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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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七十三話「災悩」

 負けた、敗北した。揺るぎないその事実に耐えながらも、弘太たちは立ち上がろうとする。


「ハハッ、こんなものか」


 変身を解除し、元の道化師のような怪人へと戻ったメルダーは不敵な笑みを浮かべながら腹部を撃ち抜かれた弘太を見下す。


「――――――ガッ。 ハァ……ハァ……」


 血液とオイルが漏れ、人工臓器は撃たれた傷口から出ており。口に付着した血を拭いて拳を構えるも身体の動揺は消えず、震えたまま彼は戦おうとした。


「ふぅん、それでも戦うのかい? 自分たちがどれほど弱いのかを自覚した上で……いや、自覚してるからまだ立ち上がるのか――――――まだ遊べそうだね」


 両手を上げ、空にナイフを展開したメルダーは嘲笑う事無く、その最後の一撃を与えようとしていた、が。


「――――――!」


 真上から襲い掛かる“鎖”を避け、それを出現させた者を探す。












「やはり、来ますよね。 これだけ騒げば、流石にですか」


 しかし、その顔には笑みを浮かべていた。ヘルシャーを一瞥し、ファイの前へと出たシリスはその右手にエストックを構え、一閃の突きを放つ。


「っと……飽きましたし、そろそろ帰らさせていただきますね」


「………」


 ヘルシャーはそれ以上に何をすることもなく帰ってしまった。


「……ファイ! 怪我は?」


「一応、大丈夫……けど、弘太とアルゴスは!?」


「弘太は鎖で対応してるから、今すぐ私が向かう。 一人で大丈夫か?」


 安全の確認を取ったシリスはすぐさま弘太の元へ向かった。











「もう! 痛いじゃないかっ! それにさっきから無駄口も喋らないじゃん、そういうの良くないよ!」


「………」


 一向にヴェリパーから変身を解かずに、ケンプファーはアルゴスを警戒した。少なくとも、あそこまで元気に居られるほどの気力と体力を奪ったはずだった。だが、それとは裏腹にアルゴスは満面の笑みで戦おうとしているではないか。


「別に良いんだけどさ、君が喋らなくても。 でも僕に殺されてよね。 仕事だから。 早く終わらせないと」


 しかし、身体が深い傷を負っている事は事実であった。彼は痛みを無視して、ケンプファーと戦おうとするも……。


「――――――!? 危ないよ!!!」


「……おい、アルゴス。 どいて」


「!!! ヴェルズくん……!!!!!」


 アルゴスを無視して、ヴェルズはスナイパーライフルで遠くから的確にケンプファーを狙っていた。ケンプファーは照準を定める。


「………」


 動こうとするが、すぐさまに弾丸がこちらへ向かい行動を防いでくる。


「………」


 余計な戦闘へと持ち込まれる事を懸念したケンプファーの足元の空間を割り、そこへ落ちゆくように彼はその場から逃げてしまった。


「……ハァ、命拾いしたな」


「なにするんだよー! アイツ、殺せたじゃん!!」


「その怪我だとどうなるか分からないだろ……」


「今日は大人しいね」


「眠いんだよ。 寝起きでこれだぞ、まぁここへ来るときにストレス発散したけどね」


 あ、いつものヴェルズだ。とアルゴスは思いながら、ファイと弘太を心配した二人は身体を休めつつも、急ぎ歩いて行った。












「ぐっ……うっ」


「ホラホラ、そんなに傷付いてるんだから動かない。 多少の援護があっても、どうせここで死ぬんだから」


 シリスの鎖は宙に浮くナイフによって妨害されている。身体の損傷は甚大。ホワイトが最大の補助を働かせてるが、それも時間の問題だ。人工臓器も壊れ正常に機能していない。加えて、機械脳のエラーも同時に発生し、まともに戦えない状態に陥っていた。


 首を掴まれ、力の入らない身体は宙に釣らされる。


「ガハッ――――――――あっ……あっ……」


「これで……終わりだ」


 突き立てたナイフが弘太の頭部をまさに貫こうとしたその時だ。










「アッ……アッ……アッ――――――――――――――」


「―――――――!?」


 一瞬の戸惑いにより蹴りを受け、後退するメルダーは弘太の瞳を見据える。


「………」


 その“紫”に染まった瞳はどこか悲しく、行き場のない怒りと憎しみを秘めていた。どこまでも、どこまでも深く醜く汚れきった心は誰にも理解出来ない。深淵に朽ちていた化物は目を覚まし、視界に入るあらゆるものを喰らい尽くす。


