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黒絶草   作者: Outsider
第一章 「虚憎」篇
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四十九話「同族」

 その場の空気は凍っていた。と言うのもファイが弘太に腕を組みながら戻ったためだ。


 それを見た零華と北瑞はファイと目線を合わせ、電流みたいなのが流れる感じで目線だけで壮絶な争いをしていた。


 何の事態か弘太は把握できていないが、それでも異常事態と察知して現在フリーズ中。動く気配はない。


 居合わせた眞太郎と穂乃﨑も困惑気味に事の顛末を見守り、白神主任はコーヒーを堪能していた。


「西幸君、君に女性はいくら居ても僕は良いと思うんだ」


 それを聞いた弘太はフリーズ状態を解除し、答えた。


「白神主任、そんな御託は良い。 賀霧雅哉のあの能力と言い、そろそろ説明の一つや二つは欲しい物ですが?」


「それって今の状況から逃げてる事にならない?」


 と零華に聞かれて、少し焦り始めた。


「い、いや。 そういう事じゃない。 ただ、今は気になることが……」


「私たちの事よりも……?」


 北瑞に言われ、更に困惑する弘太……ここは白神主任に直接、自分の気持ちを言うしかない。


「……白神主任、確かに能力者は本人たちが子どもを作らなければ増えない。 圧倒的人員不足ゆえに人類を守る為に重婚が許されているのは仕方ないと言えます。 私が度重なる違反をした上での処罰も受けるのも分かります。 ですが、何故それが結婚の話になるんですか……!?」


「簡単だよ。 令嬢である北瑞くんが君の事が大好きみたいだからね……それにファイさんも?」


 ファイは顔を赤くし、慌てながらも否定した。


「い、いえ決してそんなんじゃ?! ただの仕事仲間みたいなものです!!! それに彼には二人も女性が居るんですから!」


「でも、このままだと一生悲恋のままだよ?」


「そ、それは……「あ、やっぱり好きなんだ」


 そこへ弘太が割り込んできた。


「からかうのもいい加減にしてください。 ファイも困っています。 それに私もそろそろ本題の話をしたいんですが?」


 コーヒーを飲み終えた彼はリラックスしながら応じた。いつも思うがこの男に真面目というワードが脳に備わっているのだろうか。きっと、愉悦と好奇心しか搭載されていないだろう。


「賀霧君の事となると……キミと一緒だからかな?」


 「はい……?」と弘太は一番予想していなかった回答にさらに困惑した。


「それはどういう事です?」


「ふむ、私は答えないよ。 資料でも何でも漁っても問題ないよ。 どうせ開示されている情報だし」


 それを聞いた弘太は逃げるように退出した。正直、今は賀霧の調査だ。このままでは戦闘に支障が出る。私の突然に始まった妙な恋愛関係についてもその後に、決着を付けるつもりだ。


 白神以外のメンバーは直ぐに付いてきた。大所帯になりながらも資料室へと着いた。


「あら? 珍しいわね。 西幸君だけなら分かるけどこんなに大勢だと何かあるのかしら?」


 眼鏡をかけ、ブロンドの髪が綺麗なその女性はパソコンから手を離しこちらへと身体を向けた。


「“アマンダさん”。 賀霧雅哉の過去の経歴について出来るだけ情報を得たいんです。 出来ますか?」


 それを聞いた“アマンダ・ロッサ”は、パソコンにてそれを調べ始め、しばらくしてその結果が返ってきた。


「そこのディスプレイにデータ入れとくから、後はご自由にー」


 と、彼女は再び自分のPCへと向き直し作業へと没頭していった。


 ――――――ともかく、これで奴の事が分かるはずだ。奴の出自から見て行く、すると……。


「………」


 僕と一緒……その意味がなんとなくだが分かった気がする。だが、賀霧雅哉と同類の扱いとされたとなると無性に腹が立ってきた。


 目の前で両親が自殺……その事実は彼を精神異常へと導くには十分すぎるものであった。


 彼がまだ5歳の頃の出来事であった。母親は普通の人であったが父親は能力者であり、完全ではないが父親はどこか今の賀霧雅哉と通じているのか。壊れているかのように戦っていたという。


――――――奴がああなったのも彼が選んだ選択かもしれない。苦しみから逃れるために、だからこそ、だからなのだろうか。知れば知るほどに賀霧雅哉に対して同情などの感情はなく逆に嫌悪感が増していく。


 この感情は何だ? 怒りや憎しみではない。今まで感じたことのない気持ちが全身に駆け巡る。ただひたすらにアイツが嫌い。そんな事だけがずっと僕の中で引っ掛かっている。


「弘太君……どうしたの?」


 零華が後ろから心配して声を掛けてくれている。ここは落ち着かなきゃ……。


「あ、ああ。 調べたい事も済んだところだ」


「……その人と何かあったの? 手伝えることってある?」


「いや、これは俺とその人との個人の問題だ。 出来るだけ穏便に済ませる様に俺だけで行こうと思う」


 ジッと北瑞が見つめてくる。何だろうか?


「………」


「………」


 しばらく見つめ合う時間が出来た。みんな、それを見て何故か静かになった。


 ……理由は分からないが照れくさくなってくる。彼女にあんなに真剣に僕を見てくるなんて……理由を聞こう。


「なぁ、北瑞――――――」


 人差し指で口を塞いできた。急に心臓の鼓動が激しさを増してくる。そして、変に良からぬ期待をしてしまう。


「ふふっ……私の事もちゃんと見てくれているわよね?」


 ……つまり、恐らくだが今の僕は零華中心になっている。現状、回避したい一夫多妻状態だが彼女はそれを望んでいるだろうか?


