表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
94/95

九十話 「層僻」

前回から1年近く経ってますね……

遅くなりましたが九十話です。今回の話は色んな意味でバラバラです。



 人生、人生、人生、


 どこの人間が言っていたかは知らない。その知らない人物曰く人間はみな自分の人生の主役と言う。

 それを聞いた時、心に湧いたのは“羨ましい”と言う感情だった。人間らしい考え方だ。あの化け物と人間のニコイチような存在である僕たちはその枠組みではない。


 僕は人間ではない。けれど、同時に人間として育った者である。そうあれと願われた。そうあれと祈った。

 しかし、結果としては非人間と言うことが分かった。姿形、遺伝子、持つべき感情は人そのもの。だが世界は認めてくれない。この能力ディザイスは何より分かりやすいだろう。


 それに人間の中にも認めない奴もいた。当然と言えば当然だろう。けれど、そんなものはどうでも良かった。幼い頃からずっとこんな世界なのだから。

 それでも。たった一回、同い年の子にバレたことがあった。しかし、その子は僕に対して特に何も言わなかった。


 誰かに告げる訳でもない。ただ。

 ただ、その子はこちらから一歩下がった。

 怯える表情でもない、苦笑いで接した。

 別に悲しい訳でもない。普通に、普通に接しているのだから。何を思うわけでもない筈である。

 丁度自分がその街から経ったすぐの出来事だ。


 『あ~、怖かった~』


 そんな言葉を最後にその子は自分が居なくなるとそれまで以上に元気よく遊んでいた。

 別に、分かっていた。そんな気持ちなのだろうと。何が悪い訳でもない。そういう結果、そういう別れ方なだけだ。けれど。

 あの一歩の差、それが自分にはどうしようもなく堪えた瞬間だったかもしれない。

 怒りも、笑いも、悲しみも、何もない。


 『……大っ嫌い』


 本当に言ったか定かでない言葉を彼は繰り返し続ける。


 「……!」

 

 西幸は自室のベッドから立ち上がる。

 それとなく覚えている夢の内容を振り返る。あの時の自分の心境は正直に言えば忘れている。どこまで心理に影響を及ぼしたのかも分からない。


 ―――――――――――あの時だけの出会いなのだ。これ以上振り返る必要はない。

 友になろうとした人たちすら守れなかった人でなしに誰かを想う権利は存在しない。出来る事はこの身の全てを戦いに投じる事だけ。

 身体がどれだけ欠けようと今更だ。何もかもを犠牲にする。かつて居た筈の家族の顔も名前も思い出せない者に相応しい道程だ。


 ……自虐に浸っているつもりではないがどうにも耽ってしまうきらいがあるらしい。


 「……はぁ」


 ホントにどうすれば良いものだろうか。今の自分を受け入れるにはあまりにも色々ありすぎた。

 私は少しだけ他人に嫌われるのが怖いらしい。恐らく普通の感性ではあるんだろうけど、それでも気になってしまう。


 ………


 嫌いと言えば、ふと思い出してしまった。アイツのことを。賀霧雅哉だっけか。


 何故だろうか。今まで生きてきて初めて心の底から嫌いと思える相手だと感じた。

 程度はあるにしろ、ここまでハッキリとしたのは珍しいもので妙に意識してしまう。


 (別にアイツの事はどうでも良い筈なんだがな)


 支度を終えた西幸は学校へと向かう。些細な事だ。きっとすぐに忘れてしまう。そうなることを願うばかりだ。













___________________________________


 ホク、異。位?


 ある事を対してだけ、ただただ考え続ける。それが何であるかは自分にも分からない。


 一、一、二、一、


 なら何故考える?


 忘れられない。忘れてはいけない。そういう物だと思うから、だ。


 トウ、渓。警?

 

 それが何なのかは残念ながら今の君には表現できない。しかし、その曖昧さを塗り潰す程の確信を持っている。何故……いや、■■■だからか?


