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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
67/95

六十六話「疾走」

 遅くなりましたが66話です。

 人生において喜びと悲しみは永遠に付き纏うものだ。時に苦しみ、時に心から喜び、不幸と幸福を繰り返して一つの生命と言う人生は完成する。


 それが通常の生命でなくても関係ない。ただ同じく生きていくだけだ。しかし、普通ではない生物にはそれ以上に過酷な運命が待っている。


 力を持てば、それに振り回され破滅を招き。知恵を得れば、果てしない欲求の末に知ってはならない絶望までを知る。だが我々にはその異常な力が必要なのだ。見たくもない絶望が、地獄が、まさに人類に突き付けられているのだから。


  それにしても私の目の前に青年は至って普通だ。津田 命は用意された麦茶を飲む。


「……質問を続ける。 津田くんは紫の靄のようなものの中から西幸君と賀霧くんを目撃したんだね?」


「はい、そうなりますね。 それが何か異常なのでしょうか?」


「……ああ、大変な異常事態だ。 何せ、能力者でもなくそれに関連した改造も実験も施されていないただの青年が本来なら反射するものでしか認識できない筈のものを君は見えているんだよ? つまり、かなり特殊なケースと言うわけだ。 君を家に帰せなくなってしまったね」


「……やっぱり、ダメですか?」


「うん、ダメ」


 ハァ……と命は落胆した。何でこんな能力染みた物が自分に、それも聞く限りだと凄く厄介な事に巻き込まれるのを前提にした。


「……母親に連絡して良いですか? 友達の家に泊まるって」


「いや、もう連絡済みだ。 上手く説明したから大丈夫だよ」


 手回しが早いな……そんなに大きい組織なんだな。


「まだ質問はあるよ。 さて、続けようか」


 様々な出来事が重なって困惑しているけれど、気持ちを少しずつ整えて臨んでいこう。うん、この前向きさで対応していけば、きっと何とかなるさ。


 命は深呼吸をし、待ち受ける数多の質問の数々に立ち向かった。










(西幸様、次元エネルギーの反応を確認しました。 どうやら、高速移動を得意とするタイプのようです。腹部に口があり、牙などの捕食機能を賀霧 雅哉の報告から踏まえるとクリートタイプと断定できます)


(了解、追えてないという事だが現在地は?)


(高速道路入口付近で停止しております。 恐らく、周囲の観察かと)


(……賀霧に連絡しておけ。 こちらに有効策があると)


(分かりました。 早急に)


「弘太君……? 何、考えてるの?」


 ふと、零華の言葉に気付く。先ほどからずっと脳内での会話だ。僕とホワイト同士で接続したせいで、どうにも始めてしまったが為に慣れてしまった。


「ああ、ホワイトと話してたんだ」


「ふーん、でもどうやって話してるんですか? 先輩」


「無線接続かな。 楽だからかもね」


 と、賀霧の返信を待つ間に話を進める。


「―――――だから、ちょっと行ってくる」


「いってらっしゃい、西幸様。 支部で待っていますわよ」


 これ以上は邪魔にならないようにと零華、要、穂乃﨑は帰った。眞太郎を残して。


「アレ? 風烈さんは?」


「……しばらく、ほっといた方が良いかもね」








「「………」」


(応答がありました。 代わるかわりに金を寄越せとのことです)


(分かった、すぐに準備をする)


「………」


「………」


「……行って来いよ」


「……ああ」


 アモリで戦闘服を取り出して、着替える。そのまま行こうとする直前に眞太郎が引き留めた。


「一つ、聞きたい……弘太の戦う理由についてだ、それだけは聞きたい」


「……正直、言うと今は分からない。 でも、俺が戦う理由には復讐があった」


「………」


「戦っていくうちに確かにあった俺の中の復讐が揺らいだ。 恋をして、守る者ができて。 そうしていくうちに俺は復讐が怖くなった。 今ある大切な人たちが大事だと気付いたのかもな」


「だからか、人を殺すのも怖くなってる。 テロリストは割り切って殺せるかもしれない、でも救えない人たちを今度はもう殺せない……だから、だから俺が全てを救う」


「そんなきれいごとをできると思ってるのか―――――?」


「結果が出てない現状で断定はできない。 でも、やるよ。 必ず救うよ、そのきれいごとを実現させる。 その為の俺達、能力者だし。 無理って言われてもやらなきゃ、だって誰かに殺されることが幸せに繋がらないから」


「………」


「……行くよ。 みんなと眞太郎……輝典くんの夢を守る為に」


「……!!!」


 アモリでその場から消えた弘太はすぐに高速道路入り口付近に空間を繋げた。周囲に反応……あり。


 警戒しながら、ステルス化し逆手にナイフを握る。


「………」


(発見しました)


