するとそれだけでは簡単には外せません。

そこで先程の相手の力を利用する技が必要になります。

相手が引っ張ろうとしたり、振り回そうとしたのに合わせて捻ってあげるとかなり簡単に外れますよ。」


「え?今私握ってるだけでしたよ?」


「えぇ。今のは僕がアデルカさんの呼吸に合わせました。これはまだ難しいので、皆さんは引っ張りあったり振り回したりして下さい。

これはやり過ぎるとケガになりますので、あまり酷いことは控えてください。」


「はーい!」


またしても2人1組になって今の技を練習する。



この世界の人間は身体強化や魔法があるためこう言った人体の構造からくる護身術等には疎い。



これで人間の構造等に興味を持ってくれるようにライルからのメッセージだろう。



「とりあえず皆さん身体強化は外してやってください。」


「分かりました!」


ワイワイ楽しく出来ているようで良かった。



ボーン…ボーン



「え?!もぉ終わりですか?!はやーい!」


「嬉しいですね。ではまた来週会いましょう。」


「またなー。」


俺とライルは闘技場を出て自宅に向かう。



特に変わった様子もない為そのまま自宅に入る。



普通に過ごしているが外で何かあるような事は無い。



日が暮れて夜が深くなってくると近くで不審な気配が蠢いている。



リビングへ出るとライルも気づいたらしくリビングに出てくるところだった。



ライルが昨日買ってきた紅茶を入れてくれる。



あまり高いものでは無いため少し薬の様な味がする。



あまり気にならない程度ではあるが。



そんな風に優雅に待っているとやっと侵入を試みようとしてきた。



窓や扉がガチャガチャと揺れる。



だが俺の作った結界が破壊を防ぐのと同時に眠らせる。



眠りを誘う魔法、スリープだ。



対抗手段はあるが、そんな魔法を使われるとは思っていなかったらしく人影が地面に横たわる。



それに気づいて2人ほど寄ってくるが、そいつらには更に追い打ちとして設置した電撃が流れる。



痺れて動けなくなった2人もその場に崩れ落ちた。



更に2人が離れて見ていたが、諦めて帰るようだ。



「仲間を置いていっていいのかね?」


「そんな事は考えて無いんじゃないかな?」


「やっぱ?まぁ俺達としてはありがたいが。」


ライルが外にでて倒れた4人を縛り上げて家の中に連れてくる。



身体強化で4人を軽々と持ち上げる様は異様だ。



「起こして相手の事とか吐かせる?」


「そぉだな。催眠魔法掛けとくか。」


俺は掌を4人に向けて魔法を掛ける。



「起こして良いぞ。」


「おーい。おじさん達ー。」


「ん…はっ!?」


「さ、ちゃっちゃと喋ってね。

とりあえずボスの名前は?」


「バッシュ。ただのバッシュだ…」


「どんな人なの?」


「裏世界で武器や人身売買を生業にしている…」


「今回の任務はどんなもの?」


「ここに住む2人を殺して吊るしあげる任務だ…」


「どこに行けば会えるかな?バッシュ。」


「俺達も知らない…」


「んー。やっぱ下っ端だな。さっさと引渡しちゃうか。」


「だね。」


ライルが4人の縄を一応持って、2人でジークの元に向かう。



コンコン


「………」


コンコン



「……ふぁーい…なんなんだこんな時間に…ってお前達?!」


「あ?あぁ。今日来たから捕まえて連れてきた。

催眠魔法掛けてあるからしばらくボーッとしてるけど明日の朝にはしっかりしてると思うぞ。」


「お、おぉ…」


「んじゃ後よろしく。手配書出てたら明日また懸賞金取りに来るからよろしく。」


「あ、あぁ。わかった。」


「んじゃ、おやすみー。」


俺とライルは引き渡しが終わると直ぐに自宅に戻る。



対抗手段もなくまた突っ込んでくる程バカでは無いはずだ。



帰ると直ぐに眠りについた。



翌朝目が覚めるといい匂いが漂ってくる。



ライルが朝食を作っているらしい。



「ふぁーー…おはよー。」


「あ、おはよ。朝ご飯もぉ出来るから。」


「はぁーーーい。」


あくびと共に返事をして身支度を整える。



「今日はパンだよ。後はベーコンと目玉焼き。」


「味噌汁ほしー。」


「流石に味噌は無いねー。今度似たようなもの出来ないか試してみるよ。」


「米があると最高なんだがなー。」


「米ねー…似たような物すらないからね。難しいかな。」


「だよなー。いただきまーす。」


米は無いがライルの飯は激ウマだ。



ただのパンだと思っていたら中にクルミの様な物が入っている。



「うまー。やばー。」


「ありがと。食べたらジークの所に行く?」


「少し出店回ってからかな。

直ぐに言ってもまだ話してるところじゃないか?」


「あぁ。それもそぉか。」


ガチャ


「?」


「あれ?!もぉ起きてるんですか?!」


「シリア?

何故鍵を持ってるんだ?」


「え?何故って。家に入る為ですよ?」


「いや。何故この家に入る必要かある?」


「朝食作って差し上げようかと思いまして。

と言うかもぉ食べてる…」


「お前も食うか?」


「え?」


「ライルの飯は美味いぞー!」


「ゴクリ」


「ほれほれ。」


「あー、あー!」


「兄さん。食べ物で遊ばない!」


「お、そぉだな。すまん。」


「ほら、シリアさんの分も用意したんで。」


「いいんですか?!やったー!」


「どぉだ?」


「…………うまーーーー!何ですかこれ?!パンに…シーラの実を入れたんですか?!」


「そぉだよ。」


「こんな食べ方があったなんて…」


「おいしいでしょ?」


「はい!まさかライル様の朝食を頂けるなんて…うまーー!」


「シリア学校は大丈夫なのか?」


「はい!今日の仕事は既に終わりました!」


「優秀だな。」


「昨日の夜全力でやりました!」


「なぜに?」


「お二人に朝食を作りたくて!」


「全力の使い道間違ってないか?」


「そんな事はありません!」


「変なやつ。

そぉだ。今日これから街の方に出かけるんだが、客用の器とかどんなのが良いのか分からんしついてきてくれないか?」


「いいんですか?!」


「いや、こっちが頼んでるんだが。」


「喜んで!」


物凄く目をキラキラさせてるがそんなに買い物が嬉しいのだろうか。



朝ご飯食べて、ニーナがうちに置いていってくれた普段着を来て外にでる。



何故か俺とライルが白と黒。



母さん達と似た感性なのだろうか。



他にも柄が入ったものとか色々あったんだが…



「行きましょー!」


「シリアってほんといつも元気だな。」


「それがわたしの取り柄の1つですから!」


「そぉいえばこの国の特産品ってガラスだったよね?」


「そぉです。この辺は天然のガラスが取れるんですよ。」


「へぇ。」


「むかし天然のガラスを加工した人がいて、その流れでガラスが特産品になりました。今ではどこにも負けない技術と質を保ってますよ!」


「なるほど。」


透明度や不純物、形等を考えるととても綺麗には見えないが、この世界では綺麗な方なんだろう。



「やっぱりお客様様の器とかはガラスの方が良いのか?」


「そぉですね。やっぱりその方がいいと思います。

ガラス用品店は沢山ありますけど今から回るお店はどこも質も良いですしお値段もお手頃です!」


「やっぱりこぉいうことは女性の方が詳しいね。シリアに来てもらって正解だったね。兄さん。」


「だな。シリア。今日は頼むぞ。」


「まっかせてくださーい!

