七十話 『変身』
かなり、遅れました。すいません。そして、今回は9000字近くの文章となりますので時間がある時に読んでいただけると幸いです。
バイオリンの音色がその家から野原へと響き渡っていく。その音色に乗せられたそれには二つの感情があった。
「今日の演奏は随分と乱れてるみたいね」
アリーに指摘され、さらにヴィオは気分が下がる。
「いやなぁ、どうにも身体の中にあるあの石が気になるんだよ」
「まぁ、そりゃそうでしょうね。 気味悪いし」
しかし、それとは違う。そうそれはまるでどこかの誰かと繋がっているみたいに。そんな感覚を覚える、このルリーヴによるのは明白だ。複数人の意思を遠くに感じる、これは決して悪い物ではなかった。
その中でもとびきりに、自分と最も近い者を感じた。見た目や性格ではない、これは……血? と言えばいいのだろうか。ともかく、自分と近しい者なのだ。
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「弘太君、本当に大丈夫?」
皆に支えられながら支部に連れてかれた弘太は、ソファーに寝かされ、その状態を考慮することなく白神主任は質問を始めた。
「まぁ、こういう展開になるのは分かってるよね? 賀霧君も相原も近くに座って」
相原は向かいのソファー、賀霧は白神主任が愛用しているチェアーに腰を掛ける。
「――――――では。 まずは一つ目、キミは何故あそこで突っ立ったままになった? ホワイトの機械脳への通信も一切受け付けなかったではないか」
「……私にも分かりません。 です……が、ぼんやりとしながらも考えていたんです。 あのメルダーからの言葉の意味を、自分でも分からないぐらいに」
「ふむ。 では無意識の内にあの状態に陥ったと……そう言いたいのだね?」
「はい」と弘太は答える。これは……“あの事件”の後遺症か? エミル・スピットにユーリ・スピット……あの惨劇の後に起きたアレだ。衝撃と悲しみが走ったあの事件、特に精神的に参っていたのは相原である。あの時の容疑者を探した時の相原の豹変ぶりは初めてだった。本当にやったかやっていない人間を無差別に殺す勢いでもあったからだ。
その事件の後遺症、能力者故に断定は出来ないが一種の精神障害を患っていると言ってもいい。と言っても、まだ深刻なまでのフェイズに達していない。まだ軽いうちだ、風烈君や幸雪君との交流で軽減出来ればと思っていたが、まさかここで再発するとは思っていなかった。
「二人は何故こうなったか心当たりは?」
「途中からだが、あのメルダーの言葉がきっかけなのは分かるんだが……前はあんな形での発症はなかった」
「賀霧君はあるかな?」
「………」
依然として弘太を睨みながら沈黙を保っている。答えを否定と捉えてさせてもらった。
「……二人は好きに自由を取っていいよ」
「……まだ俺の担当時間だ」
「その前に実験室に寄って、君のIDが書いてあるケースを取ってね」
「………」
と賀霧は部屋を出る。相原は弘太の傍に近寄り、心配な眼差しを向ける。
「大丈夫か?」
「……うん。 問題ない……」
「どうした……?」
「戦いたくない」
それは任務を放棄した何よりの証であった。
「それは認められない。 能力者はもう残り少ない。 その中でナンバーⅣの君が消えたら、それは大きな損失になる。 意味は分かるよね?」
「………」
「……弘太、本当にどうしたんだ? 俺に出来る事があるなら、言ってくれ」
「……柳には関係ない……」
「そ、そういうのは良くないんじゃない!?」
零華の言葉に対して耳を手で塞いだ。さっきから頭痛が酷い。自分の意識が別物みたいに遥か彼方に感じる。先ほどまでなかった恐怖が心を支配する。
『西幸様、私で良ければ愚痴の一つや二つを聞きますが』
『………一人にさせてくれ』