「僕の……せいだ」


『――――――西幸様、気を確かに。 今はメルダーから身を守る事を考えてください』


 その言葉を無視するかのように、弘太は颯爽とメルダーに向かって行き、膝蹴りを始めとしいくつもの打撃で攻撃し続ける。


(……厄介だな)


 アモリから大鎌を取り出し、目の前の敵を完膚なきまでに潰そうとする。


 メルダーは華麗に避けようとするが、フェイントを掛けられ大鎌を地面へと突き刺した弘太は回るように上へと跳躍。勢いの付いたキックはメルダーへと直撃する。


「――――――!!!」


 軽傷で済んでいるものの、先ほどまでの西幸弘太とは思えない行動だ。まるで今まで何もかも隠していたように、獣に似たその紫の瞳は憎悪を以て、さらにメルダーへと襲い掛かろうとする。


「……これは退散かな」


 メルダーも同様に無懺の中へと消え去ってしまった。


「………」


 紫に染まった瞳は徐々にその色を失い、次第に以前のような通常の色に戻っていた。


「弘太……!」


 シリスの声に反応し弘太は振り返り、深い安堵に包まれた。


『西幸様、今後は今のような無茶をお止めください。 その身体で失敗する可能性が9割を占めていました。 本当に控えてください』


「……ああ、すまない」


「弘太……なんとかなったようですね」


 バイタルに致命的な異常は見られず、感情の高ぶりによる一時的な興奮によって戦闘能力が向上。それにより、この危機を脱したと結論した。


「……ファイとアルゴスは?」


「ファイは私が助けました。 アルゴスは……ヴェルズが今頃」


 その言葉を聞き、安堵するも束の間。膨大な次元エネルギーを感知した。


『―――――――数は一万。 ここから離れた薬品工業地帯にて大量発生しています』


「……その仕事、俺が引き受けた」


「それはないんじゃないか?」


「そうだよ~! そういうのは良くないよー!


 アルゴスの大声に頭をツンとなりながらも、ファイとアルゴスの合流で5人は落ち着いた。


「ねぇ、弘太。 焦る気持ちも分かるけど、流石にね?」


「僕たちがどういう集まりか忘れちゃいないかい?」


「忘れたりはしないさ……“ガーディアンズ・ファイブ”であることは忘れない……すまない、本当に焦っていたみたいだ」


 そうだ。この5人は現状での最強と言える能力者の集まりである。アルゴス、シリス、ヴェルズ、弘太、ファイの5人でのチームの任務は過去にも何度かこなしてきた。それがどんなに短い間であってもだ。


「そうよ、少しは私たちを頼りなさい……!」


 と軽快な平手が背中に叩き付けられる。痛くはないが、結構な音が響いた。


「すまない……謝り過ぎだな。 仕事に切り替えよう」


「さて、じゃあ移動だね」


 とヴェルズは基地にある自動車を使おうとする。


「……今回は普通なんだな」


「……なになに、じゃあ前何かあったの~?」


「―――――――どうして、こんな短時間でここまで来れたと思う? それも二人同時に?」


「……なるほどね」


 シリス、ファイはヴェルズへと視線を移動し、それによって気付いた弘太もヴェルズへと向いた。アルゴスは気付いてすらいなかった。


「―――――――分かっちゃったか~。 そりゃあ、いくつの爆弾使って、ここまで飛んだと思ってるんだよ~」


「「「………」」」


「すごーい!!! 爆弾でお空を飛べるんだ……!」


「凄いだろ? 実は追尾型でターゲットに触れた瞬間に花火みたいに爆発するタイプも今、開発中なんだよぉ!」


 とんでもないストレス発散の仕方に三人は散々見て来たので呆れる事はなかったが、いい加減にこの男に抑えろと言いたいようだ。


(西幸様、皆様には服で隠れて見えてませんが一度、基地にて傷の手当てと修理をしてからの戦闘でお願いします。 このままでは戦闘維持が困難を極めますので)


(ああ……助言、助かる)


 5人は基地に向かい、損害状況、死傷者の確認をしながらも身支度を整え、軽い決戦の準備を終えた。


 


 












 



 一応、ハーレムだけど、それを無視してでも物語優先なのは仕方ない。そして、しばらく零華たちとは別行動になります。今回で弘太自身についても謎が深まりましたが、まだ彼について語ってない事は多いです。

 正直に言いますと、全体的に見ても1章が一番多く魅力ある展開を詰めていると思います。他の章はまだ細かいイメージまで固まっていないので、なんとも言えませんが。この作品自体は1章の内容から考えたので、そのせいか気合の入り方は違います。

 更新遅いですけど、時間を掛けてちゃんと完結させるので今後も見て頂けると幸いです!

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