八十七話「雷命」・後編Ⅰ
生存報告と更新を兼ねて。次回は今週中に投稿します。
(ホワイト)
(現時点での被害情報はこれ以上更新されないので、ここで間違いないかと)
弘太が来たのは重い障害やトラウマを抱えた者が入居する施設『リブート』。彼女はここに入居している筈だ。
深理杏菜。近くの高校に通う女子高生、ご家族は……あの怪物に殺されている。目の前で起きたその恐怖は図りきれないものだろう。彼女が本当にあの後ここに戻って来ているかは定かではないが。
従業員に話を付けて彼女の部屋へ向かう。どうやらここで間違いない様だ。あの後まっすぐ帰宅してくれている事に安堵している。それが本物である事を確かめるべく彼女の個室へ。
「――――――――来ないでよ!」
明らかに何かに怯えている。ノックをして部屋へと入る、重く穢れているこの空間で少女は孤独に絶望から逃げていた。
「急にすまない。けど、私も用事があるからここへ来ている。少しの間で良い、話をさせてくれないか」
彼女は沈黙を選んだ。応えたくない。応える気力もない。それを言ってしまえば、あの記憶が再び襲い掛かる。どんなに抗っても付き纏う感覚。身体が今にも消えそうな悲鳴を上げては震えている。ずっと独りだ。
「君を襲ったあの怪物を倒すために、君を守る為に情報が必要だ。今すぐじゃなくても良い、落ち着いてよく考えてくれ。後で連絡「――――――――――――――何が出来るのよ」
「あんたに何が出来るのよ……! どうせ、どうせ何も出来ないじゃない!」
「それでもやらなければならない」
「なんでよ!?」
「仕事だからだ」
そんな言葉を聞きたくない。きっと誰も、誰も……彼女は耳を塞ぎながら布団の中へと潜って行く。消したくても消せない恐怖に囚われ続ける。
心臓の鼓動は早くなるばかりだ。人となんて会いたくないと。嘘をつく奴なんてもっての外。誰も信用できない。
「そんな奴なんかに守られたくない……出てって。出てってよ!!!」
(……無理だな。これ)
(今は引くべきかと)
(―――――――ああ、そうだな)
___________________________________
「身体が重いなぁ……」
「雨の中を走ったあなたのせいでしょ」
「そりゃあ、そうだけどさ……もっと手厚い看病とかさ」
生きている感覚。ヴィオはそんな事を実感しながら冷えた身体をベッドの中へと潜ませる。唐突にそれを考え出したのはあの夢のせいだろう。思えばあの夢から何かが変わった。具体的に何をと言われたら答えようもないがもっと単純な何かである事は間違いなかった。
少しずつ現実も変化している。人型の創無、それもクローズと名乗る音を発する創無。謎の石により怪物へと変貌。夢の中の少年……疑問が尽きない。
それにエラマに渡したあの本についても。次に何が起こるか予測が付かない。明らかな悪意を感じるが実態は未だ把握できず、面倒な事にならなければ良いけどな……
「ねぇあなた、食事はどうするの?」
「あー、仮眠したら食べるよ」
少し頭がふらつく。そして、ぼんやりとした景色が脳内に映し出される。何かに怯える少女とそこから連れ出そうとしている少年。
(嘘だろ……)
困った事態になった。ここで意識をまた失いかけている。それだけは――――――――――――
___________________________________
夕刻、深理杏菜は公園に居た。ブランコに乗り不貞腐れては足で軽く地面を叩く。
初対面の人に対してあの反応が悪いのは分かり切っている。でも許せなかった。守るだなんて、そんな事を軽々しく言われたくない。
誰もあの化物には敵わない。人間なんかにどうにも出来ない。得体の知れないあの身体で常識を、日常を、幸福を完全に否定したのがあの歯車の化物。
思い出すだけで恐怖と憎しみを溢れ出す、何度も何度も。
生きるのが辛い。誰かに心配されるのが苦しい。今の自分を曝け出すのが何より怖い。震える手をブランコの揺れと共に無理矢理打ち消してはゆらゆらと乗り続ける。
ふと空を見上げる。青い空に幾つもの雲が浮いている。毎日のように見るあの色が滲んで見える。
燃える、燃えている。悪意の火が真っ白な心を焼き尽くしていく。心の残骸は焦げた紙のように茶色く浮き出ている。一度焼かれた紙が元に戻る事はない。あの頃の真っ白で無垢な頃には決して。
「……はぁ」
心労が見えてきた。戻ろう、さっきの男の人はもう今日は来ない。少し落ち着いてきた。ちゃんとご飯も食べよう。
揺れが落ち着きブランコから立ち上がり帰る。明るい笑顔で面と向き合える勇気はない。ただ帰るだけだ、いつものように。やる事は変わらない、高ぶる気持ちを抑えて施設へ戻るだけだ。
「おい……ッ!!!応答しろ!」
無線機に何度も怒鳴って応答は待つが一向に返事が来ない。歯車の群れを槍で薙ぎ払いつつ、盾に備えた銃を乱射する。
この区域の創無の出現率が異常に高いことは重々承知していた。しかし、それを鑑みてもこの数は本当に異常だ。200の数を一度に相手をするには些か無理を通す必要がある。
「……変身」
ガブラッドに変身した雅哉は両手に構えたガトリング砲を撃ちながら、ミサイルを無差別に発射。無数の爆発を起こしながら創無たちの身体を蝕み崩壊させていく。連鎖的に起こる死体が生き残った創無の足場を封じ、ガトリングによる弾丸の群れが抉らせていく。この調子であるなら劣勢になることはない。だが……。
「……クソッ!!」
“地上”の敵だけなら時間を掛けての殲滅だったろう。しかし、その前提自体が覆される。
目の前の空間が割れる。空が割れていく。他の創無が羽を広げ気色悪い羽音と共に一帯を掌握していく。
十、二十―――――――推定50体。地上のゴミどもと合わせて戦う事になる。これでハッキリした。
“おかしい”、“この状況そのものがおかしい”。群れを成す事も組織で動く事もない創無が僅かな時間でこれだけの数を揃えた。仮に偶然にしても不自然が過ぎる。
行動パターンも統率が取れていない事から誰かが指示している可能性も低い。なら何故だ?
その疑問を打ち消すかのように創無は襲い掛かってくる。不規則な機動で空を駆る化物はこちらを喰らう事しか考えていない。だがガトリングとミサイルの攻撃はほぼ当たることなく無駄撃ちとなる。
「アタック……!」
奴等が以前よりも確かな強さを獲得しているのは現在の戦況で分かり切っている。学習している証拠であろう。しかし、“それだけはない”筈だ。
悍ましい化物の“鳴き声”と火薬の臭いが際立つ戦場で雅哉は疑問と怒りで現状突破を試みる。
半年近く投稿できなくて申し訳ないですが、もう少しこの状態が続きそうです。
流石に2か月くらいの頻度は心掛けたいですが、厳しいところがありそうです。
さて、本編の話を。
後編で終わらせるつもりでしたが、どう考えても1万字超えになるため既に完成している前半部分を後半のパートⅠとして投稿しました。
しばらく投稿出来ていませんでしたが、脳内は大体小説の事しか考えていないので話のネタは結構考えていたりします。
今回はここまで。次回は後編のパートⅡになります。流石にこの話はここで終わらせます。では次回まで!




