7話
そして臨海学校に夜が訪れたー。
カレーを食べ終えた若葉達が向かったのは悠達テント班がたてたテントの中ー。
「よし、あがりぃ♪」
未来が持ってきたトランプで6人は大富豪をして遊んでいた。
最初にあがったのは悠ー。
未来「椿、強すぎ〜」
「ははん」
「私もいつもハルには負けるんだよね〜」
「1位のご褒美なにかする?」
「いいねー」
にこにこといつもの笑みを浮かべる若葉にほっと胸をなでおろす未来と蘭。
「良かった。いつも通りに戻ったね」
「え」
「じゃあ2番が3番のいい所をいうってのはどう?」
「おい、森山!なんでお前が勝手に決めてんだよ」
「いいじゃん〜」
「あ、3番俺だ」
「よぉーし。こっち無け、龍」
「おい、潤。いいところ言う、て言ってんのになんだその剣幕は」
あはははは
楽しそうに盛り上がる中、
ガヤガヤ
外に人の気配がする。
蘭「あれ?隣のテントに誰かきた?」
「若葉たちのテントだよな?隣」
「う、うん、、、、」
「若葉ちゃん、ちょっといい?」
「!」
聞こえてくる声に驚く若葉。
「!私に用事?」
「あれまー。本当椿家はモテるわねー」
「もう、未来ちゃん!変な風に言わないで」
「行かなくていいんじゃない?どーせ遊びのお誘いでしょ」
「だろうな」
「、、、そうかな?でも本当に用事だったら申し訳ないし、ちょっと見てくる」
潤「真面目だねー」
龍「椿に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいに優しい」
「うるせえ」
「なんかあったら呼ぶのよー!」
「すぐ駆けつけるから」
「んな大げさな、、、、」
そして若葉がテントの入口のチャックを下ろそうとした時、
くんっ
ジャージを掴まれる感触。
「?」
振り返るとそこには真剣な眼差しの悠の姿があった。
「ハル、、、、?」
「行かなくていい」
「えっ?」
「、、、、、、。」
『お前いいよな!あんな美人で可愛くて、料理も作れる妹がいてさ』
その様子を見ていた龍と潤。
潤はそれに笑みを零すと話し始めた。
「若葉ちゃん、告白されっかもよ?」
「ええ!?」
「今日の夕飯作る時目立ってたから男子達騒いでたんだ」
「え?ご飯作ってただけだよ?途中びちょびちょで帰ってきたし」
「家庭的な女の子。それだけで男子はたまらんのですよ」
「?」
「やっぱりねー。本当厄介よねー」
「やっぱり?」
「うんうん。こういう行事、さらに若葉の魅力を馬鹿どもに知らしめることになるから嫌なんだよねー」
「蘭ちゃんまで、、、、」
「(あーモヤモヤする)」
そう悠が眉を寄せた時、
「誰だ!まだ起きてるやつは!!消灯時間はとっくに過ぎてるぞ!!」
ライトを持って見回りをしていた教師の声が外に響く。
「やべっ先生だ」
「逃げろっ」
ダダッ
若葉たちのテントの前にいた生徒達は慌てて逃げていく。
しかし、焦るのは彼らだけではなくー。
蘭「まずいっ!先生だ!」
龍「男子テントにみんないることがバレたら」
未来「またこっぴどく叱られる〜」
蘭「今からじゃ戻れないよー」
潤「とりあえずみんな寝袋の中に入って」
「若葉ちゃんも早く!」
そういい、寝袋を広げる龍。
「う、うん!」
促されるまま若葉はそのまま龍の寝袋に入っていこうとする。
ドクン
しかし次の瞬間、
ぐいっ
「え」
若葉は引っ張られるまま別の寝袋の中へと入った。
シャッ
パッ
テントのドアが開けられ、教師がライトを照らす。
そこは静まり返り、動いている者はいない。
「よし、寝てるな」
バサ
そういうと教師はそのまま去っていった。
ドキンドキン
寝袋の中、音を立てて脈打つ鼓動。
ぎゅっ
抱きしめられる感触。
その腕には覚えがある。
そう正しく兄・悠のもの。
先程とは違う温もりがそこにはあった。
ドキン
(ねえ、ハル、、、、、)
(私達はずっと変わらない)
(「兄妹」、、、だよね、、、、)