プロローグ
初投稿で至らない点も多々ありますが、楽しんでいただければ幸いです。
尚作者は書きたいように書きます読みにくくても我慢してください。
ピピピピと起床を告げるアラームが鳴り、未だまどろむ意識と寝起き特有の倦怠感が体を襲う中無造作に未だ鳴り続けるアラームを止める。
倦怠感が未だ体を蝕んでいるが何時までもこのまま自分の布団に入っているわけにもいかないため、体に鞭を打って布団から出る。
昨日まで春休みだったため六時前の起床は久しぶりである。
確か今日の朝食当番は母の智子のはずのためもう少し遅く起きてもよかったのかと思うと少し憂鬱になる。シフト制という仕事の時間がバラバラな母の負担を減らすべく家族会議を行った結果がこの『家族で家事を交代する』というものだ。
最初の方こそ今まで家事をしてこなかった自分や父は悪戦苦闘していたが、今となってはなかなか手慣れたものである。
「二度寝でもするかな?」
そんなことをぼやきつつ今日の始業式の持ち物を確認していく。
「昨日も確認したけど念のためもう一度確認しとくか…え~と、休みの間の課題は…入ってるな…」
そんな風に簡単に確認していくが特に忘れ物はなかったようで安堵する。
そうこうしているうちに時計の短針は七の文字を過ぎたあたりだった。
「樹~起きてる~?起きてるなら寝坊した私のために味噌汁作ってくれない~?」
一階から猫なで声で母親の智子が聞いてくる…ってかまた寝坊したのか母よ…。
普段は堂々としててかっこいいと思う時もあるのだが家に居る時は朝に弱く良く寝坊したり、抜けてるとこがあったり等、様々面を持っていて面白い親だ。
まあ俺が高校に上がるまで家事を任せっきりにしていたから、朝から味噌汁作るくらいならいいけど。
「わかった!今行くよ。」
そう声をかけて一階に向かう。
階段を下りたら、焼けたトーストとコーンスープの匂いが漂ってくる。…コーンスープ?ん?味噌汁作るはずじゃなかったっけ?
「ねえ、母さんさっき俺に味噌汁作ってとか言ってなかったっけ?」
「あ~うん。朝はやっぱり日本食!と思ったけど急にトーストが食べたくなっちゃってね~」
ケラケラと笑いながら俺のことをからかっていたことを告白する母親…訂正、面白いと思えるのは寝坊をして慌てている時だったらしい。
「え、それって俺はまだ自分の部屋にいてよかったのでは?」
「だってお兄ちゃん放置していると朝から小説読み始めて部屋から来ないし。」
はぁ、というため息とともに妹がジト目で見てくる。やめてくれ妹、兄は傷つきやすいのだ。
「うぐ、否定はしないが…というかおはよう花。今日から小学六年生だな。意気込みとかあったりするか?」
樹が妹の花の考えから逃げられないとわかると、即座に話題転換を試みる。しかし花の方はそれがどうしたと言わんばかりに話を続ける。
「ほら、否定できない。それに意気込みとか言われても特にないし。早くご飯食べてよ。今日の片づけ当番私なんだから。」
朝から妹と軽口を交わしあういつも通りの朝、とはいってもやはり味噌汁作ってと言ったのはからかう為だったのか、昔から家族内ではネタにされているがいささか不満である。
何故毎回、毎回、自分ばかりがネタにされるのかという不満を感じながら食卓に着く。
目の前に出されたのは焼いたトーストにハムと目玉焼きそして牛乳であった。我が家の寝坊時の朝食である。
「寝坊したのは本当だったのかよ…。」
「当たり前でしょ。この家の私の称号は寝坊王よ。」
前々から自称している寝坊王という称号を胸を張って名乗る。なかなかかっこ悪いと思うのだがそこは目を瞑っておくとしよう。
「お、今日はトーストと目玉焼きか。いつもありがとう智子。」
廊下から会社に行く準備を済ませた父の修一が母の智子から弁当を受け取りながらひょっこりと顔を出す。家事は当番制と言っても父のお昼ご飯である弁当を作るのは私だ!と譲らなかったので弁当を作るのは母の仕事なのだ。こんな歳になっても息子や娘の前でいちゃつくのは止めていただきたいが、喧嘩するよりかはましだろうと思い、兄妹共々特に気にしないことにしている。
どうやら、会社に行くついでにゴミを出すために纏めていたらしい。
「おはよう。父さん今日のゴミ当番って父さんだったっけ?昨日が花だから今日は俺のはずなんだけど…?」
「あれ?今日早めに会社行かなきゃだから交代しようって昨日言わなかったっけ?」
昨日何をしていたかを思い出す…そういえば昨日、父が帰ってきた時に話してたような?
