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6.転生に挑戦しよう。

本文の「**************」の前後でシーンが変わります。

また、前後で「彼」が指している対象が異なります。


この注釈は毎回書いてますが、途中や最新話だけ見る方のために毎回書き続けようと思います。

(前書きを考えるのが面倒なだけという説が有力です)

 転移のやり方について何度も試した彼は、その全てが失敗に終わったことでふてくされていた。どうやっても人間は潰れてしまう。彼の中で人間とは潰れるものだというイメージが定着しつつある。それを払拭するためにも、彼は小説を読み返して突破口を探していた。


「そうか、転生なら潰しても問題ないな」


 問題が解決していないことについては無視することにしたらしい。


「まずは魂というものを確認しよう」


 決めてからの行動は早い。たくさんの人間が横たわっている場所を探して意識を向ける。人間がたくさん転がっている場所を確認すると、その間を縫うように数個の人間が忙しく徘徊していた。なんの意味があるのか、液体の入った袋状のものを近くにぶらさげたり、取り替えたりしている。

 区切られた領域にいくつか均等に置かれた人間たちは動きがあまりなく、口から何か音を出しているものも少ない。だが、更に限られた領域にある人間はもっと動きがなかったので、そちらへと集中して意識を向ける。

 その領域には一個の人間しか置かれていなかった。そちらへと意識を集中していくと、次第に周囲の様子が明らかになる。そして彼は確認できたものに怖気を覚えた。

 生物の皮膚とも植物の皮ともつかないおぞましく滑らかな網にも似た物体。それは人間を隠すように大部分を覆っており、一定の周期をもってその中央付近があやしく蠢いている。その襲撃を免れた箇所すら人間の姿はおぼろげで、彼がしているように糸状のものを伸ばしている。だが糸は別種の粘性を増したものに完全に呑み込まれていた。周囲にはそれらの物体に同期しているのだろうか、奇怪な波動を定期的に放つ箱状の物体が並ぶ。彼にはその箱が覆いつくすものたちを操っているように思えた。


「小説で読んだスライムというやつか?」


 魂まで捕食されてしまわないように、彼はそれが動かなくなるようにイメージする。箱状の物体から断末魔のような甲高い音が発せられ、波動が止まった。人間を覆っていたものが震えているのを感じた彼は、うまくいったと安堵する。どうやら箱状の物体はスライムの核となる部分のようだ。

 震えが収まるのを待って人間を確認してみると、それは既に動かなくなっていた。魂というものが出てきた様子がないことを不思議に思い、内側でつっかえたのかと思案する。開いて取り出してみようかと考えているうちに、慌てたように人間が訪れた。


「遅いよ。もうスライムは退治したよ」


 箱状の物体が放つ波動は他にも感じ取れた。人間が一個しかない場所に現れて襲いかかっていると考えた彼は、他のスライムも退治することにした。


「魂の確認はまたの機会にするか」


 彼は転移転生モノ小説とこれまでの接触を通して、姿さえわからない人間というものに愛着を覚えつつあった。






**************





『…………の大学病院で発生した生命維持装置の故障という話ですが、全部の機械が同じ日に壊れているというのは明らかにおかしいでしょう。なんらかの医療事故や、人為的なものがあったとしか思えない。こんなことがあると安心して入院もできませんよ。警察だけでなく医師会自体が調査を行ってですね…………』


 ワイドショーのコメンテーターが声を荒げていくのを遮るように、洗濯機の終了音が鳴る。

 彼女の家に住むようになって二ヶ月。就職活動はままならず、彼は主夫業に慣れていた。


「今日は火曜日だから不燃ゴミを出して、売り出しで買い物して……」


 おじさんから譲って貰った軽トラの鍵を手に冷蔵庫の中身を確認する姿には、ビル倒壊事故の影はどこにもなかった。







そういえば昔、スライムってオモチャ(?)あったような気がします。

うちにもあったと思うのですが……いつの間にか見当たらず。どこかに逃げたのでしょうね。

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