8話
寝袋の中、悠に抱きしめられる感触。
寝袋のせいなのか
顔が熱くて熱くて仕方が無い。
そして激しく脈打つ鼓動。
(どうしたんだろう、、、?)
(胸がドキドキしてる、、、、)
ドキンドキン
(ハルはいつも)
『若葉っ』
(この距離にいたのに)
ーーーーーーーーーー
ばっ
「はー暑かった」
寝袋を脱ぎ捨てる悠。
蘭「あーよかった!先生に見つからなくて」
次々と被っていた寝袋を脱ぎ捨てていく。
「俺、龍と男同士くっついてて気持ち悪かったー」
「なんだとー!!」
あはははははは
「潤悪いね。寝袋借りたわよ」
「ごめんね。咄嗟に未来と私で入っちゃった。でも兄妹だし、悠くんいたから大丈夫だった?」
「、、、、、、、。」
悠の横で赤い頬になりながら俯く若葉。
「若葉どうしたの?大丈夫?」
「顔赤いよ?」
「!!」
その言葉に我に帰る若葉。
「ご、ごめん!なんでもない!大丈夫!ちょっとびっくりして、、、、」
「?」
その時、悠と目が合う。
「っ」
ドキン
ダダダダダ
「え?おい!」
若葉は一目散にテントから逃げ出した。
「ふふーん?あんた見えない所で若葉に何したのよー?」
「お兄ちゃんだからってなんでもしていいわけじゃないわよ」
「なんもしてねえよ!変な風にいうな!」
龍・潤「「ニヤニヤニヤニヤ」」
「お前らもなんだよ!その顔は」
「いーや?若葉ちゃん可愛いもんなー」
「手出したくなるのもわかる」
「お前らなー╬」
自分のテントに戻り、1人頭を冷やす若葉。
(なにこれ、、、、)
(何ドキドキしてんの、、、)
(血は繋がらなくても)
(ハルは双子の兄妹なんだから、、、、)
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
次の日ー。
校外学習で山登りに繰り出す若葉たち。
「おい!若葉」
ダーーーーーーー
「わかっ、、、、」
「ねえねえ未来ちゃん」
「わ」
「あ、今日の昼食各班で自由に作るんだったね。何食べたい?私作るよ♪」
避けられ続ける悠。
「あ、オムライス食べたいかもー」
「あ、いいね!」
「卵あったよねー」
ワイワイと楽しそうに話をする若葉。
「はぁーー。今度は俺が避けられてんのかよ」
状況を理解し、ため息を吐く悠。
「本当似たもの同士だね」
「潤、、、、」
「いいの?大好きなハンバーグ作ってって言わなくて」
「いい!いつでも食える!」
そう言って不機嫌に離れていく悠を潤は失笑しながら見つめていた。
「ふーーん。「いつでも」、ねえ、、、」
ーーーーーーーーーーーー
そして昼食の時間ー。
各班屋外の台所を使い、それぞれ協力しながら昼食を作っている。
タンタン
ジャッ
ジャッ
その中でひときわ目を引く班があった。
ジュワアアアアア
ポンッ!
お皿にはふっくらトロトロ綺麗なオムライスが。
「はい!出来たよー!」
「流石若葉!美味しそう♡」
「すごーい!若葉ちゃん!うちの班カレーの残りで肉じゃが作ってるんだけど、どうも味付けが変で」
「どれどれ?」
そして若葉はお玉で1口分小皿に移すと味見をした。
「あー、これ調味料が足りないんだよ」
「え?でもここには限られたものしかないし」
「任せて!ちょっと細工していい?」
「う、うん!」
「これをこうして、っと」
そして若葉は限られた材料の中で味を調節していく。
そしてー
「出来たよ!味見してみて!」
!!!!!!!!!
「おいしー!!!」
「すごーい!!!」
先ほどとは一変。
短時間での見違えるほどの味に感動する生徒達。
「ごめんね。違う班なのに手伝ってもらっちゃって」
「ううん。ここまで作ったのはみんなだし私はちょっとお手伝いしただけだよ」
その時、若葉の目に止まる残った材料たち。
「ついでにアップルパイ焼いちゃおっか!」
「えー!!こんなところで出来るのー?」
「若葉ちゃんかっこいい!!」
女の子達をいつしかまとめあげ楽しそうに料理をする若葉。
その姿を未来と蘭が見ていた。
「若葉が豪華なご飯を作ってる」
「悩んでる証拠ね」
そしてまきを集め、炊飯を見守る男子達もその光景を見ていた。
潤「みんな料理上手な若葉ちゃんに驚いてるね」
「そりゃ家で毎日飯作ってくれてるからなー」
龍「一家の大黒柱みたいなもんかー」
「まあな」
「いいなー。椿」
「!」
その時、聞こえる別の男子達の声ー。
「あーいう家庭的なの」
「嫁タイプっての?」
「ああ。嫁さんに欲しいよなー」
「その前に彼女の段階だろ。競争率高いぞー」
「だよなー」
ハハハハハハハハ
龍「お前もだけど相変わらずの人気だな。若葉ちゃんも」
「、、、、、、、、、。」
その男子達の会話を眉を寄せて悠が見ていた。
「若葉!」
「なに?」
アップルパイを焼き上げて満足そうに笑みを浮かべる若葉の元に未来と蘭が駆け寄ってくる。
「どうしたの?悠くんと何かあった?」
「、、、、、、。」
その言葉に口を噤む若葉。
(何か、、、、、)
(言えないっ)
(ううん)
(なんて言っていいのか、わからない)
「何も、何も無いの、、、、」
「、、、、、、、。」
未来と蘭はじっと若葉の答えを待っている。
「でもなんか、ハル見ると変な感じなの」
(血が繋がらないってわかったから?)
(それすらももうよくわからない)
「若葉、気持ちが動くことに「何も無い」てことはないのよ?」
「未来ちゃん、、、」
「子どもの頃からずっとそばにいたからこそ、見えないものもあるんじゃない?」
「、、、、、、、、。」
(見えないもの、、、、)
「うめぇー」
「マジ最高!!若ちゃんの手料理食べれる日が来るなんて!くぅー!!羨ましい限りだぜ!椿」
「うっせ」
オムライスを頬張る友人達を見つめる若葉。
(確かにあるのかもしれない、、、、)
(ハルのことなら何でも知ってるって思ってたけど)
(違うのかもしれない、、、、、)
その時
「!」
「!」
ドキ
悠と視線が交わる。
「は、やっと目合ったな。まあ最初にそらしたの俺か」
「!!」
「おかわり」
「う、うん!」
「え?あんの?俺も!!」
(これから)
(それも知っていけるといいな、、、、)
そして嵐のように
臨海学校は過ぎ去っていたのでしたー。
「若ちゃんおかえりー!!うえーん!!寂しかったよー!!隆くんのご飯全然美味しくないんだもん!」
「なんだと╬」
家に帰宅した若葉の前には泣きながら出迎える奈緒の姿があったという。