 それだけではない筈だ。


 一、四、二、一、二、


 ならそれは何だ?


 それも今の私には分からない。

 

 一、零、九、ニ、零、

 

 どうして?


 本当に分からないんだ。ただ、そこに明確な答えが存在するのを私は知っている気がする。


 ココカ?


 探す方法すらままならないのに?


 それでも探さなければならないんだ。

 

 アア、ココナンダ、


 それはまた随分と自分勝手だね?


 それが私だ。


 マタ、アオウネ。


 ――――――――――――――――そうだったね。













『随分とお疲れのようですね』


『すまないホワイトさん、色々考え事が増えてね。休める時間がないんだ』


『私への返答を拒否していたのもそれが原因で?』


『あーね、悪い悪い。一人で考える時間が欲しくて。自問自答ってヤツよ』


『深刻な悩みであるならカウンセラーに相談するべきではないでしょうか』 


『そこまで思い込んでる物ではないよ。ただ少し、ね』


『打ち明けられるものであるなら、私にお話ししていただいても構いません。陰ながらサポートさせていただきます。勿論内密ですよ』


『いや、良いよ。それは次の機会で』


『さいですか』


『ああ、さいなんだよ。だからあまり気にしなくても……』


『……一つ質問がございます』


『何だい?』


『今日はえらくご機嫌な様子で?』


『んー、いつも通りだけどね?』


『――――――――――了解しました。西幸様、そろそろお時間です』


「そう。では行きますか」













___________________________________


 見えてるか?


 ああ、見えている。


 君たちは随分と彼等にご執心のようだけど、何か理由でもあるのかい?


 勝ち目の薄い戦いに死力を尽くして戦う姿はどの時代でも感動ものさ。


 たかが少年兵にそこまで肩入れするのも珍しいね。


 肩入れもするさ。


 何で?


 あんたから守る為だよ。


 まぁそれもそうだね。


 どんな手段を使ってでもお前を殺しに行くから待ってろ。


 精々頑張って?結局のところ、死ぬのは君たちなんだからさ。


 それを超えて、テメェをぶっ潰すって言ってるんだよ。


 あらあら。


 は?


 こらこらおこらないの


 こいつ……!!


 怒りっぽいね。


 誰のせいだと思ってるんだ?


 勿論私だよね?


 実体じゃなくて良かったね、じゃなかったら今頃ただのミートボールにしてたよ。


 美味しそうだね。


 ……相手にしない方が良さそうだな。とりあえず牛の糞にでもぶつけてくたばってくれ。


 勝てたらしてあげても良いけど?それじゃまたね。


 ………


 気持ちは分かる。だが今は次の仕事を果たすべきだ。


 分かっている、少しだけ時間をくれ。


 ああ、我々には時間だけはたくさんある。


 だが彼等には時間がない。


 過去なのにね?


 諦めろ。


 ……はぁ、行くぞ。













___________________________________


 人生。人生。人生。


 どこの人間が言っていたかは知らない。その知りもしない小説家曰く人間はみな自分の人生の主役だそうだ。

 彼等にはそう考えられるだけの余裕があるらしい。化物おれたちが守ってるからか?


 ああ、醜い。醜いったらありゃしない。人間あいつらがただひたすらに気持ち悪い。

 最終的にはどうでもいい事ではある。だがどうにもそれで我慢ならない時もある。


 己の事しか考えられない癖に他人を思えだの平和だの抜かす。それが出来なかったからの今だと言うのに、本当に。

 特定の誰かに対する物ではない。これは人間と言う種そのものが嫌いな能力者の話だ。


 いつも、いつもだ。こちらが人間でない物と分かった瞬間に血相を変えて化け物が出たと叫んではあらゆる手段で徹底的に排除しようとする。それが出来ないと分かれば差別的対応を取 る。

 危険だ。逃げろ。口に出したのはそんな言葉ばかりなのに。誰かを助けた結果、俺は人間の敵になってしまう。


 いつも、いつも。


 いつからか俺は人間が嫌いになっていた。元から好きではないのもあった。しかし、歳を重ねる度にやはりと言うべきか。好きになれる要素などなかった。

 それは俺が人間ではないからか?能力者だからなのか?創無と同じだからか?


