六十四話「会闘」
『あと5分ほどで修復を完了いたします。 もうしばらくお待ちください』
ホワイトのアナウンスを聞きながら、弘太は静かにベッドの上で、最終調整を受けていた。
「で、気分はどうかな?」
「いつもと……金属の感覚がいつもと違いませんか? 肉体との接触箇所に違和感を覚えます……」
「ふむ、当たり前かね。 情報複合金属を使ってるしね」
「……なるほど、本人を同意を得ずに実験対象にすると?」
「いやいや、そんなわけではないよ。 単にヘルブメタルより優れているから君の普段の行動においての手助けにって思ってね。 不具合はどう?」
『私の計測結果では、誤差ではありますがヘルブメタルよりも動きにズレが生じております。 ですが一定の時間をおいて再度、計測した時にはある程度の運動を考慮に入れますと修正を入れて問題はないと思われます』
「了解、なら異常はない」
戦闘服を身に纏い、弘太は呼吸を整えた。
「……ねぇ、西幸君」
「なんでしょうか、白神主任」
「いい加減にその服をどうにかしたら?」
何の事か見当のつかない弘太は自身の服を見る。
黒を基調としていてポケットなどもいくつか備えられており機能性にも長けている。想像としてはSWATのような服装と思えば良いだろう。つまり、私はいつものようにこの服を着ている。自宅にも同じ戦闘服が何着かあり、迷彩色や雪原地帯での戦闘を想定した白なども完備している。そこに入れとく武器は現在、大半はアモリの空間にしまっているが、種類は豊富にある。上手く扱えば、四方八方から手榴弾が飛び交ったり、自身に武装全載せなんていうロマン重視のスタイルも実現できる。確実にしないが。
「……戦う者が戦闘服を着て、何か不都合が?」
「いや……幸雪くんを見てみなよ」
「……?」
零華の方へと顔を向ける。セーターとデニムの私服だ、可愛い。果たして私との違いはどこにあるのだろうか……そもそも男性と女性では比較のしようがないではないか。
「………」
「ハァ……分からないのかい? 君はオシャレをしているのかい?」
「……なるほど」
気付けなかった。ファッション、そんな物とは向き合う機会などゼロに等しかった。自身が変わる前はいつも戦闘をしては錠剤を呑んで、寝て、起きては仕事へ赴き戦闘をする。化け物を殺しては人も殺す、変わり映えのない毎日だ。
「しかし、敵はいつ襲って来るか分かりません。 ましてや創無となれば常に警戒しなければなりません。 それを考えれば、この服装である事はむしろ当然の事ではありませんか?」
「でもここは今二人の体制じゃん。 柳も来たら三人になるし、ちょうど良いんじゃない? デートとかの時に困るし。 自分に言い訳してないで! ほらほら、身体も直したしみんなと行った、行った!」
強引に支部の外に出された。こういった形で追い出されたのは初めてだ。以前は捨てられた子犬を連れてきたら追い出された。何故だ、立派な救助活動をしたんだ。命を助けると言う仕事を果たしたんだ、自分の任務を遂行しただけなのにあの時の白神主任はキレ気味だった。理由は未だに謎に包まれたままだ。
「追い出されちゃったねぇ……じゃあ、行こっか」
零華と手を繋ぐ。鼓動が通常よりも速くなっているのは嫌でも分かる、がそれよりも幸福感に包まれている感覚が強かった。
「西幸様、私も……」
と反対側の手も要に手を繋がれる。この光景を他人に見られたらとんでもない屑に思われると思うとなんとも複雑な心境になる。
「私は……?」
ファイは不安そうな目でこちらを見つめてきた。と言ってもこれ以上どうすればいいのやら。
「えいっ……!」
勢いを付けて背中に抱き着いてきた。
「これで良いよ、私は」
『行動の不能を確認しました』
「そんな報告はしなくていい……何か良い案はないのか?」
『人工知能と言っても、私はあくまでサポートの立場であり完璧なAIを目的として開発されたわけではありません。 白神所長は人間らしさを兼ね備えた人工知能を作ろうとしていました』
「……成功したのか」
『はい、私です。 「あ、私を元にすればいいじゃん」と言う安直な発想から誕生しました。 ですので、コンピューターらしい事も出来なくはないのですが主にただの喋る機械だと思ってください』
「ハァ……つまり、何の案もないと?」
『簡潔に言いますとそうなりますね。 私としてはあなた自身が考えてほしいのです』
もう諦めた。とりあえず、歩くことにした。ファイは僕に合わせてくれて上手く噛み合っている。そもそも触れながら歩く必然があるのかと言う疑問が浮かんだが合理的、非合理的と言った問題ではないだろう。気分の問題だ。
「西幸先輩、服を買うんでしたよね? どこで買いたいですか?」
穂乃﨑に質問されるが、疎い僕にはどうしようもなかった。それ以前に気掛かりな事があった。
「………」
先ほどから眞太郎が口を開かない。時々僕を睨んでるような気がしなくもない……彼と、彼と話をしなければならない。これから何が起ころうとも。分かっている、分かっているんだ。きっと心の底では僕を“憎んでいる”いるかもしれない。いずれは向き合わなければいけないと。状況なんて彼には通用しない、彼の弟を殺した事実に変わりはない。正当な理由は関係ない。何であれ彼と話さねば。
と、穂乃﨑が弘太に耳打ちをする。
「先輩、風烈さんがさっきからだんまりですけど先輩は何か心当たりはありませんか?」
「……弟さん」
「……そうでしたね」
その会話は零華、要、ファイにも聞こえていた。
「その件は弘太君はどうする気なの?」
「ああ……俺一人で何とかする。 俺と眞太郎との問題だ」
「……呼んだか?」
「ああ、どこか良い店を知らないか?」
「……安い店なら悪くないのがある」
それで良いと言った弘太は眞太郎に付いて行った。流石に目立つので途中から零華たちには離れてもらった。
無言の時間が二十分、続いたのちにその店に着いた。
「これか……」
ショッピングモールでもなく衣料品を取り扱うチェーン店でもない。流行のファッションを置いてもいない古めの洋服を扱うお店であった。
「ここなら弘太に合うのが見つかると思うよ」
「……ありがとう」
一行はお店の中へ入って行った。出迎えたのは一人のお婆さんであった。
少年は洞窟の奥に辿り着いた。洞窟はあまり人が入らない地帯にあり、ここまで来るのは容易であった。
着いた場での目の前には石ころがあったがその中でも一際大きい石ころを少年は拾う。
「………」
右手に力を込め、次の瞬間には石ころにヒビが入り徐々にその光輝く姿を現した。
ルリーヴであった。それをボロボロの服にぶら下げてる袋にしまい、少年は洞窟を出た。だが。
「ふぅん、誰だか知らないけどよくそんな代物を触れておきながら平常で居られるねぇ」
メルダーはその姿を少年に見せる。少年のその瞳は確実にメルダーを捉えていた。
「やっぱり、見えてるって事は普通の人間ではないよね。 君がどういう存在なのか気になるな~」
空中にナイフを展開、少年を包囲した。
「………」
しかし、ナイフは全て消しとんだ。
「……シン、人間と手を組んだのかい?」
答える気配はミリも感じられない。爪を立て、戦闘態勢の構えだ。
「……完全な敵か」
片手にナイフを持ち、激しい戦闘を二体は繰り広げた。
「………」
少年はそれを余所にその場から姿を消してしまった。
正月気分が抜けずに遅れ気味だ……挿絵は書く時間が確保しずらいので後になりそうですね。バイクを使う回は66話に決定です。




