2話
「よしっ!」
自分の部屋で制服に着替え、最後にリボンをしめると鞄を持って、階段をおりる。
「戸締りおっけー!行ってきます!」
空っぽになる家にそう告げると若葉はそのまま学校へ足を進めた。
悠と学校へ行く際は一緒に自転車に乗せてもらうこともあるが
それ以外、若葉はバスか徒歩で登校している。
今日は時間にも余裕があり、天気もよかったため若葉は徒歩で学校に向かうことにした。
椿家が通う学校は中高一貫校の市1大きな学校であり、敷地は仕切られているものの交流は深い。
「おはよう」
「おはよう!」
校門に近づくと登校時間なため生徒が沢山おり、沢山の行き交う生徒が若葉へと声をかける。
そして、若葉が校門へ入った瞬間。
「おはよう!」
「おはよう!若葉ちゃん!」
「おはよう!今日も綺麗だね!」
待ち伏せしていたのか、大勢の男子たちが若葉を囲む。
その中には同級生を含め、先輩も多くいるようだ。
「お、おはようございます」
苦笑いを浮かべながら若葉は言葉を返す。
「くー!朝一番に若葉ちゃんに会えるなんて俺は幸せ者だ!今日はハッピーな1日だ!!」
「うるせえぞ!お前!!」
「椿さん、今日放課後空いてたりしない?一緒にお茶でも、、、」
「ごめんなさい。今日は夕飯の準備があるので、、、、」
「夕飯!?流石若葉ちゃん!学園のマドンナは料理もお得意なのか!」
「素晴らしい!ぜひ僕のご飯も」
若葉は、ぎゃいぎゃいと迫ってくる男子に圧倒されながらも苦笑いを浮かべて後退していく。
「あ、あの、、、、」
どうしようかと困惑していたその時、
「ちょっと!そこの男子達!!」
「邪魔よ!!!」
どかっ
力強い声と共に、若葉を囲んでいた男子達が総崩れする。
「!」
驚く若葉の前に現れたのは、威圧感を放つ女子軍団だった。
「全く!若葉が困ってるでしょうが!」
「ファンクラブだかなんだか知らないけど、若葉に近づくなら私達を通してからにしてくれる?」
「毎朝毎朝しつこいのよ!あんたたち。これじゃあ若葉が教室に入れないでしょうが」
確かに若葉は校門から1歩も動けていない。
いや、それどころか校門から外へ追い出されそうな勢いだった。
「未来ちゃん!蘭ちゃん!」
男子に強い言葉を浴びせた2人ー。
この2人は小学校からの若葉の親友である。
「おは」
ガバ
「おはよう」と言おうとしたものの、相方から2人に抱きつかれ、言葉は遮られてしまった。
「若葉ー!!心配したのよー!いつまでたっても来ないから!」
「また校門前で変な虫に捕まってんじゃないかって」
「あはは」
「もう!笑い事じゃないって!若葉は可愛いんだからもっと警戒しなきゃ!」
「え、だって、、、、私には未来ちゃんと蘭ちゃんがいてくれるから」
きゅーーん
「「あーー!!好きーー♡」」
「?」
ふたりを除いた女子軍団は若葉を囲んでいた男子達を蹴散らしていた。
キャーーーーー!!
