10.魂を捕らえてみよう。
本文の「**************」の前後でシーンが変わります。
また、前後で「彼」が指している対象が異なります。
10回も同じことを言われると、だんだん鬱陶しい気持ちが沸いてきます。
そういえば10回クイズって昔あったね。(どうでもいい)
近くなったことで、彼は魂と器の違いを明確なものとして認識できるようになっていた。糸に伝わる振動が違うこともあるが、温度が違う。箇所によって、また動作によって温度が変わるのは、人間に限らず動く物全般に共通する。だが魂は均一な温度が保たれている。少なくとも彼にはそのように認識ができていた。
彼が再び家の中に佇む魂へと意識を向けると、前回よりも大きく反応した。影響力が大きくなっているのだろうと思い、周囲の様子を確認する。建物が壊れたりはしていないが、人間の器だったものが形をさらに崩し、細かな生物が巣喰い飛び回っている。どうやら人間とは別種のものと判断して無視することにしたのか、魂に糸を伸ばす。だがその糸に頻繁に留まり、這い回り、飛び立つ。
「餌を取るわけじゃないよ」
人間だったものや飛び回るものに彼は興味がなく、必要なのは魂だけである。転生に使うために、今まで以上に繊細に糸を操って魂を絡め取る。うっかり落として壊さないように、隙間なく包んで糸で保護をする。その間にも小さな生物は留まり、這い、飛ぶ。
ちょっとイラついたのだろう。その生物たちが邪魔だと思ったらしい。
吹き飛んだ。
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『…………で起きた大規模な土砂災害で山の形が変わっており、交通網が断絶されています。多くの家屋が土砂災害の被害にあっており、どれだけの家が飲み込まれたのか、未だ正確な情報がわかっていない状況です。この災害を受けて現在、以下の地域で避難勧告が出されており…………』
災害の速報を流しているニュースを電源を切って黙らせた彼は、携帯から聞こえる声に耳を寄せる。義父の慌てた様子が彼にも伝わっていくのが、手に滲む汗でわかる。義母は妻を連れて病院に向かったこと、恐らくは切迫早産だろうと義母が言っていたこと、急がなくていいから電車でこちらに来れないか。そんな話を、狼狽える義父から聞いた彼は、ただ不安を煽られているようにしか見えない。
電話を終えて間もなく、彼は軽トラの鍵を手に家を飛び出した。
転移転生モノ小説は今回で2作目?かな。
前作「転移する理由が見つからない」でもハエを書いていますが、別に執着しているわけではないですよ?
(雑な宣伝)