と弘太は支部長室を出て行こうとする。
「どこ行くの!? 弘太君……!」
「西幸様……私は信じていますよ」
「信頼される事はしてない」
「でも! 弘太君は頑張ってきたんでしょ!!!」
「そうですよ! 先輩は良い事をしてきたんですよ……!」
「………」
その場から彼は逃げる様に立ち去った。結局、僕は弱いんだ。
彼は自宅へと逃げようとする。だが通路の途中の休憩所でファイ、眞太郎、津田に見られた。
「………」
「その様子だと、またあの症状が出たのね……はい」
自販機の缶コーヒーを手渡してくる。温かい。
「……西幸、で良いか? 詳しい事は分からないけどよ、その……元気出せよ」
津田 命なりの慰めか。少し頭を冷ましたのか、弘太は壁に身体を預け缶コーヒーを飲み始めた。
静寂は続く。それもそうだ。弘太と眞太郎がピリピリした雰囲気を醸し出しているからだ。
「「………」」
(……あの二人の間に何かあったんだろうか)
「――――――ねぇ、弘太。 身体の調子はどう?」
『私から言いましょう。 そろそろ検査の時期です、義肢と人工皮膚の交換も必要です』
自身の手を見る。もう片方は機械、下半身も右足を残して消えた。義肢と切断された断面の間の人工皮膚の妙な感覚は時々嫌になる。身体の半分近くはない……もう人間と呼べない。
―――――――ハハッ、そうだった。僕は能力者。人間じゃない、奴等と、創無と同じ存在で人と同じ姿をしているだけだ。その中でも僕は断トツで屑の塊。この鉄屑は守るべきも守れずにのうのうと生きてきた愚か者だ。そんな奴に幸せを掴む資格なんて―――――――
「……弘太、少し良いか?」
と、眞太郎の言葉が耳に入る。
「……何だ?」
「――――――何を考えているか知らないけど……少なくとも一人で抱え込むのは間違ってると思うぞ」
「……!!!」
分からない。自分が何をすべきなのか分からなくなった。逃げ道も塞がれ、進むべき道は断崖絶壁。登ろうにも幾つもの障害が待ち受けている。身体の震えは消える事はない。何故なら、進んできた道を彼は怯えながら進んできたからだ。
本来の彼なら戦う人間ではない。少し違えば学者か医者になっていただろう。しかし、彼の選んだ道は命を殺す仕事。けれど、それと同時に命を守る仕事でもある。その矛盾に戸惑いを感じながらも歩んできたが……。
「………」
「ちょっと……!」
早足で移動し、支部の上の階へと上がる。屋上へ向かう、誰とも会いたくない……違う、こんな自分を誰にも見せたくなかっただけだ。
ただ強がってるだけ、不安定な精神を保つために。
屋上へ着くと先客が居た。白衣を着たその変人はシャボン玉で遊んでいた。
「やぁ。 元気なさそうだね、クリームシチューでも食べたらどうだい?」
白神所長はそう言う。シャボン玉が頬に当たり破裂する。
「……何でここに?」
「君と話をね。 何も考えたくない時と考え詰めている時に限って、以前まで君はここに来てるしね」
「………」
出ようと考えたが、所長は変わらずにシャボン玉を飛ばしている。逃げるのも阿保らしくなってきてしまった。
「何の用です?」
「そんな難しい話じゃないさ、今後のお仕事について。 業務内容の話だよ」
頭の使う話を彼はしようとする。
「そうですか……私に何を求めて?」
「そうだねぇ、出来れば今まで通りの勤務じゃダメかな?」
「………」
彼は沈黙を選択した。
「嫌って事ね……その辺は追々話すとして。 改めて問う、本当に退職する気かい?」
「……はい」
「理由を述べたまえ」
「―――――――身体も精神ももう……戦えません。 正直言うと生きるのも辛いです、記憶の欠落も多すぎて、自分が過去に何をしてきたのかも分からないですし。 皆と接してきて嬉しい事もありましたけど……押し殺してきた感情と恐怖が這い上がってきて嫌なんです。 これ以上! 誰も殺したくないんです!」
