七十四話「筆敵」
睡魔に負けていましたが、頑張って書きました。
深夜テンションで書くの何とかしないといけませんね……
「では、これよりブリーフィングを始めるよ。 薬品工業のエリアに創無が約一万の数、飛ばした偵察の映像によると、薬品と言う時点でまぁ分かるとおり。 シンによるものだと判明したね」
ヴェルズの言う通り、現在もシンは工場内の薬物を姿の限界を超えて摂取している。それの影響か、周囲の創無にも通常では見られない異常が見られていた。
ドロドロに溶け、ヘドロのようになるも元の原型を保持したまま辺りを徘徊している。そして、シンと類似した個体も何体か確認でき、完全なる防衛体制を整えていた。
「で、それを踏まえた上で何だけど、正面突破とか言う最後の手段以外で良い案ない?」
「この数でこの5人となると、下手に高度な作戦は控えるべきかと思うが?」
「でも正攻法だと面白くないじゃん? つまり、そういうことだよ」
ハァ……と溜息をつきながらも、シリスは話を続けた。
「普通に爆弾ドーンじゃダメなの? ねぇ、ねぇ?」
「僕もその意見に賛成したいけどなぁ、一万を完全には削り切れないし、本当にあの子たちに効くか不明だからなぁ」
「それぞれ、別方向から5人で別々に攻めるというのは?」
「そういうのを正面突破って言うんじゃないかなぁ?」
「………」
(―――――――――――中々、妙案が出てきませんね。 西幸様はどうお考えで?)
(……あぁ、個人的には僕にはステルスとアモリがある。 それを使って、中心へと飛び込んでかく乱するのはどうかと考えたんだが……どうだ?)
(はい、悪くはないですが当然のリスクもあります。 後はマシンディノープの整備も完了し、ディレイブへの変身も可能になっています)
弘太は4人の前述の意見を述べた。シリスとファイからは否定的ではあったが、ヴェルズは爆弾を連れてってくれと願いを吹っ掛けられ、アルゴスに至っては「僕も行きたい! 創無さんを中から食い殺すんでしょ!!!」などと不気味極まりない発言が飛び交ってきた。ふむ、概ね想定内の結果だ。
他の案もありはしたが、大きく暴走する危険が約二名居たので、それを考慮して弘太の作戦で決行することになった。そうなれば、今まで以上に大忙しだ。徹底した敵の事前調査を改め、装備の不調確認、周辺の不審情報などの準備を済ませ、彼らは戦場へと赴いた。
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「で、なんだ? 休みだってのを呼び出して」
と、ヴィオはまたコーヒーを飲んでいた。砂糖も入れず、苦い表情を見せる。
「まぁ、仕事以外に呼ぶ出す理由はないだろう? ということで依頼だ、今度は隣町だ」
……ああ、あの噂か。
「もしかして、あの霊についてか?」
「その通りだ、普通の噂にしても目撃情報も被害も多い。 被害者の証言は共通して黒い革のコートを着た男が目の前を通り過ぎる……とのことだ。 直接的な被害はないが、周辺の木々や草花が抉れるように消滅している、創無の疑惑を視野に入れて調査してほしい」
「あっちの能力者は?」
「二日酔い」
「マジか」
「冗談だ、最近出没してるあの道化師があの辺にも出てるらしくてな」
「俺は優先度の低い方を押し付けられたってことか」
あくまで噂レベルの出来事だ。その霊について、もっと言えば複数人で遭遇した時にそれぞれその男について正しく同じモノを認識できているか、怪しいとのことだ。確かに環境被害が出ているのは紛れもない事実ではあるが、霊自体がしっかりとこちら側で観測出来ていないので。だから暇な俺に回って来たということか。
「パトリックは?」
「今頃、自分の初めての子どもに夢中なんじゃないか?」
「……それこそライは暇だろう」
「休暇届が出てる」
「えぇ……」
「実は昨日、ここに訪れててな。 何でも、新しい能力を手に入れたらしい。 その能力で調べたいことがあるらしく、休暇届を受理した。 言い訳は聞かん、早く行って問題がないなら帰ってくれば良い。 私はどちらでも良いが、本当に創無だったらヴィオをそっちに異動するかな」
「そんなに俺が嫌なのか……!?」
「うん」
ハァ……と溜息をついて、冗談を真に受けてしまったヴィオは背中を向けて、もう一つの用事を済ませることにした。
「―――――――やぁ、久しいね」
「久しいって言っても、1カ月も経ってないだろ。 それでエラマ、進捗はどうなってる?」
「正直に言って、行き詰ってるよ。 やっぱり、君の元にあったほうが進展があるんじゃない? 何かあったら、すぐに解明に取り掛かるしさ」
「……まぁ、そうするか。 分かった、俺の方でも独自に調べてはみる。 結果は期待しないでくれ」
「分かってるよ、本来は僕の仕事なんだし」
そして、地下室から物音がした。それもかなりのものだ。
「パド……またか」
「お前の助手、結構ドジ踏んでるような。 よく助手にしたよな」
「まぁ、他の奴に比べたら優秀でマシだからかなぁ……様子見てみる」
とエラマはそのまま地下室へと降りて行った。さて、ここの書物でも漁りますか。彼は人がいなくなると、途端にやりたい放題にやる人間だ。
しかし、散々漁ったので自身が好む本はだいたいを読破してしまっていた。少し本棚の中を見つつ、飽きたのでテーブルに置かれた手記を手に取る。
(何か、本当に進展ないかなぁ)
その言葉が災いしたか、本当に進展してしまった。次の見開いたページに新たな文章が作られていた。
『君等は勝つことの出来ない戦いを続けている。 怪物と化しながらも、勝つ見込みは一切ない。 なら、どうする? 本当の怪物にでもなるか?』
「………」
少なくとも、この手記に後付けしている者が完全な味方ではないという事が分かった。そして、人間であるかどうかの可能性も浮上。加えて、能力者……人類も含めて、現状ではあらゆる手段を使っても奴らを殲滅できないという事だろうか。忠告されているぐらいの戦力差ではあろう。で、本物の怪物か……。
「パド、次からは気を付けてくれ……ヴィオ?」
「――――――ああ、エラマ。 やっぱり、君の言う通りだ。 触ったら新しい文章が出てきたんだ」
ふぅ……と、一息ついてヴィオはエラマからの質問を受けたが、手記はこのまま返してもらうことになった。
「ハァ……さて、仕事するか」
ヴィオ・バロック、西幸弘太の両名は知る由もなかった。手記の示すとおりに物事が動くとは、いざ知らず。その破滅への道を真っ直ぐに走っていることに……。
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「………」
少年は様々な物を食べていた。美味しく感じることもなく、不味く感じることもなく。
りんご、ピーナッツ、ムカデ、野鳥、コンクリートの破片……不快になる光景だが、それらよりも危険の証明である物を食べていた。
「………」
ポケットから取り出した、たくさんの“人の指”を菓子をつまむ感覚で食べていた。
「………」
彼は薬品工場の地下室で待っていた。敵を、実験相手を。自身の力を次の段階へと進めるために……。




