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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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五十五話「施導」

 巨大なウミヘビを背に全力で疾走する男が二人。


「このルリーヴッ!!! 偉い光るんだけど!?」


「ボックスの中なのにか……!?」


 回収用のボックスを通過してルリーヴは光り輝いていた。そこまで特殊なのだろうか。そんな事を考えつつ、二人は遺跡の入り口を通過。海へと出た、ヴェルズとファガルは急いで水面へと泳いだ。



(柳、アルゴス! すまん!!! あとは頼んだ!)


 






「ハァッ!? アイツら何やって……」


 柳は嘆きながらも変わらずの短刀で斬り込みに行く。アルゴスは無言のままトンファーで巨大魚の身体を叩き付ける。


 だが水中戦では動きに制限がある我らに比べて、巨大魚に分がある。攻撃を受けるも直ぐに体勢を立て直して、こちらの攻撃に慣れてくると次々にそのスピードを生かした回避と攻撃を行ってくる。


「……ふふーんっ! やっぱり僕は賢いねっ!!!」


 と言いながらアルゴスは動きながらも、その動きに隙が出来るような鈍さにする。それを狙った巨大魚は喰らおうと、猛スピードで接近。飲み込もうとするも。


「はいぃ……!!」


 飲み込まれる直前にトンファー同士の底を合わせ連結、両端の底の表面が消滅しそこからどんどんトンファーは伸びていく。


「……?!!!?!!」


 そのトンファーは瞬く間に巨大魚の顎と眼の間を貫通した。アルゴスの使う武器は複数あるがその中でもこのトンファーは変形や連結の機能を有しており、他にもまだ形態は存在していた。


「うおおおおおおお!!!!!」


 棒となったトンファーはの両端の側面から刃が出現。斧の様な形となり、アルゴスはその状態から巨大魚を引き裂いた。


「うぉ。 やった――――――」


「警戒しろ!」


 ウミヘビはこちらへ向かって来ていた。アルゴスは斧を分離させ、二つの棒が鎖で繋がれたヌンチャクに変形させた。それを使い、彼は突撃してくるウミヘビの頭部に当てて、その反動を利用して回避した。


「へーい! そこの蛇ぃ!」


 ヴェルズは自身の背中付近にグレネードを爆発。その衝撃に吹き飛ばされ、それの繰り返しを行いながらウミヘビをぶん殴った。


「フォーッ!!! アルゴス、何か楽しい武器ないかな?」


「爆発じゃないけど~?」


 アルゴスは自身の懐から扇子を取り出した。


「なんだいコレ?」


「弘太んところにー、行ったときにー、白神からもらったー」


 その名を聞いてニヤリと笑ったヴェルズは迷わずに奪い取るように持ち出した。


「ふぇ~、耐水性もバッチリだなぁ」


 ヘルブメタルで出来たその扇子は扱うには少しばかり特殊な代物であった。何故なら……。


「……!?」


 自動的に能力者からエネルギーを吸い取る。それを扇子は利用してエネルギーの球を形成。それを無理やりにでも放とうとしていた。


「グッ……! ホントに白神が作ってるなだけあるなぁ!!!」


 ひとまず作ってしまったエネルギー球をウミヘビに投げつけるも躱されてしまった。


「あー、面倒くさいなこれ」


 とアルゴスに返した。その間にも柳はウミヘビをかく乱していた。そして。


「……!!!」


 一振りの剣がウミヘビを襲った。


「ファガル。 ルリーヴは?」


「普通に帰りのヘリに渡したよ」


 四人で決着を付ける。それが最良の手段と言えよう。ファガルとアルゴスがウミヘビと相手をして、その途中途中でヴェルズが殴り、柳が短刀で切り刻んだりフォローするなどと言ったアシストに回った。


 アルゴスは巨大なエネルギーの塊を展開。ヌンチャクの形をとり、遠隔での操作となった。それを用いて彼が最初に仕掛ける。


 高速でウミヘビは回避するも違う方向からはファガルの剣が向かって来る。


 それを長い体躯でぬるりと螺旋のようにすり抜け、直後のヴェルズの殴打も避け切れた。


「ぬぅー、アイツめんどくさい―」


「……ファガル、反発は使えるか?」


「あ、ああ。 だが俺が持たんぞ……」


「はいはーい! 僕が回収しますー!」


 分担が決まった二人は行動を開始した。ヴェルズと柳が囮となってウミヘビを誘導して、多少の手負いを受けるもファガル付近まで誘き出せた。


 エネルギー体のヌンチャクと短刀で二人は同時に攻撃し、それを三度みたび避けた所でファガルの反発の力を用いての一振りがウミヘビを直撃する。切断は出来なかったものの反発によって、ウミヘビは大打撃を受け、動きが鈍っている。


「ぜぇ……ぜぇ……」


「はい回収ー」


 ファガルを連れてアルゴスは先に離脱して、残りは柳とヴェルズだ。


「柳!」


「何だ……!?」


「柳も回収をよろしく!!!」


 と、ヴェルズは迷うことなくグレネードを持ちながらウミヘビの頭部……口元へと接近していった。


(嘘だろ……!?)