「その理由では辞職を破棄する」
「僕には無理なんです……!!! 刃物なんて持ちたくないですし、それで命を絶てと言われてもしたくなかった! ただ……ただ、普通に生きたかった!」
「………」
白神所長はシャボン玉を吹き飛ばすのを止め、床に静かに置いて真摯にその言葉を聞き入れていた。
「人間として生まれたかった! 全てを消滅する力なんて要らなかった。 普通に生きて、普通に恋をして、普通に仕事がしたかった……! 誰かを殺す為に生きて、いつ急に終わるかもしれない恋をして、押し付けられた殺害をするために生きたくなかった!!! こんな能力なんて……」
興奮が抑えきれないその右手には次元エネルギーが溢れていた。白神所長に見えず、今彼だけに見えている灯。紫の段階へと勢いで上げてしまった彼の瞳にその紫のエネルギーは映る。使い方次第でこの星……宇宙そのもの、果ては存在、概念のありとあらゆるものを無くす異端の証。
ハッキリ言って怖い。自分の意思と関係なしにこの身体と精神に宿っている、一歩間違えば大切な人をこの手で塵も残すことなく、殺してしまうかもしれない。それが怖かった、怖くなってきた。
「……君は仕事に出ないのは勝手だ。 けどそうなった場合、誰が代わりにその仕事を背負うと思う?」
「………」
「相原だ。 相原は今回の件で君にまた負い目を感じている。 だから君がやらなきゃ彼は一人で全てを背負い込むだろう。 けど、相原一人じゃ彼等には勝てない。 この意味、分かるよね?」
「分かってます……でも今の僕じゃ戦えません!」
「……本当にそれで良いのか?」
「………」
「分かってるんだろう? 君がいなきゃ、どうなるか」
両肩をガッチリと掴まれ、真っ直ぐな眼差しが弘太を見据える。
「君のその手に、その心に! 世界の命運が掛かってる。 西幸君がいなきゃ救われない命もあった、救えなかった命もあった……! それは西幸君自身が理解しているはずだ!」
「……!」
「例え、太陽が“西”に沈もうとその内にある輝きが失われない。 その芯は“太”く折れる事はなく、“弘”いその心は誰かを愛し、誰かを思いやり、誰かの“幸”せを守るための勇気を持っている。 それが君だ! 君の行く道が地獄でも大切な者を守る、それが……それが西幸弘太! ご両親が君に与えた名前だ……!!!」
「僕の……名前……」
初めて知った名前の意味。今まで考えたこともなかった。顔も名前も知らない父と母の名前、それに弟も居た……そっか、僕、そんな風に名付けられたんだ。
「……西幸君?」
少し微笑んだ彼は、一つ呼吸を置いて進言した。
「業務内容については、このままで大丈夫です。 ついでにですが、時給上げといてください」
「……ふふっ、力になれてよかった。 時給についてはまたの話ね」
そこで創無が反応が確認された。場所は……。
「――――――!? 零華……!!!」
と、白神所長は隅に置いてあるアルミケースを弘太へと受け渡す。
「……改めて、命じる。 能力者に刻まれた任務を遂行せよ」
「了解……!」
物を受け取った弘太は、その地点へとアモリへ使い、移動した。
「……ふぅ、熱くなり過ぎたかな」
そして、他にも二つの反応が発生。どちらも強力な次元エネルギーを探知している。
(――――――賀霧君も相原も向かってると……やる事は三人とも分かってるみたいだね)
白神主任はシャボン玉で再び遊び続ける。脆くすぐ割れるそれを何とか守ろうとしているのが我々だ。割れるその瞬間までの時間稼ぎのようなものだが。けれど、それが我々にとっては最も重要で、大切な事である。
「キャ……!」
メルダーに追われていた。まるでその反応を愉しんでいるかのように、的確に攻撃を当てずにナイフを投げる。
(弘太君……ごめん、やっぱり一人で行くのは不味かった……!)
