ジャムを作ります
錬金術とは言ったがやることはただの料理だ。
アクスと一緒に森の中に果物を取りに行く。
ほむらはお留守番しながら火にかけたハチミツが焦げないように火の番をしてもらっている。
風魔法で下からかき混ぜるようにしたので焦げることはないと思うが念のためだ。
使おうと思っている果物はすでに決まっている。
一度食べたが酸っぱすぎて食べられなかったがとてもいい匂いの果物を使うつもりだ。
ただしこれがなっている木がとてもひょろ長いのでアクスが居なければとることは到底できない。
その木の下に来たので上を見上げる。
緑の実と熟れている黄色い実が小さくかろうじて見える。
「アクスお願いしていい?」
「かしこまりました」
アクスが一気に直角に上がっていく。
「お嬢様こちらの黄色い実だけでよろしいでしょうか?」
木の上から声をかけてくる。
しばらく考えた私は緑の実も試しに取ってもらうことにする。
熟す前のほうが酸味が弱いかもしれないと考えたからだ。
「緑の実も一個とってくれる」
「それでは落とすのでお気を付けください」
私は風魔法で上昇気流を私の少し上まで作る。
落ちてきた実を風で柔らかく受け止めると浮いた状態の緑の実を鑑定眼でみる。
毒がなかったので早速食べてみる。
酸味はないが甘いわけでも苦いわけでもなければ少し香りが足りない、熟す前のものを使ってもおいしいジャムにはなりそうにない。
「アクス、黄色の実だけをおとして」
私は大きな声でアクスに言う。
すると実が次々と落ちてくる。
風で受け止めている実を籠に移していく。
「ありがとう。もう籠がいっぱいだよ」
降りてきたアクスと共に家に帰る。
「おかえり!」
ほむらが私のことを迎えてくれる。
いつでも準備できてるよという意味なのか、すぐに肩に乗ってきた。
「ただいま、やる気だね」
「ほむらジャムたべたい」
なるほど食欲がこのやる気を支えているのか。
「おいしいジャムを作ろうね」
「うん!」
果物を細かく切り刻んでハチミツが温かくなっている釜の中に入れていく。
皮はそのままだ。皮ににおいがついているのでそのままのほうがいい。
しばらくすると果物から水分が出てきた。
後は沸騰させてその後、混ぜながらゆっくりと煮込んでいけばいい。
沸騰してしばらくすると果物の形がなくなる。
味見をしてみたらハチミツの甘さで果物の酸味がほどよく消されている。
念のためアクスに味見をしてもらうがおいしいですねといってもらえた。
ほむらがねだるのであげたらほむらには微妙な顔をされてしまった。
酸っぱいとのことだ。
今度ほむらように甘いジャムを作ろうと思いつつジャムを完成させる。
完成したジャムをハチミツをもってきてもらう時の花粉の容器に入れことにする。
余談だが始めてもらった時の大きさでは持つのが大変だと相談したらバスケットボールを少し大きくしたぐらいの大きさにして持ってきてくれるようになった。
それの中にジャム入れていく。
釜にもともとついていた木の棒の先がスプーンになっているものを使うが長いので扱いずらい。
なんとか容器に入れ終える。
後はガラスの置物とジャムをもって女王のところに行くだけだ。
すでにお昼を過ぎているので早くいったほうがよさそうだ。
そう思った私はふと気が付いた。レッドビーの住みかを知らないのだ。
「アクス、私を女王のところに連れて行ってくれないかな」
「申し訳ございません。女王の許可がないとそれはできません」
「じゃあ、悪いんだけど森の、家から一番近いところまで女王を読んできてもらえる?」
「かしこまりました」
アクスがそう言って森の中に消えていったので私は森の前でほむらと待つ。
「マタセタナ」
女王が私に声をかけた。お連れの蜂を五匹連れている。
「コヤツニ、ナヲアタエタコト、カンシャスル。シテ、アクスカラキイタガ、ワレニオクリモノトハ、ナンダ」
「あのハチミツありがとうございます。これはそのお礼です」
私は女王に花のガラスの置物を見せる。
「ソレハナンダ」
女王の声に喜色がのる。
