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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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六十二話「選道」 

「「「………」」」


 ヴィオ、パトリック、ライの三人は自警団の本部の一室で寛いでいた。


「報告書ぐらい書いてほしいんだが……」


 と、ボスは目の前に書類に向き合いながら言った。


「後で」


 ライは言いつつもクロスボウのメンテを。


「気が向いたら」


 ソファーで横たわり、天井をひたすらパトリックは眺めていた。


「俺は……このコーヒー飲んだら」


 ヴィオはまた格好つけてコーヒーを飲んでいる。しかもミルクを入れず、砂糖もなしに。匂いを堪能しないで。


「……お前、いい加減にコーヒー飲むの止めたらどうだ? どうせ、気取ってるだけだしな……」


「き、気取ってるってなんだよ!? 俺は別にそんなんじゃ……」


「奥さんに見栄張って買った品がただのガラクタ」


「うっ……」


「子どもに良いところを見せつけたくて川で水切りやったら向こう側の爺に当たって、ペコペコ謝ってた」


「止めろ……!!!」


「犬が苦手なのにジョンソンさんのペット預かったもんな、お前」


「その話だけは本当に止めろぉ……!! 顔に尿掛けられた嫌な記憶が……」


「へぇ……」


「ありがとう。 明日からみんなの反応が楽しみだね」


 最悪だ。コーヒー飲んでただけなのに、笑いものにされている。あぁ、アリーに早く会いたいよ。もう色々と滅茶苦茶だ。コーヒーも冷めてるし。


「――――――まぁ、彼を弄るのもこれくらいにしておこうか。 君たちには報告書を作成すると言う大変、重要な任務が課せられている。 私の勤務時間を延ばさないでくれ」


 流石に飽きたのか、ヤバいと思ったのか。三人は渋々ながらも書き始めた。と言っても感想文に近い状態ではあるが。特にヴィオは。


 書き終えた三人はボスに提出した。


「……まぁ、良いだろう。 いつものことだし。 今日は解散だ。 お疲れ、あと明日の街の警備担当はパトリックだ」


「うわぁ、僕かぁ。 もう少しで妻との子が出産なんですがねぇ」


「ハァ……明日やれば、しばらくの休暇をくれてやる」


 それを最後に三人は退出した。パトリックは近くの民宿に泊まる予定で、ライは夜の街を徘徊した後に帰るらしい。ヴィオはそのままアリーの元に直行だ。


「明日が怠いんだけど」


「俺はアリーと普通に休日だな。 あとはエラマのところか、ライは?」


「山菜採り。 他の食材の買い出しに家の掃除」


「……お前も恋人は作っといた方が良いんじゃないか?」


「一人だと気が楽だ。 それに自分にはマロンという家族がいるからな」


 そうだ。この男、一匹の猫を飼っているのだった。それも時間の許す限りに全てをその猫に捧げている。俺もアリーに全てを捧げた方が良いのかな。


 ともかく、ライと言う人物にとって今大事なのは新しい女ではなく、猫の方が大事なようだ。数年も一緒に暮らしていれば当然と言えば当然だが。


 そこで別れて三人はそれぞれの目的の場所へと向かった。


「……うわ。 餌、大丈夫かな」


 彼等にこれから起こるのは少しばかりの事件。決して悲しい出来事が起きる訳ではないがこれはライとマロンにとってのちょっとした大事件である。











 ___________________________________


「だぁ……疲れた」


 航空機の中で相原柳は溜息をついた。それもそうだろう。海の中での任務だった。それも面倒くさいメンツでの任務となれば疲労が何よりヤバかった。


「……これがルリーブか」


 ボックスに内蔵されているカメラで覗き見る。ボックスからも漏れているその光は中ではより一層に光り輝いている。これがディレイブ計画においての最重要アイテムとなる。これをあの“バイク”の動力源にするらしいが……典幸に説明を求めても今更、無理だろう。実戦においていきなりの使用になるだろうが……ああ、不安だ。使用者がよりによっても弘太だ。俺はラヴァーブで、今弘太の所にいる賀霧雅哉だっけか。彼がガブラッドに選ばれた……三人とも基本的な共通点を除けば全てが異なるシステムを使う事になる。


