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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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八十七話「雷命」・前編

平成ギリッギリの投稿。

後編は今週中です。


 何かが砕ける音が聞こえる。


 それは物が壊れる音にしては不自然だ。どこか痛々しい何かが粉々に粉砕されている。そう、まるで肉を挽いてる機械のように。


 赤だ。赤い液体が辺り一帯を塗り替えている。液体にしては生臭く人なら拒否反応を示しても仕方ないもの。


 その“歯車の怪人”はまるで興味を失ったように途端に握っていた黒く滲んだ何かを捨てて、無懺へと帰ってしまった。








___________________________________




(仕事を終えた)


 その言葉の通り全てが終わっている。居合わせた十字軍は全員死亡し、施設は完膚なきまでに破壊され全滅と言える状態であった。


兵士の死体は原型こそ留めているものの武器を携えていた筈の手足はボロボロであり、武器を持ちことはおろか歩くことさえ不可能だ。






 ――――――――敵に同情は要らない、俺達はそういう相手と戦っている。見ている間に人が死ぬ、迷っている間に殺される。そうなる前に自分がやるべき決断はたった一つだ―――――――








___________________________________


 少女は虚ろな目で歩道を歩いている。まるで何かを失ったかのように希望と言える光を彼女からは感じられないほどの絶望を抱えている。


 そんな彼女を放っておけるはずがない弘太は声を掛けた。


「すいません、大丈夫ですか?」


「!? え? な、なに?」


「突然、失礼。 ただ貴女があまりにも生気のない有様でしたので、体調がどこか悪いのかと」


「いえ、大丈夫です。 一時的なものなので」


 そう言って彼女は歩き始めるが、元気のかけらもないその姿は病人か何かに間違えれても仕方ない。


(西幸様?)


(……少しの間だけだ)


 溜息を出すも病院をせめて行くように催促をするも、彼女はそれを振り切るように去ってしまった。


(まぁ……そうなるよな)


 ホワイトにこの街で起きた、ここ最近の事件データを洗い出させたが大きな動きは――――――――――あった。既に柳と賀霧も交戦。不利になるとすぐに逃走し、撃破困難な相手だ。ここまでは他の創無と同じようだがこいつは少し違う。


 こいつは連続殺人を起こしている。しかも17件と来た。通常ならここまでの被害が出る前に食い止めるが、今回はケースが“民家”の中ときた。


 被害者の数は48名、1人を除いて全員死亡。遺体は3人しか確認できておらず、その殆どは痕跡もないか身体の一部だけが取り残されている状態で発見される。警察が到着する頃にはもぬけの殻、現場から微かな次元エネルギーの反応を検知したとなれば、彼等の手では負えなくなり能力者へと仕事が引き継がれたという訳だ。


 事件は発生しているという事はあの彼女が関連している可能性は否定できない。事件の被害者でその唯一の生存者であるなら、あのような形相も納得出来るが……


(何故この場を出歩いてるか、ですか――――――――データの収集を終えました。 確かに彼女が被害者です。 本来なら施設に保護されているはずです)


 記憶処理も施されていない。事件が起きて間もなく精神が不安定である事が理由であろうが。データを整理しながら、彼女を追おうとするも……


「キャー!」


「!?」


『―――――――場所を特定しました』


 機械脳で処理した座標を元にすぐさま彼は駆け出す。反応は一つ、それも“民家”だ!


「ホワイト……!」


『反応は間取り図のリビングです』


 アモリを開き、加速した弘太は繋げたリビングに存在する妙な傷を持つ歯車のダバーソンに殴りかかった。


 ダバーソンは奇襲に動揺し殴り飛ばされるも態勢を立て直して身体のギアを回して防御を固め、そのままこちらへ突撃を敢行してくる。


 ナイフでギリギリまで待ちかまえ、寸前でギアにナイフを挟み巻き込まれる形で無理矢理に軌道を変えて見事に躱してみせた。


「アッ……アッ……」


「しっかりしろ!」


 女性を庇うように自身が盾となり、視線を逸らすことなくダバーソンと対峙。対峙したままお互いは横へと少しずつ移動、移動した先の廊下へと女性を逃がす手段を確保。手を振り女性に後ろへ動くように誘導、一呼吸を置いたと同時に彼は仕掛けた。エネルギーを集中させて剣のような手足でダバーソンへと切り掛かっていく。


 歯車と光の刃が火花を散らす。おおよそ普通の光景ではない異物同士の戦闘が行われていた。瞳の奥のセンサーが化物の動きを正確に捉えて次なる一手を計算、弘太は徐々に次元エネルギーの段階を上げ次第には紫へと到達、熾烈を極めていく。









「クッ……!!!」


 ダバーソンの攻撃は柳に隙を与えることなく続く。全身の回る歯車は短刀の描く軌道を歪めていき、散らばった威力は戦意と冷静さを剥がしていく。


 (この尋常ではない力、いよいよこの街も危うくなってきたか……!?)


 足にエネルギーを込めて、軽い跳躍でダバーソンの真上まで飛んで重力と共に短刀をダバーソンへと落下した。


「……!」


 回転させていた歯車を停止させた後に身を固めたダバーソンの防御は完璧であり、柳の体重を載せた重い一撃をも防いでみせたのだ。


「チッ!」


 離れようとするも宙に浮いていた歯車はそれを許すことなく、柳の片足へと突撃しダバーソンと密着する形で拘束されてしまった。


「Kick! Release!」


 その場しのぎの必殺キックを解放、エネルギーの爆発的な勢いに歯車の拘束は解けてそのままダバーソンの腹部へと強力な蹴りを放つ。


「!?」


 腹部には修復がしばらく困難であろう傷ができ、ダバーソンはそれを受けてすぐさま撤退してしまう。


(これ以上被害は……弘太もまだ海外に居る。 ここは俺が!)


 苦戦を強いられるクローバー、悲劇を抱える少女。この二つが繋ぐ先とは……











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