 察知できた柳は直ぐにウミヘビの尻尾付近へと移動。ヴェルズは戸惑いや躊躇もない表情で口の中へ入って行った。その瞬間にグレネードを置きながら。


 入り込みながら慣れた手つきでグレネードを置いていく頃には口元のグレネードが爆発。連鎖するように爆発は体内で続いて、その中でもヴェルズは身を丸めて自身を出来る限りの次元エネルギーで囲んで次の時には彼は爆発によって吹き飛ばされていた。


「よっと……!」


 そんな彼を柳は見事にキャッチした。


「ふぇ~、身体中痛いよぉ。 しばらくこんな任務しない!」


 ともかく、ルリーヴは手に入った。これだけでも収穫だ。本来なら調査および発見のだけの筈だったが、創無が出てきたとなれば仕方がない。


 これで全ては動き出す。それが善であれ悪であっても。彼等の物語と基盤と言ってもいい、その代物は様々な人物との繋がりの証でもあった。














「……このフロアでどうするんですか? 白神主任?」


 弘太は尋ねた。他のメンバーも同じ疑問を抱えていた。


「え? それは勿論、君に関してだよ、西幸君 足を出したまえ」


 半ば強引に右足をとられ、着替えたばかりのズボンは上げられて弾丸で撃ち抜かれたふくらはぎが露わになった。


「弘太君!? 何その傷!」


「……もしかして、隠してました? 西幸先輩」


「あなたって昔からそうよね……」


 体の半分近くが機械化されているとはいえ、下半身の中で右足は生身のままであり、弾痕が生々しかった。


「刀は情報複合金属を使った同じ型があるから、それを使ってよね」


 ポケットにしまってた包帯でふくらはぎに綺麗に巻いた。


「白神さん!? しょ、消毒とか何かしないんですか!?」


「能力者にその方法が効いてたらなー、どれだけ楽かな。 西幸君らは基本的に自然治癒。 無理な場合はやむを得ずにその部位を改造するしかない……弘太君もそうだしね」


 北瑞を除いたみんなは驚愕していた。特に零華は。今まで一緒に接していたがそんな事は一度も言ってくれなかった。


(私、そういえば彼の事を何も知らない……)


 凄惨な過去をベラベラと話したがる人物がどこにいようか。弘太は少年時代に色んな悲劇が重なりすぎて記憶処理を何回も施すぐらいの負荷だ。故に今の彼は自身の真実のほとんどを知り得ていない。


 すると後ろから北瑞に抱きしめられ、耳元で小さく囁かれた。


「次、黙ったらおじいさまに言ってしばらくの間、監禁状態にするわよ。 もちろん、私も一緒よ」


 危機とした気持ちと嬉々とした気持ちが矛盾してぶつかり合う。最近になって女の子との接触も増えたせいか、弘太の中に男としての感情が回復してきていた。


「……ねぇ、弘太」


 ファイが尋ねる。どんな質問か、純粋に彼は思った。


「そろそろ自分よがりの戦いを止めにしない?」


「………」


 それは無理であった。自分の決めた戦いだ。誰も犠牲になってほしくない。出来るなら俺一人で創無に立ち向かっても良い。それが約束だ……約束?


 覚えのないはずの言葉が出てきた。それが何を意味するのか、彼にどんな運命を与えたのか。封印された過去と戦うのはきついものだ。











 


 

 世界設定の根本から現実とかけ離れてるせいで細かい事まで考えなきゃ行けないのがこの作品の難点かも。一々、宗教なしでどうやって似た文化を築けたとか本当に考えるのしんどいけど何とかしなきゃ……

 

 ヘルブメタルは次元エネルギーを留めるための金属である。次元エネルギーに対しての耐久は変わらないが、無機質であり、その物に対しての次元エネルギーを攻撃性にしなければ耐えるために。ヘルブメタルは強度ももちろん、軽いという利点もある為に採用された。他にも候補はあったものの、その中でもこれが無難に良かったと言えよう。

 次世代の金属が情報複合金属である。これについては後ほど、けれど、この研究とディレイブ計画が成功すれば、能力者ではなく人間が創無と戦える可能性も出てくる。人類がただ怯えるだけの存在ではなくなるのだ。

 だが万能を超えた力の行き先を上層部は懸念していた。それに加えての創無の全体の把握も出来ていないのに下手に刺激をしてはいけないと。

 色んな思惑を抱えつつも地球は持った。宇宙は持った。だからこその能力者が全てを終わらせることが望ましいのだが……。



 

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