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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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五十七話「再思」

「……何よそれ! 何なのよ!!!」


 彼女の悲痛な叫びがフロア中に響いた。それは小さい頃から思いを寄せた相手が自分に振り向いてもらえない事からだ。確かに彼は能力者という生い立ち故に現に三人の恋人がいる。そして、愛してくれると言った。でも、どれだけ心を偽ろうとも隠し切れはしなかった。


 もっと彼に近付きたかった。彼を私だけの物にしたかった。私がいないと生きていけなくさせたかった。なのに、なのに……。


 彼だって私の気持ちには気付いているはずよ。ずっとアピールしてきたのよ、会えない日々の方が多かったかもしれない。それでも月に一回は手紙を送ったりしたわ。電話で直接、話すとなると余計に緊張するじゃない、声だけの会話でもあるのだし。


 彼と会ってからの日から毎日が楽しくなった。いつも、お勉強、お勉強で退屈だった。お屋敷からも学校へ通うこと以外はほとんど外へは出なかった。


 偶にはハプニングぐらいはあったわ。使用人が遅刻をしたり、私の目の前で鳥の糞が落下した来たりと……そんな具合よ。けど、そんなのは楽しくも何もなかった。そんな時よ、西幸様が来てくれたのは。


 最初は無愛想で笑いそうにない、つまんない子だと思ったわ。けれどね、彼と一緒に遊んでみたら結構楽しかったのよ。徐々に彼も心を開いてくれた。私と同じように同じ年の友達もいなかった。少しの間だけだったけど最高だったわ。


 でもずっとは一緒にいられなかった。ここには本当に少しの間しかいられないのだと言う。


 嫌だった。だからこういう時のおじいさまだわ。北瑞の権力を使えば、いくらでも出来る。そう思っていた。


 けれど、現実は違った。西幸様にも権力と言うのがあり、それは北瑞をいとも簡単に超えてしまうくらいには凄かった。

 

 だってあのおじいさまが西幸様を見た瞬間には鋭い眼光は消えて、ペコペコし始めてまるで自分より偉い人と接待をしているように見えた。


 だが、この行為によって西幸様には少し嫌がられてしまったおじいさま。十歳にも満たない子どもにはアレだったかもしれない。


 だから、私と一緒に居させて少しでも接点を作ろうとした。やり口としては私は好きではないけど、それでも私としては彼と出会えたのだからよかったのかもしれない。


 ……だから、だからなのよ。目の前に彼に放たれた発言に心は沈んだ。何でよ、ねぇ、何でよ。確かにあなたは法的にも何も問題はないわよ……。


 でもね……でもね……少しぐらいは私と一緒に居てよ。多少の女遊びなんか許容範囲にしようと思った。立派な妻となる為に努力した。イヤ……イヤ……やっぱり、他の女に西幸様を盗られるのはイヤ。


「北瑞、まず話を聞いてくれ」


「何よ何よ何よ!!! 何でその子ばっかなのよ……! 私にも……私にもその愛を向けてよ! 8年間、ずっと思い続けてきたこの思いは嘘なの……? 貴方の為の8年間だったのよ、ねぇ、ねぇ……」


 彼女は涙を流しながらフロアから退出していった。弘太は迷うことなく追い掛けた。他のメンバーも心配そうにしながらもフロアから出て行った。白神主任を残して。


「……あー、やだやだ。 ああいうの。 西幸君は苦労しそうだなぁ、彼を愛してくれる女性を全員愛さなければならないしねぇ」


 それと同時に封じられた呼び覚ましてはいけない過去。この世界を創無から守り続ける事。やる事はいっぱいだ。そろそろ、能力者の数も四万五千を切ってるから危ういなぁ……。


 彼には今の問題を解決して、肉体を完全に再生させて早くところは子どもを沢山作っていただきたいものだ。創無を壊滅できれば別だが、把握できない今では次世代の能力者の事も視野に入れるのは当然の事だ。


 1000年も続いたのだ、この戦いは。今更、滅ぼされる訳にはいかない。しかし、弘太は激しい修羅場が予測される。血みどろの戦いだ。それは戦闘の事でもあり、恋愛の事でも同じだ。アイツが人間だったら、どうなってたか。やけを起こすなら、今頃刺されているかもしれない。やはり、どう足掻こうが彼には受難が続くな。


 











