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ぼくは。  作者: 青夏まーく
3/6

大いなる一歩

「嘘…だろ…」


自分は鍵を開けて、自宅に入ったはずだ

それが目の前には森が広がっている

見渡す限り、木、木、木

まるで玄関とは似つかわしくない映像が自分の目には見える



「夢…じゃないな」


自分の手の甲を抓ってみる



「まさか、ぼくの夢見がちな妄想が行き過ぎて、幻覚を見てるんじゃ…

!?リュックがない!?」


背中に背負っていたはずのリュックがない

制服のズボンのポケットに手をつっこむが、

あったはずのスマートフォンがない

ポケットを裏返してみるも、埃しか出てこない


「ない!!なんで!?何もない!!」


ぼくが今もっているのは

制服(指定のものではない、なんちゃって、というやつだ)

めがね

以上


「…どうすれば…」


力が抜け、膝から崩れ落ちる

動悸がすごい

ドクン、ドクンと聴診器を当てて心音を聞いているような感覚に陥る

息も上がってきた


落ち着け…落ち着くんだ、ぼく…


手をぐっと握りしめると、しっとりとした感覚

手汗がすごい…


とりあえず深呼吸だ


大きく吸って、吐いてを繰り返すごとに、

新鮮な空気が入ってくるのがわかる


少し落ち着いた

顔を上げて目の前の景色を見渡す



ぼくは短く息を吐き、膝に手をついて立ち上がる

一瞬、視界が暗くなってふらついた

ぼくは再び地面と対面する



自分のメンタルの弱さに眉をしかめ、上を見上げると、

絵具のチューブから直接色を絞り出したような

濃いスカイブルーが広がっている

ぼくの視界から見える範囲では雲はない



しばらく空を見上げ目を閉じる


今が何時なのかはわからないけど、目を閉じてもほのかな陽を感じる



自分の慣れ親しんだ環境によく似ていることに

心が落ち着いた

空は青いし、木は緑だし、地面は土色…

空気もある、呼吸ができる



…そんなことにも、気づけないくらい焦っていたのだと

再確認できた



今度こそゆっくり呼吸をし、地面に手をついて立ち上がる

ふらつきはない

尻のごみを手で払い、めがねのブリッジを中指でくいっと上げる



「よし」


ぼくはそこから一歩踏み出した


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