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8.人間の増え方を確認しよう。

本文の「**************」の前後でシーンが変わります。

また、前後で「彼」が指している対象が異なります。

 いつもの世界へと意識を向けた彼は、人間が増える場所を探していた。そもそも人間というものをほとんどわかっていない彼にとって、その情報源は転移転生モノ小説が大部分を占める。


「なぜか書かれてないんだよな」


 そこに至るまでの過程やその後に子供ができて増えている描写はやたらと多く書かれている割に、増える方法が具体的に書かれている小説を彼は見つけられなかった。

 そもそも人間のように増える必要がない彼には、そうした表現が検閲されていることなど予想もつかない。また、それを免れるような比喩表現では真意を読み取れていなかった。


「奴隷か令嬢がいないとダメか?」


 彼が読み漁った小説では、主人公と子供を設ける頻度が高かったのがそれらである。だが彼には社会構造的な階級など判別出来ない。個体の居場所や行動の違いを推理してみたがわからなかった。ハーレムモノと言われる小説なら手当たり次第の主人公もいるなと思い直して、人間の増殖方法を小説で調べる。


「妊婦という個体が必要なのか」


 どうやら妊婦という個体は内側に赤子や胎児という個体を内包して保護しているらしい。


「なるほど。口は取り込んで保護するための機構なんだな」


 今までに潰した個体の中にもいたのだろうかと思い返すが、液体が溢れていたものばかり。だがその液体が魂だったのかもしれないと思い至る。それさえも気づかずに潰していた可能性を思い、彼は一つの決心をした。


「もっと寄らないと判別出来ないか」









**************





『…………における大規模な太陽フレアが観測されており、過去の事例から電磁波の発生による機械への影響が推測されています。これは珍しい現象ではなく太陽周期によって発生するとされ…………』


 ネイチャー番組を流していたテレビの電源を切り、鍵を手に取る。玄関に置かれたトランクは大きい。日除け帽を被りサングラスで目元を隠す妻の姿を見て、彼は不安を覚えた。サングラスを外しながら、しゃがみこんで微笑みかけてくる女性の姿が脳裏によぎったためだ。それが亡き母であることを彼は忘れたままだ。

 這い寄るような悪寒を搔き消すように、彼は携帯を操作する。


「ああ、お義母さん。今から出るところです。多分7時くらいには着けます」


 妊娠6ヶ月となった妻。その出産に備えて彼女を実家に送るため、彼は義母と連絡を密にしていた。


「電車で大丈夫だって言っているのに、心配性なんだから」


 くすくすと笑う彼女に続き、トランクを持って家を出る。多少笑われるくらいで安心できるのならその方が良いと思いながら、口に出さない。そんな彼の心境を読み切っているのだろう。再び彼女はくすくすと笑った。







人間の増え方が分からない純真な少年少女紳士淑女の皆様は、転移転生モノ小説を読んで探してみてください。

たぶん具体的に書いているものは無い……と思うんですが……いやでももしかしたら一つくらいは……?

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