っと…とりあえず1件目です!ここはコップが綺麗です!コップを揃えるならここ!」


「いらっしゃい!今日は何をお探しで?」


「今日はコップを3つくらい揃えたくて来たの!お兄さん良いのある?」


「お兄さんとは嬉しいねー!よっしゃ!お兄さん頑張っちゃう!」


「ありがとー!」


「へっへっへ!よっと。

こいつなんかどぉだい?赤、青、緑。3色セットで銅貨50枚!」


「キレー!でも今日はほかの所も行かないと行けないからなー…銅貨30枚ならなんとか出せるんだけど…」


「それはちょっと安すぎるぜ。銅貨45枚!」


「もぉ一声!お願い。お・に・い・さ・ん。」


「くー!こりゃ負けたー!よっしゃ!銅貨40枚!」


「ありがとー!」


「やっぱり連れてきて正解だったな。」


「あれは僕達には無理だよねー。」


「はい!コップゲットです!」


「シリア。お前すげーな。」


「まだまだ行きますよー!」


シリアの買い物はサクサク進む。



お目当てのものを見つけると直ぐに交渉。



相手によって交渉術も変えるししっかり値切って買っている。



「うむ。これは買い物の時はシリアに頼むべきかもしれんな。」


「だねー。相当安く買えてるね。」


「ありがとー!」


「お、終わったみたいだな。」


「ふー。これで大体揃いましたね!」


「だな。助かった。ありがとな!」


「いえいえ!これくらいならいつでも言ってください!それにしてもアイテムボックスってホントに便利ですねー。

あれだけ買ったのに手ぶらって…」


「商人辺りは喉から手が出る程だろうな。」


「たまに持ってる人いるみたいですけどホント羨ましいですよ。」


「さてと、昼飯前にジークの所行きますか。

買い出しでスッカラカン。」


「買いすぎちゃいましたか?!」


「そんな事は無いぞ。元々使い切るつもりだったからな。」


「そぉなんですか?」


「あぁ。今から衛兵の所行って金を受け取るんだ。」


「衛兵?」


「あー。話してなかったか。昨日悪いやつ捕まえてな。偶然寝てた所を見つけたんだ。」


「そんな偶然ありますか?!」


「な?俺も驚いたよ。その前に衛兵にこんな人見かけたらって手配書見せてもらってな。そいつを見つけたから連れてったんだよ。

確か銀貨10枚だったかな。」


「す、すごい偶然ですね?」


「まぁな。

ジーク!いるかー!」


「あぁ。大声出さなくても聞こえる。

ん?今日は彼女同伴か?」


「かかかか彼女?!」


「んにゃ。仕事仲間だよ。」


「彼女………彼女………」


「そっか。ほれ。」


「あんがとさん。銀貨で15枚か。」


「1人は10枚の手配書。もう1人が3枚。2枚はお駄賃だ。」


「助かるわー。ありがとな!」


「こっちこそありがとな。俺も出世コースに乗れるかもしれん。」


「そいつは良かった。んじゃまたな!」


「彼女?!……彼女……」


「おーい。シリアさーん。行きますよー?」


「え?あっ!待ってくださーい!」


「さてどっちの彼女だと思ったんかね。あの二人どっちも鈍そうだから可哀想かもしれんな。

ま、俺の知った事じゃないか。」


シリアに美味しいお店を選んでもらって入る。



シリアはエルフだからベジタリアン。



食べられる店も限られるかとおもったらわりとあるらしい。



シリアにつれられて入った店は雰囲気も落ち着いていて値段も安い。



うまい飯に舌鼓を打つ。



「はぁー!食った食った!うまかったなー!」


「ですよね?!私もこのお店すきなんですよ!」


「雰囲気も落ち着いてて良いですね。」


「はい!じゃあ1人…」


「ん?シリアは良いぞ。今日は付き合ってもらったからな。俺達に出させてくれ。」


「え?!そんなの悪いですよ!」


「いーって。こんな時くらいカッコつけさせてくれ。」


「…じゃ、じゃあ…」


「それでいい。」


支払いを済ませて外に出る。



「さーて。こっからどぉすっか?」


「あっ!キース先生?!ライル先生?!」


「ん?アデルカ?とサーシャか。こんな所でどぉした?学園は?」


「今日は午前中で終わりだったので帰りにお昼ご飯食べ食べようって。

2人で今食べてきた所です!」


「おぉ。そぉか。こっちはシリアに選んでもらって客用の器とか買ってたんだ。」


「そぉなんですか?

それにしては荷物がみあたらないですが。」


「実は僕と兄さんアイテムボックス持ちでね。」


ライルがアデルカに近づいて耳打ちする。



「そぉなんですか?!羨ましー!」


「あ、そぉだ!せっかくお客さん様に買った器だし今からうちに来ない?」


「え?!」

「うぇ?!」


「いいんですか?!」


「ちょっとお菓子を焼いてみてね。僕と兄さんだけじゃ消費出来ないからせっかくだし食べに来ないかなって。」


「ライルのお菓子はほっぺが落ちるぞ?」


「行きます!」

「行きます!」


「よっしゃ!じゃあシリアと合わせて5人前!」


「沢山作ったから大丈夫!

もし余ったら包むから持って帰って!」


「至れり尽くせり?!」


「あ、そんなら良い紅茶買ってくか?」


「あー、そぉだね。お客さん様にも欲しかったし。」


「それなら私いい所知ってますよ!」


「お!じゃあ紅茶買って行きますか!」


「おー!」


シリアも含めて女性って甘いのほんと好きだな。



言ってる俺もライルのお菓子は大好物だが。



帰りに可愛らしいお店で可愛らしい入れ物に入った紅茶を買う。



シリアと違って若々しいチョイスだなと思った事は言わない。



「ただいまー。」


「おおおおおおじゃましましゅ!」


「緊張し過ぎだから。」


「うー…」


「上がって上がって。」


「テーブルの周りに適当に座ってくれ。」


「僕はお菓子と紅茶準備してくるね。」


「あ、お手伝いします!」


「じゃあお願いしようかな。」


「はい!サーシャは待ってて大丈夫よ。」


アデルカがライルとキッチンに向かう。



シリアもサーシャも手伝うと言おうとしたがアデルカのほうが早かったらしい。



「そぉ言えばサーシャ。」


「あ、はい?!」


「あれから変に魔法試したりしてないか?」


「はい!魔法の危険性について身をもって知りましたから…」


「なら良いんだ。サーシャは魔法のセンスも良いし本当はどんどん色々なこと試して欲しいんだがな。

俺がサーシャにこの人の前なら試して大丈夫って言えるのが校長くらいしか思いつかないんだよ。

校長もあぁ見えて忙しい人だからな。すまん。」


「そ、そんな!気にしないでください!

私はキース先生とライル先生の授業を受けられるだけで嬉しいです!」


「そぉ言って貰えるとありがたいな。」


俺はサーシャの頭を撫でる。



「あわわわわわ…」


「あ、すまん。つい癖でな。」


「いいいいいえ!う、嬉しいです…」


「キース様!」


「お?おぉ。どした?シリア。」


「私も!私もキース様とライル様の授業を受けられて光栄です!」


「シリアは生徒じゃないがな。まぁありがとな。」


シリアも撫でる。



そんな目で頭を差し出されては撫でるしか選択肢は無い。



シリアご満悦。



「お待たせー。」


大きめの皿にクッキーの様な焼き菓子を盛ってライルがやって来る。



後ろからアデルカが紅茶を入れたコップを5つお盆に置いて持ってくる。



「待ってました!」


「うわー!」


「なんて言うお菓子ですか?!」


「んー、クッキーって言うお菓子をイメージして作ったんだけど、ちょっと違った感じになったかな。」


「紅茶はさっき買ったシーシトカの紅茶よ。」


「いっただっきまーす!」


「?

キース様?そのいっただっきまーすとは?」


「ん?あぁ。そっか。

俺達の故郷じゃごはんを食べる前に食べ物や作ってくれた人への感謝を込めて"いただきます"って言うのが習わしなんだ。

食べ終わったら"ごちそうさまでした"って言うんだ。」


「そぉなんですか。なんかすごく素敵な言葉ですね!では私も。

いただきます。」


「いただきます!」


「いただきます!」


全員いただきますとは森にいた時を思い出す。



少しイントネーションが違うが要は気持ちだから気にしない。



「おいしー!何これ!」


「ほんとだ!すごくおいしいです!」


「うまー!めちゃうまー!」


「そぉ?良かった。沢山あるからどんどん食べてね。」


「紅茶にも合います!」


「俺が言ったこと分かったか?」


「はい!私達甘いもの好きで色々なもの食べましたけどこれは別格です!

表面はサクッとしてるのになかは柔らかく、噛むとじんわり甘さが広がります。」


「やっぱりこぉいう自然の甘さってのは身体に優しい気がするなー。」


「砂糖は無いからねー。」


「砂糖…ですか?」


「あぁ。甘味を作る材料だな。この辺では見かけないけど。」


と言うかこの世界で上手く作れるかも分からないが。



「蜂蜜はあるみたいだから今回は蜂蜜を少しだけ使いました。」


「それでほんのりあまいんですね?」


「入れすぎると逆につまらない味になってしまうので加減が難しいんですよ?」


「なるほど…材料自体はサグルですか?」


「うん。サグルの粉だね。それに水と塩を少しいれて、蜂蜜を少し。焼く前に表面に卵の卵黄をといたものを塗ると照りがでて美味しいんだ!」


「なるほどなるほど…今度作ってみます!

