八十八話「消失」
5か月近くになりますかね、更新するの。ご無沙汰してます。
まぁ色々ありましたが、失踪せずに更新出来たので前向きに次回更新まで努力していきたいと思います。
ということで八十八話、どうぞ。
ここはかつて人が住んでいた惑星、青い海と緑豊かな自然に囲まれていた。だがその痕跡は見ることは出来ない。当然だ。
渇き切った星の末路は破滅だ。黒き侵略者に犯され蹂躙されたのだ、そこに生きる命の行方など想像に難くない。
人が暮らしていた住処は緑に覆われ、形を崩しその人工的な過去の営みは見る影もない。
荒廃した大地、枯れ果てた海底、命芽吹いていたとは思えない星へと豹変していた。
空は赤く染まり、宇宙に佇む月は中心を抉られ、半壊した太陽はその熱量を以て辺り一帯を焼き尽くす。
太陽系は崩壊していた。制御が失われた星々は緩やかに崩壊を待つのみ。
そこに救いはない。人は、地球に存在していた生命体は、文明は既に殺されたのだから。
侵略者から人々を守ろうと奮闘した少年少女たちは結局守れきれず、大切な人を殺され復讐を誓うも最後には自分自身まで殺された。
なんとも―――――――――面白い遊びであった。実に楽しかった。
家族を盾に己だけ逃げようとした滑稽さに
死ぬ間際まで虚空に祈り生き残りたいと願う愚かさに
みんなを守ると虚言を垂れ、何も出来なかった無様さに
笑みがこぼれた。最高だ。本当にありがとう人間よ。君たちのおかげで私たちの暇は潰された。
刀を持った男が最後まで抵抗していたが、目の前で自分の女を殺されてからの絶望したあの顔は忘れられない。
そして、戦う精神を失ったそいつをその日の食事とした。心臓しか食べていないが美味であったのは変わらない。
最後の食事としては十分であろう。
「……もう用はないな」
“それ”が惑星に背を向けた瞬間に事は起こった。
遥か彼方、太陽系より外にあるどこかの領域。通常なら肉眼では観測できない時間遅れの星の輝きが点在する距離。
その筈だ。なのに、なのにその“目”は肉眼でハッキリと見える物であった。
あんな物はこの世に存在してはいけない。そう思えるほどの巨体なその“目”はその異様な瞳で生命が息絶えた惑星を見下ろす。
銀河一つの大きさを優に超え、真っ白な結膜に囲まれ黒の瞳孔の人と変わらない構造で出来た生物かすら分からないそれは、ただただ見下ろす行為を取り続ける。
目を放ったその存在は幾ばくかの余韻に浸ったと思えば、途端に興味を失くしこの世界を後にした。気付けぬ食べ残しを置いて。
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いつも静かなこの街だが自警団本部に能力者が集まっている時は騒がしかった。
だが特別煩いわけではなく、寧ろ程よい騒ぎ良さと言った感じだ。こんな騒ぎなら特に気には留めない。
今この街を支配しているのは爆音と人々の悲鳴だ。多数の死傷者を出して町中を赤く染めている。
原因は分からない。どこの誰の仕業なのか、化け物の仕業か。それともどこの馬の骨とも知れぬ第三者の悪意による犯行か。
どちらにせよ最悪な事態を用意してくれた。
爆発による二次被害で火災が発生、家屋が崩壊し下敷きになっている住人達も確認されている。
それに加えての創無の出現。複数の爆破箇所の周辺に現れている。これが何を意味しているのかも今は分からない。
だがその理由を探すのは後回しだ。助けを呼ぶ声が聞こえてくる、救助しなければならない。これは“敵と戦うより”優先すべき事なのだから。
こちらへ向かってくる創無の群れと戦いつつも決定的な一撃を与える事なく翻弄し続け、隙を見ては周辺の人たちを救出していく。
「さぁ早く、ここは危ない!」
「ま、まだ子どもが居るの……!」
その女性が指さした方向には瓦礫と化した一軒家だった。
子どもらしき姿はどこにも見えない。どこかに下敷きになっている可能性が高い。
「その子は私が助けます。化け物たちが居ないところへ避難してください、化け物が私に注意を引いているうちに!」
女性は混乱しながらもなんとかこちらの要求を理解しこの場から遠ざかる。
時間がない、ここはあの怪物になって殲滅するしかない。制御できる自信は半分と言ったところだが――――――
「おいヴィオ!そっちは……まだ片付いてないな!」
ライのクロスボウから放たれる矢が創無へと命中し、一瞬の動きを怯ませる。
「状況は?」
「子どもが一人瓦礫に埋もれてるかもしれない、だからここをお前に任せる……!」
ヴィオはその言葉と同時に走り出し、ライは特に返事をすることなく黙々と矢を装填し創無へと射ち続ける。
瓦礫を掻き分けて子ども一人を探す。焦る、彼はただひたすらに焦っている。
時間との勝負は人を駆らせるからか。
違う。
子どもの命を失いたくないと。
それも違う。
では何故?
