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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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六十九話「仮面」

 また時間が掛かりましたね……すいません。

 ミサイルとガトリングの爆音がその森の音を支配した。雅哉の乗る深緑の虎、タイガーモードのガレイボルディーノによる無差別攻撃であった。


 それを躱しつつも、弘太は白銀の不死鳥、フェニックスモードのマシンディノープで空を駆り、連射モードのD-02でミサイルを迎撃していく。


 その騒音は止むことはなく続いていく。それはとてつもなく響き渡る。


(……西幸様。 お咎めする気はサラサラないですが、どう収拾するおつもりで?)


(逆に聞きたい。 殺す以外の方法は?)


(金銭)


(鼻からスパゲッティ出してろ)


 分かりましたとホワイトは言い、腕時計の表示は顔から鼻から線のようなものが出ている物に変わっていた。


 そんなことはお構いなしに戦闘は繰り広げられる。木々は切断され、周辺の動物や虫たちは逃げて行き、二人以外の介入を許さない戦場になっていた。











「ああ……たくッ!」


 ラウザンドチェイサーを乗り回し、ウサギ型のディーストを翻弄しながらも柳は左手に持った短刀で確実に切り刻んでいく。


(あのバカッ……!!! 何でそう血の気が多いのが集まるんだよ……!)


 血縁関係ではないが、あの性格は間違いなく相原柳から影響を受けていた。己の過去をあまり話したがらず、妙なところで他人に関わろうとしたりしなかったり。自分の気が済まないと、どうしようもない……それはまるで。


(……ハァ。 若い頃の俺みたいだな、ホントにあんな風に育てたの誰だ……)


 それはお前だ。自虐気味に心の中で呟いた彼は足に装着されたD-Alphaの使用を決意した。


「……キック」


『RELEASE』


 右足のD-Alphaに紫の次元エネルギーが集束していく。そして、ラウザンドチェイサーを自動操縦にしてから飛び降りた。


 右足を突き出して、蹴りの体勢へと入る。


『CHARGE END』


「フィニッシュ……!」


『FINAL STRIKE』


 容赦ない一撃がディーストを襲う。D-Alphaの靴底に施された三箇所の穴が機能した。その穴からは多量の熱が噴射、威力が増すとともに反動で柳は吹っ飛ばされる。それを利用し、吹っ飛ばされた先に居るディーストへと再び必殺キックをかまし、同じ方法で離脱。それを繰り返しディースト達を全滅させた。


「ふぅ……今度はあっちか」


 自動操縦のラウザンドチェイサーを拾い、弘太と雅哉が喧嘩を繰り広げる場へと向かった。












「……埒が明かんな」


 雅哉は独り言を言いながらも、黙々と弾頭と弾丸の嵐を行い続けた。途中に来る弘太からの攻撃は槍で弾き返す。


「――――――ホワイト、一気に蹴りをつける」


『了解しました。 何の準備を?』


「奴に突っ込め。 それだけだ」


 と弘太はD-02をしまい、背中に上下逆に背負っている刀を使う。その刀は鞘が戦闘服と連結しており、その部分から左腰にかけて移動装置が存在し、刀を使用する時にはその左腰に移動して鍔に掛けられているロックを解除し、その必殺武器で敵を一刀両断するのだが……今は御覧の通りに残念な状況だ。


 そのミサイルを豆腐のようにサックリと彼は切ってしまった。次元エネルギーが込められているので、大爆発とまでは行かない爆発が起きた。


 雅哉もガレイボルディーノを自動操縦に切り替え、槍を展開。殺る気だ。マシンディノープが突っ込み、刀と槍が軽い衝突を見せる。


 すぐさまマシンディノープは旋回し、今度は急な角度からの攻撃だが雅哉は盾の銃で牽制。二人は一旦距離を取る。


「……ふぅぅ」


「……ハァ」






「「キック……!」」






『『RELEASE』』


 弘太の右足には蒼の次元エネルギー、雅哉の右足には朱の次元エネルギーが集っていく。黒の戦闘服を纏った虎と不死鳥はその場で武器を捨て、跳躍。


『『CHARGE END』』


「「フィニッシュ……!」」


 烈火の如き一撃と潮騒の如き一撃がぶつかり合った。


「クッ、うぅ……!!」


「ゔぇう……ハァ……!!!」


 二人ともその勢いに飲まれて木々を簡単に折れるまでに吹き飛んだ。


「「……!!!」」


 弘太が今動けて持てる武器は槍、雅哉が行動し武装できるのは捨てられている刀。二人はそれぞれの武器を構え、マシンディノープとガレイボルディーノによる支援を切り、決戦へと突入した。


 弘太は三度も四度もその槍で突き、雅哉はそれを盾で防ぎつつも巧みに躱す。両手で構えた刀で縦、横へと繋げて振った。


 槍のリーチを活かして地面へと突き刺す形で自身を上へと追いやり、そのまま踵蹴りを放ち、雅哉の首へとその一撃を与えた。


「ゲゥッ……チッ」


 さらにキレた雅哉は刀を弘太に向けて投げ、彼が避けると共に喧嘩を吹っ掛ける勢いのストレートが弘太に炸裂した。


 雅哉の右腕を掴み、膝蹴りを腹部にヒット。その後、すぐに再び腹部に靴底の痕が付くキックを喰らわした。


「………」


「………」


 前回と比べ、まだ血が出ていないのでマシだ。前回に比べれば。


 雅哉は刀を持ち直し、赤の次元エネルギーを。弘太は槍に青の次元エネルギーをチャージする。次元エネルギーの放つ波動以外はその場では音を発していない。いや、二人の耳にはそう聞こえるだけだ。