まあ言ったんだろう、と強引に納得する。
「あ!確かに言ってた気がする。因みに父の当番ってなんだっけ?」
「今日は洗濯だったはずだったけど、ごめんな、樹。昨日も洗濯当番だったのに…。」
「大丈夫だよ。いつも仕事をしてるのに家事まで手伝ってくれてるんだから感謝してるくらいだし。」
そう言ってははと笑う。
それに、そんな申し訳なさそうな顔をされると責めたりできないし、父の事を考えるとむしろ仕事も頑張ってもらっているのに家事を手伝わせている事に申し訳なさがあるのだ。
むしろ感謝しているくらいである。
そして、朝食を食べて洗濯物を二階のベランダに洗濯物を干す。
ベランダにいる間に行ってきますという声が三回聞こえたためもう家には誰もいなく、家の中はしんと静まり返っている。
「…なんか、自分の家じゃないみたいだな。にしても、昨日のアニメは面白かったな」
傍から見ると洗濯物を干しながら独り言を呟いている危ない奴だという事は自覚しているのだが、どうも一人になると呟いてしまう癖がついてしまっているらしく、意識しなければ止められない。
ついこの前も、一人でぶつぶつ言ってる時に友人に注意されたものである。
「さて、洗濯物も干し終わったしそろそろ学校に行かないと遅刻するな…ちょっと急ぐか。」
現在時刻は七時五十三分。いくら走って十分程度で着くといっても、ゆっくり歩いていたら流石に間に合わないだろう。それに早く学校に着いても不味いことなど何もないため小走りで行くことに決めた。
家の中の鍵が閉まっている事を確認した後、いってきますと誰も居ない家の玄関口で言う。
そして、ドアがちゃんと閉まっている事を確認して小走りで学校に向かう。
いつもと変わらない、平凡な景色を横目で見ながら学校までの道のりを急ぐ。
ハッハッと体が空気を求める感覚に従いながら荒く息をする。
早く学校に着くことが悪いことでもないので
そして、学校の校門前に着く曲道を曲がると、急に辺りが光り出して自分を包み込んだ。
「眩し!」
そして目を開けた先にあった景色は…普段俺が通っていた、通い慣れた学校ではなく教会の大聖堂のような場所だった。
「ああ!本当に召喚できましたね!トニーさん!」
「ええ!やりましたな!レーナ姫!」
興奮気味に話す神父の様な恰好をした人と、上品そうな、そしていかにも高そうなドレスを纏った自分と同年代ほどの金髪の美少女。
「…え?どこ?」
あまりにも突然の事だったため、ただ単純な疑問の声しか上げられなかった。
「あ!すみません。勇者様…私達興奮してしまい。」
興奮気味に話していたレーナ?と呼ばれていたお姫様?が謝罪の言葉を述べてくる。
「いや、大丈夫ですけど、あの、ここ、どこですか?」
急な景色の変化と、目の前で起こっている事に頭の整理がつかず途切れ途切れの言葉を口から絞り出す。
「突然の、それも不躾な願いで誠に申し訳ないのですが…この国、いえ…私の父が現在治めている国であるこのレムリア国の、新しい『魔王』となっていただけませんか?」
「は?」
そして、突然告げられた俺の魔王化計画はあまりにも突飛なものだった。
前略、今現在地球に住んでいる父、母、そして花…俺は、異世界で魔王にならなければならないようです。