 そのシステムを理解したうえで協力し合わないと連携は取れないだろう。彼は用意された資料を読み返した。


 加速に特化したディレイブ、火力特化のガブラッド、支援及び一撃離脱へと特化されたラヴァーブ……メインの機能は別にあるが概ねはこんな感じだ。そのメインの機能も三体とも異なっているらしい。そして、典幸が言うにはこの“シギンス”と呼ばれる者には終わりはないらしい。


 原典である西幸弘太の祖先であるヴィオ・バロックがレビト・シギンスと言う鷹の怪人へと変貌……いや、「変身」したことから始まった事だ。


 そのレビト・シギンスの戦績は凄まじくこの世界を二度破滅仕掛けた絶対的な存在を撃退できたことからもその力を伺える。


 レビト・シギンスはどうやら戦いの中で進化していったらしい。エラマと言う当時の学者の僅かに残された書物の記述ではあの状況を打開できた唯一の力。余程の事がない限り、通常の能力者では勝算が低いと書かれている。


 残った書物を調べれば調べる程、解けた疑問と新たな疑問が浮上してくる。


 15年前の創無による人類へ対する大規模な攻撃。世界中に何百万もの創無が襲来した。今と比べて能力者の人数が圧倒的に多かったので何とか対処できた。今と比べて多い程度だが。


 その中にも記述通りの特徴を持つ創無を“何体”か確認でき、ヴィオ・バロックが撃退したと思われる傷を負った奴もいる事から治癒能力に関しては個体差があると思われる。撃退された本人が傷と認識していない可能性も否定しきれない部分もあるが。


 当時の能力者で何とかしのげたものの、その代償は大きく現在では減り続けて四万を切ってしまっている。


 何もマイナスだけではない。確実に分かったのは敵の数が膨大で、かつ能力者よりも強力な創無が雑魚のように群がっている事。意図があるかは分からないがそれ以降で人類滅亡までに至るまでの創無が現れない事。それにより、こちらも創無へ対する対策が講じられた事。


 最後のページにはこう書かれていた。







「気を付けろ。 敵は―――――ない、どこ――――――――喰われるな―――――疑え。 真の敵は……―――――――――――――――」


 





 文章は所々途切れている。喰われるな、疑え……それがどんな意味を持つのか今は分からない。だが、解析を勧めれば、いずれは分かるはずだ。謎を紐解くルリーヴもこの手にある。我々が使うシギンスの前の試作機も改良して、実戦運用するそうだ。


 ここで柳は典幸に連絡を取った。


「こちら、白神……相原か」


「ルリーヴをそっちに運んでいる。 今も光っているぞ」


「それも聞いてる。 後で調べるよ、これで1個目の回収は完了だね」


 1個目……? 嫌な予感がした。いや、三体もあるんだ。もう察してしまう……。


「……もしかして、3個も回収するのか?」


「うん、そうだよ。 でも、流石に君には戻ってもらうよ。 いやぁ、あんなに仲が悪くなるとはね~」


「どういう事だ? 弘太に何かあったのか? 大怪我でもしたら許す気はない」


 この男、本気だ。声が殺気立っている。なにこの保護者、怖い。ヤバいじゃん。西幸君、だいぶ怪我してるよ、ヤバいじゃん私。どうしよう……でも帰って来るし、バレるか。素直に言おう。


 白神典幸は正直に白状した。


「だから―――――「とりあえず、弘太の様子を見てからだ、 別にお前を殺そうという訳ではない。 まぁ……責任ぐらいはな」


 背筋が凍った。こんな相原を見るのは久しぶりだ……覚悟しておこう。


 やはり、親を敵に回すべきではない。改めて、再認識した白神は帰って来た弘太を気持ち悪い位に手厚く出迎えた。











 少年は森の中に居た。途中で捕まえた蜥蜴を喰っていた。ボロボロの衣服の袖や裾から何やら緑や赤、透明な液体が垂れていた。それも蒸気を発して。


 触れた地面はまるで喰われたかのようにその液体に飲まれ、溶けていた。


 少年はただ歩く。森の奥へ着いた彼はその洞窟へと入って行った。最奥にある“ルリーヴ”を求めて……。


 

















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