 誰か答えてくれ。いつまで人間を嫌い続ければいい?いつまで人間を恨み続ければいい?


 そして、いつまでこの無駄な問いを続けるつもりなのか。

 人生の主役が自分なら化け物として見下されるのを耐えろと?仕事と言う名目で人をも殺しても良いと?

 答えの一つも出てこない。結局のところ、人の放った言葉は人に対してだけ有効なのだろう。


 なぁ。


 父よ。母よ。何故、何故。


 人を守れと。


 そう言い残したのですか?


 あの日から考え続けても満足のいく解答は未だにない。生きてるとはそういうものなのだろう。

 屋上で寝転んで空を見上げていた賀霧雅哉は立ち上がろうとしたが、ふと、至ってしまった。


 嫌いと言えば特段に大嫌いな奴がいたな。ああ、アイツだ。西幸弘太と言ったか。

 特に理由がある訳ではないがとにかく嫌いだ。初めてだ、明確に個人を嫌いになるのは。

 

 どうでも良い筈の存在だが、不思議な事に神経が逆撫でされるような感覚を覚える。

 ただ、今まで感じた嫌悪感とはまた違うとも感じる。正直なところ理解しきれていない。


 「……ハァ~」


 嫌いなものは嫌いだ。それで良いではないか。

 時折見せるあの紫の瞳も挑発してるようでうざいしな。嫌って当然だ。


 (あー、ご飯食べよ)


 結局アイツとの関係は今のままで良い訳だ。早いとこ決着付けんとな。

 どちらが死ぬにせよ気持ちの良い最期にせんとな。そうなることを祈るだけだ。













___________________________________


 日記1 相原 柳


 1999年4月2日。午前10時。これを第一の記録にしようと思う。


 慎さんも少し前から日記を付けているらしい。もうすぐ息子が生まれるのもあって今の気持ちを残しておきたいようだ。

 自分はと言えば、なんとなくと言えば良いのかな。明白とした理由は存在しない。


 本日は以下のような事があった。


 朝から晩まで通常職務をこなす。

 その後、慎さんと今後の事に関して話した。自分の方向性についてだ。

 このまま暗殺部隊で仕事を続けるのか、慎さんと同じ創無を倒す能力者として活動するか。

 正直に言ってしまえば迷っている。暗殺任務は楽だ、異能力を用いれば簡単に目標を殺せる。

 何より長年人殺しとして生き続けている。今更真っ当な職に就けるはずもないとも思う。


 でも慎さんに言われた。怪物退治に過去の経歴は関係ないと。

 自分の技量なら問題なく創無を倒せる。別に好きで人を殺している訳でもないんだから大丈夫と言ってくれた。

 

 憧れの先輩と同じ仕事に就けるのは少しばかり胸が躍るがそれでもまだ行くには早いと感じる。

 まだ15の自分に怪物相手にどこまで立ち回れるものか。それに現在請け負ってる仕事を終わらせないと。

 うん。もう少し、もう少しだけ続けてみよう。明日そのことを慎さんに知らせないと。

 

 とりあえず決まった、今回はここまで。













___________________________________


 現在時刻2017年6月14日午後13時、データの受信はありません………データの受信を確認。


 2027年7月8日午前9時、ディノープ第四支部から音声メッセージを一つ確認。内容は次の通りです。












 『だれか、だれかたすけて……!!』



 















次回は(今年の!)2月中になりますが、話数にカウントしないちょっとした小話、と言った感じになります。

これからも時折挟む事になるかと思います。本編で回収しにくい物と、ある登場人物の補完を持ってくる形になります。

では次回まで!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