「……ああ。 流石に今のは。 でも何で今なんだ?」


「今だからこそよ。 これを逃したら中々機会が訪れないものよ……普通に考えたら、複数の女性を妻として迎えるのはありえないかもしれない。 でも、今のあなたにはそれが必要なの。 私以外の女の人を好きになっても良いけど……その分も私を好きになって愛してほしいの。 私も貴方を愛しているから……」


 ……彼女の愛は本物だ。それもとびっきりに重い。そんな気持ちを無視できない。気付いたら僕の中では重婚を取り消すという項目が消えていた。僕自身が優柔不断かもしれない。だが、ここで断るほどの勇気もない。何より、彼は普通の日常を送れていない。


 何度も何度も大切な人々を目の前で奪われ、その為に悪人を殺してきた。そう、彼は飢えているのだ。愛に、恋に、一度手に入れた物を手放したくない。手放してしまえばこんな世界だ、自分の知らないところでその命を終えるかもしれない。今の自分には力がある。この力でみんなを守る。だからこそ……僕を好きでいてくれる二人の幸せも守らなければならない。



「!? 北瑞……?」


 突然、顔を近付かせ頬を両手でがっちり掴んで唇が今にも当たりそうであった。


「ダ、ダメー!!!」


「ダメよそんなこと!!!!!」


 ファイと零華が止めに来た。そこで北瑞は離れてしまった。


「……初キスぐらいは独り占めしたいわよ」


「で、でも人前だし! 何より私はそんなの許さないよ!!!」


「それは私も同じ意見だわ! 何あなただけ弘太に近付いてるのよ!?」


「……やっぱり、ファイさんも好きなのね」


 そこでファイはハッとした。しまった、彼に私の気持ちを知られてしまった。先ほどの支部長室での出来事で隠しきれていたかはもう怪しかったが。


「……本当なら俺は君の気持ちに応えるよ」


「……! ……うん。 私も弘太の事が好きよ。 迷惑になるかもしれないけど……私とも結婚を前提に付き合ってくれますか?」


 それを聞いた弘太の答えは決まっていた。彼に見本となるカップルが居れば別の答えがあったかもしれないが、それもなくこれが間違っていないと信じてしまった弘太は己の道を爆走する。


「……こんな俺だけどよろしくお願いします!」


 その途端にタックルされるかのようなホールドが弘太を襲った。


 ここで弘太はある疑問を抱いた。もしかして、自分は周りの人々に恵まれているのではないか?


 そう思うと嬉しくなってきた。こんな僕でも幸せを手に入れている。後は……これを守るだけだ。


 そこで自身に新たな任務が入った。読んでみると少し離れた所に怪しい動きがあるらしい。それを行っている人間の中に何人か、クレットと繋がりを持っている疑いのある人物もいた。直ぐに向かおう。


 彼に幸せはない。手に入れてもそれを絶対に壊す。彼には幸福より不幸を与えるべきだ。そう、己の生きていること自体が罪と感じる程に。だから、彼の人生は理不尽で良いんだ。それで誰かが悲しむわけでもない。彼が死んでも世界に何の影響も……いや、滅亡ぐらいはするか。後は、西幸弘太という人物にとってどんなものが彼を苦しめるかだ。今、一番のトリガーとなるのは……家族の記憶、恋人たちもそうだがそれ以上に……“相原柳”の損失が彼を狂わせる要因になるだろう。


 彼に救いはない。だが、終わる前に足掻くことは出来る。西幸弘太はそれだけを望まない。この運命を変えようとする。滑稽だ、所詮はたかがガキのクセに。


 西幸弘太、相原柳、賀霧雅哉……彼等の存在は危険だ。全ての知らない可能性を引き出す事があるかもしれない。それを望んではいるが方向性によっては即排除する。だが、それ以上に警戒しておくべき要素もある。


 西幸弘太のクラスメイト……“津田命”。お前はどこへ向かう? 

 次回は丁度1年になるのでピッタリに投稿しようかと。正直、言ってハーレム要素を入れたのは個人的に失敗したような気がしなくもない。

 ただ、設定的にこれ以外の能力者の生産はありえない。それに後の展開を考えると弘太にこれ位の話はあって良いかと。とかなんとか言ってるけど、当初のヒロインとの恋愛メインの話から弘太と柳の親子の話に私の脳内では完全に変わってますねぇ。そして、賀霧雅哉と向きあうこと。眞太郎との関係が今後に関わるかと。けど、まだ1章の話ですね。全14章で章ずつにエンディングを分けるとかなり終わり方に差がありますね。

 14章もあってハッピーエンドが半分にも満たない奇跡。まぁ、1章のエンドは綺麗に終わらないという事だけは言いたいですね。構想しかない残りの外伝も含めるとホントこの作品はバラバラです、戦闘もの、冒険もの、異世界もの、宇宙人、異能力学園、等々ありますが、今やってる外伝が見事にこの全てを繋ぎます。というか元凶です(笑) 裏ではバッチリ繋がってますし、何かの形で他の外伝や本編に出るかもと、繋がってはいるんですけど話は独立しているのである程度の区別は出来ていると思います。特に宇宙人に関してはモロSFっすね。

 長文失礼しました。

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