表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

21話

『俺、、、何しようとした?』


(妹に手出そうとするなんて、何考えてんだ。俺は、、、)


ピピピピピピ


目覚まし時計が今日も主人を起こそうと7時を告げるアラームを鳴らす。


「んんっ」


カチッ

ベッドから手を出し、器用に片手で目覚まし時計のスイッチを押す。


「おはよっ!ハル!!」

「!!!!!!」

ガバアッ

急に目の前に現れた妹の顔に思わず悠は飛び起きる。


それを気にすることもなく妹は、ベッドに両肘をつけたまま悠に笑顔を向ける。


「今日は早いね!偉い偉い」

「なんでお前が俺の部屋にいんだよ!」

「だって今日は隆兄がご飯作ってくれてるから。それに毎朝ハルを起こしに来てるのは私じゃない。今更でしょ?」

「ーっ!!」

確かにそうだ。

悠を起こすのは若葉の日課。

血の繋がりがある無い関係なくこれはずっと今まで行ってきたこと。

兄の部屋に妹が入るなど今更である。


しかし、悠の脳内には昨日の出来事が焼き付いており、それを意識してしまう悠にとって起きて早々若葉が近くにいることは耐え難いものなのである。


「じゃあ制服に着替えて早く降りてきなよ!」

準備万端な妹はそう言うと階段を降りていった。

「、、、勘弁してくれ」



ーーーーーーー


ドタドタドタ

制服に着替えて悠が部屋からリビングへと降りてくる。

「おはよう!ハルくん」

「おお!おはよう!今日は早いな!悠」

「おはよ。」



「はい。これ若ちゃんの分のお弁当」

「ありがとう!」

「あーあ、今日はわかちゃんのお弁当じゃないのかー」

「要らないなら食べなくていいぞ、奈緒」

「うわー!隆くん鬼だ」

「誰が鬼だ」


兄弟に囲まれた血の繋がらない妹。

本当にそうなのかと時たま思うほど、深い絆で結ばれたその暖かな光景をただじっと悠は見ていた。


「どうした?悠」

「ハルくんも若ちゃんのお弁当のが良いんだよねー?」

「なっ!」

「、、、別に」

「あー。もう!ハルくん冷たい!」

「ほら。さっさと朝ごはんたべろ」

「はーい」

席につき、朝食を食べる悠を今度はじっと若葉が見ていた。



ーーーーーーーー


キーンコーンカーンコーン


ダンダンダン

キュ

ダンダンダン


放課後の体育館にドリブルとシューズの音が鳴り響く。


しゅっ

3Pコーナーから勢いよく悠がボールを投げる。

「、、、、、。」



『ハル?』


「ーっ!!」

昨日の夜の出来事をとっさに思い出し、悠はバランスを崩す。


(げっ、、、)

ツルッ

ずでん!!!

足を滑らせ、悠はその場に転倒する。


さくっ

転倒と同時に手から離れたボールはゴールネットに綺麗に吸い込まれていった。


「おいおい!大丈夫か?悠」

「3Pかっこよく決まってんのにジャンプの着地失敗とかダサすぎんだろ」

「生きてるかー?」

「う、っせえ」

そう言いつつも差し出された手を取り、悠は起き上がる。


「椿!」

「!マネ」

「足ひねったりしてない?大丈夫?」

「、、、、。」

足をくるくると回したり、床にトントン打ち付けるものの特に痛みも異状も感じない。


「大丈夫っす」

「はぁー。気をつけてよね!試合も近いんだから」

「はーい」

「じゃあ、練習再開」

ピーーッ!

マネージャーの笛の合図でまた練習が再開される。

ダンダンダンダンダンダン


「マネ!」

「ん?何?痛みとか出てきた?」

「いや。ちょっと頭冷やしてきます」

そう言うと悠は体育館を駆け足で出ていった。


「全く。」

「はは。マイペースだな。うちのエースは」

「コーチ!!」

「まあ、あのマイペースさと身体能力、バスケの技術が彼の良い力だ。」

「、、、そう、ですね」

「それに言ってもまだ15歳の男の子だ。ゆっくり見守ってやろう」

「、、、はい」



ーーーーーーーー


ザアアアアア


外の水道で頭を冷やし、首に巻いたタオルで濡れた髪をふく。


「はぁーーー」

大きく下を向いてため息をつくと、悠はキュッと水道の蛇口を閉めた。


するとどこからか女子の話し声がする。

声のするほうを見やるとある一つの教室に明かりが灯っており、中では多くの女子達が湧きあいいと楽しそうに活動をしている。

その中には、よく知った少女の顔もある。


「家庭科部、、、、。そうか。今日木曜か」

そうつぶやくと悠はそのまま少し活動を見ていた。


今日はクッキーを作っていたのか少女の手には可愛く包装されたクッキーが乗せられている。


(きっとアイツにあげるんだろうな、、、)

