五十四話「争来」
数多のハイエナ型のディーストを相手にヴィオ、パトリック、ライは戦った。
片手でハンマーを地面に叩き付けてその衝撃でディーストを浮かせて、パトリックは左手に付けているナックルダスターでストレートを決める。
マスケット銃を放ったりレイピアで適当に何度も突き刺したりして、かく乱するヴィオ。
足で蹴って防御しつつのクロスボウに矢をライはセットした。
ハンマーの衝撃で浮いたディーストに狙いを定められ、クロスボウから一つの線を描くように発射され。一体を貫通してそのまま二体目にまで刺さった。
その間もヴィオは気を抜くことなく、あえて敵の群れの中に飛び込み、完全なる回転キックをお見舞いしてやった。
「……ライ。 具体的な数は分かるか?」
「私から言えるのはここ以外にもあと四の群れがある。規模は小さいからこっちを優先と言う訳だ」
「となると、早めに決着を付けた方が良いね。 と言うか行くよ」
背中を合わせた三人はさらに囲まれていた。あまり強くないタイプなのは救いではあるが。
「これ以上は無駄口を叩くなよ? パトリック、もう一回あの叩く攻撃をやってくれ」
「了解っ」と二つ返事でパトリックはハンマーにさらにエネルギーを溜める。青から紫、紫から灰へと段階を上げていった。
「うしっ……!」
強烈な地響きを上げ、打ち上げられたディーストたちに対してマスケット銃を放つ。
一体に命中したと同時に跳躍、二体目へと跳びレイピアを刺し、静止しているような時間の中でさらに加速を重ねて行動する。
(発射準備……!)
三体目をライへの頭上へと蹴飛ばし、四体目と五体目の首元を掴んで三体目の真上へとさらに投げた。
それを待っていたかのように空へと突き上げたクロスボウは天へ駆けるかの如く、一瞬にしてその三体を倒してしまった。
「ハァ……残りの四の群れか」
「ああ、俺とパトリックが行く。 パトリック、分かるな?」
「もちろんだ。 そっちの方が早いしな」
三人はそこで分かれた。ヴィオとパトリックは群れを追って、ライは広場という事もあり好都合な場所での準備だ。
改良されたクロスボウには三本の矢を同時に打つことが出来た。ただし、これはライの無理矢理な要求により付けられた機能。頻繁に使えば損壊の恐れがある。通常の弓でならいざ知らず、クロスボウでやろうと言うのだ。無理があると言える。
「ふぅ……」
矢を三本セット。意識を集中させる。この街にはある物を既に5個ほど設置してある。先ほどの戦闘になる前にやったものだ。後は……。
「っと」
ヴィオは戦闘において割れたガラスの破片を街の至る所に設置していた。それはパトリックも同様であった。
(うーん……そんなに要らないかな)
ある程度に終えたヴィオは群れへと向かった。そして、乱射してこちらへと誘導させてもう一つの群れへと向かう。
同様にパトリックの所でも同じことが行われていた。こちらでは威嚇どころかナックルダスターで適当に殴ったりして完全に怒りを買っていた。
(これでか……!)
二人は群れが合流した瞬間に設置した破片に小さいエネルギーの塊を放つ。それは反射して自身が設置したガラスの破片を通過して最終的に戻って来た。
「あの位置ね……」
そう呟いたライは構え、静かに弓から矢が発射された。
三本ともそれぞれに別の方向へと向かい、破片に当たると操作されているかのように反射される。それは破片を伝って、どんどん二つの群れへと近付いて行った。
二人が囮になっている間に矢は次々と進み。二人の気付く間に急接近していた。
「うお……!?」
「急に来るな……」
少しは余裕がありながらも避けた二人の目の前に待ち受けていたのは群れに当たった矢が黒い爆発を起こした事だ。爆発と言いながらも球体の形で爆発しているが。
派手な爆発の後には巻き込まれたディーストの形すら残らずに何もなかった。
「後は残りを……!」
ヴィオとパトリックがあと僅かの敵を倒すだけだ。
「ふぅ……本当に疲れるな」
一人の犠牲を出してしまった。その事実に変わりはない。今度はもっと多くの敵が来るかもしれない。そのせいでより被害が拡大して、沢山の死者を出すかもしれない。彼等の戦っている敵はそんなものではない、だからこその俺達が居る。上層部との連携も強化してより一層の警備にしていかなければ。ただひたすらに化物を倒す彼等の裏で化物が成長し人類を滅ぼせる事を人類はまだ知らない。
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(嘘だろ……!?)