と言うかこの辺りのものお店で十分売れますよ?!」


「それは話し合ったけどライルがまだ完成品じゃないから完成したらレシピを売ろうかと考えてるらしい。」


「商業ギルドにですか?」


「あぁ。俺達がやるよりよっぽど上手く金儲けしてくれるからな。

それにこの国の名物が1つ増えるならいい事だろ?」


「はい。」


このクッキーがプレーンで他にも色々混ぜ込んだ物を作って商業ギルドに売り込む。



実は他にも色々な菓子を作って貰っているが全部出すと色々崩壊してしまうのでクッキーだけにしようと話した。



つまり今回は批評会を兼ねたものだ。



他のものは人に食べさせたり見せたりしない様に決めている。



朝ご飯でシリアに出したパンはまだまだ試作段階だが、これもどこかに売り込めないか試作中。



ちなみにこの世界のパンは固くて砂が混じっているのが普通。



シリアが朝ご飯で感動していたのには柔らかく砂の入っていないパンにも感動したからだ。



砂とサグルの粉の分別はアイテムボックスに入れる事で可能となる。



アイテムボックス内では時間が止まり、混合物を分別できる。



溶解物、つまり水に溶けた塩とかは分別出来ないが。



この方法だとアイテムボックスが無いと不可能になってしまうので綺麗なサグルの粉を作る、つまりひき臼等を作らねばならない。



それを作って売り込む事も考えたが急激な技術の発展は危険を伴うため今回は見送った。



ただサグルの実をすり潰す際に手間さえ掛ければひき臼を使わなくても綺麗な粉に出来るためなんとか売り込めないか試作中という事だ。



生産性が著しく悪くなるので分かっていてもやっていないと言う今の市場の穴をついて数は作れないが砂のない柔らかなパン!という触れ込みなら多分売れる。



多くの人手と時間が必要なのが難しいところ。



多くの人手と時間、つまりそれだけのお給料を払うには売るものを高くするしかない。



その天秤が手間を捨てる方に傾くのは仕方の無いこと。



なんとかならないか試行錯誤中だ。



当ては無くは無いが、今はあまり考えていない。が、



「あの。学園で何か作って売るって可能ですかね?」


やはりシリアは頭が良い。



恐らくそこまで考えて給料の出ない人手。つまり生徒を使えば市場で出来ないことが出来るのではないかと考えた様だ。



「シリア。やっぱり頭いいな。」


「え?!えーと、あ、ありがとうございます?」


「正直俺達に仕えて欲しいくらいだ。」


「あ、ありがとうございます!」


「クッキーは簡単だし誰でも作れて、作り方自体に価値があるから商業ギルドに売り込むつもりだけど、もう1つ売り込もうか迷ってた物があるんだよね。」


「朝ご飯でいただいたパンですよね?!」


やはり頭が良い。



「そこまで考えたか。やっぱり頭いいな。

その通りだ。パンなら生徒を使えば綺麗なサグルの粉を作れるし面目としては社会学習とか商売の基本として学ばせられる事も多い。」


「ですよね。あの、朝ご飯のパンのアイデア売ってくれませんか?」


「直球だな?」


「こぉいうことは腹を探り合っても意味がありませんし、直球の方が気持ちがいいですから。」


パーム姉さん。良い子を見つけたな。これは正直羨ましいくらいに優秀だ。



「ライル。お前の持ちネタだ。交渉は一任する。」


「分かったよ。

じゃあ交渉に入りますか?

っと。学生の前で話すべき内容では無かったですね。」


「いえ。聞かせてください。私達も王族の端くれ。交渉や経営の思考を知れる機会を下さるのであれば是非お願いしたく思います。」


「私も姉と同様に思います。」


この子達も将来有望だ。



この歳で今の話の将来的重要性に気づける子は多くはない。



それを見極め下手にでて断りにくくお願いする2人を見て感心する。



ライルもシリアも同様の意見の様だ。



「君達2人は将来有望だね。分かった。このまま続けさせてもらうね。

じゃあ交渉に入りましょうか。」


「はい。私がお願いしたいのは、綺麗なサグルの粉の製法と、パンに何かを混ぜ込む新しいパンの製法、それらの製法の使用権の独占です。」


「分かりました。それらをお渡しするとしてどれくらい出せますか?」


「……売上の10%の返還。ではどぉでしょうか?」


「多すぎませんか?!」


「それくらいの価値があると判断しました。

それに加えて私どもはあくまでも学園。学ばせる立場にあります。儲けも重要ですが、それ以上に生徒達に社会のこと、商業の事をその身をもって学ばせられるという価値があると判断しました。その結果としてこの比率での提示になります。」


本当に素晴らしい!



自分達の儲けよりも子供達の学ぶ場を逃がさないため、その為の比率。損を被ってでも学ばせる。



まさに学園の経営者側の鑑だ。



感動すら覚える。



ライルも同じ考えだ。驚きと感動が混ざった表情をしている。



「シリアさん。

僕は感動しています。あなたの心意気とそれを苦もなく提示する度胸に。」


「ありがとうございます。」


「今回は僕達も儲けよりより強固なコネの作成とそれに付随する目に見えない報酬が主な目的です。

正直あなたの答えが儲け優先だったり他を考えない答えだった場合は最悪交渉自体を反故にするつもりでした。」


「……」


「ですがあなたの答えは私の期待する以上のものでした。あなたの心意気と覚悟に敬意を。

僕達は3%で手を打ちます。」


「ライル様!それではあまりにも!」


「良いんですよ。多分兄ならタダで譲ったと思います。僕は堅実なので、それだけはいただきます。」


「あまりにも…ライル様とキース様の取り分が…」


「兄の顔を見てください。あの顔は最早報酬を受け取る気がありません。

兄は基本的に僕よりも冷たい人です。

あなたの答えが僕達の期待以下だった場合即座にこの商談を打ち切っていたでしょう。あなたに対する評価も地に落ちていました。

回復する事はありません。

ですが兄は僕よりも熱い人です。あなたの心意気が素晴らしいと判断したら本当に無償でお渡しするくらい平気でやりますよ。

その人が最早報酬などどぉでも良いと顔で言っています。これ以上の商談はいらないと。」


「キース様……ライル様……ありがとうございます!」


「ではこれで商談成立という事で。」


「「……はぁーー…」」


アデルカとサーシャの緊張が解けたようだ。



「私こんなに素晴らしい商談初めて見ました。」


「どちらも相手を思いやり商談が成立することってあるんですね。」


「今回は特別だよ。僕達も教師の端くれだからね。実際は君達学生の学ぶ場を提供する事が主な目的の1つにあったしそこが合致してる時点で交渉は成立してたんだ。

シリアさんの答えがそこに重きを置いているかどうかの判断が商談のカギだったね。」


「良かったー…私間違えなくて良かったー…」


心底安心した顔をするシリア。



「少し迷って素直になる事を選んだシリアさんは凄いと思うよ。あそこで身を切る選択ってなかなか出来ないから。」


「ですね。普通は自分達の取り分優先しちゃうし…」


「私達の学園はこんな素晴らしい方が経営して下さってる事を知れただけでも今日は良かったです!」


「だな。俺もシリアの評価上がりっぱなしだ。」


「なんか褒められ過ぎて恥ずかしくなってきました!」


「あはは!まぁまぁ難しい話した後は甘いもんでも食って落ち着け!」


「……はい。はぁ…落ち着く。」


「紅茶入れ直してくるよ。」


「あ、私も!」


「大丈夫。皆は食べてて。」


「は、はい!」


「校長ならどぉしてましたかね?」


「パーム姉さんか?んー、どぉかな。多分だけど売上全部上げるから!とか言ってたかな。」


「あー、言ってそぉですね。」


「あの人子供の事になると人格変わるからな。」


「はい。困ります。」


「まぁシリアが財布の紐閉めてるし大丈夫だろ?」


「それでは困るんですよー…やはりあの計画を進めなくては…」


「ん?計画?」


「あ、いえ。こちらの話です!