「ガラスの花です」
女王が私の手から花をとる。
「ヒカリニアタッテ、トテモウツクシイ」
「壊れやすいので気をつけてくださいね」
「アア、タイセツニシヨウ」
女王が嬉しそうに笑う。
最近アクスの表情がわかるようになったなと思ったが女王の表情もわかるようになったみたいだ。
そんなことを考えていて間があいてしまった。
「ヨウケンハ、ソレダケカ」
「すみません、ちょっと待ってください。これを皆さんでよかったら食べてください」
私はボールを渡す。
「ワレラノハチミツカ」
「いえ中身は違います」
女王がその中を覗き込む、そしてボールの中に手を入れるとジャムをすくって一口食べた。
「ウマイナ、コレハナンダ」
「ジャムです。果物とハチミツを混ぜて煮込んだものです」
「ホウ、ハチミツハ、クスリダケデナク、コノヨウニモ、デキルノカ」
そういって女王は楽しそうに笑う。
「キニイッタ、オマエ、ナヲナントイウ」
「蓮です」
「レン、オマエヲナカマトミトメヨウ。コンドワレラノ、スミカニコイ。アクス*****」
「*****」
蜂語だがアクスとの練習のおかげが何となく意味が分かった。
アクスに案内しろと女王が言ってアクスがそれを了承したようだ。
「マタナ、レン」
そういうとおつきの蜂に荷物を持たせて女王は帰っていく。
私は地面にへたり込む。やはりまだアクス以外の蜂は少し怖いし女王の威圧感が半端ではない。
この調子ではレッドビーの住みかに行くのは当分無理そうだ。
そういえばさっき蜂語がわかったのでステタースを確認すると蜂語LV.1の表記があった。
「お嬢様立てますか?」
「大丈夫今度は腰抜けてなから」
私は立ち上がってアクスと別れてほむらと共に家に帰ることにする。
アクスは普段この辺りで寝ているからだ。
早く家をアクスが入れるようにするか、アクス用の部屋を増築したいがそれには村に降りて大工の人に頼む必要があるな。
そう考えた私は身震いをした。
アクスとほむら(神くんも)は人間じゃないおかげか緊張と恐怖なく話せるが人と面と向かって話すと考えると嫌な汗が出てくる。
リコルちゃんとならもしかしたら大丈夫かもしれないがそれでも想像しただけで震えが止まらなくなる。
村に行って人の目にさらされて、その中で知らない人と話すと考えると吐き気がこみあげてくる。
顔に柔らかいものが触れたことで想像から現実に戻ってきた。
「れん、へいき?」
ほむらが私の横顔ににしがみついている。
これは抱きしめてくれているのだろうか。
「ありがとう平気だよ」
我ながらバレバレの嘘をついている自覚があるがここでダメだと言ったらほむらがとても心配するだろう。
「むりだめだよ」
ほむらが私にそういうと後ろにいたアクスの顔の前にいく。
「アクス、れんのことだっこする」
ほむらちょっと待って気持ちは嬉しいがそれは私の精神衛生上とてもよろしくない。
アクスのことが怖くないとはいえ、エサのように抱えられると食べられるエサの気分になって恐怖がある。
しかも飛んでいるときの浮遊感があまり心地のいいものではない。
「アクス、必要ないから、私歩けるから。それに家もすぐそこだし」
「いえ、顔色がよろしくありません。ですから私はあなたを抱きかかえます」
アクスは私の腰をがっちりとつかむとエサのように私を家まで運ぶのだった。
蓮は鑑定眼を持っているので平気で木の実を食べますが絶対にマネしないでください。
おいしそうに見える果物は実際には毒があったりするので食べるの厳禁です。
とか偉そうにいいますが私が子供のころはそこらじゅうの実を食べていました。
今思えばどんだけ危険だったんでしょう…
たしかヨウシュヤマゴボウを食べようとして止められた覚えがあります。
食べてたら今頃死んでたかもしれません…
話が変わりますが活動報告で話に出てくるものの解説をしていたりします。
今回はあとがきのヨウシュヤマゴボウについて書きましたが普段は話に出てくることの補足説明をしています。
もし何か気になるものがあったら活動報告を覗いていただけると幸いです。