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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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六話 「芽心」

 ……それはとある年のクリスマスの出来事であった。


 この冬の日が、彼にとって、今でもまとわりつく悪夢であった。


 8年前のこの日、七歳の少年は、遠く離れた所ににいた、雪が降りずっと真っ白な街に。


 少年「西幸 弘太」は、街にいた。


 レンガで建てられた古風の建物、厚着を羽織り出歩く人々、うっすらと消えかかってても光を絶やさない街灯、そんな街に弘太は柳に連れられて来ていた。


 今はまだ夕食するにはまだ早い時間であり、時間を自由に使えた。


 街を散策した。


 街全体が真っ白で雪が少しずつ積もって行くところを見ていると退屈しなかった。


 ふと、近くの植えられた木から小枝が落ちていた。


 弘太は小枝手に取った。


 歩道に積もってる雪を枝で落書きした。


 何か意識したわけで書いたわけでもないのでよくわからない何かが出来た。


 よく見れば毛玉みたいなものだと思う、その落書きを見て弘太はさらに書こうとした。


 だが、木の枝から少し積もっていた雪が弘太に落ちた。


 ぶかぶかのブーツ、少し大きめの黒いダウンジャケットに雪がかかり、それを落とす弘太。


 手袋に少し雪が付いた。


 ひんやりしてて気持ちよかった、そんな気がした。


 小枝を持ったまま、再び街を散策し始めた弘太であった。





「ハァ……」


 借りたマンションの一室で一息ついた柳は、ホットココアを飲んだ。


 うん、美味しい。


 ココアを飲んで、外の寒さから一段落ついた柳は考えていた。


(今は仕事じゃなくて休暇だが……この休みをとれるのもこれが最後かもしれないな……)


 5年前の創無の大規模な攻撃で大半が死に、状況がきつくなった。


 今は辛うじて3日の休暇はとれたが能力者はどんどん死亡していく一方なので今回のような余裕はもう来ないと思われる。


(……流石に遠くには性格上行かないと思うが、夕飯前には帰って来いよ……弘太)







 ちょっとマンションから遠くなってきた。


(……帰らないと)


 引き返そうとしたその時。


「あのー」


「___?」


 弘太ふと後ろを振り向いた。


 そこにはおそらく年齢が同じであろう、男の子がいた。


「……誰?」


「えーとね、僕はエミル!エミル・スピット!よろしくね!」


「……スピットさん、何か用ですか?」


「あ、いや、別に大した用があるわけじゃないんだけど……」


「……じゃあ何で話しかけてきたの?」


「あの……ここの街には同い年の友達いないし、だからその……少しで良いから一緒に遊んで欲しくて……」


「……いいよ」


「ホント!?」


「うん、まだ夕食までには時間あるし」


「よかった!あ、名前を聞いてなかった!何て言うの?」


「……西幸 弘太、弘太で良いよ」


「よろしくね!コウタ!」


「うん、よろしく……エミル」


 その晩、夕食になる前まで二人は遊んだ。


 外は冷たかった、でも遊んでいくうちに身体はポカポカになって大丈夫だった、何より寒さを忘れていた。


 積もった雪に身体を置いて天使の形を作ったり、小さい雪だるまを作って近くの小枝を腕にして持ってた枝を鼻の代わりにしたり、雪でお手玉しようとして失敗したり、いろいろ遊んだ。


 思えば最高に幸せな2日間だったかもしれない。


「あ、もう時間だ、帰らなきゃ!」


「うん、僕も帰らなきゃ」


「……いつまでここにいるの?」


「……明後日までかな」


「明後日までか~、それまでにもっと遊ぼうね!明日もここに集まろうね!」


「……うん!」


「あ、あと、実は妹がいるんだけど……一緒に良いかな?」


「……良いよ!その子とも一緒にもっと遊ぼう!」


「ありがとう!じゃあまた明日ね!」


「うん、また明日!」


 少年達は約束を交わした、両者にとってかけがえのない時間となった。


 ……彼が15年生きてきた中で感情を表に出したのはこの3日間が2回の中の1回目だった。






「……ただいま」


「おー、おかえり。ずいぶん長く外にいたな。遊んでたのか?」


「うん」


「……友達でもできたか?」


「……わからない」


「わからないってことは少なくとも誰かと遊んだんだろう?」


「……うん」


「なら、友達じゃないのか?」


「……勝手に友達になっていいの?」


「う~ん……なら明日自分で友達になってって言ってみればどうだ?断らないと思うぞ?」


「……わかった」


 その後、夕食をとった、シチューであった。


「………」


「どうした?美味しくないのか?」


「……違う、このシチュー食べてると、なんか変にポカポカする」


「そりゃ、シチューは温かいんだからポカポカするのは当然だろう?」


「でも、そうじゃなくて、なんだろう、初めてじゃなくて……懐かしい?」


「小さい頃に食べたんじゃないか?」


「……そうかも」


 弘太と柳はその後、会話することなくシチューを食べ終えた。



(……明日も遊べる……よかった……)


 弘太はそのままベッドで寝てしまった。




「……ハァ」


 柳はため息をついた。


(あいつも友達が出来たんだなぁ、弘太にはできればこのままこの街にいて欲しいが……無理だろうなぁ)


 能力者が少ない今、子どもであろうと戦力になることには変わりなかった。実戦には流石に出さないが。


(……疲れた、もう寝よう)


 柳もベッドに行き、そのまま横たわり、寝た。

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