14.転生に成功したらしい。
本文の「**************」の前後でシーンが変わります。
また、前後で「彼」が指している対象が異なります。
人間が増えるためには、その内側で人間を形成しているのだと理解した彼は、転生のためにそれを真似していた。
中心付近が大きな人間は転生させる魂を入れるのに使う。そうした個体はありふれていたので、探す手間はなかった。魂の方も探してみると意外にも簡単に見つかった。見つからない時もあるが、人間に入っていることを彼は知っている。いろいろと試した結果、時間をかけて壊していくと取り出しやすいとわかった。だがその場合は魂も壊れてしまう場合があるようで、壊れていない魂が取れるまで手間がかかる。取り出しながら探して、それなりに数を確保する。どうせ一度で上手くいかないことはわかっているため、最初から備えておいた。
魂を人間の口から詰め込んで、足を広げる。あとは人間の形に取り出して、それが騒げば成功である。糸の先を鋭く硬くイメージして切り取っていく。なかなか成功しない。小さな人間状に切り取ってもそれは騒がないのだ。
だがある時、何の前触れも無く成功した。まるで最初からそこに入っていたかのように、小さな人間の形が取り出せたのだ。
彼はその結果に満足して、余らせていた魂を捨てた。
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『…………の中腹にあるこの建物では過食症治療のためにおよそ二十人ほどが集団生活をしていました。その中で起きた集団殺人事件の詳細について現場から…………』
結局仕事に行くことになり子供を義父夫婦に預けている彼の相貌は、わずか二週間の間で変わり果てていた。食いしばった顎は不快そうに口を歪めている。眉間には皺が寄り、目は釣り上がり常に睨むような表情。そこに妻と共に暮らしていた頃の穏やかさは微塵もない。
ニュースを聞き流し、彼は箸を置く。食べなければいけないと思うが食欲がなく、無理やり詰める気にもならない。義母の退院祝いではあるが、妻は未だに意識が戻っていない。そのことを知った義母の言葉に、彼は未だに怒りを抑えられずにいた。
「食事もできないなんてね。いっそのこと、楽にしてあげたいね」
眠る妻が受けた言葉。彼は怒りに震えたが、抱いた赤子が泣き出したためにそれをぶつけることもできなかった。義母は目覚めた当初、妻の様子を知って涙ながらに詫びていたと義父経由で聞いていたが、彼はそれさえ疑わしく感じていた。
そこに自分の子供を預け、妻を任せなければならない。彼はその状況に憤りを覚えながら、明日の仕事のために義父夫婦の家を後にした。
赤子は彼がいないと気づくと火がついたように泣き出したが、やがて義父にあやされて眠りに落ちた。義母に取り憑いている家族を皆殺しにした魂は、義母の目を通してその様子を見ていた。
義母は憑りつかれた影響が若干出始めています。
それは「彼」をどんな結末へと向かわせるのか。