 気付けば、外に出ていた。ガードマンの制止を振り切ってしまい、ガードマンからも追われる身だ。


(やだよ……西幸様に顔向けできない。 あんなこと言ってしまったら、全部お終いよ……)


 恐らくもう監視は付いているだろう。でも、帰りたくない。今の泣いてる顔を見せられない。こんな汚くなった顔など……。


 少し離れた公園のトイレへと駆け込む。外へは出なかったが、その代わりに勉強と言う時間は山ほどあった。インターネットも使えた。いっぱい勉強したわ。分からないことだらけだけど、西幸様の為なら頑張れた。


 洗面所の水で顔を洗う。一旦、落ち着こう……うん、そうよ、あのキスが何よ。私が西幸様の妻になることは変わりないわ。戻ったら、私とのキスでメロメロにしてやるんだから。決意した、私は強い女になるのよ……私以外の女が西幸様の愛を注がれてるのは嫌だけど、妻として女遊びくらいは許して……上げないけど、でも許容範囲の内に留めても良いのよ。私は心が広いもの。


 作り笑顔で外へ出ようとした。その時。


「ふーん、つまんないねぇ」


 驚きながらも辺りを見回す。誰もいない、だが鏡には確かに映っていた。個室のトイレから見える長身の“ピエロ”が。


「彼の周りを調査したけど……女だっけ。 君たちを殺せば、西幸 弘太はさらに面白くなるかな」


 個室のトイレのドアが開く。彼女はその時、気付いた。床から変な感触がすると。見たらそこには赤い液体の溜まり場だった。血液だ。


 彼女の顔つきは変わり、恐怖を覚えた北瑞は嫌な感じをしながらも反射歴にピエロの方を見てしまった。


 顔から下は切断され、目玉がピエロの手にあり、身体は腹部が十字に切られそこから胃腸が飛び出していたガードマンがいた。


「キャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


 逃げようにも足の震えが止まらず動けなかった。それ以前にこのピエロを鏡でしか視認できる手段がなかった。つまるところ、逃げても無意味なのだ。


「あらあら、随分と叫び声が上手い事で。 もっと見たい?」


 他の個室の扉も開き、そこから全身がナイフで突き刺されながらもゾンビのように動く他のガードマンの姿を確認できた。


「ひっ……」


 助けを呼ぼうとしたら今にでも殺されそうだ。知っている。創無は殺しと言う行為を存在する理由として人類を滅ぼそうとする奴等だ。迂闊な事は出来ない。


「ねぇねぇ、西幸 弘太って奴は何をしたらもっと絶望する? 後悔する?」


 答える余裕が今の彼女にはない。


「……言葉も出ないくらいに怯えてるね。 まぁ、君を殺せば多少の変化は起こるでしょう」


 ゾンビと化したガードマンの魔の手が迫る。ピエロ……メルダーは宙にいくつものナイフを展開した。


 こんなところで死にたくない。こんな形で死にたくない。西幸様に謝ってもいない、今度はアピールではなく告白をしなきゃいけない。自分の本当の、本気の気持ちを伝えなきゃ。


 嫌……イヤ……!


「たす……けて」


 死を悟りながらもナイフが降り注ごうとする中、眼を閉じ。ただその一言を発した。


「……!!!」


「………」


 ナイフが深々と突き刺さる音が“聞こえた”。自分に刺さる音ではなかった。目の前の何かに突き刺さったのだ。恐る恐る彼女は瞳を開く。


「西幸……様?」


「……勝手に出てかれるとこういう時に対応できなくなる」


 敵に背を向け、その全体にナイフの雨を受けた少年は静かに怯む様子もなくそう言い放った。















 少し急ぎ足ですが、どうにか61話には目的も第一段階の物を出せそうです。

 シナリオをさらに考えるとどうしてもバッドエンドを連想してしまってヤバいですね……。

 一章はないと思いますが、他の章だとその時の心境の変化でどうなるか分かりませんねぇ。大筋は変わりないと思いますが。

 最近、スマホを手に入れたのですが。やはり、キーボードで打つのに慣れてるしまったせいか、更新頻度は変わりそうにないです……w

 次回は弘太の覚悟の回になりますかね。戦う理由を決意したりしてますが、戦う目的はまだですね。復讐と言えばそうですが、今の彼にそれは曖昧ですかね。

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