13.人間の増え方を実践しよう。
本文の「**************」の前後でシーンが変わります。
また、前後で「彼」が指している対象が異なります。
人間の増殖方法を知った彼は、それがどれほど大変なことなのかを実践して確かめることにした。だが彼という存在には繁殖という必要性がない。そのため、行えたのは人間の真似事でしかなかった。
彼は人間がその内側に複製を作り、その身を切り開いて排出しているのだと考えた。だが彼という存在を切り開くことは容易にできることではない。彼自身の意思で一部を引き裂いたものの、ほぼ間をおかずに元に戻る。彼が取り込んでいた世界のいくつかがその余波で衝突して崩壊しているが、彼はそこには興味を持っていなかった。
「増えるってことは、すごいな」
人間がどれほどの困難を経て増えているのかを知った彼は、自分には出来そうにないと認めて少し思案する。人間を使って転移転生モノ小説の真似をしていることに、ためらいを感じた訳ではない。
「詰め込んで取り出せば、転生するかな?」
命など彼には何の意味もない。人間に対してわずかに芽生えた愛着や畏れも、素材への好奇心の一部でしかないのだ。
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『…………まぁ、そういう事情があるのはわかるけどさ、急に来れませんっていうのはさ、そりゃあ困るんだよ。他のやつを使うにしたってすぐに使えるようになるわけでもないし…………』
延々と続く愚痴にも近い不満。電話から上司が垂れ流してくるものを聞きながら、彼はただ頭を下げていた。意識の戻らない妻の代わりに、子供の世話をしなければならない。そのためには育休を取ることが最も軋轢が少ないことだったが、上司が受け入れるまでの時間はまだまだかかりそうだ。
こんなことをしている暇があるのなら、妻の顔を見に行きたい。そんなことを思いながら彼は、何に対する謝罪なのかもわからない詫びを入れている。解雇をも持ち出して出社を迫る上司に殺意すら覚えるが、彼はただ頭を下げていた。
吐き気をこらえるだけで精一杯だった。
コピペして文字数を認識しましたが、今回短いですね。
気が向いたら補記するとかするかもしれません。(絶対やらないやつ)




