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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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六十七話「未到」

 睡魔に勝てず、遅れてますね……。

 今回は過去サイドのライのお話です。これを機に現在サイドと話がリンクする予定です。

「マロン~、帰ったぞ~」


 ライはそう言いながら山奥の自宅の中を見渡します。しかし、その猫はいません。


(またそこら辺をうろうろしてるか~、ホントに気ままな性格だなぁ。 うちのマロン)


 荷物を置き、部屋の掃除を突如として開始しました。いつもの癖です、自身が少しでも時間を空けて留守にしているなら、帰ってやる事はいつも掃除です。そうしないと気が済まないようです。そして、山菜の収穫と買い出しに出かけ、マロンを探して出しては食事をとる。その繰り返しが彼の生活です。


 今回はクロスボウの改良は後回しにする模様、まずは山菜採りとマロンの捜索に出るようです。これもいつものことですが欠かさないことです。一応の警戒として適当に放置してある棍棒を持ちつつの生魚も持って出発しました。


 森の中のどこかの筈、少なくともそれより外へ出ている心配はない筈です。何故なら、そういう風に躾けてはいるし何より夜飯を待ち望んでいるはずだからです。


「マロンや~、ご飯の時間だぞー!」


 しかし、返事は来ない。ここではないようです。


 しばらく探してみるも見つからないのでライは策に打って出ました。


 近くの枝を取り、ナイフで無理矢理剥いだ乾いた木で時間を掛けて、火を起こします。焚き木を起こしたライは生魚に枝を刺して、焚き火の近くにその身を突き刺しました。


 5分、10分と経ち魚はどんどんと焼け上がっていき、香ばしい香りが辺りを包みこみました。


 その匂いに釣られてやってきたのでしょうか。黒い毛並みの猫さんが姿を現しました。


「ほらマロン~、こっち、こっち」


 誘導に成功したライは無事にお家までと連れて行く事に成功しました。けれど、ここで大問題。マロンさんは焼き魚をいつまでも食べられない事に我慢を出来ずに、その場で歩みを止めてしまったではありませんか。


 これにはライも困りました。少し無理をし過ぎたと。


 急遽、焼き魚を与えようとするも、時は既に遅くマロンは一切の受付を終了しており、いくら焼き魚を見せつけてもうんともすんとも言いません。


 どうしたものか、ライは考えます。ゴールは目前までだと言うのに、考える、考えるんだ。


 そうしてライは一つの結論に至ります。


(ここで食べるか……!)


 とても常識外な解答が彼の中で飛び出してきました。でも、確かにある程度の土地勘を持っている彼なら大丈夫です。動物が出没してもあやし方も熟知しており、万が一の脱出経路もバッチリな彼。創無が現われた場合はマロンを連れて自宅に戻り、クロスボウで戦えば良いだけの話です。


(よし! こうしてはいられない……! 早速、家から――――――!?)


 激しい頭痛がライを襲いました。それはただの痛みではありません、彼の頭の中に覚えのない記憶ばかりが舞い込んできたのです。それはあまりに残酷であり、ライにとって絶望でしかない出来事。


 ライがマロンの最後を看取っている光景です。森の湖の前で血を流し痙攣しながらも鳴き続けるマロンの姿に涙を零すと言う絶望の記憶。


 頭痛も収まり我に返ったライは後ろを振り返り、その愛らしい姿を確認するとロケットのように正確にマロンの元へと飛び込んでいくではありませんか。


「マロンー! あー、よしよし~。 心配ないぞー、僕がマロンを守るからねぇ」


 強烈な抱っこがマロンを襲います。嫌がってはいるがライは中々解いてくれないので、マロンはいつしか諦めて、その膨れっ面な顔をライへと向けました。


「おー、どうした? そんなに僕の抱っこが嫌――――――!!!」


 また頭の中に記憶が現れます。今度は猿のような大型の創無がこの森の中へと侵入している様子です。


 しかし、すぐにその記憶は消えました。それと同時に森の中に次元エネルギーの反応をライは感じ取りました。


(これは……新しい能力か。 感情で強くなるとはいえ、マロンの事で頭一杯になっただけでか……最近はさっぱりなかったから頃合いだったか)


 過去未来現在の出来事を見る事ができる能力“記憶”を獲得したライは焚き火の火を消し、自宅へと戻しマロンに言い聞かせて地下室へと閉じ込めました。流石にマロンもこれが危険の合図と分かっているので大人しくしてくれるのです。ライはクロスボウとガラスの破片を入れた特注の袋を持って、創無を追いました。


 予めこの森に上手く隠してセットしているポイント以外にガラスの破片を置きながら、慎重に追跡しました。


(あそこか……!)