その時、女子の奇声が学校中に響き渡る。
「あ、来たわ」
未来が鋭く反応する。
「奈緒ちゃん!おはよー」
「おはよう」
「今日も可愛いね♡」
「ありがとう」
「きゃー!!」
待ち伏せされていたのか、部活が終わり制服に着替えて出てきた奈緒の周りには女子が群がっている。
奈緒は気にするでもなく、ただ女子の言葉に慣れたように言葉を返していた。
そして、もう一方ー。
「椿くん!おはよ!」
「おはよう!ハルくん!」
「部活お疲れ様ー!」
「見てたよ!!凄いかっこいいシュートだったね!」
「、、、、うぜえ」
そこにあったのは同じように待ち伏せされ、制服で出た瞬間に女子に群がられている悠の姿だった。
違う点があるとすれば、悠は奈緒と異なり、かなり迷惑そうにしていた。
「はあー。相変わらず人気ね。あんたの兄弟は」
「あはは」
「隆一君がいた時も凄かったよね」
思い出されるのは、隆一がまだこの高校にいた頃の話ー。
〜回想〜
「隆くん、おはよー」
「おはよう」
「キャー!」
「ねえねえ、今日はどこ助っ人行くの?」
「野球部かな」
「わー!応援しに行くね」
「ありがとう」
〜回想終了〜
「まあ、若葉も言えた立場じゃないけどね」
「?」
ぐんっ
「わっ!」
「今のうちに行くよ!」
「あの女子の波が来たら今度こそホントに校舎に入れなくなっちゃうからね!」
そう言って、未来と蘭は若葉の手を引っ張っていく。
「奈緒くんー!お疲れ様ー!お水飲む?」
「クッキーもあるよー!」
「うん!飲むし食べるよー♡」
群がる女子を気にすることもなく奈緒はぐんぐんと中等部校舎へと入っていく。
「はいはい。どいてねー」
「おはよう!椿妹」
「おはよう椿ちゃん」
「若葉ちゃん」
「おはようございます」
「おはよう」
「今日も綺麗っす」
「ありがとう」
若葉を守るように未来、蘭筆頭に
女子軍団が近寄る男子をかき分けていく。
「おい!どけっ」
「!」
遠くから聞こえる聞きなれた声に若葉が振り返る。
「わーん!つめたーい」
「でもそこがまたかっこいい」
「うるせえ!いいからどけ!教室行けねえだろうが!」
「行かないでー。クラス違うもの」
「離れるのヤダー」
「一緒に行きましょー」
「椿くん」
「ハルくんー」
「だー!うるせえ!どけー」
「ありゃりゃ」
悠は女子をかわすことも押して進むことも出来ず女子の波に流されていった。
キーンコーンカーンコーン
「はぁー。疲れたー」
女子からやっと開放された悠は教室の机に突っ伏していた。
「お疲れ様」
「!」
顔を上げると、若葉が水の入ったペットボトルを机に置いた。
「ーったく、お前。先に行くなよ、助けろよ」
「ごめんごめん」
「はぁー。何で奈緒はあん中スイスイ平気で行けんだよ」
「そういえば隆兄もスイスイいってたね」
〜回想〜
「今日も妹ちゃんのお弁当?」
「いや、今日は俺の当番だったから自分で」
「えー!凄い!椿くん、お料理もできるの!?」
「若葉ほどではないけどね」
「凄い凄い!」
「そろそろ教室行かなきゃ。また後でね」
「はーい♡」
〜回想終了〜
「2人とも女の子の交わし方上手だもんね。ハルも上手くかわさなきゃ」
「無理だっつの。はぁー」
疲れきった悠を見て、若葉はどうしたもんかと笑みを浮かべていた。
「つーばき!」
ぐわし
「ーっ、何だよ」
机に突っ伏す悠の首に大きな腕が回される。
「お前今日も朝から大変だったなー。女子に囲まれて。
お!若葉ちゃん、おはよう!」
目線をあげ、気づいたように目の前にいる若葉にも声をかける。
「おはよう」
「おはよう!じゃねえよ!見てたなら助けろよ」
「いやいや、モテる男の邪魔しちゃいけねえなって」
「いいよなー!よっ、モテ男!」
「うるせえ!」
現れたのは、2人の男子。大柄な男子も背の高い男子もどちらも悠の小学校からの親友である。
「お!椿だ!椿だ!」
「お!よーっす!」
そして、また廊下からあとを続くように男子達が入ってきた。
「あ〜またうるせえのが入って来た。」
若葉はその様子に笑みを浮かべると、すっとその場を離れ、自分の席に戻った。
「うるせえのとはなんだ。同じ男の同士たちじゃねえか」
「なあ、今日のお昼もまた屋上で食おうぜ」
「ありあり、そうしよーぜ」
「へーへー」
「はぁー」
「んだよ?」
「いや、それにしてもお前の妹ってホント美人だなって思ってさ」
大柄の男の目線の先には女子と楽しそうに話す若葉の姿があった。
「、、、なんだよ急に」
「いや、、、。ってか同じクラスなんて珍しいよな。中学では1度も一緒にならなかったのにな」
「小学校もだよ」
「そうか、、、」
「、、、、、」
悠はそう答えると、ただ妹の姿を席から見ていた。




