六十話 「思勢」
「……貴方も以前より成長していますね……」
ヘルシャーはシンの爪と尻尾による連続攻撃を避けながら、魔導書から新たな詠唱の文字を抜き取り始めた。
「……実験は始まったばかり、対象は大人しくしててくれないかな?」
するとシンを始めとした地面は割れ始め、割れた破片は大中小、関係なくシンに激突しそれがかなりの数で蜥蜴の怪人を覆い、身動きを封じた。
さらにそこから割れた空間からのプラズマでシンを攻撃する。ヘルシャーは剣にプラズマを通わせ、炎へと変質されたその剣でシンを真っ二つに切断した。シンの死体は何度見ようが復活の兆しが見えない程に真っ二つだ。
「……!!!」
別の方向……今度は地面の真下から掘って、“シン”は出てこちらに攻撃を掛けた。回避に身を任せ、先ほどの死体がある方へ目線をやるが、やはり死体は消えていた。これで一つの確信が出来た。これは再生能力でも復活能力でもない。今までのシンは全て“別”の個体と考えて間違いはないだろう。問題は何故、全く同じタイプ同士で活動しているかだ。
さらに付け加えれば、完全な別個体として扱うのも無理と言える。戦闘してみた感じでは、どう感じても同一の存在としか感じれないのだ。だからこそ、この不可解な事態に対処しなければならない。下手をすれば、こいつは近いうちに人類を脅かすならまだしも我々の脅威と化すかもしれない。
(……こういう奴が割と居るのがねぇ)
そう己の中で愚痴りながらも、ヘルシャーは戦闘を止める事を止めなかった。
「迎え―――――――」
その声も虚しく、テロリストは殺されてしまった。ケンプファーはそのテロリストを盾にしながら進む。
「……ただの死体だ! 撃て……!!」
テロリスト達は躊躇を忘れて、ただ目の前の絶望を打ち砕こうとしていた。
「………」
しかし、彼等の前に立ちはだかる黒の騎士は怯むこともなくその銃弾の嵐を受け続ける。その雰囲気だけでも伝わる威圧感はこの場で誰よりも強者であり手練れでもある事を証明していた。
テロリストが後退りながらも必死に応戦していた。その間にも前方のテロリストたちは次々と殺されていく。気付いた時にはもう一人になっており、応援を呼ぶ間もないままにその命を絶たれた。
「………」
ケンプファーは基地の中を手当たり次第に歩き回った。その頃には基地の戦力はがた落ちで半分以下にもなっており、撤退の準備が始まっていた。ケンプファーはそれを許すはずがなかった。
「な、何だよアレ……!?」
地下を通じて基地からの脱出を試みるも存在を何時でも見られる彼等にとっては無懺を通して空間を繋げば、造作もない事であった。
悲鳴を上げる前に全員が殺された。抵抗した奴も勿論いる。だが、次元エネルギーに触れてその部分が消滅してからは泣き顔の連続だった。
「………」
皆殺しが終わったケンプファーは基地の指令室に当たる部屋で資料を探していた。それはヘルブメタルについてであった。基本的にヘルブメタルはディノープの他には軍が採用している金属であるが、その一部が悪の心に持った奴等の手によってテロリスト達に行き渡ってしまってるのだ。テロリストの基地なら自身の新たな剣の材料ぐらいはあると踏んだ上でケンプファーは壊滅させた。
そして、その目的を達成する上で必要に達するヘルブメタルを管理する部屋を見つけ、そちらへ向かった。
「………」
一面が目映い銀に輝いていた。純粋な輝きではない物の、鈍ったその輝きは今のケンプファーには眩しすぎる程だ。
ケンプファーはヘルブメタルを己の拳でどんどん砕いていき、必要量のヘルブメタルを剣の形に模す。
「………」
それに触れ、次元エネルギーを送り込み、しばらくすればそこには立派な剣が誕生していた。しかし、創無の次元エネルギーの影響により、その輝きは失われ、真っ黒な剣と化していた。
目的を果たしたケンプファーはこの基地から去り、ヘルシャーとシンの戦う戦場へと赴いた。
「やっとですか。 結果は……大丈夫みたいですね。 剣を手に入れたのなら早くしてください。 彼と戦うには数が足りないみたいですし」