見えない恐怖に駆られながらも、ミラーや水溜まりから映る情報で逃げ続ける。
「――――――あぁ、そろそろか」
とどめを刺すかのように心臓を狙い、そのナイフは零華へと投げられた。
「零華……!!!」
彼女を押し倒して危機を回避した。すぐさまナイフを構え、応戦できる態勢へと整える。
「来た、来た。 君を待っていたよ! 早く、決着を付けよう。 西幸弘太」
「……ああ、俺もそのつもりだ。 お前を……殺す、それが俺の選んだ道だ」
「そう……なら、軽い運動と行こうか」
周囲を囲んだナイフは弘太ではなく零華を突け狙う。ナイフによる的確な捌く技術と足技で切り抜けながらも零華を抱えて、街から離れる。お姫様抱っこだ。
「弘太君……大丈夫?」
「ああ……さっきはごめん。 ちょっとナーバスになってみたい……!」
襲い来るナイフの嵐を防ぎ切りながらも彼は逃げ続けた。
(ホワイト……!)
(はい、ここからなら採石場へ向かわれた方が被害は少ないかと)
(……ありがとう)
(いえ、当然のことです。 こちらも勉強になりましたから……感情を)
「チッ……」
舌打ちをし、既にキレている賀霧雅哉はダムの堤防にてヘルシャーと交戦中であった。
「ふん、そんなにキレてると狙いが定まらないよ?」
「うるさいな、こっちはお前を倒したくて堪らないんだよ……なぁ! なぁ……!!!」
ここに来て、完全に狂化能力を発動させた雅哉の槍と瞳は真っ赤に染まり、普通では手の付けられない状態になってしまった。
(あー、やだ。 こういうタイプが一番嫌なんだよね。 最大のバランスブレイカーだし)
炎と雷の魔法を試しに撃ってみるも、簡単に赤のエネルギーを帯びた槍により切り裂かれる。
「……ハァ」
拮抗した状況では決着が付かないと判断した雅哉は白神主任から貰ったケースの中身をショルダーバッグから取り出す。
「ん、それは……?」
何やら大きい“バックル”のようなものを取り出す。それを腰に当て、ベルトがバックルから出現し巻かれていく。バックルと言ってもそれは明らかにデカかった。
「……やるしかないか」
(――――――この調子か)
さらにショルダーバッグからその物を取り出した。そのバックルに差し込むタイプのアイテムのようだ。アイテムを手に持つ、それにはトリガーがあった。
「……これで貴様を殺す」
森林での無言を貫く戦闘は雅哉とヘルシャーの戦闘と同じく拮抗していた。ケンプファーの大剣を避け切り、ハンドガンで牽制しながらの短刀の斬撃で押し返す。
「「………」」
足払いを掛け、後ろへ後退したところで銃を撃ち、防がれたところで煙幕玉で場の混乱をもたらす。
「………」
ケンプファーは動じることなく大剣を構えて周囲を警戒する。白い煙の中で冷静に対処するのは難しいが、この二人にとってそれは造作もない事である。
刹那、手榴弾が頭上に接近。大剣を振り、斬撃の痕のようなエネルギー波を生成、それに触れた手榴弾は爆発し、爆風が起きる。その時に短刀の一撃がケンプファーを襲う。
「……!!!」
左腕に傷を負うも、短刀を握っている腕を掴んで腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。
「うぇ……」
すぐに体勢を整え、彼も同様にスリングバッグからバックルを取り出す。
「……!」
「……弘太は俺が守る」
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そよ風が頬に当たる。心地よい風の中でヴィオは思う。もし自分と同じ運命にある者があるなら、それは不幸かもしれない。しかし、それでも抗っているのをルリーヴを通じて感じる。
――――――ああ、見えない彼等は幸せを守ろうとしているんだ。とても小さく淡く儚くもとびきりの想いを秘めたものを。
「ヴィオ、やけに良い顔してるわね」