 看板の裏でどうやら自動車と中の人間を観察しているようだ。


ナイフを構え、瞬間を見極める。


 次の車が通過した3秒後というタイミングを狙い、アモリを通過。奴の真上からの襲撃を掛ける。


「――――――!?」


 突然の襲撃にチーターのような姿をした人型のクリートは咄嗟の対応で腹部の口から発射された黒い体液は弘太に直撃。距離を取り、クリートはそのまま高速道路を突っ切って行った。


「……行くぞ」


『了解しました』


 創無が通常の人間では見えないという性質が幸いにも機能した。ここから先は誰にも見られることのない戦闘になるだろう。


 弘太は再びアモリの中へと戻る。この空間に止めておいた“白いスーパースポーツモデルのバイク”に近付いた。


『“マシンディノープ”の状態を確認します――――――――問題ありません。 全てOKです」


「……ああ」


 ヘルメットを被り、マシンディノープのシートに跨りイグニッションキーを回して、スターターを押してエンジンを起動させた。


 ギヤを入れ、スロットルを回し、マシンディノープは静かに発進した。


 速度を上げ、クリートとの距離を詰めていく。


 クリートは競うかのように自身も速く走っていく。


 しかし、マシンディノープとの距離は短くなる一方。周りからはステルス化により見えていないが物凄い勢いの風が吹き荒れていた。車を避けながら、一応は運転しているものの周りのドライバーから見れば、謎の現象が起こっているとしか思えない光景だ。


 安定した走りを見せつつも、次元エネルギーと言う規格外のエネルギーを得たマシンディノープは留まる事を知らず。その速度は莫大な跳ね上がりを計測し、遂にはクリートに追い付いたのだ。


「………ッ!!!」


 チーター型のクリートは再び腹部の口から体液を発射。道路へと付着し、溶け始めた。先ほどと同じだが弘太が受けた物とは明らかにレベルが違っていた。


『運転補助を開始します』


 マシンディノープに備え付けてある小型カメラと接続し、溶けた箇所を彼が避け切れなかった場合の緊急回避を担当するホワイトのバックアップを得て、弘太はアモリからD-02を取り出し、構える。


「ファイア」


『SHOOT』


 起動させて、左手でクリートへと撃っていく。


『反動補助、照準誤差修正。 OKです』


 その言葉と共に再度、撃ち続けた。途中、クリートは一瞬ではあるが速度を緩めて、回避を行っている。だがそのデータをホワイトが解析し、狙いのブレはなくなっていく。


「……フィニッシュ」


『METEOR』


 青い閃光は真っ直ぐに反応することもできずにクリートの右足を壊していく。


「――――――!???!?」


 悶え苦しみながらもクリートは逃げ続けるも、弘太は手を緩める事はなかった。


「キック」


『RELEASE』


 右足のD-00に青のエネルギーが収束されていく。


『自動操縦へと切り替わります』


 ホワイトの操縦で弘太は立ち上がり、姿勢を低く構え、跳躍の体勢へと入った。


クリートは三度みたび、体液を吐くもデータ解析を終えたホワイトにとってそれを躱すことは造作もないものになっていた。


『CHARGE END』


「――――――フィニッシュ」


『FINAL STRIKE』


 ジャンプと同時にマシンディノープは急速に動きを停める。それにより生まれたエネルギーを利用して、強力な威力となったファイナルストライクがクリートを貫く。


「!?――――――」


 青の閃光の後には着地をした弘太が立っていた。


『任務、お疲れ様です』


「ああ、足が痛い」


『それはあの勢いで地面へと着地すれば当然です。 こういう面では人間でない事に感謝ですね』


 そうかもなと適当に返事を返す。道路の被害はいつも通りに組織が修繕し、目撃した人の記憶処理もいつも通りだろう。


(俺は……約束を守れてるかな)


 彼はクリートの成れの果てをナイフで吸収し、マシンディノープに跨って早々にその場から立ち去った。


 

 











 70話までの間がかなり内容を詰めて書くと思います。

 それと今回からバイクも登場しますが、弘太にだけとは一言も(ry

 という事で察せる通りに前述の事をあと4話で書ききらなければならないので、少し遅れると思います。流石に数日程度ですが。

 挿絵は当分無理そうですねぇ。書く絵によって差が激しい。正直、挿絵入れるにもどんな雰囲気の絵かでかなり印象変わるから、そこも考えてやらなきゃですね。

 次回は過去サイドのライのお話です。

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