七十八話「舞闘」
2週間前後で毎度遅いですが、何とか書き終わりました。
今回は前回出たあの少年の戦闘やどんなキャラかを示した回です。
「――――――――彼は一体何ですか」
戦場に響くは銃声。雑音も聞こえぬ環境の中で少年は大型銃で全ての敵を撃ち抜き、軽快なステップで周囲の創無の攻撃を躱していく。
「……? どうしたの? 君たちってそんなもんだっけ……そっか、特別君たちが弱いだけか。 仕方ないか、なら良いよね?」
と踊りながら、巧みに掻い潜った彼はすぐに視界に入った猿型の創無にその銃口を向ける。
「バーン」
一言を告げた後、黒き次元エネルギーを帯びたレーザー光線は化け物の頭部を貫通する。周りは少年を殺そうとするも、その本人はブレイクダンスを始めてしまった。
「――――――――――――!?」
「……何だアレ」
『ブレイクダンスです。 ストリートダンスの一種ですね』
「分かってる! だから何であんな事を……!?」
「あれって……」
『――――――――――――照合完了。 あのタイプに一致する人物が一人判明。 レオ・サルソン、18歳の異常変化を持つ能力者です』
「ああ……やっぱり、彼ね」
ファイの前に担当していた地区の隣の地区は国中の能力者にその存在を知らしめていたらしい。誰も姿こそ確認しようとは思わないが、嫌でも噂は支部に響き渡る。
任務自体は引き受けるもの、上層部の意向を無視、上司に命令されると発砲し支部内のガラスを割る始末。
さらに任務における態度も素直に喜べるものではなく、人質がいるにも関わらず、彼は躊躇なく突入し危うく人質が死亡するところであったり。場合によっては人質ごと相手を撃ち殺すこともあり、非常にディノープ内でも要注意な人物だ。
それでもアルゴスやヴェルズのように世界各国の知れ渡らないのは、任務を引き受け、行動範囲自体が狭いことも原因にあるが。
「――――――――――誰も僕を止められないよ」
ダンスによる華麗な足捌きで自分への接近攻撃を封じ、その最中に大型銃による乱射が行われ創無たちの身体にいくつもの穴が出来ていく。
「ハーイッ!!!」
即座にジャンプしたかと思えば、敵の真上に来たところで三度撃たれるレーザー光線の数々は彼等を焼き、完全なる独壇場と化していた。
「ほら、そこのあんたらも。 様子を見ているだけじゃ、つまらないだろ?」
「……どうします?」
「まぁ、乗ろうか。 君もその気だろう、ケンプファー?」
「………」
メルダー、ヘルシャーは戦場の中心地へと赴き。ケンプファーも同様にレオへと接近する。
「……ッ」
シンも触発され、さらに脱皮を行い殻の分身を作り群れで攻めてくる。
「良いじゃん、良いじゃん! もっと、楽しもう……! そこの能力者達も。 何ならバトルロイヤルでも良いぜ?」
「……流石に調子に乗り過ぎじゃないか?」
「知らないよ、僕は自分の思うままにやるから。 戦わないなら、そこで見てなよ」
(……西幸様)
「……分かってる」
ディレイブへの変身を終えた直後であり、身体に相応の疲労は溜まっているがそれも多少の回復を果たし彼は静かに鞘から刀を引き抜く。
「へぇ、戦うなら早く言ってよ。 チームでも組むかい?」
「―――――――互いに手を出すな」
「……はい、はい。 じゃあ……」
彼は視線を向ける素振りを見せることもなく、メルダーへと正確な射撃をした。メルダーは勿論それを防いだが。
「射撃は……良い線行ってるね。 確かに楽しめそうだ」
「ファイ、一緒に大丈夫か?」
「えぇ、行けるわよ」
ガントレットの爪を展開し次元エネルギーを溜めた彼女の準備は万端だった。
それにしても形勢は……正直に言って逆転出来たとは言えない。うやむやにはなっているが、未だにブラッター、パラドネス、ヴェリパーに変身しているメルダーたちに対しては戦力差が開き過ぎている。
「いやぁ、あの人面倒くさいね」
「お前が呼んだんだろう……」
確かに僕だが、まさかレオ・サルソンが付近にいるとは思わなかった。正直に言って能力者の中で異常変化を持つ者は決して少なくない。と言うか、異常変化を持つ者はどこかに狂気を持っていることが前提であるが故に、狂化能力を得て比較的早い強化を獲得でき、より険しい地区に配属されるので遭遇してしまうのは必然と言うか……ま、とにかく面白そうなら良いか!