とかなりの接戦の中でも彼は言葉を続けた。
「準備も整っていますし、この戦闘が終わりましたら人類に少し規模を上げて攻撃をしましょう。 まずは少し離れた所に街であるらしいので……街の人間を隅々まで焼き殺しますね」
ヘルシャーは淡々と戦いながらも、恐ろしい発言をその口から吐いた。
「ケンプファーは……街から離れた人間、周辺に居る人間の始末を」
尻尾を切り離しての爆弾をプラズマで消滅させ、爪の猛攻を受けるも身に纏っている黒のローブで翻弄し、足払いを掛け、体勢を崩したシンに再度の炎を纏った剣で刺殺した。
「……次は……」
だが聞こえて来る咆哮はこの戦闘区域からではなく、基地からの方であった。
「………」
いくつもの薬品をシンはひたすらに飲み込んだ。あるはずのない心臓の鼓動が響くように奴の姿は雄々しかった。
「ヴァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
到底、本来の生物が出せないような咆哮を出した。それは奴が獣のような存在でありながらも完全なる化物である事への証明でもあった。
シンはそのまま無懺の世界へと姿を消した。
「……今のところは三つ巴状態と言ったところですか。 後はシンのようなタイプが出現しなければ範囲内ですが……出てくるでしょうね、我々が良い例ですしね」
「………」
我々の拠点からメルダーの気配が消えた。またどこかの人間か能力者を殺しに行くのだろう。
「―――――私たちも始めましょう。 他の世界の能力者は他の奴等が屯してますし、余ってるこの世界は我々の自由にしましょう。 じっくりと滅ぼせば暇潰しにもなりますからね……さて」
まだ被害を受けていない場所、3箇所にヘルシャーとケンプファーはプラズマ、剣で攻撃した。そこには小型の偵察機が仕掛けられていた。
「クレットも一筋縄じゃいきませんねぇ、恐らくこの基地も甘い罠かな」
基地にプラズマを起こして大爆発を発生させた。八つ当たりをしたヘルシャーはその爆発を合図に前方の街の人間の皆殺しを開始した。
「で、このルリーヴはどうなるんだ?」
ファガルは純粋な疑問を口にした。
「あー、まぁ、それは……典幸の考える事は時としてアレだからなぁ。 あまり期待しない方が良い。 ルリーブを付けたらかなりの兵器になると思うが、流石にアレはなぁ」
「アレ? アレって何?」
「特別に教えてあげよう……!」
相原 柳の誤魔化しを余所に、ヴェルズはアルゴスに正体をばらした。
「新兵器がバイクって余程の馬鹿だよな……!」
「ふぇー、何でバイクなの?」
「……ディレイブ計画の元になった存在のリスペクトだとさ」
ヴィオ・バロック。本来なら交わるはずのない存在。交わらない筈の二つの時代。だが創無と存在に隔離されたこの世界に本来と言う事は無意味かもしれない。西幸 弘太に渡されるそのバイクは新技術を詰め込み、上手くいけば一般人の対創無戦力に貢献できるほどの物だ。それがどんなものなのかは……後に話そう。
「……ハァ」
白神 典幸こと白神主任はパソコンの画面のページをひたすらスクロールしていた。
「“ガブラッド”に“ラヴァーブ”……やっぱ、それぞれに独自の新システム組み込むのめんどいなぁ」
彼の目の前には試験用の武器が置かれていた。ガトリングに短い刀、何かのパーツのようなものも見受けられた。
「……うん! まずは第一形態を完成させる! そこからだな……!」
この計画だけは妥協できない。彼は寝る間も惜しんで作業に集中した。
能力者の設定はチートレベルまで行けますけど、それ以前に敵の規模と強さがヤバい事になってますね。今後のシナリオと公表してない設定も含めるととんでもなく人類の勝つビジョンが見えませんねぇ。
創無の設定などは1章中に大体出し切るかと、バイクの知識高めなきゃ……。
やるかは分かりませんが挿絵を出来れば、入れようかと検討中です。70話には間に合わせたいですねぇ。絵のお勉強もしてバイクの勉強……趣味だからまだ良いけど、やっぱり週一の二作品投稿はキツイなぁ。