それより今日の内容は書面にして改めてお持ちします。」


「おぅ。頼むわ。」


「ありがと。お願いするね。」


紅茶を入れ直したライルが返事する。



そこからは最近学園でライルの教えたゲームが流行ってるだとかもっと魔法を教えて欲しいだとかそんな話をして時間を潰した。



「お?そろそろいい時間になってきたな。」


「楽しい時間はすぎるのが早いですね。」


「また来ればいいよ。美味しいクッキー焼いておくよ。」


「私達太ってしまいます。」


「あはは。

じゃあまた。」


「今日はありがとうございました!」

「ありがとうございました!」


「じゃなー!」


生徒2人が帰っていく。



「それでは私も。

契約書は明日お持ちします。」


「よろしくお願いしますね。」


「では。」


「………さーて。」


「今日もジークの所に行かなきゃね。」


「2人は王族で1人は魔法士、手を出す程馬鹿じゃないだろ。」


「だね。動きも無いし大丈夫だね。」


「となると今日は対策バッチリかね。」


「だろうね。意味があるとは思えないけど。」


「少しは情報持ってる奴だと良いんだが。」


家を囲むように配置された数人の気配。



夜が深くなると動き出す。



昨日と同じように2人が近づいてくる。



結界が発動してスリープが掛けられるが対策のお陰か寝ずに近づいてくる。



電撃も耐えた。



この結界はもぉ使えないなーと考えていると思っていると周囲を囲んでいた全員が意識を失って倒れる。



この世界には()()自体が存在しないため理解不能な魔法だろう。



原子論。



要は全てのものが原子から出来ている考え方。



もちろん空気も。



酸素、窒素、僅かな水分、その他諸々の微量の金属元素からなる空気。



その中でも酸素は人間が呼吸に必要なものであるが、その濃度は実に繊細。



21%が通常の濃度、18%が安全の限界値とされこの濃度では頭痛を覚えたりもする。



10%では意識を失い最悪窒息死に至る。



もちろん濃すぎてもいけない。



濃すぎるといわゆる()()()()が生じて最悪死に至る。



俺が使用した結界に使用した原理だ。



つまり範囲内の酸素濃度を10%程度まで薄めた。



その中の人間は意識を失う。



今日は全員釣れた。



俺とライルは直ぐに全員縛り上げ昨日と同じ様に尋問するが新しい情報は無い。



そのままジークの元に行き連日で驚かれたが無事引渡し。



またしても懸賞金を貰えそうなのでいい稼ぎ口だ。



こちらから殴り込めないのは癪だがそこは仕方が無い。



そしてそんな日が数日続いた。



対策も無しに送り込んでくるのだから学習しないのかと呆れるほどだ。



情報は得られなかったが、懸賞金のお陰でこっちは潤った。



そして数日後急に敵襲がパタリと止んだ。



「今日も来なさそうだね?」


「だな。多分諦めて違う手に変えてきたんだろうな。」


「となるとまわりの人が危険かな?」


「だな。」


「一応パーム姉さんに話して帰りは2人以上の集団で帰るか迎えを寄越して貰うようにはしておいたけど。」


「学生はそれで大丈夫だろ。あとはニーナさんが少し心配かな。」


「学園近くの宿舎に寝泊まりしてるんだよね?」


「あぁ。一応何かあればこっちに伝わる様に結界は張っておいたけど、何かあれば直ぐに動ける様にはしとかないとな。」


「分かった。」


俺とライルはそれとなくニーナさんとブームの様子を伺いつつ過ごすことにした。



明日は3度目の授業の日だ。



早々に就寝して明日に備えることにした。






「おはようございます。」


「シリア。おはよう。」


何故かシリアが毎朝迎えに来るようになった。



朝食もライルが起きるより早く来て作っている。



知り合いの訪問に対する結界は張っていないため鍵があれば入れるのだ。



別に困ってはいないため制限していないが何故こうなったのか謎である。



パンの試作品を食べさせてくれるのだが、これが結構美味い。



やはり色々な材料を知っている分幅も広いんだろう。



ちなみにこのパンの試作品は全てシリアが作っている。



俺とライルの反応を見て良さそうなものをチョイス。



いくつか出来たら授業として実施するつもりらしい。



多分もう少ししたら第1回パン作成販売大会が実施されるだろう。



「あ、兄さん。おはよう。」


「おぉ。おはよ。」


「キース様、ライル様、今日は授業よろしくお願いします。」


「うん。そぉ言えば言ってたの出来てる?」


「はい。数も出席者分用意しております。」


「ありがと。」


商談の日からシリアは更に下手になり今では側付きというより家来みたいになっている。



何故か聞いたらこの方が自分が納得出来ると言われてそれ以上突っ込めなかった。



「よし。行きますか。」


ガチャ



「キース先生!ライル先生!」


「アデルカとサーシャ?」


「一緒に行きませんか?」


「別に良いけど…何故?」


「私達ちょうどこの道通るので!」


「そぉなのか。」


「シリアさん?!」


「はい。」


「なぜ2人の家から…?!」


「あ、最近なんか朝食作りに来るようになったんだよ。」


「へ、へぇー…」


「なにか?」


「い、いえ。なんでもありません!行きましょ!」


俺とライルの知らないところで何かが起きている気がしてならないが気にしたら負けだ。



5人での登校、と言ってもすぐそこだが。



今日も闘技場での授業になるため直接闘技場に向かう。



そこで驚いたのは名簿に載っている人間の数だった。



1学年で魔法科約200人、剣術科約100人、計300人いるのだが、そのほとんどが参加することになっていた。



「さ、300人…どっかの有名な学者の演説か?」


「さ、流石に驚くね。」


「先生達の授業はもぉとっくに学校中の噂ですよ。むしろ当たり前の結果では?」


「うーむ。今日は天気もいいし室外闘技場にしたから全員余裕で入るけど…」


所謂運動場だ。学園の規模もデカいため室外闘技場も大きく作られておりキャパ的には確かに問題無いが、問題はこっちにある。教えるにしてもこの人数。



出来るか?



「ま、なんとかなるか。」


「兄さんほんと楽観的だね。」


「こぉなっちまったもんはしょうがないだろ。

今更考えてもどぉにもならん。やってみるしかないだろ。」


「まぁ…そぉなんだけど。」


「キースー!ライルー!」


「パーム姉さん?」


「見た見た?!この数!」


「今見た。ライルが呆然としてた。」


「すごいわー!こんな出席率初めて見た!」


「いやー。こっちは困ってるんだが。」


「大丈夫!なんとかなる!」


「この人も楽観的だったの忘れてた…」


「ライルは考えすぎよ。ほらほら!始まるわよ!」


ボーン…ボーン


「はーい。皆始めるぞー!

っと、これじゃ全員に聞こえないか。

拡声魔法と、後は後ろに見えるように投影魔法をだな。」


自分とライルに拡声魔法を掛けて後にも見えるように空中に俺達の姿を投影した映像を出す。



この魔法自体はよく使われているらしく魔法に驚く人はいなかったが個人で魔法具無しに使う人間には驚いた様だ。



「相変わらずキース先生って凄いことなんでもないようにやるよね。」


「えぇ。それを見せつけないところがカッコイイわ。」


聞こえない聞こえない。



「よーし。始めるぞー。

俺達もこの人数の授業は初めてだからなんかあったら挙手してくれ。

まず前回までの授業内容から説明実演しながらやってくぞー。

前回までに参加してた生徒は前に出てきて実演してもらうからなー。」


「うひー!私大丈夫かなー!」


「お?カーディ。やりたそうだな。前に来てくれて良いぞ?」


「わー!しまったー!」


笑いが起きる。



授業中に笑いが起きるのも普通は無いことだとアデルカから聞いたっけ。



「ほら。前に来い!」


「はーい…」


拍手と共に前に出てくる。



サーシャあたりはこの注目度に耐えられんだろうな。



「よーし。じゃあ早速行くぞー。」


俺とライルが、代わる代わる前回までの授業内容を掻い摘んで話す。



前に出ても大丈夫そうな学生を選んで実演もしてもらう。



一コマ分でなんとか説明を終える。



「皆分かったかー?分からんかったやつは素直に挙手しろー!」


「……」


「じゃあ次行く前に、さっき言った魔法の危険性なんかの約束が守れるか?守れない奴は退席しろ。守れる奴は挙手!」


全員が手を挙げる。



「よし。じゃあここからは新しい内容だ。

灯火については今まで試したが今日は水流、生活魔法第2弾!」


「わー!」


なんの拍手だ?



「じゃあ早速誰かにやってもらうか。」


「はい!はい!」


数人が手を挙げる。



積極的で素晴らしいね。



「じゃあそこの君!」


「よっしゃ!」


「まず水流をやってみようか。」


「はい!」


指先に水が出現する。



どこかに飛んでいったりせず留まっている様はまさに魔法!



