六十八話「虎鳥」
遅れて、すいません。ソシャゲに魂吸い取られてました。四月から生活環境が変わるのでどうなるかは今のところは言えませんが、投稿ペースは酷くならないと思います。
「………」
「………」
「………」
「……ねぇ、何ですか? この雰囲気?」
穂乃﨑をヒソヒソと言い、零華、要、ファイ、眞太郎、命、白神主任は距離を取って一つのグループになりながら、険悪な空気の中の弘太、雅哉、柳についてのヒソヒソ話をしていた。
「ふ~む、まぁ仕方ないと言えば仕方ないね……仕事帰りの最中に西幸君は賀霧君と遭遇しちゃったしねぇ」
白神主任の個人的依頼にて弘太との友好関係を築けと言われた雅哉であったが、現状では不可能に近い状態であった。
事実にその直後にこの二人は意見の食い違いで殺し合った。人体実験された民間人をどうするかと言う事についてだ。
弘太は情報を引き出すと言う名目で助けようとした。だが雅哉の意見は反対だ。既に手を出された者たちにこちらの対応以上の行動を取られては遅いと言う懸念のもと、そいつらを皆殺しにしようとした。
しかし、それは弘太によって塞がれ、口論の際に遂に二人は激突してしまった。お互いの身を撃ち合い、切り刻み、最後には一か八かの賭けに出ており本気で生きるか死ぬかの瀬戸際であった。
それを支部に到着し、白神主任から聞いた相原は心配と同時に保護者としての怒りもあった。流石にやり過ぎだと。賀霧もそうかもしれないが弘太にも責任はある。もっと円滑に収められたろうに。にしても何で弘太がこんなことを、と彼は思った。
「「「………」」」
沈黙は続く、どこまでも。が、次元エネルギーの反応によってそれは切り離された。
「……今は俺の担当時間だ」
「ハァ……改めて、話がある。 この敵は俺も同行する」
「……勝手にしろ」
弘太の発言に雅哉は許した。しかし、問題はここからだ。この二人の関係が上手くいけば良いのだが……せめて同僚として建前だけでも。
「……ちょっと、待った。 それには俺も行く。 久しぶりのここでの勤務だ。 文句はないな?」
二人とも黙り、雅哉は先に外へ出ようとする。弘太はうんと頷いた。なんとなく纏まったような空気の中、白神主任が後押しする。
「ハイ、ハイ~。 三人一緒に行くと決まった上で行ってらっしゃーい! チーム“三つ葉”の諸君」
「クローバー?」
「そそ、三つ葉。 三つ葉の中に潜む幸せを呼ぶ四つ葉を守るから三つ葉、良いね?」
正直、チーム名とかどうでも良いので変な名称でもないのでそれで良かった。
「分かったから、典幸。 では行って来る」
弘太と雅哉を連れ出して、目標地点へ向かう。そして、白神主任からの連絡が入る。
「まだ用か?」
『あー、言っとくね。 チームのリーダーは西幸君だよ~』
「ナンバーⅣだからか?」
『それもあるけど、やっぱり性格を考えると彼になっちゃうんだよねぇ。 キミは纏めても結構放置気味だし。 賀霧君は恐らくリーダーをやる気すらないだろう。 となると、やっぱり西幸君がこの中だと適任だね~』
図星を疲れて沈黙するも、直ぐに連絡を切り任務へと集中する。その前に。
「……弘太は先に行って、タイプを確認してくれ。 やる事がある」
「分かった……柳」
弘太は先行して創無の元へと向かい、二人は準備を始めた。
「……ここか」
支部の近くにある支部所有のガレージのシャッターを開け、そのオートバイを確認する。
緑のオフロードバイクに紺のツアラー型のバイクがそこにあった。雅哉はオフロードバイクに、柳はツアラーに向かう。
「――――――性能は?」
「通常よりも速いのは確からしい……だが本命の機能は別だ、説明書も読んどけ――――――そこに何かあるな」
アルミケースを発見した二人は、その中身を確認した。そこには二足の弘太のD-02と同じように左右非対称の改造されたシューズがあった。
「……あいつ、また変なの作ったな」
「……ここは頭の狂った事をするのがノルマなのか……」
「……それは典幸だけだ、気にするな」
二人はその後、喋ることなくシューズを履いた。雅哉のは収納されてはいるが、明らかに使用時に展開しそうな鳥の足のような物があり、柳のシューズには靴底に三箇所の穴のようなものが施されていた。
二人はそれぞれのバイクに乗り込む。
「……結果が来た。 森の中のようだ」
雅哉の“ガレイボルディーノ”、柳の“ラウザンドチェイサー”は静かにそのエンジン音を唸らせ、ガレージから発進した。
『安全に心掛けて――――――』
突如来た白神主任からの通信を切り、その森へと向かった。
『追跡中も敵が複数による高速移動の為に追い付くのが困難な状態です。 どうされますか?』
ホワイトの指示待ちを聞きながらも、弘太は考えていた。このマシンディノープで森の中を追うのはまだ良い。しかし、敵は三体。ディーストタイプだ。ウサギのような外見で獰猛さは我々の知るウサギとは何倍も凶暴だ。大きさは大型犬と変わりなく、人ひとりは難なく食い殺せるだろう。