「まぁ……ね。 もし、俺と同じ怪物になるやつが居たなら……そいつらはきっと大事な者を守る為に戦うんだろうなぁって」
だって、そうなんだろ? その武器を持って強敵と対峙し、人々を守る。ルリーヴを以て、送られてくる記憶にはそんな能力者の姿が、少年の姿が頼もしく見えた。
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「ッッ……!」
採石場へと彼は着き、零華を降ろして追い付いてきたメルダーに向き合う。
「……覚悟を決めましたか」
「ああ……お前を倒して、俺は……」
正直に言って、完全に吹っ切れていない。しかし、何か思う事があってここまで動いてきたのは確かだ。だから、だから来たんだ。
自分が拒否してもアレは付いて回る。何度でも迷うだろう、でも迷い抜いた先の結論を僕は掴まなければならない。
「――――――零華、何で外に?」
「それは……弘太君、クリームシチューが好きだし。 材料買って作ったら元気出してくれるかなぁって……」
「……ありがとう……色々と吹っ切れた」
「弘太君!!!」
些細な事だったかもしれない。僕には……心からの大事に想ってる人が居る、もう……自分だけの問題じゃない。こんなに心配してくれてる彼女を前に逃げる訳にはいかない。
――――――後でみんなに謝ろう。
覚悟を決めた弘太はアモリから先ほどのアルミケースを持ち出して、その中身を確認する。一際大きいバックルがあり、二本の差し穴に横に一つのナイフが置いてあった。
「……ふぅ」
バックルを腰に巻き付ける。
『ディレイドライバーの正常を確認』
そして、ナイフのグリップに備わっているトリガーを弘太、雅哉、柳の三人は押した。
『Fill in the blanks』
『The fist is to destroy all』
『Protect even if it is crazy』
それぞれの音声が作動した。弘太は右手から左手へとナイフを回すように渡し、雅哉はそのまま右手を左へ、柳は一度右腕を上へと上げて一呼吸を置いて、三人は斜め左に位置する挿入口へと押し込んだ。
『There's no turning back』
その声と共に、周辺に音声が響き渡る。それぞれにクラシックの音色のように、全てを掻き消す爆音を放つように、ぐつぐつとした海とマグマが溶け合うように。
そして、全ての覚悟をその二文字に込めて、彼等は言い放った……!
「「「変身……!」」」
すると三人の元に、各々のバイクが自動操縦で三人を囲いつつも、メルダーたちを牽制していた。
(……え? な、何が起こってるの……?)
怒涛の展開に付いて来れなくなってる零華はさらにこの後の出来事で付いていけなくなる。
そのバイクたちは弘太たちの後ろへと行き、躊躇もなく突撃する。
「ちょっ!? あぶな―――――――」
そして、バイクは変形を始め弘太たちはそれを身に纏っていく。
「……へ?」
足に装着されているD-00、D-Ω、D-Alphaと連結し、マシンディノープのルリーヴはアモリを通して弘太のディレイドライバーに送られ、タイヤは羽根のように背中に位置され、装甲で覆われる。
「え、ええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?!??!?」
そこには白く全身にラインが通っている天使のような人型に。両側にガトリングを装備し、タイヤは腰辺りに設置されそこから情報複合金属によって増設されたスラスターに背中にはミサイル搭載という緑の火薬庫。紺色の忍者のような風貌ながらも両腕に刃が生え、腰には何やらタコの足のようなマニピュレータが存在し車輪は足のふくらはぎに配置された、その姿は鬼の如し。
「……チーム・クローバー。 人類の防衛を続行する」
能力者が創無と戦い始めた日から受け継がれているその任務の名を口にした三人は戸惑う事無くその性能を発揮する。