「ハイ……スリー! ツー! ワン!」
「早速か……!!!」
さてさて、私の考える策がまともで綿密に練られていると思うか? こんな短時間にそんな事出来るわけないだろ……!!! いい加減にしろ!
彼は謎の自問自答を繰り返しながら、対物スナイパーライフルを遠くからシリスを狙う。シリスはそれを確認、鎖を召喚しその鎖の壁を自身の後ろへと作る。
「無線機壊れないと良いね~」
「……ああ」
シリスは壁へと跳躍し蹴るように壁に一瞬だが接触する。そして、ヴェルズはその壁に向かってその銃弾を発射する。
「……!!!」
壁は銃弾により、大きく凹みまるでトランポリンのように彼を、シリスを派手に飛ばしていった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」
「うっわぁ、凄い遠くに行ってるね~……あっ」
シリスは受け身を取る間もないままに、弘太たちの戦う魔の戦場へと突入させられた。
(やっば、これ後で殺されるパターンじゃん。 いやぁ、本気で来られた時のあのエストックと鎖はきついきつい……それじゃ)
気持ちを切り替えたヴェルズはさらなる準備を始める。勿論、頭の悪い作戦だ。小難しい事は事前にやるものであって、その場凌ぎならバカの一つ覚えでゴリラ並みの馬鹿力で突破した方が良いと。彼の爆弾がそれを証明したらしい。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ……!!!!!!」
謎の奇声を上げ、彼はジープから一つの“剣”を取り出した。
「弘太ァッ!!!」
「その声……シリス……!」
迫り来るシリスを躱し、彼は見事に地面へと激突した。
「あっ……あっ……ヴェル……ズ……今度は……殺す……」
「随分と……派手ね」
「……貴方も参加を?」
銃口から漏れ出ている“緑”の次元エネルギーへと段階が上がっている大型銃でそこらの雑魚に射的感覚でレオは撃ち続けていた。ヘッドフォンを完全に外し、退屈のようであった。
「―――――――ああ。 私も参加する、文句はあるのか?」
「まさか、みんな本気で戦う気なんだね。 あの怪人たちも手を出してこないし」
「……舐められてるな」
力の差は分かっている。奴らの方が強力であることを。しかし、どんな形であれ戦力はこちらも今増強した。後は上手く戦うだけだ……。
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「うはっ、くら」
ヴィオは隣町にある森の中を歩いていた。受けた仕事は必ず遂行するさ、噂だけの幽霊の確認でもな。
「……よし、いない。 終了!」
手抜きにも程があるレベルの仕事を終わらせようとする男を前にその幽霊は仕事を終わらせてくれようとしなかった。
(―――――――んー、残業だ)
ほんの微かであるが、次元エネルギーの反応を感じる。本当に微量であるが。これは……元からこの量と言うよりは隠しきれていない分と考えた方が良さそうだ。
(……“加速”を使うか?)
そんな事を考える中、風の如く幽霊は動き出した。
次回で一度この戦闘を終わらせます。そして、ヴェルズについて判明することも!
気付いたら、沢山のキャラを出してた。弘太だけじゃなくて、その登場人物たちの成長も描き、共に強く強くなっていく……1章はそんな感じです。まぁ、その道中が苛酷ですが。
場合によっては弘太が出ない回もしばしば出ますね、この作品は弘太だけが主人公ではありませんので。
八十話に差し掛かったら、ディレイブなどについて言及を始めます。今後も黒絶草を読んでいただけると嬉しいです。




