八十五話「時我」
遅くなりましたが、年内に投稿出来て幸いです。
そして、ちょっとこの場で謝罪です。
八十三話「視会」にて、冒頭のヴェルズと記載されるべき名前がヴィオになってました。これは完全に私のミスです。すいません、言い訳しますと過去と現在を同時並行して扱うのが難しいです。
この発見により、確認が足りていないと判断したので近いうちに投稿済みの話を全て読み直します。
報告は以上です。
では、お楽しみください!
「さて、仕事は終わった。 帰らせてもらう」
「……サルソン。 お前の能力は……」
「ご覧の通り、“破壊”だよ。 君の中の次元エネルギーを文字通り破壊した。 文句はあるまい?」
―――――――否定はしない。能力者にとって、強くなるということは死に近づく事と同じだ。許容以上の次元エネルギーは能力者自体を蝕む。
レオ・サルソンの能力自体は特殊ではない。触れた物を原子崩壊させるという代物だが、それを応用したに過ぎない。
どうやら次元エネルギーにも、原子崩壊させる能力は適応されるそうで詳しくは定かではないが弘太の次元エネルギーを限界まで壊してしまったらしい。
彼の能力のような発現は過去にも度々見受けられ、結論としては次元エネルギーから始まる異能力は物理的に扱うのではなく、概念的な扱いではないかという事になった。
例えば、見た目は氷の林檎だが中身は水で満たされている。これが普通なら、林檎の形をした氷だ。だが、異能力……と言うより次元エネルギーの本質を我々に当て嵌めた場合、その物に本来ある情報ではなく、異能力を使用した能力者の情報が反映される。
手に取ったのはただの氷の筈だ。しかし、感触は確かに林檎の皮そのものだ。噛めば、果汁が口の中を支配する。と言った具合に、詳細不明の状態に陥る場合がある。レオ・サルソンの破壊も次元エネルギーを一つの物体として認識し、明確に原子崩壊した事実を残した。
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「ふーん、そうなんだ」
ライは退屈そうに話を見事に受け流した。お前の為の説明を10分も要したんだぞ。エラマは少しキレ気味になるも、心を落ち着かせて結論を述べた。
「結局、対話は無理そうって結論なんでしょ。 なら今更何を迷う訳が」
「“今”は無理って話なだけだ」
「……あっそ、検討中ってだけか」
―――――――ボスはいつもの如く常々思う。うちに派遣される能力者はどうして……こう問題児ばかりなんだ。
一見まともに見えても中身がどうにも出来の良いような悪いような奴らの集まりだ。化物との壮絶な戦い故に多少の事は分かるが……ヴィオ、パトリック、ライに関してはそれ以前の問題だ。まず勤務態度がなっとらん。こちらは仕事を代わりに頼む立場であるが、彼等は勤務中も気の抜きようが底知れない。そろそろ私が責任者である事を自由に戦闘中に損害気にしないのは本当に止めていただきたい……
「でも、いずれ……実行するさ」
「その時、お前が率先して犠牲になるんだろ? ヴィオ」
「お前と……パトリックも一緒にだよ。 仲間外れにはしないつもりだが」
「しろ」
「しねえよ」
ついでのようにパトリックもこの計画に組み込まれてしまった。まぁ、何というか。いつも通りだ。
――――――結局、どの状況においても彼等は変わらないなぁ。さて、となるとパトリックも休暇が終われば、せっかくだし引きずり込むかね……
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「弘太くーん!」
零華に首を絞められる。いや、身体に抱き着かれる……久々の感触とさえ思える。
「西幸様。 お帰りなさい、お怪我はないようで。 ファイさんはどうしたのです?」
「別の仕事。 一時的に戻ってる」
どちらにしろナンバーⅤである事には変わりない。特別な仕事が入るのはいつもの事。シギンスシリーズを試験運用している僕たちと同じだ。
「……零華、今は報告をしたいんだ……それと後で皆に言いたいことがあるんだ」
「うん、うん!」
2人を後にして支部長室へ向かうが、道中で彼女等にも出会う訳であり……。
「あ、西幸先輩!」
「………」
「西幸、どこ行ってたんだ?」
「海外だよ……零華達と合流して。 後で話があるから」