柳は驚愕し、アルゴスは嬉しそうに笑みを浮かべていた。何にせよ、目の前の創無をどうにかしなければならない。
しかし、問題は発生するものだ。ここは海中だ。経験と言う経験が皆無な上での戦闘になる。どうしても不利になるというものだ。
(いぇーい。 えらくデカいお魚さんの創無だなー)
そう思いながらも二人は準備を始めた。柳は短刀のみ、アルゴスは以前に使っていた斧と剣ではなく、腰に付けられているトンファーを持った。
(やっぱり、複数の武器を使うんだな)
息だけが漏れる空間の中で二人は静かな戦闘を開始した。
(あの遺跡かな……?)
ヴェルズは遺跡を発見した。海の少し奥でだ。何故あるかは不明だが行かない事には始めらない。
(あそこか……)
疑問を抱えつつも遺跡に到着。遺跡の入り口前に入った時点で水は抜け、普通に空気を吸える状態であった。
「ぷはぁー、あっちの人たちはどうやら接戦の様ですね! エネルギーの感じから分かりますねぇ」
私も同じく感じる。そして、この先に何があるかはともかく先に進もう。
だがそんな簡単に上手くいくわけではない。中にはトラップも存在しますし創無も居る可能性がある。その中でも一際、別格なのがヴェルズだ。敵以上に厄介に感じる時さえある。
「ゴールまでの道を作るかい?」
小さいボックスからいくつかのグレネードを取り出した。どうしても爆破したいらしい。
「ダメだろ。 普通に考えて?」
「普……通……? 俺達が人間じゃないのに何を言ってるんだ? 正気か?」
こういう時に事実を突きつけるのは非常に反応に困る。それに加えて、彼が言うのだ。怒るべきなのか無視するべきなのか……。
「ハ、ハァ……とにかく先に進まないか?」
「オーケー」と彼は言い先行した。それにファガルも進む。道はさほど広くはなく窮屈に感じる程で暗闇がひたすらに続く道だ。何かの介入もなく進む。
「……これは」
何かで隠されているわけでもなかった。目の前の広間にそれはあった。
「あれがルリーブなのか? それ以前にこの有り様は……」
広間は荒れていた。壁や床はどこもかしこも壊されており、戦いの痕が見られた。凹んだ弾丸も見受けられたり、血痕のようなものもあった。
「この血痕、次元エネルギーが残ってるよ」
「つまり、昔の能力者が来ていると言う……よりルリーヴの所持者か?」
「そうなるけど、ここでの戦闘では何があったんだろう。 それに血痕から感じるのは一人分だけじゃない。 三人ぐらいのエネルギーがあるよ、これ」
それは調査班に任せるとして。発見できたので一旦、帰還しよう。
「……回収して帰還だ」
「何があった……?」
「一々、僕に振らなくても分かるでしょ?」
真下からとてつもないエネルギーと殺意を感じた。それも尋常ではない、海中で戦ってまともに戦えるか不安になるほどだ。
そして、ヴェルズは台座に置かれたルリーヴを一瞬にして掴んで回収用のボックスへとしまった。
「揺れ始めたな」
「ええ、僕的には戦うより帰りたいんだけど」
「……同じだ」
二人とも全速力で来た道を駆け抜ける。すると後ろの広間は崩れ始め、そこから馬鹿でかい創無が出現した。ヘビ……ウミヘビだ。振り返る事なく逃げ続ける。これでディレイブ計画は第一段階に踏み込める。人類を守る抜く最初の希望が……。
4話ぐらいの遅れての進行ですが、どうにか上手く行けてるようです。
ルリーヴやらディレイブ計画やらで話を進めるためには、まず私が雑誌などから勉強しなきゃいけないんだよなぁ。何をとは言わないけど、時間は削られるけど頑張らないとねぇ。
解説など
能力者はそこらの偉い人より権力は高いが、国や人類を揺るがすレベルの権限はない。逆を言えばそれ以下の権力で欲しいままに出来る。これは任務をやる上で、問題が生じた際に余計な介入の無いようにされたものだ。時と場合による事もある。
普段は上司の命令が多いが、基本的には現場での重要な判断を出す上で使われる。外部からの圧力も何も受けないのが利点と言えよう。本人がやらかしたときはその時だが。
乗り物に関してだが、能力者は年齢を引き下げて、訓練させた上で特殊な免許を取得できる。14歳からで基本的には自動車だが、さらに受講すればバイクなども乗れるようになる。弘太は前述した自動車とオートバイの免許を所持している。警察などに免許を見せれば、直ぐに偉い人と分かるので問題はない。