「よーし。イメージも灯火同様に効率的になってるな。

じゃあ一気に飛ばして何か要素を足してみようか。」


「うぇ?!いきなりですか?!」


「そぉだ。前に出たかっただけかー?」


「うっ。」


「ほれほれ。なんかアイデア出してみろ。」


「んー…じゃあこいつを薄く伸ばして中に入る!とかはどぉですか?」


「お、面白いこと考えるな。ちょっとやってみ?」


「ぬおーーー!あ。」


「惜しい。水分量が絶妙だから少し気を抜くと破れてバラバラになるな。」


「くそー!」


「よーし!なかなか面白い魔法だ!誰が1番最初に出来るか競走だ!」


「やるぞー!」


全員少し離れて取り組み始める。



「惜しーい!」


「あ、くそっ!」


前に出てきた子はこぉできたら面白い程度で考えた様だがこれがなかなか素晴らしい魔法の練習になる。



水は表面張力があるため少しでも薄くしすぎたり水を伸ばす力がまばらになると直ぐにバラけてしまう。



それをコントロールして人1人入れる大きさに伸ばすとなるとある程度繊細なコントロール能力が必要となる。



最初に出来たのはサーシャだった。



「で、出来た!」


「お。サーシャクリアだな。」


「やったー!あ。」


「嬉しくて集中力切れたな。だがクリア。流石という所か。

ほらほら!他の奴ら!頑張れ!俺は剣術科だからなんて言い訳聞かねーぞ!」


「ひー!」


実際常に身体強化を張っているなら魔法科の生徒とあまり変わりはない。



1日の長と言うべきか最初から参加していた9人は早い段階でクリア。



何も言っていないのに出来ない人にコツを教えたりしていた。



素晴らしい光景だね。



「よーし。そこまでー。出来なかった人は宿題だー。出来なくても良いが次までに練習しとけー。」


「はーい!」


「惜しかったのになー!」


所々で悔しがる声が上がる。



「先生!」


「なんだ?」


「先生とかシリアさん、あと校長は出来るんですか?」


「お、挑戦的だな。よーし。やってやろうじゃねぇか!な、校長!シリア!」


「えぇ?!」


「お?シリア?どした?出来んのか?」


「や、やれますよ!はっ!」


1発成功。



おぉ!という歓声の横で心底ほっとした顔をしているシリアには触れないでおこう。



次は校長の出番。



「ほーい!」


掛け声はあれだが他の人の2倍はおおきな水袋を作る。



流石は校長。



あのどぉだ!的な顔が無ければ。



生徒は素直に感動と尊敬を抱いている。



「最後は俺の番だな。よっと。」


俺は自分では無く立っているサーシャの体に校長と同じくらいの水袋を掛けてやる。



魔法の鉄則として自分より離れた場所でコントロールする事は自分の付近でコントロールするよりも数段難しい。



「うっそー?!」


「なんじゃそりゃー!」


驚きの声が上がる。



サーシャさん。あなたのそのキラキラした瞳をこちらに向けないでください。はじゅかしくなりゅ。



「どぉだ?先生達って凄いだろ?」


「すごーい!」

「かっこいー!」


素直で本当によろしい。



「さて、そんじゃ次はライル先生にかわるぞー。」


「ライル先生は出来るの?」


「え?あぁ。そっか。僕も先生だった。

よっと。」


当たり前のように校長と同じクオリティの水袋を作る。



「うはー。剣術の先生なのにあのクオリティかー!」


「ほんとすごいわー!」


「さて。じゃあ今日は皆に配るものがあります。

それはこれ!」


ライルは手に持った小さな棒を取り出す。長さは30センチ程度。1人1本。



「この棒はただの棒ではありません。

サイカの木と言って魔力を通しやすい木で出来ています。」


「あ!杖に使われてる木だ!」


「その通りです。よく知ってましたね。

この木で作った理由はまだ内緒です。暫くは魔力とは関係ない使い方をしますので。

とりあえず1人1本持っていってください。」


杖と違って少し太めに削り出されている。



わかりやすく説明するとピザ等の生地を伸ばすのに使う伸ばし棒が近い。



「皆に行き渡りましたね?

それでは説明します。

前回は護身術を少し教えましたが、これは人体の構造を理解してもらいやすくするためのものです。

これからも少しずつ教えていきますが、取り敢えず今回は崩しゲームの発展系といきましょう。

互いに棒の端を握って崩しゲームをします。

先に言っておきますが、手首を掴むより難しいです。

相手の動きを直に感じられないですし、自分の動き、相手の動きが棒を通すので間接的な動きになるため棒の動きも考えないといけないですので。

とりあえずやってみた方が早いですね。

それでは2人1組になって始めてください。」


「このっ!」


「なんの!」


少しだけ難しくなった崩しゲームに生徒は熱中する。



悔しがったり喜んだり楽しんでいる様子だ。



「はーい。皆さん。今日は少し早いですが、疲れて怪我の元になるといけないのでここまでにしましょう!」


「せんせーい!」


「なんですか?」


「先生は崩しゲーム強いんですか?」


こら、アデルカ、シリア。その目をやめなさい。



「んー…良いでしょう。それでは前に。」


「よっしゃ!」


「やったれー!」


どぉやら元々お調子者らしい。



「ではいつでもどぉぞ。」


「おらー!!!

くっ、このーーー!!」


ピクリとも動かない。



それはそぉだ。ライルは前世で超実戦型剣術の免許皆伝。



人体のことなら誰よりも詳しい。



どこにどぉ力を入れたらどぉなるか。そんなことは考えずとも分かるほどに。



つまり今あの男子学生はまるで巨木の枝を相手にしている気分だろう。



学生に焦りが見えてきた。



次の瞬間学生達は目を疑う。



ライルが棒を持ち上げるとそれと同時に学生の足が宙に浮く。



「おわわわわわわ!!」


学生が腰の辺りに棒を握り、ライルの持ちあげた手のみで身体が浮いている。



力ではなく技術で浮いている。



「と。この様に動きや構造を理解すれば相手を崩せるわけですね。言うほど簡単ではありませんが。」


ライルさん。解説は良いんですけど。浮いてますよ。彼。



シリアもアデルカもそして校長も納得したように頷くな。止めろ。



俺も止めないんだが。



「それでは。」


文字通りやっと地に足を付けられた学生は自分が誰にケンカを売ったのかをしっかりと理解してすごすごと元の位置に戻る。



「皆さんも練習していいですけど怪我のないように、相手を思いやって練習して下さい。

では、今日の授業はここまでにしましょう!」


ボーン…ボーン





「まったく!あの男子学生はお調子者なんだから!」


「まぁまぁ。」


「ホントですよ!よりにもよってライル様にケンカを売るなんて!」


「落ち着いて。」


ライルの為に怒るアデルカとシリアを諌めるライル。



なんとも奇妙な絵面だな。



「そぉ言えば今日は二人とも学園でお昼ご飯食べていくの?」


「えぇ。そのつもりですよ。パーム姉さんは?」


「私はまだこれから仕事があるから…」


「残念だな。

そんなパーム姉さんには後で差し入れ持ってくよ。ライルが。」


「そこはキースじゃないの?!今の流れキースじゃないの?!」


「だって俺が適当に買った差し入れよりライルの手作りクッキーの方が嬉しいだろ?」


「うん!」


「素直で良いけど、やっぱり俺の差し入れなんかじゃ嫌って傷つくなー…」


「え?!いや!そんな!違うのー!」


「良いさ。後でライルが持ってくから。

はー…傷つくなー。」


「キース!違うのよ!聞いてー!キースー…」


シリアに連れていかれた。



最後まで何か聞こえていたがまぁ気にしない。



「何食おうかなー。」


「アデルカとサーシャも食べてくのか?」


「えぇ。そのつもりですよ。」


「んじゃ一緒に食べるか。」


「はい!」

「はい!」


「えーっと。僕はこれ!」


「んー…じゃあ俺はこれー。」


選んだ食事を受け取って席に着く。



「そぉ言えば、昨日から学園内に服屋が出来たんですよ!」


「お、そぉか。」


「あれ?知ってたんですか?」


「知ってたと言うかまぁ色々あってな。」


「お二方ともそこにも絡んでるんですか?!」


「少しだよ。少し。」


「ホントですかー?」


「ほんとほんと。それより品揃えはどぉなんだ?」


「凄く可愛い服とかも売ってるみたいで、安いんですって!」


「ほぉ。」


「私とサーシャもお昼ご飯終わったら見に行ってみようって話してたんです!男性用の服も売ってますし、少しお金出せばオーダーメイドもして下さるそぉですよ?!良かったら一緒に見に来ませんか?」