「クッ……シギンス相手はキツイか」
「………」
ガブラッドのガトリングによる銃弾の嵐がヘルシャーを襲う、魔法で迎撃するもガトリングの勢いに負け、さらにミサイルからの多方向の攻撃に対処を追われる。
「……アタック」
『RELEASE』
その声はヘルシャーの死を告げる。
「……!」
ラヴァーブの多角的攻撃にケンプファーは対応していくも、マニピュレータによる不意打ちの攻撃、足に付いた車輪による攻撃に腕の刃で隙の無い連撃を繰り出してくる。
「……ふぅ」
忍刀を持ち、斬り込んでいく。大剣を振られるも、ギリギリのところで避け、迫り来る攻撃を全て彼は受け止めた。
「……!!!」
「……アタック」
『RELEASE』
創無を倒す為に生まれたこの変身システムが負けるわけなかった。それは彼等の想いの強さのように。
「ふんっ、やれるなら来いよ」
変身してから5秒が経過しようとする。彼はそれまで、動いていなかった。そこからこのディレイブの真価を発揮する“5秒”へと突入する。
「――――――アタック、キック」
『戦闘モードへと移行します』
『RELEASE』
全身のラインが割れる様に展開、そのラインは青色に発行し“最速の5秒間”へと突入した。
「―――――――――!?」
足を踏み出したかと思えば、姿が消え気付いたら左腕をもぎ取られ背中にパンチを喰らわされていた。
「クッ……!」
ナイフで周囲を囲うも、いとも簡単に突破される。
『『『CHARGE END』』』
青、赤、紫のエネルギーを蓄えた三人は高らかに終了の一言を発する。
「「「フィニッシュ……!」」」
『『『FINAL STRIKE』』』
赤みを帯びた、銃弾とミサイルがヘルシャーを殺し、紫を纏う忍刀による連撃にマニピュレータによる身体の引き剥がし、光速で全身をボロボロにされたメルダーは流星のように蒼い必殺キックで貫通され爆発した。
「……ハァ」
「……ふぅ」
「……撃破完了」
「や、やったー! よく分かんないけど、勝ったんだね! ね!」
強制解除で変身を解いた弘太は零華に抱き着かれた。
「首、苦しい……」
「ごめん、ごめん。 でも嬉しいじゃない、みんなを苦しめる―――――――」
異変は起こった。綺麗に殺した筈の三体が佇んでいた。ケンプファーは何もすることなく消え、ヘルシャーは少しの拍手の後に同様に消えて、メルダーは嘲笑いかのように微笑んでいた。
(……何故、貴様が生きている)
(……あのシンと同じケースだ)
「確かに殺した筈だ、ホワイト」
『はい、今起きているのはありえない事ですが……』
「………」
メルダーはすぐに消えた。しかし、油断どころの問題ではない。決定的な事実が出来た。アイツを殺せていない、殺したのに復活したと言う事実だ。
だが事態はさらに加速した。ここから遠い大陸の研究所が襲撃されてると言う、相手はたった三人の“人間”という情報だ。
その研究所には残り三基……ディレイブの試作機……ディレイドライバーのプロトタイプが保管されている場所であった。
作中の英語は適当に検索したのを書いただけなので、ガバガバなのは仕方ないです。申し訳程度に特撮パロディも入ってるけど、最近の見てなきゃ分からないかなぁ。
解説 情報複合金属
ヘルブメタルに代わる金属として開発された代物。最大の特徴は変質と言えよう。周囲の物を自身の持つ性質に変えられるのだ。情報の組み換え、情報複合金属と言う情報をいくつもの編むように重ねる事で非常に高い耐久性を実現している。変質された情報複合金属は使用制限は特にないが、一度元に戻すと、枯れる様に使えなくなる。
ディレイブ、ガブラッド、ラヴァーブにおいても、この金属が使われている。戦闘時においての破損はこれで代用できるのでうってつけと言えよう。この技術を生かして、能力者でなくても対抗できないか検討中である。ちなみにこの金属はディレイブたちの試作機たちにも試験的に一部使用されている。