そう思いながら、女の子同士で楽しく会話する少女を横目に見やると、髪をふきながら体育館の方へと足を進めた。



「!ハル!!!!」

「!!」

視線を感じたのか、悠に気づいた少女はそのまま家庭科室の窓を開け、笑顔で声を上げた。


「若葉、、、」

「ハル!今練習中?どうしたの?こんなところで」

「ちょっとリフレッシュ」

「そっか!」

若葉はとても楽しそうだ。

若葉の後ろでは悠のことが好きな女子達がキャーキャーと騒いでいる。


「ねえ、ハル。お腹すいてない?」

「ん?、、ん。まあまあ」

「そうだと思った!こっちに来て!いいものあげる」

「?」

悠は家庭科室の窓へと近づいていく。


「目えつぶって、口開けて」

「ん?何でだよ?」

「いいから!あーん」

「あーん」

素直に目をつぶり、口を開けると口の中に香ばしい香りが広がる。


「なにこれ?」

目を開け、口に入れられたものがなにか尋ねる。

「今、焼いたクッキーだよ。どう?おいし?」

悠はモグモグと口に入ったクッキーを味わう。


「、、、うまい。」

「やった!じゃあ、練習がんばってるハルにプレゼント!」

「!!」

そうして手渡されたのは、先ほど若葉が持っていた可愛く包装されたクッキーだった。

「あれ、これ、、、」

「?」

「先輩にあげるんじゃねえのか?」

「えっ?なんで?あげないよ」

「!」

予想外な上に、気にすることなく即答され、逆に悠は驚きを隠せない。


「これは家族用に作ったものだもん。これが隆兄ので、これが奈緒くん。」

若葉は順に個包装のクッキーを見せる。


「そしてそれが、ハルの」

そして悠が持つクッキーを指さして笑顔を向ける。

「きっと今日隆兄遅いし、私も部活で遅くなっちゃうから夕飯までのお菓子として食べてもらおうと思ったの。

まあ、きっとハルはお腹空かせてるだろうから後で差し入れで持っていこうかなって思ってたんだけど、思ってた矢先に目の前に現れるんだもん!ビックリしちゃった」

「!」

「お互いラッキーだったね」

「、、、ああ。」



「若葉ー!片付け手伝ってー!」

「はーい!」

「じゃあまた後でね!」

部活の友人から呼ばれ、笑顔で悠に言葉をかけると若葉はまた家庭科室の奥へと戻っていった。


それを見送ると、悠はまた体育館に向けて歩き出した。

パリッ

むしゃ

もぐ

「、、、うまい」

若葉から貰ったクッキーを1枚ずつ食べながら。



「椿くんー!!」

「椿くん待ってー!!」

「!」

後ろからバタバタと女の子4人がクッキーをもって追いかけてきた。


「あの、私達もクッキー作ったの!」

「椿くんに食べてもらいたくて」

「頑張ったの」

「私たちの分も貰ってくれないかな?」

「、、、、。」

4人に両手で差し出されたクッキーを見るも悠は表情を変えない。


「悪いけど要らない。」

「えっ!?どうして!?」

「俺、若葉の以外は食べねえから」

そう言い、女子達を残してまた悠は体育館へ向かって歩き始めた。



ーーーーーーーーー


ーーーーー


ダンダンダンダンダンダン


しゅっ

さくっ


しゅっ

さくっ


しゅっ

さくっ


悠が投げたボール全てがゴールネットに吸い込まれていき、コーチやマネージャー、バスケ部のみんなは呆然として見ていた。


(わかりやすっ!いい事あったって丸わかりだ)


(10分で一体何があったのかしら、、、)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