穂乃﨑、風烈、津田を後にして目の前の支部長室へと入室する。そこには見たくなくても見なければならない顔と賀霧が居た。
「………」
「………」
「やぁ、沈黙タイムは私のいない時にやってくれ。 さて、言う事は?」
「――――――報告します。 渡したデータの通り、試作型ディレイドライバーの防衛は失敗しました。 加えて、変身可能であり変身時の性能は我々能力者の運用時よりも遥かに高い性能を引き出せると判明しました」
「ああ、破損しきっていなかった防犯カメラの映像からもそれは窺える。 そして、その前に君たちチーム・クローバーは一度、彼等を完全に倒した。 この事実で間違いないね?」
「はい。 ですが、このパターンは相原 柳が目の当たりにしたシンと同様の原因と思われます」
やはり、“進化”なのか……彼等を今までの記録で閲覧しても、確かに進化による成長は窺えた。だが、今回のような事例に関しては異常と言えるだろう。何せ“死を克服”したと言って差し支えない進化を創無は獲得したのだから。
不味いどころの問題ではない。人類、我々が現在、唯一彼等を倒せる手段は死だ。それ以外の方法を生憎持ち合わせていない。しかし、彼等は生物の絶対的循環である死すら消してしまったという事になる。つまるところ……詰んだという言葉が似合うだろう。
「……困ったなぁ。 ディレイブらシギンスを運用し、死へ導いても無意味か……奴等は根本的なものを完全に覆してきたな」
「はい、それに復活後の彼等は今までと比較にならないくらいの強さでした……手加減をされていたか、新たに獲得したかは不明ですが」
「……まぁ、良いんだけどね」
「――――――え?」
「この件についてはこれにて終了。 続いて、ロズトルの街での結果を」
「―――――――――――はい」
それからは自身の体験した事、ヴェルズやギーシュたちが倒したタイムキーパーの事を話した。
「未だ解決の糸口は見つからずか。 西幸君、この仕事の感想は何かあるかね?」
「……妙な感覚でした。 まるで本当の敵と戦っていないような。 とにかく謎が多過ぎます」
「うーん。 この成果だと、正直こちらでもお手上げだよ」
「そうですか……」
「報告はもう良いよ。 後、相原は普通に仕事の見回り。 1時間したら、君の番だからね。 やることやっといてよ」
振り向きざまに賀霧と殺意の視線が向き合う。まだ互いを認めていない。ただチームとしては戦う、仕事の為に。
去ろうとするが、珍しいことに賀霧が呼び止める。
「―――――――1つ。 言えるとしたら」
「………」
「俺は仕事の為に戦っている。 お前もそうなら……邪魔はしない」
「……そうか」
弘太は振り返ることなく支部長室を立ち去った。
「でねぇ」
クラスメイトと楽しそうにお喋りをしている女子高生が居た。とてもありふれた光景だ。
「今度、そのお店行ってみようよ! そのスイーツ食べてみたい!」
「私も食べたいから、一緒に行くよ~」
「ははっ! でも、最近太ってきたような気がするんだよねぇ」
「えー? そんなことないよー、逆に羨ましいくらいだよ」
「いやいや、うちのお母さんも同じ言うけど油断しちゃダメだって」
「……少しぐらいなら平気だって!」
女子高生の表情が一瞬歪んだように見えたが、笑顔で彼女は答えた。
「うーん、まぁ少しくらいならいっか! あっ、お父さんから電話掛かってる。 またお遣いかなぁ、ちょっと待ってて」
「う、うん……」
少し離れた直後に彼女の顔は暗くなっていた。強く拳を握り、全てを恨んだ。
(なんで……なんで私だけなのよ! みんな、みんなだけ!! なんで……なんで助けてくれないの!!!!!)
彼女の悲痛な叫びは誰にも届くことはない。だが、これが仮に未来へと踏み出す一歩だとしたら。きっと彼女は……おっと、ここから先はこれから起きる出来事だ。
先を知りたければ、自らその手を伸ばすしかない。彼も彼女もそれをやっているのだから。
このペースで投稿すると、完結するのに30年は軽くかかりそうですね……まぁ1章は少なくとも後2~3年で終わります。
そして、これからも相変わらず忙しくなりそうですがそこは頑張って時間を空けます。
どうでも良いですが、実際の小説コンテストに参加しようと考えてます。内容はこの作品を読んでいる方なら、察してください。どうせ、話は暗いし変則ばかりの作品になりますよ!(笑)
では、次回までまた!