 能力で見た湖の所に奴はいました。腕が異常なほどに太くなっており、その豪腕で森の動物を殺したことが目の前の惨状を物語ってました。


(あの猿、何て酷い事を……許すわけにはいかない。 動物たちの仇を……)


 クロスボウに矢をセットして、構えたライは静かに呼吸を整えて集中しました。あのお猿さん……サドゥシングタイプの創無の頭部へと狙いを定めます。


 躊躇いは要りません。相手は非情で残忍な命を滅ぼす害悪なのです。この矢で汚物を絶つだけだ、何の心配もない。


 冷めた表情をしているライは当然のように引き金を引きました。


 すると、どうでしょう。お猿さんの頭はまるで豆腐の様に弾丸を貫通していき、力なく倒れたではありませんか。何の抵抗もなく、待っていたかのように。


「……これ――――――!?」


 咄嗟に受け身を取りも見事にその豪腕な腕に吹っ飛ばされてしまいました。


(クッ……! 確実に殺したはず……別の個体か……!」


 しかし、おかしい。他の個体が居るにしても何らかのエネルギーの反応を感じても良いはず。やはり、何かがおかしい。


 殺したはずのサドゥシングがいる湖を見てみると、綺麗さっぱりに先ほどまで視認出来ていた死体が消えていた。この違和感は何だ。


 軽い蹴りでいなしながらも隙を狙い、距離を取ってはライは撃ち続けました。時に設置したガラスに向けて次元エネルギーを発射し、反射をさせて注意を逸らします。ですが、感じる違和感の様にこのお猿さんは違いました。皮膚は固く、力があるのは当然ですが、それでも今までに経験をしたことのない感覚でした。


「……ふぅ」


 呼吸を整えます。そして、先ほど殺した場所へと向かいその地面へと手を触れました。


「――――――!!!」


 試験的ではありましたが成功したようです。そこで起きた“過去”の出来事を振り返る事ができました。


 確かにあのお猿さんはライが倒しました。しかし、お猿さんは何と“甦った”のです。しかしてお猿さんは直後に空間を割り、無懺へと帰ってしまいました。


「……ハァ」


 時間が経ち、安堵した表情で立ち上がります。あのマロンの記憶は……未来。少なくともすぐに起こる事ではありません。けれど、気を付けなくてはなりません。現実になってしまうかもしれない出来事。それをライ自身が変えなくては。





 自宅へと戻り、地下室を開けるとマロンが飛び出して顔を引っ掻いてきました。


「すまん、すまん! さて、ご飯だ」


 ライとマロンはその日、食事をとり明日も気ままさに起きるかなぁと考えながら静かに就寝しましたとさ。










 ___________________________________


「帰ってきたぞ」


「おかえり~、相原。 どうだった?」


 目の前の書類を投げ出し、椅子にもたれ掛かりながら白神主任は言った。


「どうも、何も色々と疲れた。 弘太は?」


「用件済ませて、帰るところかな。 君と賀霧君に見せたい物が実はあるんだ」


「言わなくても分かってる……ハァ、ガブラッドとラヴァーブのアレだろ?」


「うん、アレだよ。 詳細はみんな、来てからね」


 と、二人はコーヒーを淹れ適当にお菓子を食べながらそのまま雑談を始めた。
















 次回から三人が合流するので、そこからが本番ですかね。過去に現在、外伝は異世界とシリーズものなのに統一感ありませんねぇ。

 外伝ですが、作品を増やすことになりました。私が投稿する作品は基本的に設定上で繋がってますかね。全く別の作品を考えていますが、恐らく次元エネルギー関係で繋がざるを得ないかと。話を進めるにつれて開示する設定を考えると、無理はないので大丈夫ですが。

 外伝は四作目まで異世界でのお話です。ただし、ⅠとⅡは本編に絡みます。特にⅠが絡みます。ぶっちゃけて言うと、Ⅰ以降の外伝のお話の大体の原因がⅠでのお話だから余計に存在が大きいです。

 外伝が絡むのは100話~150話の間です。それ以降も出ますが頻度は低いです。


 とここで次回予告。



 弘太、雅哉、柳の三人でのチームが結成するも、早速雰囲気が悪い三人。弘太と雅哉と言う相容れない存在は再び激突する。

 新たな兵器を以てその戦いは悪化していく。相原 柳は二人を止めるために動くも、創無の襲来。果たして、この戦いの行く末はどうなる?


 「虎鳥」


 この戦いに救いを。




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