巧みに木々を躱し、進路方向を変えるディースト達に近付いて行くが……。
『三方向に分担されました』
「――――――奥の方を殺る。 残りの二匹は二人に任せた」
と、弘太はその一匹を追う。
「……チッ」
高速で動くディーストを追うもジグザグに進んでいるので中々狙いが定まらない。
しかし、問題があるかと言えばそうではない。さて、このガレイボルディーノの特徴は何と言ってもバイクだが武装している事だ。前輪の側面に取り付けた二門のガトリング砲に後部座席周辺にはミサイルを搭載しているという、本当に頭のおかしい代物であった。
あまりに攻撃的なバイクを雅哉は躊躇することなく使用した。
ミサイルの嵐がディーストを襲う。爆風を受け吹っ飛ばされるも体勢を整えかく乱するのを止めて、接近しているガレイボルディーノを引き離すために全速力で真っ直ぐに走り抜ける……が、見事に雅哉の思惑通りに事が運んでしまった。
ガレイボルディーノを停止し、備え付けられた鎖4本が勢いよく飛び出し地面に突き刺さる。
そして、ガトリングは業火の如く荒ぶる火花を散らした。
対応するにも遅く、ディーストの身体にはいくつもの穴が開きミンチにされてしまった。
「………」
雅哉は気にすることなく、ガレイボルディーノでミンチにしたディーストを轢いて他のディーストの元へと向かう。
「………」
気になる点があった。あの奇怪な三体の創無が強い、それはこの地区に異動された理由も分かる。しかし、それならあの三体を倒す任務で良いはずだ。それに加え、ここに来てからさほど強力でもない創無ばかりだ。何かあるか?
『西幸様、マシンディノープに搭載された機能を使いますか?』
「……それって、アモリにしまったあのオプションか?」
『その通りです。 お使いになられますか?』
「ああ、試用ぐらいはするさ」
『了解いたしました。 マシンディノープはこれより変形シークエンスに入ります』
「………」
絶句するもホワイトの指示通りにアモリを出現させ、空中に出現させたその空間からその追加オプションは落下してくる。
『では、始めます。 西幸様は降りてください』
「……ハァ」
弘太は跳躍する。その間になんと事は済んでしまっていた。
追加オプション……マシンディノープと同じ金属を用いたパーツだ。それと接続し、マシンディノープは変形を始めた。
(……もう突っ込まん)
車体が横になり、分割されてその間に追加オプションが入る形になり。車輪は羽のように見え、鳥の足のようなものも窺えて、その頭も鳥のようだった。
完成されたその白き不死鳥は瞬く間に弘太の真下へと飛び、弘太を受け止めた。
『フェニックスモードへの移行を完了しました』
「………」
『おや? 何かご不満でも?』
「何でもない、とにかく仕留めるぞ」
空へと舞い上がり、アモリからD-02を取り出し連射モードへと移行。
「……やってみるか」
ホワイトの補助を加えて、木の間で視認できた時が勝負だ。
心臓の鼓動よりも早く、かつ慎重にそのトリガーに指を合わせる。機械脳に送られてくる情報すら遅く感じる。敵の動きも一つのシーンを切り抜いたみたいに正確に把握できる。
刹那、彼はトリガーを引いた。
ディーストはそれを確認し、さらに加速しようとするが、それが悲劇を招いた。
彼の能力により、全く同じ攻撃が逆の方向から襲い掛かったのだ。
ディーストの身体には二つの貫通された射撃の痕しか残っていなかった。
「……ふぅ――――――」
最悪な事にここで賀霧 雅哉と遭遇した。
「「………」」
変わらない沈黙がそこにあった。しかし、事態はここから動いた。
「……よう」
「……ああ」
「俺は白神から依頼を受けた。 お前と仲良くなれとさ」
「無理だな」
「分かってるようだな……」
ガレイボルディーノに搭載されたタッチパネルでこちらも変形を開始した。
情報複合金属により、一部の金属を一度粒子に変換。そして、周囲の木の葉を変質させ情報複合金属にし、取り込む。
そこには緑の虎のような姿をしたバイクの変わり果てた姿があった。
「ハァ……じゃ、殺ろうか」
「……ああ」
もはや、理屈を通り越してこの二人は戦おうとしていた。これから“協力”する上で、普通の方法では無理だった。仮に表面だけでも分かり合えるなら……それはお互いの力をぶつけ、認めさせるしかない。
深緑の虎と白銀の不死鳥は終わりの見えない戦いへと身を投じた。
(……逃げてるだけという事は誘い出されていると言う事か)
ラウザンドチェイサーを駆り、疾走する相原 柳。だがこの森の中でそう遠くない場所で銃声が聞こえた。いや、次第に爆音となっている……ガトリングとミサイルだ。
「!?――――――あの二人……!」
想定外のような想定内のような事態が発生した。それと同時に彼の推測通りにやはりディーストの罠であり、他のウサギ型のディーストがうようよ居た。それもこの森の動物や虫を喰らって。
「クッ……!」
まずは目の前の奴等だ。一時的に気持ちを切り替えて、彼はラウザンドチェイサーでディースト達に立ち向かった。