「そぉだな。一緒に行こうか。」


「やった!」


ニーナとブームにも会いたいし折角ならなんか買っていこうと思って着いて行くことにした。



昼食が終わって食堂をでて少し歩くと服が所狭しと並ぶ服屋が見える。



校舎の1階、1番端にあった。



一応学び舎だから配慮した結果この場所なんだろう。



それに反対側にも出入口があって学外からのお客にも対応しやすいからと言うのもありそうだ。



「こんにちは!」


「あら。可愛いお嬢さんたちね。」


「どぉも。」


「これは!キース様!ライル様!」


「様は良してくれ様は。」


「いえ!私達が受けた恩を考えるとそれ以外に呼び方は有り得ません!」


「先生?少しって言ってませんでした?」


「あー…あはは…」


「あっ!お兄ちゃん達だ!」


「こらっ!ブーム!」


「いいんですよ。ニーナさん。

よっ。ブーム。毎日鍛えてるか?」


「もちろん!」


小さな木剣を掲げて誇らしげに見せてくる。



「おーし。約束は守ってるな!」


「うん!母さんを守るために毎日剣の練習だ!」


「よしよし。」


「たー!やー!」


ただ振り回すだけの剣だが、きっと、いや必ずいつか母を守る剣に成長するはずだ。



「あ、そぉだ!キース様!ライル様!」


「?」


「これを。」


「これは?」


小さな布の袋を渡される。



掌に収まるほど小さな袋。



「お二方ともお忙しいと聞きまして、疲労回復の効果があるツビの実が入っています。」


「……有難く受け取っておくよ。」


断ろうかと思ったが助けたお礼と無理にでも差し出されることを考えると素直に受け取っておく方がいいと受け取った。



「あと、いつでもオーダーメイドを申し付けて下さいね!格安でお作りします!」


「そりゃ嬉しいな。だがそんな事して大丈夫なのか?」


「シリアさんには先に伝えておきました!お二方へのオーダーメイドは格安でと!」


「シリアも納得したのか。」


「えぇ。」


「なんともヒーローみたいな扱いになってしまったもんだな。」


「僕達は大したことしてないんだけどね。」


「いえ。私とこの子の命はお二方に救われたのです。その御恩をお返しする為にもここで精一杯頑張りたいと思っております。」


「あぁ。2人ならやれるさ。」


「頑張ってください。」


「ありがとうございます。」


「そぉだ。今日はもう少し普段着が欲しいと思って来たんだが。

あと置いてけぼりのこの2人にも何か良い服があれば紹介してくれないか?」


「喜んで!」


シリア程ではないにしてもニーナの商いの能力は高い。



アデルカとサーシャを見てサイズを把握すると2人の性格にあたりを付けて好きそうな服を持ってくる。



即座に2人が食いついた所であれもこれもと引っ張り出してくる。



最早将来安泰だなと横で見ていると隙を見て俺とライルのところに来てオーダーメイドの約束を取付ける。



なんとも手際のいい事だ。



結局俺とライルはオーダーメイドを頼み、アデルカとサーシャは何着かの服を買った。



ニーナ。やりおる。



アデルカとサーシャはホクホク顔だし俺とライルも元々オーダーメイドを頼むつもりだったので結果オーライ。



「そんじゃ俺達は帰るよ。」


「あ!ありがとうございました!」


「じゃあまた。」


俺とライルは一時帰宅。



ライルが手作りクッキーを包んでトンボ帰りならぬトンボ登校。



直接校長室に向かう。



「あら?どぉしたの?」


「差し入れですよ。姉さん。」


「わー!ありがとー!」


「はー。やっぱり姉さんは俺の差し入れなんて要らないんだ…」


「違うのー!キース!私はあなたも愛してるのよー!」


「そんな涙目にならなくても。冗談だって。

はい。これ。」


「ん?これなに?」


「気に入るか分かんないけどニーナの件で色々助けて貰ったから。」


「え?服?なにこれ!可愛ー!」


「あんまり姉さん明るい色着ないから嫌だったかな?」


「そんなことないわ!嬉しい!どぉ?」


「似合う似合う!姉さん明るい色でも全然いけるね!」


「まだまだ私もいけるわね!」


「あと一つ。この学園来る時約束したからさ、ありがとって事でこれ。」


「ん?」


「開けてみて。」


「な、なにこれ!めちゃくちゃ綺麗!」


「あの森にある鉱石でフラクライトって鉱石でさ。

加工が難しいんだけど上手くいったからブレスレットにしてみたんだ。」


見た目で言うと綺麗なクリスタル。水晶。



「フラクライト?!え?!うそ!」


「?」


「フラクライトって加工が出来ない鉱石で有名なのよ?!それに魔力を貯めることが出来る?!」


「そ、そぉなんだ。確かに一般では出来ない加工かもね。かなり難しい。

加工したら魔力を貯めることが出来る様になったんだよ。」


「また凄いもの作ったわね…」


「世には出さないから安心して。」


「そぉね。その方が良いわ。

でも、ありがとー!大事にする!」


「喜んでくれて良かった。」


「これで喜ばない女がいたら禁忌魔法ですり潰すわ!」


「姉さんが言うと冗談に聞こえないからやめて。」


「ふふふー!やったー!」


超絶ご機嫌だ。



恐らくここからシリア辺りには自慢の嵐だろう。



先に手を打っておこう。



校長室を出るとデスクで仕事をしているシリアに近寄る。



「キース様、ライル様。用事は終わったので?」


「あぁ。あと一つ残ってるが。

ほい。」


「ん?なんですか?」


「ニーナの件とパンの件で世話になったから。お礼。」


「わ、私に…ですか?」


「シリア以外誰もいないだろ?」


「あ、ありがとうございます!」


「そんな泣きそうな顔しなくていいから。開けてみて。」


「は、はい!

うわー!服ですか?!かわいーーー!ありがとうございます!」


「せっかく綺麗な青髪なんだしそぉいう服が似合うかなーって思ってさ。気に入らなかったらごめんな。」


「何を言ってるんですか!めちゃくちゃ可愛いですよ!ルンルンです!」


「何着か入ってるから気に入ったの着てくれ。」


「ありがとうございます!キース様!ライル様!」


半泣きのシリアに手を振って帰路に着く。



「気に入ってくれたかな?」


「どぉかなー。女性に服ってのもミスチョイスな気がするけどニーナに色々相談したし多分大丈夫じゃないか?」


「かな?気に入ってくれてたら嬉しいね。」


「だな。」


家に着くと日が暮れ始めており、ライルの夕食作成タイム。



今日は何かなー。とウキウキしているといい匂いが…



今日は肉だ!



全力着席で夕飯を待つ。



「はーい。出来たよー。」


「待ってました!

おほー!ゴロゴロお肉のシチュー!」


「それじゃいただきまーす!」


「いただきまーす!」


至福のときである。



大きな肉を頬張りながら感涙。



「食った食ったー。満腹なりー。」


「お粗末様でした。」


「そぉだ。そろそろ1回母さん達に連絡しとくか?」


「あー、だね。洗い物したら行くよ。」


「ほーい。」


俺はリビングで紅茶を啜る。



洗い物が終わったライルと2人で母さん達に念話アンド投影を送る。



「久しぶり母さん。」


「キースーーー!ライルーーー!」


「待ってたわー!」


「遅くなってごめんね。」


「忙しいんでしょ?母さん達は大丈夫よ。」


「じゃあもっと期間あけようか?」


「ごめんなさい大丈夫じゃなかったです許してください。」


「あはは!冗談だよ!

ちょっと色々あったし近況報告するね!」


俺とライルで代わる代わる最近の出来事を話す。



「キース!ライル!そのシリアって子とアデルカとサーシャって子には気をつけなさい!なにか良からぬ臭いがするわ!」


「良からぬ臭いって…」


「母さん達には分かるのよ!」


「あーはいはい。」


「私達の可愛い子供達をそぉ易々と持って行けると思わない事ね!ふはははは!」


「まぁよくわかんないけど気をつけるよ。」


「まぁ、あなた達2人が元気そうで良かったわ。

それよりもそのニーナって人は大丈夫なの?」


「んー。やっぱり母さん達も危ないかもって思う?」


「そぉね。人種って姑息なところがあるから。そぉゆう弱い所から攻めてくるのよね。」


「一応手は打ってあるんだけど…」


「手?」


「あぁ。実は…」






「ブーム。帰るわよー。」


「はーい!」


母さんの声が聞こえてくる。



僕は木剣を持って母さんの元に走る。



手を繋いで帰る。



毎日の帰りは2人で今日あったことを話す。



母さんが最近よく笑うようになったから僕も嬉しい。



「やぁ。二人とも。久しぶりだね。」


「あ、あなたは…」


母さんの顔が強ばって僕を後ろに隠す。



「私達の借金ではありません!元旦那に取り立ててください!」


「あー、いやその件はもぉ良いんだ。借金も旦那に支払って貰ったし。ちょっと痛い思いをしたかもしれないけどね。」


「ならもぉ私達に関わらないでください!」


「実はそぉもいかなくてね。

君たちを助けた2人がいるよね。あの子達少しやり過ぎちゃってねー。お仕置きが必要なんだよ。

ちょっと2人に協力してもらおうかと思ってさ。」


「そんなことするわけ…」

「分からないかなー。

これはお願いでは無く命令だ。おい。」


「母さんは僕が守る!」


「ブーム!ダメよ!」


「勇ましいねー。涙が出るよー。」


ゴンッ


頭に響いた音。


世界が黒くなる。


「その子に酷いことしないでー!」


最後に聞いたのは母さんの泣いてる声。



僕はまた守れないのか。






「……ム…ブーム…」


「ん…母…さん?」


「ブーム!良かった!」


「母さん…大丈夫?」


「私は平気よ。それよりもあなたは大丈夫?」


「僕は大丈夫…それよりまた母さんを守れなかった…」


「そんなことないわ。ブームが守ってくれたからまだ生きてるのよ。」


「おやおや。やっとお目覚めかな?」


「おまえ!母さんを殴ったな!」


「酷いなー。殴ったのは私じゃないよ。」


「このー!」


「まったく。子供にこんなもの与えるから調子に乗るんだ。」


ドンッ


カランカラン



突き飛ばされて剣が飛んでいってしまった。



「まったく。

おい。アイツらには連絡したのか?!」


「え、えぇ。こっちに向かってると思います。」


「ったく。」


アイツら…多分白と黒のお兄ちゃん達だ。



僕が母さんを守れなかったから…



「痛っ」



手を下にして着地したから手にまいていたお兄ちゃんから貰ったし()()()が食い込んで痛んだ。



(男と男の約束だ。)


「白のお兄ちゃん…」


「あーもーイライラしてきた!」


ドスッ


「うぐっ!」


「母さん!」


「大丈夫、大丈夫よ。ブーム。動かないで。」


「なんなんだ!ったく!

こんなクソガキうるさいだけだろ!おい!」


「はい。」


ギラりと光る大きな剣。僕のとちがって本物だ。



「やめて!その子には手を出さないで!」


「あ?んじゃどっちでもいいわ。」


「やめろー!母さんに手を出すなー!」


木剣を持って母さんの前に立つ。



「ダメよブーム!ダメ!」


「母さんは僕が守るんだ!」


「あー。クソ!うるせぇガキが!死ねや!」


ガキーン



「あ?なんじゃこりゃ?」


僕の周りに光の壁?



ブレスレットが光ってる。



白のお兄ちゃんの魔法だ!