いつか見た遠い未来、誰かが戦っていた。少年が戦っていた。子どもが戦っていた。そんな事実が自分の心を締め付ける。
あまり考えないようにしてきた。それが戦う上で支障になることを分かっているからだ。
それでも、いつかは受け止めなきゃいけない事も分かっているつもりだ。未来を見てしまったものの責任として。
自分がこのまま戦い続けて得た結果が子どもが化け物を、人を殺して続ける未来だなんて認めない。
―――――――ああ、クソ。認めよう。
刀を持った少年が化け物を倒した光景に人は滅んでいないと安堵したと。
銃を構えた少年が野蛮な大人たちを一切の迷いもなく殺していく様に悲しみを覚えたと。
子どもが戦う選択肢しか残されていない未来を作ってしまった自分たちに怒りを覚えたと。
普段通りに生活してきた。今までと同じ生き方をした。けど、戦えない子どもが助けを待っている。
もう見て見ぬ振りは出来ないのだろう。
心のどこかで平和という鎧を身に纏っていた。理想と言う武器を持って、現実と言う敵を倒そうと。
だが、それはただの幻だ。現実逃避に他ならない。現実と言うもう一人の自分を殺してどうする。私は進まなければならない。
揺らぐことのない理想を掲げ、未来のない現実を受け入れ、後に続く者たちに平和という糸口を掴ませる為に。
だからその声を、その手を見逃す筈がない。僅かな望みだろうが最善を尽くす。それが今の自分に出来るただ一つの―――――――――
「大丈夫か……!?」
少年の手を握る。震えるその身体を落ち着かせて、彼を塞ぐ瓦礫をその未知の力で消滅させていく。
困惑する少年を腕に抱き、迫り来る脅威を撥ね退けて炎の街から脱出する。
「お母さん!!!」
その腕から降ろされた少年は母親の腕に抱かれる。二人とも心の底から安堵したような笑みでお互いを確かめ合っている。
(親子は守れた。他の住民も……!)
崩壊する街へと振り返っては走り出す。これ以上の犠牲を生み出したくない、その想いを足に乗せて炎の街へと。
多少の無理は承知の上での行動だ。だから生存者全員を救い出す。
その男の想いは紛れもない本物だ。その想いを糧に運命すらも変えるかもしれない。だからこそ、誰よりも思い詰める。
一人の男の無茶で人が一人でも多く救われる。そんな事を考える彼は街へと一歩を踏み出す。
そう、覚悟を決めた。その意志と力を持った者はあらゆる困難を超えていくだろう。
だからこそ、だからこそ一歩を踏み出した男はその場所から、街から、世界から忽然と姿を消失した。
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黒き侵略者に喰われた星に未来はない。現在を消失したなら猶更だ。
この星の運命は徹底的な敗北。それ以外の運命がある筈がない。あって良い筈がない。
しかし、たった一度の、本当にまだ望みがあるのなら。
まだ汚れ切っていない片道切符は残っている。そう信じるしかない。
侵略者が見逃した食べ残しは確かに存在する。
ある研究施設、この施設には僅かだが最近まで“人が暮らしてる”痕跡が見受けられる。
数多ある機械の中で一つ、物音一つせず稼働しているそれはランプが赤く点滅している。
モニターにはたった一言が出力され、常に発信し続けている。
誰が何の目的で使用したのかは分からない。だがその一言は発信者の現状を察するに値するものだろう。
届くはずのないメッセージは寿命を終えるその時まで稼働し続ける。
そして、メッセージを送った何者かは淡い希望を胸に防ぐことの出来ない絶望に心を砕かれているだろう。
眼前に存在する理解が追い付かないそれを前に余裕などない。限界は既に超えている。
だが膝を突くことも自ら死ぬことも選ぶことは決してない。ただ、怯えるだけだ。
ただ怯え、隠れ、耐える。
待つ、待つのだ。誰かがこのメッセージを受け取ってくれることを。誰かが自分をどこかへ連れてってくれることを。
ああ、だから――――――――――――――
『たすけて』
予定では14章でしたが、現在の更新速度を考えると無理があるので9章程度にシナリオを詰めようと考えてます。
シナリオを削るというよりはある程度の幅を持たせての14章だったので、むしろテンポよくシナリオ進行できるものと考えてます。
シナリオは根本的に変わってませんが、更新してない期間もこういう話を入れたいとか考えてたので質が上がっていることを未来の自分に期待ですね!(白目)
次回は少なくとも今年中には更新する予定です。一応の執筆できる環境が出来たのもあるので、以前よりはマシになるかと。
今月は月末締め切りの小説大賞にまだ書いてないのに今から書くという苦行をするつもりですが、無理だと悟ったら今月更新します()
では、次回までまた!




