16.転移のやり方を変えてみよう。
本文の「**************」の前後でシーンが変わります。
また、前後で「彼」が指している対象が異なります。
糸で個体を包む。建物ごと包む。疑似餌で釣る。針で引っ掛ける。投網。
「うーん。失敗したイメージが残っているのかな」
一通り試した結果、どれも成功と言えるものはなかった。結果として魂が複数残ったが、それは放置した。転生に関しては成功していると彼は思っているためだ。
移動させようとすると、人間は壊れていく。そのため、彼は考え方を変えてみた。
「自分から移動させれば良いんだよな」
人間はあちこちに移動をするため、その先に転移先を用意しておけば上手くいくのではないかと考えた。
思いついたら行動は早い。人間は建物の中に篭りたがる習性があることを彼は学んでいた。
建物を用意するため、場所を選ぶ。あまり建物が多いと設置する場所がないが、拓けた場所では人間が少ない。
適度に人間がいる場所を選んで、彼は建物を用意した。念のため人間が少ない場所にも予備を設けておく。これまで多くの失敗を繰り返しているため、彼は若干失敗を予想していた。
建物の中を異世界に繋ぐ。異世界側にも同様に処理をして、入り込まないように周辺を軽く糸で払っておく。異世界側が多少削れてしまったが、それは彼にはどうでもいいことだった。
「さて、待つとしようか」
だが彼は人間が建物を出入りするために、ドアを使っていることを失念していた。
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『…………のモノリスとはなんなのか……から…………』
上司を殺すと決めてから二週間。彼は自分が捕まるだろうことを覚悟していた。義父たちには直筆の手紙で離婚届とともに通帳と印鑑を送ってある。彼が捕まったとしても、妻子が殺人者の家族とされないことを願ったからだ。
叔父夫婦にはただ一言、詫びを書いて送った。何一つ恩を返せていない上に迷惑をかけるが、彼にはそれ以上できることが思い浮かばなかった。
義父に貰った軽トラはメンテ不足でエンジン音がおかしい。ラジオも壊れてしまい電源もチャンネルも反応せず、気まぐれに電波を拾っているため気を紛らわすこともできない。
バックミラーで荷台のシートが固定されていることを確かめ、積んだ上司が目覚めないうちに、と更に山奥へと向かう。
明確な目的地はなく、どこかに生き埋めにしながら嬲り殺すつもりでいた。一応死体を燃やすための灯油も積んでいるが、自分に使うことも考えている。
細く暗い道を走り、帰り道も分からなくなった頃には真夜中だった。
明かりもない夜の森。エンジンを切ると山鳥の声と虫の音が聞こえる。タバコを一本吸う間だけそれに耳を傾けて、彼は軽トラを降りて荷台のシートを剥がした。
いつの間にか目覚めていたらしい上司が猿轡越しに呻いていたが、足を叩くとより大きく呻き声をあげた。雪かき用のシャベルで折った右足が脛の半ばから反っている。荷台から引きずり落とし、もう片方も折った方が確実だろうと振り下ろした。
気絶したのか動かなくなった上司を引きずって、彼は森の中へと消えていく。
軽トラから流れるクラシックを聴くものはいなかった。
シャベルとスコップの違いが難しくて、「雪かき用シャベル」と表記しています。
どうやら地域によって名前が入れ替わるらしいので、暇な方は調べてみてください。
(具体的に形状を書けばいいのだけど文章の流れ的にやりたくないので本文では書かない)
「木製の柄には赤く染められた三角の持ち手部分。反対側に備えられた薄く延ばされた銀色の板面は四角く、緩いカーブを描いて掬い上げやすくかたどられている。」とか? てきとーですが。