でも直ぐに消えてなくなる。



ブレスレットも砕けてバラバラだ。



「なんかよくわかんねぇけど舐めたことしてくれるじゃねぇか。

さっさと死ねや!」


もぉブレスレットは無い。



でも僕が母さんを守る!



目をつぶって母さんの前からどかない!



「ブームーーー!」


母さんの声が聞こえる。



でも僕がどいたら…あれ?



ゆっくりと目を開く。



「白のお兄ちゃん!」


振り下ろされた本物の剣を手で止めて僕の前に立っていた。


「よく頑張ったな。ブーム。お前は男だ。約束は守ったな。

だがまだ気を抜くなよ。母さんの側で守ってやれ。」







「一応1度だけ致死的攻撃から守ってくれるブレスレット渡してあるから。大丈夫とは思うけど。」


「んー。それだけだと怖いわね。」


「キース!」


「パーム姉さん?」


「ニーナさんとブーム君が誰かに連れていかれた!」


「くそっ!宿舎までの道で連れていかれたか!」


「場所はどこ?!」


「今使いの奴が来てここだって!」


「ライル!」


「うん!」


俺とライルは家を飛び出して身体強化魔法MAX。



全速力で地図の場所に向かう。



屋根やら壁やら抉れてるがそんなこと今は気にしていられない。



「兄さん!あそこだ!」


ライルが指さした先には廃屋があり中に人の気配がする。



外にも何人かいるがライルが先に行き瞬時に全員切り殺す。



俺はそのまま中に入る。



目に入ったのは剣を振りかぶる黒髪のオヤジとその前で目をつむってニーナの前に立ちはだかるブーム。



足に全力を伝えてブームの前に入る。



ギリギリ剣を止められた。



「白のお兄ちゃん!」


「よく頑張ったな。ブーム。お前は男だ。約束は守ったな。

だがまだ気を抜くなよ。母さんの側で守ってやれ。」


「おぉ!やっとお出ましか!待ちくたびれぜ!」


「…」


「なんか言ってくれよ!散々色々やってくれたなー!え!?」


「…」


「おい。」


「何故この2人を狙った。」


「あ?そんなもん別にどぉでもいいだろ?」


「答えろ。」


「あー、この2人を狙ったらお前らみたいなヒーロー気取りはすぐ来ると思ってな!家は魔法で守ってたみたいだからな。来てもらったわけだ。」


「つまり俺達を呼ぶためだけにこの2人を狙って更には殺そうとしたのか。」


「ガキがうるせぇのが悪いんだよ。

なんだ?怒ったのか?ヒーロー様には刺激が強かったか?あはははははは!」


「救いようがないね。兄さん。」


「救う気なんざ元からねぇ。」


「なんだそりゃ?お前らどこに突っ込んできたのか分かってねぇのか?ここは俺の庭だ。おい!」


ゾロゾロと人が出てくる。



どいつもこいつも手配書で見た事のある顔だ。



「お前らにこの数が殺せるか?!あ?!殺すのは俺だ!」


「兄さん。刀…抜くよ。」


「あぁ。」


ライルが刀を抜く。


真っ白の剣と真っ黒な剣。



あまりの切れ味に抜くことを制限した。



ライルならば手刀を魔法で強化すればその辺の剣より鋭い凶器を作れるため刀を抜く必要も今まではなかった。



2つの刀を抜くことを制限した理由はもう1つある。



この刀は魔法を切る。



魔法陣や魔素を文字通り切るのだ。

しかも切られた部分は魔法が掛かりにくくなる。



つまり回復が出来ない。



その破格の性能を知られないために抜くことを制限した。



この刀を抜くのは相手が強いからではない。



回復出来ないようにするためだ。



魔法が掛かりにくいだけであって回復魔法は掛かる。しかし回復する為にはパーフェクトヒールを掛けるしかない。



回復魔法の最上位魔法であるパーフェクトヒールを。



この魔法を使える人間はこの世界にはほとんどいないと聞いている。



俺は使えるが。



「やれやー!」


大勢の男達があらゆる武器で攻撃してくる。



俺の前に立ったライルが刀を一薙。



全ての武器が()()()()



あまりのことに呆然とする男達。



ニーナさんの手枷もライルが切った。



「ニーナさん。こっから先はあまり気持ちの良いもんじゃない。ブームには見せない方が良い。」


「は、はい!」


ニーナさんがブームを抱き抱えて隅で縮こまる。



ブームの目と耳を塞いで。



「な、なんなんだお前らは!」


「聞いてなかったな。あんたがバッシュだろ?手配書でみた。」


「だ、だったらなんなんだ?!」


「あんたとそこにいる男達は手配書出てるだろ。

約束があるから生きて引き渡す。

だが、壊れるまで殺す。」


「はぁ?!生きて引き渡すのに殺す?!何言ってんだお前…は?」


ライルが目の前から消えると同時に男達の手足が切れて落ちる。



「はぇ?!なんだこりゃー!!」


飛び散る血飛沫。



生臭い臭いが廃屋を満たす。



男達の絶叫が廃屋を満たす。



無言で男たちの上部に岩のトゲを生成する。



「や、やめ…ぎゃーーー!」


トゲが落ちる。



直ぐにトゲを戻す。


「パーフェクトヒール。」


全員が切られる前の状態へと戻る。



次の瞬間男達の手足が切れて落ちる。



「ヒール!ヒール!なんで効かないんだ!」


「下級魔法じゃ効かないんだよ。」


またトゲが落ちる。引き抜く。パーフェクトヒール。



切られる。トゲが落ちる。引き抜く…………



それを何度も何度も繰り返す。



最初は罵倒の嵐。



次はやめてくれと懇願。



そして何十回かすると何も言わなくなる。



壊れたのだ。体でなく心が。



体が戻ってもピクリともせずに宙を見つめる男達に縄を掛ける。



「ニーナさん。ごめんな。終わったよ。」


「は、はい!」


「恐ろしいよな。俺達が。」


「い、いえ。そんなことはありません!」


「俺達にはこぉゆうやり方しか出来なくてな。

酷いもんを見せたな。すまん。」


「謝らないでください!私とブームは命を救われました!しかも2度も!

今回の事も私達が二度と襲われない為のことだって分かってます。いつも優しいお二方ですから。

だから謝らないでください。」


「ありがとな。」


「はい…」


「ライルはそいつら頼む。俺は2人を送ってく。」


「分かった。」


俺はニーナさんとブームを送る。



会話は無かった。



最後にお礼を言われて自宅に戻る。



ライルも少しすると戻ってきた。



「どぉだった?」


「ジークに何したんだ?!って言われた。」


「ま、言われるわな。」


「キース!ライル!」


「パーム姉さん?」


「良かった。」


「そんな抱きしめられたら苦しいよ。」


「ダメ!このまま!」


いつもと違う強い区長で抵抗出来なくなる。



「あなた達のこと帰ってきたニーナさんに聞いたわ。」


「…」


「どぉせあなた達の事だからその残酷な所が自分達の本性かもとか思ってなるでしょ?」


「あ、あぁ。」


「確かにあなた達は怒ると残酷になるわ。でもそれは龍の逆鱗と同じなの。

普段は優しくて人を思いやろうとしてるあなた達だからこそ、許せなくなるのよ。

それは優しさを裏切った事に対する代償みたいなもの。

だからそれが本性なんかじゃないわ。

きっとあなた達を傷つける人がいたら私はもっと残酷になるわ。」


「母さん達もそぉだったな。」


「そぉよ。まさに龍の逆鱗。

だから落ち込まないで。

あなた達はいい子よ。私が保証するわ。」


「ありがと。姉さん。」


「えぇ。」


本当にこの人は凄い。



俺達に落ち込む暇さえ与えないのだから。



「はぁ。姉の役得ね!あの二人がみたら怒るわね。」


「母さん達?まぁ怒るかも。」


「私達の子なんだからそれは私たちの役目なのー!とか言いそう。」


「あはは。確かに。」


「さ、もぉ大丈夫ね?いいのよ。感謝をキスで表しても!さぁ!来て!」


「「ありがと。」」


チュッ


両ほっぺにキス



「え?」


本当にされるとは思っていなかったらしい。



面白い声が出た。



「ぶふぉーーー………」


変な音出して倒れた。


南無。



次の日ニーナさんとブームがうちへ来た。



オーダーメイドの服を持って。



相変わらず白と黒。



何故だ!?もっと柄とか色々あるだろ?!



いや、別に質もデザインも良いから良いんだけどさ!



「お兄ちゃん!」


「お、元気してたか?」


「うん!でも…」


「あの。」


「あぁ。すいません。」


「これ。オーダーメイドの服です。」


「ありがとうございます。」


「あの!」


「はい?」


「私はとんでもない事を…」


「?