 ホワイトは変わらず止める様子はない。白神ベースだとここまで面倒くさいのかと言うぐらいに。


 構え、徐々に二人は近付いていく。その歩みは速くなっていき、完全に走った頃には二つが刃が相手を引き裂こうとしていた。だが、それと同時に彼等はナイフに包囲され、迫っていた。


「「……!!!」」


 自衛の為に弘太と雅哉はすれ違う形で互いの後ろを襲うナイフを槍と刀で切り落とし、横へと振り一掃した。


「ハハッ、やっぱり危険だなぁ。 君たちは」


 メルダーは木の枝から降りて、その姿を現した。


「「………」」


 二人は喋ることなく武器を構える。


「おー、やば。 相当ピリピリしてるねぇ……」


 その言葉と共に何かが爆発した二人は間もなく、メルダーに襲い掛かった。


「ッと……! キミたちって本当に人を守れてるのかなぁ?」


「……何が言いたい?」


 弘太はそう問う。自身のやっている事は仕事であり、人類の防衛だ。何も間違っていない……筈だ。


「全てを守ってないじゃないか。 害があれば、誰であろうと殺すんでしょ? 大人でも子どもでも、家族もかな?」


「……!!!」


「……だから、どうした?」


 雅哉は淡々と言い、刀を振り続ける。一方、弘太は僅かな動揺を覚え、その槍には迷いがあった。


「結局は自分の都合で動くのさ」


「……それが仕事だ」


「つまり、仕事が全てか。 大事な人を殺さなきゃいけない時には容赦なく首を刎ねる訳ね」


「ほざけ……!」


 刺突を繰り返し、雅哉の刀が振り下ろされる。回避される間に武器を投げて交換する。


「ふぅん、まぁ良いさ」


 数多の攻撃をナイフで捌き、蹴りで弘太を蹴っ飛ばす。


「……ッ!」


「……ハァ。 やっぱり手加減するの止めるかな」


「……ふざけるな」


「ふざけてないよ。 現に本気出してないし。 滅ぼすのがつまらないから、コッチは仕方なく遊んであげてるんだよ? キミたちに人は守り切れない。 それに加えて、人を殺してるんだからねぇ……人を守る資格があるとは思え――――――」


 短刀の一撃を避けようとするも、右腕に傷を受けた。


「……今日はここまでだね」


 とメルダーは空間を割り、無懺へと帰還した。


「ハァ……二人とも帰るぞ」


 柳と雅哉は普通に帰ろうするが弘太だけは少し違った。


「帰ったら、言わなきゃいけない――――――弘太?」


 そこで立ち止まり、柳は弘太の元へ向かう。


『西幸様、応答してください。 西幸様』


 人を殺し続けた、テロリストだけではない。助からないと言う状況により殺した一般人もたくさんいた。大人も子どもも関係なく。戦う理由は復讐だった。だから化け物と戦った。しかし、現実はそうはいかない。反社会組織によって人体実験を受けた人間が何を起こすか分からない。一歩間違えれば誰かを殺す。その不安定な身体では自滅する時もあったかもしれない。


 だが助かる可能性も低くてもあったのだ。一パーセントでも、組織に逆らってでもその命を守るべきだったのではと考える。人を殺したくて戦いたかったわけじゃない。復讐の為に……殺された人たちの為に戦いたかった。


 目の前に居たエミルとユーリが殺されたトラウマは今でも鮮明に覚えている。思い出す度に冷静さを失い、殺す事だけを考え始める。けれど、それでも人を殺すと言う選択肢はなかった。


 なのに……今の僕は化物と“人”を殺すただの道具だ。人を守り続けていると言う脆い仮面を被り、奥底に眠る醜い殺人鬼の姿を隠して戦う。


 それが嫌だった。嫌だ。ホントは殺したくない。本当は戦いたくない。最初に人を殺した時の感覚は覚えている。ありえない程の罪悪感が僕を襲った。胸を突き刺し、目も口も動かなくなり全ての終わりを見てしまった僕をさらに戦いへと駆り立てた。もう戻れない。泣いても、泣きたくても、拒否しても、逃げ出しても。


「弘太……! しっかりしろ、弘太!!!」


 保護者の必死の声も聞こえず、弘太は柳の短刀を見つめた。短刀には次元エネルギーがまだ残っている。弘太の瞳に映るその紫のエネルギーは何人の命を奪ってきたのだろうか。


「………」


 それからして、零華たちが来たのは30分ぐらいした後だった。そこで弘太はハッと意識を心から外へと取り戻し、皆から心配を受けながらしばらくの間は問い詰めにあった。





















 


 


 という事で、弘太に不穏な空気が漂う中での次回が70話です。70話はこの作品においての節目と言っても過言ではないでしょう。投稿まで時間が掛かります。という事で次回予告。


「戦いたくない」


 しかし、彼は戦わなければならない。大事な人を失っても、どんなに苦しい事があっても楽に生きる事は許されない。足掻き苦しむのが彼の運命だ。


「でも! 弘太君は頑張ってきたんでしょ!!!」


 だが。それでも彼に、彼等に救いがあるなら。戦う資格があるなら。


「……チーム・クローバー。 人類の防衛を続行する」


 次回、『変身』


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