なんのお話ですか?とりあえずあがって行きますか?ライルー。」


「はーい!紅茶出来てるから上がってもらってー。」


「だってさ。さ、どぉぞ。」


テーブルに腰掛けるとライルがブームを連れて一緒に遊んでくれる様だ。



相変わらず出来た弟だ。



「それで?とんでもない事って?」


「はい。実は昨日お二方の所から帰ってきた校長先生とお話したんです。

そこで昔酷い経験をされたと聞かされました。」


話の流れからすると恐らくパーム姉さんが俺とライルの前世話を昔の話として大まかに説明したんだろう。



母さん達に助けられたとか言ったんだろうが、そんな話してくれなくても良かったのに。ありがたい事ではあるが。



「お話を聞いて昨日動転していたとはいえ本当に酷いことをしてしまいました!」


「ニーナさん。別にニーナさんは悪くありませんよ。」


「いえ!私も一児の母です!お二方の話を聞いて後悔の思いに耐えきれずに来てしまいました…」


「俺達が恐ろしいのは普通の事ですよ。ブームは見ても聞いてもいないようだから安心しましたが。」


「そんなことはありません!お二方の事を考えると胸が張り裂けそうです。人を信用出来ないのはお二方のせいではありませんし、酷いことをする人を許せないのもよく分かるんです。

私は命を救ってもらっておきながらお二方になんと酷いことを…」


遂には泣き出してしまった。



困った。別に気にしなくて良いのになー。



「確かに。俺とライルは人を信用出来ません。それが例え物凄く仲の良い友でも、最後まで信用出来ない。

それは変えられない事実です。

俺達が信用しているのはこの世界にはたったの3人しかいません。」


「う…なんと悲しい事を…」


「ですがそれで満足しています。

それにニーナさんとブームを助けたのはこちらの勝手。ですからそんなに気に病まないで下さい。」


「あぁ…私はなんてとんでもない事を…」


困り果てた俺の前で泣き続けるニーナ。



傍から見ると俺悪者。



ニーナが泣き止むと少し赤くなった目で、しかしこちらをしっかりと見て答えた。



「キース様。」


「は、はい。」


「私は貴方様に、いえ、貴方様とライル様にこの命を2度も助けてもらいました。」


「あー…はい。」


「お二方の信頼を得ることが難しいことも信用出来ないことも分かりました。」


「お、おぉ。分かってくれましたか。」


「いえ!分かりません!」


「………ん?」


「私はお二方にこの命で。信頼出来る人間と証明します。」


「何を言ってるんですか?」


「私に奴隷紋か、それに似た物を付与して下さい。キース様なら簡単なはずです。」


「……はぁ?!いや、奴隷紋の意味わかって言ってますか?!」


奴隷紋。つまり奴隷となる事を意味する。



奴隷とは人間に在らず、その扱いは酷いものだ。



しかも主人の命令には絶対服従。



死ねと言われれば死ぬしかない。



「ですからこの命で証明しますと言いました。」


マジの目だよ。ダメだよ簡単にそんなこと言っちゃ。



「ブームはどぉするんですか?ニーナさんが居なくなれば生きていけませんよ?」


「私は絶対にお二方を裏切りません。なので大丈夫です。」


あぁ。ダメだよこれ。絶対引く気ないよ。



どーしよ。これ。



「もう一度しっかりと考えて下さい。あなたにはブームがいるし俺達も怒ったりしてるわけではないよ?」


「違います。私はお二方の信頼に足る人間だと、証明したいのです。口で信頼したと言われても納得しませんから!」


「いや、そんな信頼得る為だけに命を掛けてちゃダメだって。」


「お二方は私からしてみれば神と変わりまりません。

そんな方の信頼をこの命1つで得られるのであればこれに勝る喜びはありません。」


神と来たか。



いやー。本当に引く気がないぞー。どーしよー。



「キース様。私をお二方の信頼できる人の4人目に加えてください。」



遂に床に平伏したよ。



あーもー。どーしよー。



「……」


「キース様。私の命では足りませんか?それともここで命を絶たなければ納得して頂けませんか?」


「いやいや、待て待て!どっからこんなもん出した。」


「ここに来る時に死ねと言われれば死ぬつもりでいましたので。」


「あー!もー分かった!」


「奴隷紋を施してくださいますか?!」


「奴隷紋は無しだ。あれは呪縛だからな。

それにそこまで制限したら本当にニーナさんが俺達の側を離れなれなくなる。」


奴隷紋には主人から一定距離離れると死をもたらす効果がある。



「ネタで作った物だが…」


正確にはモンスターに着けて実験する為に作った物だが。



「これを。」


「黒と白のピアス…ですか?」


「あぁ。そいつは条件を設定して、その条件を破ると魔法を発動する魔法具だ。

それには俺とライルを裏切らないという条件が設定してある。

魔法故に心情を読み取って発動するから嘘はつけない。発動する魔法は即死魔法。

一応試した事があるから効果は確認済みだ。」


モンスターは即死した。



ピアスの材料は母さん達の鱗。



「そいつを1度つけたら外すことは出来ない。

俺かライルが外す以外に手段はない。壊す事も出来ない。

もう一度よく考えて…」


既に着けていた。



「まったく。本当にいいのか?」


「はい。」


「俺とライルが主になってどんな要求をするかもわからんのだぞ?」


「死ねと言われれば死ぬ気できたのですよ。

例え体を求められても私は一向に構いません。」


「はぁ…んな事しないから安心しろ。」


「しないんですか?残念。」


「おいおい。」


「これでこの身は名実ともにお二方の物です。」


「ったく。引く気の無い人はこれだから困る。」


「ですがこれで信頼して下さいますよね?」


「そりゃそぉだろ。裏切ったら死ぬピアスだぞ。信頼出来ないわけが無い。」


「うふふ。4人目ですね?」


「どんだけ肝の据わった母ちゃんだよ。」


「これは白主様や黒主様から離れても大丈夫なのですか?」


「はくしゅ?こくしゅ?」


「あ、お名前で呼ぶのは失礼かと…お気に触りましたか?」


「あ、いや、名前で良いぞ?」


「いえ。」


「あーもー。分かった分かった。好きに呼んでくれ。」


「はい!」


「で、離れても大丈夫かって話だったな。

大丈夫だ。俺とライルの命令にも強制力は無い。

単純に生きていく上で俺とライルを裏切らなければ今までの生活となんら変わらんよ。」


「分かりました。」


「はぁー…本当に良かったのか?」


「本人が望んで与えてくださったのですよ。良いも悪いもありません!」


「ただいまー。」


「あぁ。おかえりライル。」


「黒主様。お帰りなさいませ。」


「え?黒主?ってか耳!えぇー?!

い、一体何があったの?!」


「母さん白と黒のピアスしてるー!カッコイイー!僕も欲しい!」


「これはお二方が私を信頼して下さったから授けて下さったもの。ブームはまだ小さいからダメよ。大きくなって強くなってそれでもお二方に信頼されたいと願うならその時お二方にお頼みしなさい?」


「そぉなの?分かった!」


分かるなー。やめとけー。



「本当にどぉしたの?あのピアス即死魔法付与してあったよね?」


「実はかくかくしかじかで…」


「あー…ニーナさん決めたらテコでも動かないタイプだもんね。逆の立場でも渡してたかも…」


「そんなつもり無かったんだが押し切られた。すまん。」


「白主様、黒主様。今日はこれでお暇させていただきます。」


「あ、あぁ。」


「ブーム。帰るわよ。」


「はーい!」


「あ、白主様。私の体はいつでも空いておりますので。」


「12のガキに何言ってんだー!」


帰り際に耳打ちされてウインクときた。



俺あの人怖い。



「まぁ着けたもんは仕方ないよ。外そうとしても外させてくれないでしょ?あの感じ。」


「だよなー。」


「まぁ裏切らなきゃ普通に生活できるし、信頼出来る人が増えたと思えばいいんじゃない?」


「お前も大概楽天的だな。」


「そぉ?」


最後の最後に大きな爆弾をニーナが運んできて全ての事態は終結した。



余談だが事の黒幕のバッシュ達は少しずつ回復しているそうだが俺とライルの名前を出すと泣いたり笑ったり叫んだりと一瞬で精神が崩壊する程になっていて、外の世界が怖いと監獄で静かに暮らしていきたいらしい。



ジークに「マジでお前ら何したの?」と聞かれた時は苦笑いをするしか無かった。



その中の1人が俺とライルの所業を話したらしくほんの少しの人達の間で噂になりかけたらしいがそこはジークが止めてくれた。



ありがたやー。



賞金首を大量に差し出した事で俺達は少しばかり財布が太り、ジークは出世したらしい。



ウハウハジークに連れられて飲みに言った時に話してくれた。



明日もまた授業がある。



明日に備えて今日はもう寝る。



おやすみ。

学園編 Ⅰ

読んでくださった方ありがとうございます!



楽しく書かせて貰っていますが拙い文章で伝わりにくかったら申し訳ありません。



やっと学園編がスタートしましたが、どうでしょうか?色々感想聞けたら嬉しいです!



次は学園編 Ⅱ !



はてさてどんな生活になるのかワクワクですね!


って自分が書いてるのにワクワクしてたら変か。いや、変じゃないのか?



とにかく!次の話も頑張って書いていきます!



良かったら次も読んでください!



それではまた会いましょう!

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